その日、文芸部の部室には俺と長門の二人しかいなかった。  
 
朝比奈さんは、俺が部室に来る前に用事があると長門に告げて帰ったそうだし、  
古泉はさきほど少し顔を出して「機関の会合がある」とか言って帰っていった。  
 
そしてハルヒはというと、授業が終わると「体調が悪いから帰る」と俺に告げた。  
俺は冗談で「もしかしてあの日か?」などと問いかけたら、  
どうやらその通りだったらしく  
「もう、やんなちゃうわ。なんで毎月毎月来るのかしら」  
と、不機嫌極まりないといった体でさっさと帰っていった。  
後から考えれば、我ながらひどくデリカシーのない発言をしてしまったものだ。  
相手があのハルヒだったのがまだ救いだ。  
このことをもって、男である俺がその当事者となりえない事柄について安易に話題  
を振るべきではないと反省したしだいである。  
 
ただ、目の前にいる宇宙人製有機アンドロイドにも、そのような生理的現象がある  
のかどうか気になるところではあるのだが。  
 
「朝比奈さん、なんの用事があるのか言ってたか?」  
ふと気になって訊ねてみる。  
「規定事項、と言っていた」  
なんだと。  
「その行動パターンから、おそらく口を滑らせたものだと推測できる」  
規定事項…その最近よく耳にするようになったその言葉がなにか嫌な予感を告げる。  
また妙な事件がおきているのではないだろうか。  
「心配はいらない、朝比奈みくる自身には無関係なこと」  
じゃあ朝比奈さん以外にはなにか関係があるのか?  
「……」  
長門はしばらく俺を黙って見つめた後、手に持っていた本に目線を移し、何も答え  
ることは無かった。  
 
まあ、何かあるのなら俺があわてようが、このままぼーっとしていようがきっとそれは  
変わらずやってくるのだろう。  
だが、その「何か」があらかじめわかっているのなら、事前にその対処方法をレク  
チャーしておいてもらいたいものだ。  
頼むぜ、長門よ。  
 
あせりともあきらめともつかない落ち着かない感情を抑えながら俺はその時を待った。  
なにも起きなければ万々歳なのだが、きっとそうはならないだろう、ここしばらくの間  
に貯めた経験値がその予感の的中率を上げている。  
 
そして、それは起きた。  
 
窓から差し込んだ淡い夕日に照らされ、いつものようにパイプ椅子に座り本を読ん  
でいる長門の姿が不意にぼやけて見える。  
なんだ?かすみ目か?  
そう思った瞬間、長門の体が砂のような結晶と化し床に散らばっていった。  
ゴトリという音をたてて、今さっき長門が手にしていた分厚い本が床に落ちる。  
「長門!」  
俺は悲鳴にもにた声を上げて、その『かつて長門だったもの』に駆け寄ろうとして立  
ち上がった。  
だが、長門はそこにいた。  
パイプ椅子に座り相当な狼狽振りを表現していると思われる俺の顔を見上げている。  
……錯覚か?  
「錯覚ではない」  
まったく抑揚のない声が今起きた現象の解説を始める。  
改めて長門の姿を見止めると手に持っていたはずの本はそこには無く、先ほどゴト  
リと音を立てたときのまま、床に落ちていた。  
「わたしの情報結合が解除されようとしている」  
情報結合の解除、それはあの朝倉涼子をこの世界から消し去ったときに使ってい  
た言葉だ。  
 
「どういうことだ」  
「先の朝倉涼子との戦闘で彼女はわたしの体の中に時限起動式の情報結合解除  
プログラムを埋め込んでいた、わたしはそれが実際に起動するまでその存在に気  
づくことができなかった」  
それが今、起動したと言うのか?  
「そう、正確には一時間ほど前にその兆候を掴んだ、わたしはその事象の解析を行  
い、情報結合が完全に解除される前に防御および自己修復プログラムを生成し実  
行した」  
まったく理解を超えた世界だ。  
だがちょっと待て。  
「お前はさっき『情報結合が解除されようとしている』と言ったな。つまりそれは今だ  
に現在進行形ということなのか?」  
長門は質問に答える代わりに説明を続けた。  
 
「彼女のプログラムには二重の仕掛けがされていた」  
 
一つはプログラム自体の発見を妨ぐもの。そのプログラムは統合思念体が扱う情  
報とはまったく異なる形式、すなわちこの体を形成している有機細胞の一つに偽装  
するという形で私の体に埋め込まれていた。これは通常の情報スキャンでは発見す  
ることが出来ない。  
そしてもう一つは自己増殖型プログラムの同梱。情報結合解除プログラムの実行  
が妨げられた時、そのコピーを生成して周りの細胞に感染させるように制御されて  
いた。  
 
「今は防御プログラムの実行速度が感染速度を上回っているが、このままプログラ  
ムの完全駆除ができなければやがてこの体を維持することが困難になる」  
 
俺の頭では、すべて理解することは出来なかったが、かなりやばいということだけは  
わかる。  
 
「おい、それはこのままだとおまえが死ぬと言うことじゃないのか?」  
「有機生命体としては死を意味すると捉えてかまわない」  
淡々と説明する長門。  
「それはいつだ?」  
「プログラムの実行スピードから逆算すると、約三時間後」  
……冗談だろ。  
「それでっ!その朝倉のプログラムとやらを完全に駆除することは出来るのか?」  
「……」  
しばらくの沈黙。  
「どうなんだ!」  
俺は怒鳴るように言った。長門を死なせるわけにはいかない。  
俺を助けてくれたことが原因の一つになっているのならなおさらだ。  
「か……」  
か?  
「……ある条件がそろわない限り不可能」  
珍しくセリフを言い直す長門。  
「ある条件てなんだ?」  
長門は俺の問いかけには答えず、とんでもないことを言い出した。  
 
「わたしがこのまま情報結合が解除されても問題は無い」  
 
な…  
 
「統合思念体にはわたしの生成情報と、わたしが今まで観察して得られたログ情報  
がアーカイブされている。それによって新たに私の体を生成し、ログ情報を適用す  
れば引き続き涼宮ハルヒの観察を続けられる、また朝倉涼子の時のようにこの学  
校の在籍情報などの改竄をしなくてすむ」  
 
何を…  
 
「有機生命体を模倣し生成されたわたしが観察して得た情報と統合思念体が扱うロ  
グ情報には形式の違いがあるため、相互変換時に僅かな情報の欠落が発生する。  
が、無視できるレベル」  
 
何を言っている…  
 
「結果として、わたしの固体としての連続性は失われるが、地球上でそれを認識でき  
る人間はほとんどいないと推定される」  
 
「長門!」  
俺の中のなにかがぶちきれた。  
「お前何言ってんだ!」  
「……」  
気がつくと俺の両手は力いっぱい長門の肩を掴み、いまにも押し倒しそうな格好に  
なっていた。  
長門は黙って俺を見上げる。  
「お前わかっているのか、お前が消えて、その代わりに新たな『長門有希』がここに  
現れても、もうそれはお前じゃない」  
「……」  
「今のお前と記憶がどのようにその新長門に引き継がれるのか俺にはわからないし、  
お前の親玉とどういうつながりがあるのかわからん。だが、新長門は自分がおまの  
コピーであることを認識しているはずだ。違うか?」  
「違わない」  
そんな長門と俺はどう向き合えばいいというのだ、いまの長門を失った上で。  
誰が何と言おうと認めん、そんなこと認めるわけにはいかない。  
「だったらなぜ、お前はそんなこと俺に言う、なぜお前はそんな選択をしようとする  
んだ」  
「……」  
長門は表情を変えない、だがその瞳の奥に確かな憂いを感じ取ることができる。  
「わたしには選択権がない」  
 
俺は、言葉をなくした。  
そうだ、ここにいる『長門有希』は、情報統合思念体という俺たちには想像もつかな  
い存在の、一インタフェースにしか過ぎない。  
こいつの行動も、生死さえも、そいつの胸先三寸で決定されることなのだろう。  
なんということだ、長門がいま俺に告げた、たわごととしか言いようの無い言動もぜ  
んぶそいつの考えであり、長門はそれを人間の言語に変換して伝えたに過ぎない  
のだ。  
長門は、いまこの俺の目の前にいる小柄な少女は、何を思ってその言葉を発して  
いたのだろう。  
俺の怒りに任せた反論をどう受け止めたのだろう。  
胸が、締め付けられる。  
 
「あなたにお願いがある」  
返す言葉がみつからないまま俺は黙って彼女の言葉を聞く。  
「新たに私と同型インタフェースがこの学校に現れたとき、あなた以外に現在のわた  
しとの差異を発見できる者がいるとしたらそれはおそらく」  
俺は該当するであろう人物の顔を思い浮かべる。  
「涼宮ハルヒ」  
だろうな。朝比奈さんや古泉も気づくだろうがそれを口外することはないだろう。  
「だから、あなたにはそれを彼女にできるだけ気づかせないようフォローしてほしい」  
長門、お前は、お前という『人間』は本当にそれでいいのか?  
このまま地上から消えちまって、お前のそっくりさんが何食わぬ顔でやってきていつ  
もの日常を続ける。それでいいのかよ。  
 
長門…  
 
「あなたしか頼める人はいない」  
絶望的な気分から、彼女のめったに発することの無い『お願い』に対して思わず肯定  
の返事をしそうになる。  
 
だが、不意にさっき聞いた長門の言葉を思い出した。  
長門はなんて言った?  
『ある条件がそろわない限り不可能』  
ということは条件がそろえば可能だということだ。  
 
「長門、朝倉が仕掛けたプログラムを完全に除去するための条件はなんだ」  
「……」  
長門はわずかに困惑の表情を見せたような気がした。  
「たのむ教えてくれ、俺はお前が消えてしまうなんてことはさせたくない」  
それに俺にはどうしても理解できないことがある。  
なぜ朝倉は自分が消えた後になってまでお前を消そうとする。そのことに何か意味  
があるのか?  
まさか自分が消されたことの恨みなんてことはないだろう。  
 
「朝倉涼子はこのプログラムを自立行動の範囲の中で作成したものと考えられる。  
統合思念体にアーカイブされている朝倉涼子のログにはこのプログラムについてほ  
とんど記載されてないことがわかった」  
 
だが、ログをスキャンするうちにこのプログラムの停止を行うためのキーが存在す  
ることがわかった。情報の存在形態から、故意にその情報を入力しておいたものと  
判断できる。  
 
「プログラムにキーを投入するためにはある行動が伴わなければならない。それが  
朝倉涼子の真の目的だったと考えられる」  
 
「ということは、朝倉ははじめからお前を消そうとしていたわけじゃなかったんだな」  
長門は首をわずかに動かして肯定のしぐさを見せる。  
「キー投入の行動を涼宮ハルヒが知る可能性に対してわたしが所属する統合思念  
体の意識は危機感を抱いている」  
だから、長門にこのまま消えろというのか?ふざけるな!  
だが、なんでそこでハルヒが絡んでくるんだ?  
 
「で、結局その行動とはなんだ、俺にもできることなのか?」  
「あなたの協力が不可欠」  
おっと、そう来たか。  
「まさか俺の命と引き換えとかか?」  
朝倉があのときやろうとしたのはまさにそれだった。  
「違う、あなたには実質的な被害は発生しないと考えられる」  
なんか、えらく婉曲な表現だな。  
 
「朝倉涼子のプログラムは私の体内の卵細胞に偽装していた」  
 
卵巣に存在する卵細胞は成熟すると定期的に外へ排出される。これがプログラム  
起動のトリガーとなった。  
そのプログラムは強力な暗号化が施され地球人類的なタイムスパンでは到底解読  
不可能。  
だが一つだけ停止する方法がある、それは外部から特定の遺伝子パターンを持っ  
た細胞をキーとして投入し、その偽装卵細胞に結合させること。  
結合が行われればその時点ですべてのコピーも含めプログラムの実行は停止し、  
自動的に消去される。  
 
「そして、その特定遺伝子パターンの持ち主が、あなた」  
 
俺は右手の親指と人差し指でこめかみを押さえながらうずくまる。  
えーと、細胞の結合がなんだって?  
朝倉はいったい何を考えながらそんなプログラムを作ったんだ?  
「な、長門。あー、そのなんだ、その細胞の結合とやらをするにはどうすればいいん  
だ、細胞の移植手術でもするのかなぁ」  
「必要ない、人間が本来持っている機能だけで実行可能」  
やはり、長門に対してボケは通じないらしい。  
などとふざけている暇はなかったのだ。  
それしか方法がないのなら、長門の親玉がなんと言おうとそれを実行するしかない、  
のだが。  
 
「長門、お前」  
と言いかけた俺の言葉をさえぎって長門が言う。  
「統合思念体の意識に迷いが生じている」  
迷い?  
「このままわたしの消滅を待つのか、プログラムの停止を実行するのか」  
さっきまで消す気まんまんだったんじゃねえのか、そいつは。  
「この数分のやり取りで、わたしが消滅することにリスクがあることを認識した」  
俺は黙って長門を見る。  
「あなたは、わたしが消えることによって涼宮ハルヒに統合思念体の存在を知らしめ  
る行動に出るかも知れない」  
そうだな、もしそうすればあいつは自身が持っているわけのわからん不思議パワー  
で長門を取り戻してくれるかも知れん。  
だが、その賭けによってこの世界が一変してしまうかも知れん。俺たちにとってもリス  
クだぜ。  
 
「統合思念体の意識の多数はあなたに行動の選択を委ねると言っている」  
いいのかよ、それで。  
だが、俺の考えは一つしかない。  
いくら考えても長門消滅の選択肢はありえない。  
 
しかし、ここで一つどうしても聞かなければならないことがある。  
「長門、お前は、お前自身は、どう思っているんだ?」  
長門が俺を見つめる、覗き込むとそのまま宇宙に放り出されそうな透き通る目で。  
永遠とも思える沈黙の後、長門は答えた。  
「わたしは、あなたを受け入れても良いと考えている」  
思わず俺は目の前の少女を抱きしめていた、  
……愛しい。  
自分の生死ではなく、俺を選択すると言ってくれた長門がただ、ただ、愛しかった。  
 
もうあまり時間がない。  
ここは、いつか来たことのある長門のマンションの客間である。  
布団が敷かれ、その上に長門が正座で座っている。  
心なしか上気して見えるのは、これから行われようとしている行為を恥ずかしがって  
いるわけではなく、拡大を続ける情報結合解除プログラムとの攻防によるものらしい。  
あと半時もすれば動くの困難になるとのことだ。  
躊躇している暇はない。  
ないのだが…どうもさっきから脳裏に浮かぶハルヒの怒り顔が気になる。  
だからなぜここでハルヒが出てくるんだ。  
「長門、本当にいいんだな」  
最後にもう一度だけたずねる。  
「いい、来て」  
頭がくらくらする、もうだめだ。  
 
俺は順に長門が着ていた制服を脱がし、そして何の飾り気もない下着を取って、  
ついに長門は一糸まとわぬ姿となった。その姿を見てまたもくらっときた。  
布団の上で仰向けに横たわる少女の透き通った肌、美しい姿態に目を奪われる。  
自分も服を脱ぎ捨て、覆いかぶさるように長門と向き合った。  
こいつはキスの意味を知っているのだろうか?  
そんな疑問も杞憂におわるほど自然に唇を重ねる。なんでも機用にこなす奴だ。  
長門の腕が俺の背中を抱え込むと、二人の体が密にかさなり、彼女の体温を全身  
で感じることができた。  
「大丈夫、問題無い」  
何の問題が無いのだろう、準備完了ってことか?  
長門は自ら体を動かし、俺のモノとの位置を合わせる。  
「長門…」  
わずかに首を縦に動かして肯定の仕草を示す。  
俺は手探りでそこを探り当てると進入を試みる。  
「……ん」  
驚いたことに長門はほんの少し聞こえるか聞こえないかわからないような喘ぎ声を  
あげた。  
 
長門の中は暖かく、それは発熱の性だけじゃないと思われた。  
その状態で、俺たちは互いを見つめ合う。  
ずっとこのままでいたい衝動に駆られるが…  
「動いて」  
そうだ、これは時間との勝負なのだ。長門の命運がかかっている。  
だが、はっきり言って俺はそのときそのようなことを悠長に考える余裕は無かった。  
なんとなれば、俺のほうがその行為に夢中であったからだ。  
腰を前後させればそれだけで快感が訪れる。  
そこの部分だけでなく触れ合いこすれあう肌が全体が長門のの存在を感じて気持ち  
を昂ぶらせた。  
長門は、その間何も反応しえていないかのようにも思えたが、決してはそうではな  
かった。  
声を上げることこそ無かったが、明らかに呼吸の回数を増大させ、目を閉じている  
時間が瞬き以上に長くなっていた。  
 
そして、ついにその時をむかえる。  
「長門……」  
「……」  
うすく目を閉じた長門の顔を確認してから、俺は目を閉じて一気にそれを長門の中に  
放った。  
 
しばらく、声が出ないほど息を乱した俺は長門の上に覆いかぶさったまま倒れこんだ。  
どれくらいの時間がたった後なのだろうか、長門は結果の報告を俺に伝える。  
「情報結合解除プログラムの停止確認、わたしの中のすべての細胞から該当プログ  
ラムのオリジナルおよびコピーは削除された」  
長門の腕はまだ俺の背中にまわされたままだ。  
これですべての事は終わったはずだ、だが…  
もう一度長門のキスしてもいいものだろうか。  
 
 
翌日、俺は普段と何も変わりなく授業を受け、普段と何も変わりなく放課後を迎えた。  
ハルヒは、昨日とはうってかわっていつもの元気オーラを放っている。  
そんなハルヒの顔を見るたびに、こみ上げる後ろめたさはいったい何なんだろう。  
昨日のことは誰にも知られたくない、特にこのハルヒにだけは絶対に知られてはい  
けない気がする。  
 
それなのに、部室に向かう途中で出くわした古泉が俺と顔をあわせるなりこういった。  
「我々は、あなたの選択を尊重しますよ」  
何のことだ? などとはもちろん言わない、何をどこまで掴んだのかはわからないが、  
余計なことを言えばボロを出すだけだ。  
よってこの会話は終了。  
その追い討ちをかけるように、部室でメイド服に着替えた朝比奈さんは俺と目線を合  
わせずこう言った。  
「えっと、キョン君、あの、その、そ、それは規定事項なので、き、気にしないでください」  
それだけを告げると奥に引っ込んでお茶の用意を始めた。  
あ、朝比奈さん、「それ」って何ですか「それ」って……  
俺は、一つ大きなため息をついた。  
 
一足早く来ていたハルヒはいつものように団長席にすわってパソコンをいじってる。  
どうせまた妙なサイトを巡回しているのだろう。  
さすがにハルヒは大丈夫なようだ。  
 
そして、あいつは、長門は今日もそこにいた。  
いつもと変わらず、いつものように黙って本を呼んでいる。  
俺が入ってきても何も反応しないということもいつもの通りであるのだが、それはそれ  
でほんの少し残念かな。  
 
ただ、その日の帰り、解散間際に俺のところに来て、俺だけに聞こえる音量でこう  
言った。  
「昨日の行為は、世間一般の常識で定義されている『情事』とは違う」  
突然のことで、何を言いたいのかわからず無言でいると、長門はこう続けた。  
「だから、あなたはそのことについて気に病む必要はまったくない」  
もしかして、今俺が感じてる後ろめたさに関して、こいつなりに気を使ってくれている  
のか? だったらもう少し言い方が……  
いや、やめておこう、この場合余計な言葉は不要だ。  
朝比奈さんや古泉たちがどんな情報を得ていようともあの行為を実行し経験したのは、  
他ならぬ俺達二人だけなのだから。  
「そうかい」  
俺は、同意の返事をしておく。  
「そう」  
長門もまた、同意の返事を返す。  
 
そしてまた明日もこのメンバーでの日常が続くのだ。  
 
END  
 
 

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