釈然としないまま長門とは別れ部室を辞した俺は、とりあえず教室に戻ることにした。  
とっくに過ぎているかと思った昼休みが、まだ終わってなかったからな。  
もしかしたら、あの唾液に時間感覚を狂わせる成分でも含まれていたのかもしれん。  
そういうことにしておこう。早漏野郎という誹りを受けるのは避けたいぜ。  
 
部室棟から本棟へとつながる渡り廊下を越え、一年の教室が並ぶ方へ曲がったときだった。  
「おやっ、そこをいくのはキョンくん?」  
ぎくっ。背後から聞こえてきたこのハイテンションな、底抜けに明るい声をお持ちの方と言えば、  
「や、やあ、鶴屋さんじゃないですか」  
鶴屋さんを親しい間柄の異性に含むのかどうか俺にはわからなかったが、念のため背を向いたまま返事した。  
だが、あからさまに挙動不審な俺の態度を変に思ったのか、すたすた近寄ってくる音がする。  
「ん、どしたい? キョンくん」  
「いえ、なんでもありませんよ、ははは。それでは俺はちょっと用事がありまくりなので」  
そのまま立ち去りを試みる。しかし三歩ぐらい歩いたところで肩をつかまれた。  
「なーにを隠してるのさっ。おねえさんのほうを向くにょろよっ」  
ものすごい力で体が半回転した。たたらを踏んでしまうが、最後の意地で横を向いて顔は見せない。  
「な、なにも隠し事なんかしてませんよ。気のせいです、そうに決まってます」  
我ながら説得力のないことだな、とは思ったが、案の定、鶴屋さんの両手が俺の顔を挟んできた。  
「ちょいとっ、少年! 話すときは人の顔を見て話さないとダメだって習わなかったのかいっ?」  
笑い声のまま、首をねじまげてくる。ぽきっ、と関節がイヤな音を立てて正面を向かされた。いてえ。  
視界に入った鶴屋さんの顔は、笑い顔ではあったが、目が少し疑いの色を持っていた。  
俺の顔を抱えたまま、鶴屋さんはしげしげと俺の目を覗いてきた。  
 
しばらくしてきょとん、と目をしばたたかせる。  
「うん? 別になにも変わったとこないっさ。キョンくん、なにがしたかったの?」  
お、もしかして鶴屋さんはセーフなのか? 念のため聞いてみる。  
「鶴屋さん、大丈夫ですか?」  
「ふえ? なんのことかわからないなあ。あたしはいつも元気元気の鶴にゃんだよっ」  
にかっと爽快な笑みとともに答えてくれた。俺はほっ、と胸をなでおろす。  
「それならいいんです。失礼な態度をとってしまってすみませんでした」  
頭を下げる俺に、鶴屋さんは首をちょっと傾ける。  
「ふーん。それよりさ、キョンくん」  
「なんです?」  
問い返した俺に、鶴屋さんは世間話でもするようにさばさばした口調でおっしゃった。  
「あたしとえっちなことしよっ?」  
 
「は?」  
完全に意表を突かれた俺の意識は、鶴屋さんの強烈な当身によって刈り取られた。  
 
 
「ん……ここは……?」  
目を覚ました俺は、自分が薄暗い場所に仰向けに横たわっているのに気付いた。  
いまにも消えそうな蛍光灯が、ぼんやりと部屋を照らしている。  
顔を横に向けると目に飛び込んできたのは跳び箱だ。そういや背中にはマットの感触がする。  
ってことは、  
「体育倉庫の中さっ!」  
狭い部屋中に、元気のいい声が響く。  
身を起こした俺の前にいたのは、両手を腰に当て胸を張って仁王立ちをしている鶴屋さんだった。  
 
ええと、俺はさっきまで本棟に入ったところにいたはず……って、  
「なんで俺、裸なんだ!?」  
長門が再構成してくれた制服どころか下着すらない。真っ裸だった。  
「もちろん、あたしが剥いたからだっ!」  
えへんっ、と胸をますます突き出し、俺を上から見下ろしながら自慢気に言う鶴屋さん。  
かと思うと、その視線が俺の目から降りていき、ある地点で止まった。  
「うふふん、キョンくんのそこって案外カワイイんだねっ」  
鶴屋さんの視線を目で追うと、その先にあったのは、俺の勃起前のお子さんだった。  
たしかに勃起前だからカワイイのかもしれないが、鶴屋さんにそう言われるとめっちゃヘコみます。  
「あれあれ、キョンくん、しょげてんのっ? そっちのカワイイのもごめんなさいしてるよ?」  
生まれてきてごめんなさい。  
俺が本気で落ち込んでいると、鶴屋さんはけらけら笑い声をお上げになった。  
「あははっ。冗談冗談っ。うぶなんだからあ」  
「鶴屋さんの冗談は冗談に聞こえないんです」  
手拍子で返してから、んなこと言ってる場合じゃないと気付く。  
「鶴屋さん、俺の服はどこなんですか? 返してください」  
自分だけ服を着込んでいる鶴屋さんは、俺の要求にあっけらかんと言い放った。  
「いいよっ。もうひとつの体育倉庫に隠してあるから、取ってきたら?」  
ヘタなウインクをして、俺の前から素直にどいてくれる。  
それなら、と立ち上がり閉まっている出口に歩みを進めた俺に、鶴屋さんはぽんっと声を足してきた。  
「もう授業始まってるけどねっ」  
「え?」  
扉に手を掛けたところで、俺の動きは固まった。  
 
固まった俺の耳には、たしかに大量の足音らしきものが聞こえていた。  
どうやら柔軟体操後に軽く体育館内をジョギングしているところらしい。  
 
「あっはは。キョンくん、残念でしたっ」  
どこまでも愉快な声を出す鶴屋さん。  
完全に遊ばれてるな、俺。温厚な俺でもさすがにこれは腹に据えかねた。  
かっとなった俺は振り向くと、鶴屋さんに詰め寄って、両肩をつかんでいた。  
「いい加減にしてください!」  
肩をつかまれた鶴屋さんは、俺の声にびくっ、と体を震わせて急におどおどしだす。  
明るい雰囲気は影を潜め、顔はうつむき、上目遣いで俺を見てきた。  
「ご、ごめんね、キョンくん。あたし初めてだから、優しくして……」  
これじゃ俺はレイプ犯じゃないか。慌てて肩から手を離す。  
「い、いえ、そんなつもりじゃなかったんです」  
鶴屋さんは、ほっ、としたのか顔を上げた。目は面白がっていて舌がちろりと出ていて、ってあれ?  
「おいたをしちゃダメにょろよ。そんなキョンくんにはおしおきだっ!」  
「うわっ!」  
視界がぐるっと回る。鋭い足技を食らったからだと理解したときには  
俺はまたマットの上に転がされていた。受身も取れず、一瞬息が詰まる。  
 
「ほらほらっ、まずはそのカワイイのからいじめちゃうよっ」  
間髪入れず、鶴屋さんは俺のペニスを上履きのまま踏みつけてきた。  
「ぐっ!」  
そんなに力は入ってなかったが、思わずうめき声を上げてしまう。  
ぐりぐりと踏みにじってくる鶴屋さんの顔は、いつも以上に楽しそうだ。  
「あれ、キョンくん、もしかして気持ちいいのっ?」  
「そ、そんなわけないじゃないですか」  
俺の言葉に、鶴屋さんは首をひねる。  
「おっかしいなあ。あたしの足の下が硬くなってきてるみたいだけど?」  
鶴屋さんの言うとおり、俺のペニスは徐々に勃起しだしていた。  
足使いが絶妙すぎる。普段の鶴屋さんのようなテンションで責めてくるギャップも、勃起に拍車をかけていた。  
「あ! キョンくんって、踏まれて感じちゃうヘンタイさんだったのかっ!」  
「違いますっ!」  
手を打って大げさに納得する鶴屋さんに、俺は全力で否定する。  
鶴屋さんは俺の反応を見て、ことさらじとっとした視線を送ってきた。  
「うふふふん? それじゃコレはどういうことなのか、説明してくれっかなっ?」  
鶴屋さんが足をどけると、圧迫されていたペニスが天井に向かって勢いよく立ち上がった。  
 
「あははっ。立派になっちゃって、おねえさん見違えちゃったよっ」  
鶴屋さんは俺のペニスを見て感想を述べると、重ねて訊いてきた。  
「それでっ?」  
物的証拠があってはごまかしようもない。だが変態疑惑だけは払拭せねば。  
「こ、これはその……不可抗力というやつでして」  
「ふーん」  
つたない俺の言い訳に、鶴屋さんは全然納得していないような声を出す。一転、明るい声で、  
「それじゃホントに不可抗力かどうか試してみようっ」  
足を振った。なにかがふたつ、壁に当たって落ちる音がした。  
 
「イったら、キョンくん大嘘つき決定っさ。嘘だったら罰ゲームっ!」  
「なっ!」  
宣告すると、再度踏みつけてきた。  
「靴下のお味はどうだいっ?」  
「うっ」  
柔らかい感触と、ほのかな体温が鶴屋さんの足裏から伝わってくる。  
さっきまでの冷たい上履きの感触とは、比べ物にならない。  
まずい、どうにかなってしまいそうだ。  
鶴屋さんは俺のペニスをふにふにしながら、俺の表情を見て取ったか、  
「まだまだ、序の口だよっ」  
さらに責め立ててきた。足の指を曲げて亀頭を包み込み、指を動かして刺激してくる。  
「う、や、やめ」  
「めがっさ気持ちいいしょ?」  
心なしか、鶴屋さんの声にも艶を感じた。  
快感に耐えつつ見上げると、鶴屋さんはいつのまにか片手で制服の胸の部分をまさぐっている。  
顔は意地悪そうに笑っているが、吐息に熱と甘さが加わっているように思える。  
その姿の鶴屋さんを見て、俺はますます耐え切れなくなった。  
 
「っふう、ねえキョンくんイっちゃいなよっ」  
「俺は……足でなんか」  
強がりもそろそろ、限界かもしれん。射精欲が込み上げている。  
「あは、素直じゃないんだからっ。もうはちきれそうになってるよ?」  
亀頭を刺激しながらかかとで陰嚢をつついて、鶴屋さんが告げる。たまらん。  
「ここを踏んだらどうなるのかなっ?」  
「そ、それはダメ――」  
「だーめっ」  
俺の制止を笑ってあっさり振り切ると、鶴屋さんは少し力を込めて、かかとで陰嚢を圧迫した。  
「ぐあっ」  
鈍い痛みとともに、快感が走りぬける。ペニスが跳ねて、限界をあっさり突破した。  
「うあああっ!」  
頭の中が真っ白になる。口を突いて出た雄叫びとともに、俺は射精していた。  
 
「あらら、靴下がキョンくんの精液でべとべとだっ」  
荒い息をつく俺とは対照的に、うれしそうな声を出す鶴屋さん。  
靴下を脱いで、それで俺のペニスを拭いてきれいにしてくれた。  
使用済になった靴下を、鶴屋さんは後ろに放り投げる。  
 
「さーてさてっ」  
鶴屋さんが楽しそうに声をかけてきた。  
「嘘つきキョンくんには、罰ゲームをしなくちゃねっ」  
返す言葉もない。  
「でもその前に、ちょっとパンツ脱ぐっさ。気持ち悪いっ」  
片目を閉じて俺に笑いかけると、スカートの中に手を入れてごそごそする。  
そしてするっと脚をくぐらせてショーツを引っ張り出した。  
鶴屋さんらしい、飾り気のない、さっぱりした白いパンティだ。  
「うへっ、ぐっちょぐちょになってる」  
端っこをつまんで広げ、見せてきた。たしかに元々白い色のはずが、愛液か汗かに濡れて  
一部が半透明になっている。さばさばしたストレートなエロっぷりに、思わず俺は口を開いていた。  
「足で俺をイかせて感じるなんて、鶴屋さんのほうがよっぽど変態なんじゃないですか?」  
俺の言葉に、鶴屋さんは一瞬固まり、目を泳がせる。  
「えっ? あ、あははっ。イっちゃったキョンくんに言われたくないなあっ」  
鶴屋さんはごまかしながら、パンティを放り投げようとして、その手を止めた。  
「そだ。これも罰ゲームに使うっさ」  
 
パンティを使う罰ゲームってなんなんだと思っていたら、鶴屋さんが近寄ってきた。  
「いったい、なにをするんですむぐっ」  
俺の言葉を、鶴屋さんは口にパンティを押し込めることで封じてきた。  
「罰ゲームはねっ」  
俺に顔を近づけてきて、耳元にささやく。  
「あたしが満足するまで、楽しませてもらうことさっ」  
 
「むぐむむぐむぐむぐ」  
それって罰ゲームなんですかと言ったが、声にならない。  
鶴屋さんの愛液で湿ったパンティを噛んでしまい、鶴屋さんの味が口に広がった。  
「わお、キョンくん、元気だねっ」  
パンティから女を意識してしまった俺は、鶴屋さんの言うとおり、また勃起していた。  
間が全然空いてないがさっきにしても、射精したにもかかわらず、倦怠感は一切無かったしな。  
長門が注入してくれたのが効いてるってことか。  
 
「キョンくんのおちんちん見てたら、あたしも気持ちよくなりたくなっちゃった」  
鶴屋さんはそう言って、俺の顔を跨いできた。俺の頭を挟むように膝を着く。  
俺の視界に入ったのは、ぱっくりと割れてぬらぬら光っている鶴屋さんのあそこだった。  
そのまま、腰を下ろしてくる。スカートが広がって、俺の顔を覆った。視界が真っ暗になる。  
鶴屋さんの体温とともに、ぬめっとしたものが口と鼻に押し付けられた。  
「うひゃあ、こそばゆいっ」  
息苦しくなって吐いた俺の鼻息に、鶴屋さんは身をよじらせる。  
俺も鶴屋さんの長い髪が上半身に広がって、胸あたりにさわさわした感触を伝えてきて、くすぐったかった。  
 
鶴屋さんは俺に顔面騎乗したまま、前後に動き始めた。  
「はふっ、ああんっ、キョンくんの息が当たって、気持ちいいっ」  
酸素を求める俺がせわしなく鼻呼吸をする上で、鶴屋さんは踊り狂う。  
「はあんっ、ひゃっ」  
俺の唇と鶴屋さんの大陰唇がこすれ合った。鶴屋さんは体を震わせて、全身で快感を現す。  
愛液が俺の顔に降りかかり、しずくとなって流れ落ちていく。  
「ねえっ、キョンくんっ。胸、胸揉んでっ!」  
叫ぶような鶴屋さんの懇願に、俺は素直に腕を伸ばし、手探りで鶴屋さんの胸を探す。  
「あふっ、そこは、あはははっ、ちょっとキョ、あははっ、違うキョンくん、そこ腰っ」  
むずがる鶴屋さん。太腿でぎゅっ、と俺を挟んできた。肉感のある肌の感触に俺は陶然となるが  
すぐにそれどころじゃなくなる。顔が完全に密着して呼吸するスペースがない。しっ、死ぬっ。  
「むぐむぐむぐう」  
「あっはっははっ。あっ! キョンくんごめんよう」  
慌てて力をゆるめる鶴屋さん。息をつけた俺は、再びまさぐり、ようやく鶴屋さんの胸を探し当てたらしい。  
らしいというのは、制服越しだといまいち隆起がわかりにくいからだ。その、あまり大きくないし。  
俺の戸惑いの原因を察知したのか、  
「もうっ、制服邪魔っ」  
鶴屋さんはごそごそ上着を脱ぎだした。  
 
「どうぞっ」  
鶴屋さんの言葉に、俺は両手に鶴屋さんの胸をおさめた。  
長門のよりは大きく、俺の手の内にすっぽりと入る。  
やわらかい双丘の感覚を楽しみ、ゆっくりと揉みしだく。  
「あんっ、いいよっ、キョンくん、いいっ」  
腰で円を描きながら、鶴屋さんが嬌声をあげる。  
俺は硬くなった乳首にも手を這わせ、親指と人差し指でつまんだ。  
「ひゃうっっ!」  
叫ぶと、体を硬直させた。  
 
硬直の解けた鶴屋さんは、浅くなった息を甘く吐いてくる。  
「きょ、キョンくんっ。女の扱い方うまいねっ」  
さっき初体験を済ませましたとはとても言えず、実際口もふさがれてるので無言だ。  
代わりに俺は胸を荒々しく揉むことで応える。  
「ああんっ、胸気持ちいいっ」  
貪欲に快感を求めようとする鶴屋さんは、再度俺の顔を圧迫してきた。  
細い体に見合わない厚みを持つお尻が揺れる。俺も胸を激しく揉みながら頭を動かし  
鼻面を押し付け、唇で大陰唇に接吻をし鶴屋さんを感じさせる。  
「も、もうだめっ。あたしイっちゃいそうっ」  
切羽詰った声で限界を知らせてくる鶴屋さんを、俺もここが先途とばかりに責め立てる。  
酸欠でハイになったのか、息苦しさも忘れ、必死に手を顔を動かす。  
「だめ、イクっっ!」  
その声とともに、俺の両手から胸が零れ落ちた。腰も浮き、顔には大量の愛液がかかる。  
ようやく開いた俺の視界には、恍惚とした表情で背を弓なりにそらせ、体を硬直させた鶴屋さんがいた。  
 
鶴屋さんはそのまま、後ろに倒れこみかけた。慌てて俺は体をずらす。  
痛いぐらいに勃起してる俺のペニスにぶつからないようにだ。  
それはなんとか成功し、鶴屋さんの頭は俺の太腿に着地したが、髪のことを失念していた。  
「むぐっ!」  
柔らかい髪の質感に、俺の暴発直前のペニスは耐えられなかった。  
上向いたまま発射された白濁液は、鶴屋さんの髪や胸、顔を白く染めていった。  
 
「ぶはっ!」  
俺はパンティを取り出し、久々の口からの空気を思い切り味わった。  
鶴屋さんは胸を上下させるだけで、まだ倒れ伏している。  
気絶したのかと思ったが、それは違っていたようだ。  
ゆっくりを身を起こすと、弱々しく笑いかけてきた。  
 
「あはは。めがっさ気持ちよかったっさ」  
そこで初めて違和感を覚えたらしく、鶴屋さんは自分の顔に手をやって指でぬぐう。  
「あれっ、この白いのって、精液?」  
さらに胸をちらっと覗く。そこにも精液が付着していた。  
鶴屋さんは、俺を疑うように見てくる。  
「キョンくん、もしかしてあたしがイってる間に顔にぶっかけたのかいっ?」  
「ち、違います違います。これは髪がですね、その」  
俺が説明すると、髪に手をやりそこにも精液がついていることをみとめ、おかしそうに笑い出した。  
「あっはは。髪でイっちゃうなんて、キョンくんってやっぱヘンタイさんじゃないのさっ」  
「うっ」  
言葉に詰まる。情けない顔をするしかできなかった。  
 
鶴屋さんはひとしきり笑ったあと、しげしげと精液を見つめ、ぱくっと口にくわえた。  
すぐに苦そうな表情をする。  
「うえっ、おいしくないね精液」  
「俺に言われても、味わったことなんかありませんよ」  
そしてこれからも永遠に味わいたくなどない。  
鶴屋さんはハンカチを取り出し、まず髪についた精液を拭き取りだした。  
「あたしの髪ががびがびになったら、どう責任とってくれるんだいっ?」  
伸ばしているだけあって、ご自慢の髪だったらしい。口を少し尖らせて言ってきた。  
「責任と言われても……」  
「付き合ってくれるなら許してあげるよっ?」  
「えっ!?」  
どういう飛躍なんだそれは。俺の頭がめまぐるしく回り、なぜかハルヒの姿が浮かんだとき、  
ドガッ!  
体育倉庫の扉が景気のいい音を立てた。  
 
誰かが外から開けようとしていた、って冷静に考えてる場合じゃねえ。  
素っ裸の俺と、精液まみれで穿いてるのはスカートと左の靴下だけの鶴屋さんなんぞ見られたら  
確実にジ・エンドだぞ。肝を冷やすどころか、俺は一瞬心臓が止まったかと思った。  
だが、その辺は抜かりが無かったのか、よく見たらドアと壁の間にモップが何本も置いてある。  
開くはずがないのも納得だ。鶴屋さんを見ると、口に手をあて声を潜めて笑っていた。  
俺は胸をなでおろしかけた。それが止まったのは、声を聞いたからだ。  
 
『もう! なんで開かないのかしら』  
扉に蹴りを入れていた人物がわめきだした。どこかで聞き覚えのある声だ。  
俺の脳は自動的に時間割を繰り始めた。五時間目、体育。男子は外でサッカー。女子は体育館でバレー。  
いや、これは俺の勘違いだ。そして声も空耳に違いない。そうだ。そういうことにしておこう。  
『どうしたの? 涼宮さん』  
なかったことにしようとした俺の希望を打ち砕いたのは、別の女子の声だった。  
『倉庫が開かないのよ』  
『バレーボールなら隣の倉庫にもあるのね。そっちから持ってきましょ』  
『むう。しょうがないわね』  
しぶしぶ納得した格好で、声は聞こえなくなり、隣の倉庫の開く音が代わりにした。  
 
「今のってハルにゃん?」  
鶴屋さんが声を押し殺して聞いてきた。俺はうなずきで答える。  
ハルヒのやつ、元気になったらしいな。寝てたのは午前中だけか。  
「ま、いっか。キョンくん続きしよっ?」  
そう言って、鶴屋さんは俺に笑いかけ、表情が固まる。  
「キョンくん、なんでそんなにちっちゃくなってるのかな?」  
俺のペニスは萎縮して再びお子さんになっていた。  
興醒めしたというか、ハルヒの声を聞いたらこうなってしまった。  
「仕方ないなあっ」  
鶴屋さんは髪をかき上げて耳を露出させると、顔を寄せてきた。  
 
うなじを露出させた鶴屋さんは、俺のペニスを根っこまで咥えて、口の中で転がしだした。  
「ぷはっ、キョンくんはあたしのを舐めておくれっ」  
小声で俺に要求してくる。俺の体を跨ぐと、鶴屋さんは再び咥えるのに専念する。  
膝を立て、お尻を振って一生懸命、俺のペニスを咥える様には欲情をそそられた。  
 
俺はスカートをめくって、さっきはよく見えなかった鶴屋さんの秘所をじっくり見物する。  
陰毛は手入れされているようだが、かなり密度が濃い。頭髪があれだけ見事だからなのかね。  
一度イったからか、大陰唇は開き気味になっていて、剥けたクリトリスが見えた。  
俺は鶴屋さんのお尻に手を伸ばし、つかむと、半身を起こし、秘所に顔を近づける。  
口がふさがっててできなかった舌を入れて、愛液を舐め取った。  
「っふはっ」  
くぐもった声を上げて俺のペニスに息をかけると、鶴屋さんも負けじと舌を使ってくる。  
唾液を絡めてじゅるじゅると音を立てて舌で含んだり、裏筋を舐めてきたりした。  
萎縮していた俺のペニスも、どんどん鎌首をもたげていく。  
『あれ、涼宮さん、こんなところに男子の制服があるのね』  
「ぶっ」  
思わず吹きそうになって、慌てて口を鶴屋さんの秘所に突っ込む。鶴屋さんのお尻が揺れる。  
壁の向こうから聞こえてきた会話は、俺を動揺させるのに十分すぎた。  
『あやしいわね。どこの変質者のかしら』  
さすがに萎縮したりはしないものの、ハルヒたちの声を耳にしながらするのは気が引ける。  
というか、制服が見つかったってどういうことだ。  
「鶴屋さん、なんか俺の制服が見つけられたそうなんですが」  
小声で呼びかける。鶴屋さんも口を離し小声で返してくる。  
「じゅるっ、んえっ? ぷはっ、あたしはちゃんと隠したよ。見つけた子が偉いっ」  
そう言って、俺のペニスを見る。完全に勢いを取り戻していた。  
「よーしっ、それじゃ入れるっさ」  
鶴屋さんはハルヒのことなんかどうでもいいらしく、立ち上がると方向を変え、腰を下ろしていく。  
いや、むしろハルヒの声が聞こえているほうがノリノリのような。  
「うふふん、今のあたしにとってハルにゃんは興奮剤みたいなものなのさっ」  
笑って言うと、鶴屋さんは一気に腰を下ろした。  
 
「っっう!」  
俺のペニスを奥まで咥え込んだ鶴屋さんは、悲鳴を押し殺すように、歯を食いしばった。  
騎乗位のまま、動かない。  
『バレーボール持って先に行ってて。あたしはちょっとこの制服を調べてみるわ』  
『了解なのね』  
そんな会話が耳に入った。バレーボールの跳ねる音が、遠のいていく。  
鶴屋さんは、まだ動かない。  
俺は恐る恐る声をかけた。  
「あの、もしかして……」  
鶴屋さんは涙を流しながらもさばさばと答えてきた。  
「言ったっしょ。初めてって」  
結合部からつつっと赤い液体が流れた。  
後悔の念に襲われる。俺がこんな変な体質になどならなければ。  
「キョンくんが悪いんじゃないよっ。あたしが迫ったのさっ」  
「いや、それは理由があってのことで」  
勃起させて結合しながら言うことでもないと思ったが、俺は事情を説明した。  
 
「ふーん」  
どうでもよさそうな声をする鶴屋さん。  
「要するに、あたしがキョンくんのことを少しでも想ってなかったらこうはならなかったんだよねっ?」  
「そのはずです」  
「それなら、いいしょっ。だってあたし今、けっこう幸せだよっ」  
にっこり笑ってくれた。混じり気のない、いい笑顔だった。  
そして痛みも引いたのか、動こうとする。俺は待ったをかけた。  
「待ってください。騎乗位だと負担が大きいでしょう。俺が動きます」  
俺の言葉を素直に聞いてくれたのか、鶴屋さんは力を抜いて身を委ねてきた。  
「キョンくん、優しくしてねっ」  
俺は上下を逆転させると、正常位の体位をとった。  
 
「いきますよ」  
了承を得て、俺はゆっくりと動きだした。  
鶴屋さんは自分の腕を口で甘噛みして、声がもれるのを防いでいる。  
そんな鶴屋さんを見て、思わず口から言葉が出る。  
「鶴屋さんって、案外かわいい人なんですね」  
俺の言葉に、耳まで真っ赤にしてうつむく鶴屋さん。  
いつもの元気さは鳴りを潜め、鶴屋さんはひとりの女の子になっていた。  
 
鶴屋さんの胸をそっと包み、優しく揉む。  
「んっ」  
目を閉じ、甘い吐息を漏らす。  
目尻からこぼれた涙が、長い髪に吸い込まれていった。  
鶴屋さんに配慮して、俺はゆるゆると挿入を続ける。  
鶴屋さんの中はあったかくて、包み込まれるような母性を感じていた。  
 
「キョンくん、もっと、速くしても、いいよっ」  
あえぎ声を押し殺していた鶴屋さんが、腕から口を離して途切れ途切れに言う。  
長い髪の感触を楽しんでいた俺は、鶴屋さんのリクエストに応えて速度を上げる。  
「はふっ、んんっっ」  
腕を口に押し当て声を出すまいと、必死になる鶴屋さんが微笑ましい。  
さっきまでの笑いながら責め倒す姿とはまた違って、恥じらう姿は新鮮で  
俺の性欲を刺激し続けた。  
 
俺の主導で鶴屋さんを感じさせていたが、そろそろ射精したくなってきた。  
腰を動かしながら、鶴屋さんにささやきかける。  
「鶴屋さん、俺、もうそろそろ……」  
「んふっ、いいよっ、はぁっ、あたしといっしょに、イこうっ」  
鶴屋さんは唇の形に赤くなった腕から口を離すと、下唇を噛んで耐えだした。  
俺も気を抜けば声が漏れそうなので、歯を食いしばる。  
快感に耐えるふたりをよそに、快感を求める部分は意思と関係なく卑猥な音を立て続ける。  
そして、絶頂はすぐにやってきた。  
「あたしもうダメっ!」  
小声で鋭く叫んだ鶴屋さんは、腕で俺の頭を掻き抱き、唇にむしゃぶりつく。  
「キョンくんっっ!!」  
声を俺の口の中へ放り込むように息を吐き、体を跳ねさせた。  
「んんっ!」  
口をふさがれた俺も、鶴屋さんの口へ息を押し出すと、そこが限界だった。  
精液が一気に弾け、鶴屋さんの中を満たしていった。  
 
鶴屋さんはぐったりして、マットの上に横たわった。  
俺もペニスを抜いて、腰をつく。鶴屋さんの膣からピンク色の精液があふれ出す。  
それにしても、キスをいちばん最後にするだなんて、鶴屋さんらしいな。  
俺はなんとなくそう思った。  
 
『はあっ、あんっ』  
事後の物憂げな雰囲気を味わっていると、お隣さんから妙な声が聞こえてきた。  
くぐもっていてよく聞こえないが、鶴屋さんが出してた声に似てるな。要するに、あえぎ声だ。  
『う……あっ、キョン……』  
うげっ。今のって俺の名前だよな。もしかして、俺がいることがバレたのか?  
だが、続いて耳に届いた声に、俺は脱力感を覚えた。  
『これがキョンの匂い……』  
なにやってんだハルヒ。  
「あららっ、ハルにゃん、キョンくんの服でオナニーしてるっさ」  
目をパッチリ開け、覚めた鶴屋さんが、寝っ転がりながら面白おかしい声を出す。  
想像図として、俺のトランクスの匂いを嗅ぎながら、ブルマに手を這わせるハルヒの姿が浮かんだ。  
おそらく制服に裏縫いされてる名前を見たんだろうが、授業中にそんなことするなんて、  
「俺や鶴屋さんより、よっぽど変態じゃねえか」  
「くぷぷぷっ」  
俺のつぶやきに、手で口を押さえて笑いをこらえる鶴屋さん。  
『キョン……ああんっ』  
そんなことを言われているとはつゆ知らず、あえぎ声を上げるハルヒ。  
しかし、授業中であるということを少しは考えたほうがよかったな。  
『涼宮さんどうかしたの?』  
『わひあっ!?』  
さっきの女子が戻ってきて、倉庫の外から声をかけてきた。  
ばたばた騒がしい音がして、扉の開く音がする。  
『な、なんでもないわよ』  
『でも顔が赤いのね。午前中休んでたんでしょ? 大丈夫?』  
『平気平気。ちょっとお手洗いに行って顔冷やしてくる』  
扉が閉まり、バレーボールが遠くで跳ねる音だけが残った。  
 
「ハルにゃんのオナニーしてる声、すごかったね」  
ハルヒがいなくなってから、ハルヒの慌てふためいた声にふたりで思い出し笑いを散々したあと  
鶴屋さんが俺を上目遣いに見ながら、言ってきた。  
そんなことをさっくり言われても、どう答えればいいのやら。  
しかも俺がオカズときた。複雑な心境としか言いようがない。  
 
「うふふふん? どこが複雑なのかなっ? そこは単純みたいだけどっ?」  
鶴屋さんがほっそりした指で指したのは、俺のペニスだった。  
ハルヒのあえぎ声に反応してしまい、びんびんに勃起している。  
「こ、これはその、うっ」  
俺の言葉を鶴屋さんはペニスへのデコピンで中断させてきた。  
鶴屋さんはそれからスカートをめくって、自分の陰部を眺める。精液が見えた。  
大げさに嘆息しながら、鶴屋さんは俺にじとっとした目を向けてくる。  
「承諾もなく中出しされちゃったしなあっ。赤ちゃんできたらどうすんのっ?」  
「えっ?」  
全然考えてなかった。  
呆然とする俺に、鶴屋さんは一転笑って手をぱたぱたさせる。  
「なーんてね、嘘うそっ。余裕で安全日だよっ」  
笑いながらも、小さいクギを刺してきた。  
「でも女の子にはそういうのがあるんだから、少しは考えてしなきゃダメだよっ?」  
「はい……」  
返す言葉もありませんです。  
 
「そういうわけで、しようっ!」  
「は?」  
唐突に立ち上がって、からっとした声で鶴屋さんは宣言した。  
おっしゃる意味がよくわかりませんが。というか股の間から精液が滴り落ちるのがエロいです。  
「あたしはまだまだ満足してないよっ」  
どこをどうやったらこんなに元気になるのか、俺にも秘訣を教えて欲しい。  
「キョンくんに責められるのも気持ちよかったけど、次はあたしの番だっ!」  
「マジですか」  
普段の俺だと、少し休まないと絶対無理だ。今は平気だけど。  
「大マジっ! さあさ、キョンくんマットにあお向けになるにょろっ」  
鶴屋さんには敵わないな。  
あと五回はすることを覚悟しつつ、俺は鶴屋さんとの逢瀬を前向きに楽しむことにした。  
 

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