囁かれし者  
 
金曜の夜、俺はレンタルビデオなるものを見ていた。  
世間ではとっくに忘れ去られている映画を観てまったりとしていると、  
レンタル屋の袋の中に借りた覚えないアニメのDVDが入っているのに気付いた。  
慌てて明細をチェックしてするが載っていない。  
混んでいたため、慌てた店員が返却済みのDVDを誤って入れた様だ。  
 
一緒に返しておけばいいだろう、この明細があれば基本的に向こうのミスだから  
料金を取られることもあるまい、ついでに観ておこう  
……  
観終わった後、頭の隅に上手く表現できない何が引っかかった。  
 
携帯が鳴った、掛けてきたのはハルヒである。  
「涼宮ハルヒ!!」  
ジグソーパズルが独りでに完成していく様な錯覚を覚えた。  
少々危ない人が天啓を受けたなんて言っているのはこんな感じなのかなーと  
思っていると、  
「ちょっとキョン、聞いてるの?」  
ハルヒの声に我に返る。  
なんのことだったかなー  
声がひっくり返るのを必死に押さえながら訊く  
「やっぱり聞いてない!、土曜日のパトロールは中止、判った」  
了解した旨を告げると電話はあわただしく切れた。  
 
 
週が開けて、放課後部室に向かう。  
ノックするも返事がない、ドアを開けるといつもの様に部屋の隅で  
長門が本を読んでいた。  
他の連中は所用のため先に帰った事を告げると再び本に目を落とす。  
 
なあー長門  
俺は、思い切って週末の思い付きを話してみた。  
 
…………  
俺が話し終わった後、三点リーダー製造機となっていた長門が口を開いた。  
「極めて低い確率ではあるがその可能性は否定できない」  
「その・・・テクノロジーが情報統合思念体からこぼれ落ちた断片的なもので  
あったとしても、人類の手に余るのは事実」  
「そのブラック・・・にアクセスできるのは、特異な存在であるはず」  
「涼宮ハルヒは、日本の女子高生であるが、別の設定が成された場合  
銀髪・碧眼の美少女で、傭兵部隊において大佐の階級と無敵の潜水戦闘  
空母の艦長という肩書きを持つであろうことは、想像に難くない」  
「しかし……」  
しかし何だ  
長門は、俺の顔を見て、きっぱりと言い切った。  
 
 
「テレビの見過ぎ」  
 
糸冬  

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