……誰か。助けてくれ。一体何なんだコレは。
「ねぇ、パパ。どうしたの?」
「だから、パパじゃない!」
俺にへばり付いてくるこの幼女は一体何なのか。そこから説明するとしよう。
そう、いつも通りだった。いつものように朝起きて学校行って後ろにはアイツがいて。
放課後、いつものように部室に行って。…そこで事件は起こったんだ。
いつものように軽くノック。…返事が無い。
「珍しいな。朝比奈さんがいないとは。掃除か何かかな」
独り言を呟きながら団長席に座り、PCを起動する。
いつものようにハルヒが来るまで、軽くネットサーフィンだ。
誰もいないし、ついでにMIKURUフォルダでも鑑賞しよう。
ガタッ!
「ぬおっ!」
慌ててMIKURUフォルダを閉じる。そして後ろを振り返る。
…よかった。誰もいない。これが見られたら自殺物だ。危ない危ない。
ガタタッ!
音がするのはどうやら掃除箱からみたいだ。…なんか既視感。
朝比奈さんもいないしな。また面倒事に巻き込まれなきゃいいんだが。
掃除箱の蓋を開ける。
「またですか?朝比奈さん。今度は一体…」
俺の言葉が止まる。
そこにいたのは、どこかで見たことのあるような幼女だった。
「あっ!パパ!待っててくれたのね!」
…はい?パパ?何を言ってるんだこの子は。
まだ16の身空でこんな大きい子のお父さんになった覚えは無い。
どうみても妹ぐらいの年齢だ。…つーかどことなく妹に似てるな。
「…どーしたの?パパ」
「OK。とりあえず落ち着こう。どうやってここに入ったのかは知らんが
とにかくパパとママが心配してるぞ?さぁ、お兄ちゃんが家まで送ってあげるから行こう。すぐに行こう」
「パパはここにいるよ?それにここに来るように言ったのも向こうのパパだし心配はしてないと思うの」
お、落ち着け。俺。混乱するな。どんな事が起きてもドイツ兵はうろたえないッ!
パパはここにいる?ここにはこの幼女と俺しかいない。つまり俺がパパってことか?
ここに来るように言ったのは向こうのパパ?向こうって何だ?
あれ?このセリフ、似たようなのを聞いた覚えがあるな。
しかもこの子が出てきたのもあの掃除箱。…おい。まさか…。
「あ、キョン君早いですね。…あれ?その子…」
初代掃除箱の中の人が入ってくる。あああ、なんかよけいややこしくなりそうだ…。
「みくるちゃんだー!若ーい!かわいいー!」
「そんな…まさか…」
朝比奈さんがかなり驚いてる。なんだなんだ。この幼女が一体なんだ。
「その…詳しくは説明できませんが…。この子、TPDDを持っているんです…」
TPDD?あぁっと…。確か、タイムマシンみたいな物。だっけ?
「つまりこの子は未来から来た、と言う事になりますね」
「…いつからいたんだ、お前」
ドアの前に古泉と長門が立っていた。
「つーことは…。この子はマジに俺の娘なのか…?」
長門の方を見る。宝石のような黒い目がじ…っと俺を見つめて
「この子は、嘘は言ってない」
とだけ言った。
「だからー!言ってるじゃない!アタシはパパの娘なの!」
…とりあえず、俺の娘で確定のようだ。長門が言うんだから間違いないだろう。
「…えっと。それじゃあなんで過去に来たんだ?なんか理由があるんだろ?」
「それは、禁則事項でぇす♪」
人差し指を口に当て、…多分ウィンクがしたかったんだろう。両目を閉じてそう言った。
ま、未来人があんまり詳しいこと教えてくれないのはわかってるさ。
バレンタインの時に嫌ってほど痛感してる。
「…やれやれ」
ニヤニヤと俺を見る古泉。唖然とした顔で幼女を見つめる朝比奈さん。
しけったマッチを見るような目で幼女を見る長門。俺の足にまとわりついてくる幼女。
その4人を眺めながら朝比奈さんに入れてもらったお茶を啜る俺。
と、その時。大きな声と共にドアが開いた。
今よりさらにややこしい状況にするであろう声の主がずかずかと団長席に向かっていく。
「いやぁー!遅れてごめん!今日掃除でさぁ!」
その直後、俺の足元から上がった声に俺は耳を疑った。
「あっ!ママ!」
「ぶはぁっ!」
俺の口から盛大に茶が噴出す。…この娘、今なんて言った!?