「普通の人間の相手をしている暇はないの!」  
 
そう言われてあの変人プラス、面がいい女に振られてきた男は、この北高に何人いるだろうね。  
最短は5分とか国木田に聞いたんだが、俺はそいつを哀れだとしか思えねぇ。  
俺でさえ1時間だったのによ。  
一体そいつはなにをしたんだかな。  
 
俺の親友のキョンは至って好みがおかしい。久しぶりに会ったと思えば、国木田が言ってた所を聞くと  
「キョンは相変わらず変な女が好きだからねぇー」  
とかなんとかいってたしよ。確かに変な団体だなありゃ。  
なんだかんだでキョンも、実際好んでSOS団とかやらに行ってる。そのままハルヒとくっついてしまえ。早急にな。  
残るプラスAマイナーとトリプルランクAがあの団には居る。あの団にこの学校の美少女が偏っている気がして俺はままならないね。絶対に理不尽だ。  
そこで俺は思いついた。キョンとハルヒは下校が高確率で一緒だ。その間に文芸部...今はSOS団だな、そういや。その間に若干遅くまで部室に残るAランク者達に出会って即告る。これしかあるまい。  
二人とも気弱そうだし、押して駄目なら揉んでみろ、ともいうしな。断られたら、その時どうにかしよう。  
 
さて、キョンには悪いがお二人のどちらかはかっさらっていくぜ。  
名前は確か...朝比奈みくるさんと、長門ちゃんだったな。  
くうー、あと15分が待ち遠しいぜ。  
岡部よ、さっさと俺達を6限目から解放しやがれっての。  
 
 
 
「ふ」  
俺は限りなく優越感に浸っていた。もうこの先どう考えても俺に青い鳥が舞い降りるに違いねぇ。  
だってそうだろ?断られたとしても友達から、とかそんな感じの話で進めていきゃあ...後日チャンスはまた訪れるしな。  
ああもう駄目だ。気分が高揚MAAAXだぜ。卒倒しちまいそうだ。  
あーもうお前ら、さっさと帰れよ。実行に移せないじゃねぇか。  
...待てよ?全員が教室から出るのを俺が待っていても仕方がないんじゃねぇか?  
キョン達はどうせ変哲な部活を夕日が暮れるまでやる訳だし、  
 
うん。意味ねぇ。  
 
くそっ、あと1時間も暇になっちまった。国木田もいねぇ。  
帰る訳にもいかねーしな.........  
陸上部の女子でも眺めてこよ。  
 
 
テニス部の女子が、「お疲れー」と声を掛け合う頃には、すっかり日が暮れ始めようとしていた。  
ふ、ついに俺の、俺の!幸せの青い鳥が降りてこようとしているぜ!  
適当にいじっていた携帯を俺は閉じ、文芸部withSOS団に向かう。キョンとハルヒはもういないはずだ。  
もう帰る!とかハルヒの声がしたような、してないような気もするしよ。  
ま、キョンが振られたかは知らないが、こっちは問題ねぇ。  
むふふ、むふふ、と俺はそんな声をいつしか漏らしていたようだ。  
そんな気にもなるってーの。  
今回の告白成功率は90%超え間違いねぇからな。無駄に自身があるぜ今回は。確証は全くねぇがな。  
 
 
「きゃああああああ!」  
と、俺はSOS団部室の扉を開けると、そんな朝比奈さんの悲鳴を聞かされた。  
想像してたよりも胸はでかく、下着と羞恥心丸出しの可愛い小柄な天使としか思えないね。  
もったいないと思いつつも、急いで俺は扉を閉めた。...しかしいい裸身を焼き付けたぜ。写メールとっときゃよかったな。  
しかし長門ちゃんがいなかったな。どこにいってんだろうな。図書室はもう閉まってるしよ。  
教室ももう鍵は閉まってるはずだしな。  
 
あ、やっべぇ。国木田に今日借りたエロ本を教室に忘れちまった。  
今からいくか?つーかもう鍵閉まってるだろーし、どうしたもんかね。扉ぶっ壊しちまうか。  
そう思った矢先にポケットに鍵があるのに今更ながら気付いた。  
そういえば日直だったじゃん、俺。  
運がいいのか悪いのか。  
ま、今日は長門ちゃんもいなさそうだし、明日にすっかな、告白は。  
エロ本は諦めねぇよ?今から行くに決まってら。  
 
文芸部からいつもの教室に戻るのにはそうそう時間はかからん。歩いて5分くらいだな。  
適当な事を口ずさみつつ、いつしか鼻歌も自然に呟いていた。  
適当なノリっつーもんで深い意味はこれとてない。  
ま、明日にもチャンスがあるって感じで俺はきっと胸が高鳴ってたんだな。  
あれ?なんかこの扉新しくね?ま、いいや。  
「うぃーす」  
こんな夕方に教室に誰もいるわけねぇが、癖っつーもんは中々とれないもんだ。  
「わ〜す〜れ〜も〜の〜わ〜す〜れ〜も〜..........の?」  
自然と声を止め、ふと目を開けて驚愕しちまった。人がいるじゃねーか。しかもキョンだと。何してんだてめぇ。  
...あれ?その手元に寄り添ってる女の子は...  
「どわっ?!」  
俺は訳が解らず、半端なバランスポーズを取ってプラモデル顔負けの静止をしていた。  
あれ?なんで長門ちゃんがキョンに寄り添ってんの?  
キョンよ、なんで胸触ってんの?  
なに?この見た事あるようなないようなデジャブ。  
えーと、抱き合ってるプラス、このシチュエーションの答えに辿り着くものといえば...  
 
 
うん。あれしかないね。  
 
 
「........................すまん」  
俺は普段だらしないネクタイを奇麗に閉め直し、咆哮してやった。  
「ごゆっくりいいい!.....」  
キョンよ、お前って奴は案外行動が早かったんだな。初めて知ったよ親友よ。  
もう走る足がとまんねぇよ。  
あれ?涙で前が霞んで見えないや。  
 
もう朝倉でいいや。思えばあいつもトリプルランクAAAだ。  
明日目があったら即いっちまおう。男として砕け散って見せよう。  
しかと焼き付けよ。これが男の生き様ってもんを明日は見せてやるぜ!  
 
 
-翌日-  
 
「えー、急な話だが、朝倉が転校する事になった。カナダだそうだ」  
 
...  
 
.......  
 
...........  
 
よし、パスポート作ってくるか。岡部よ、俺もう早退します。  
日本よさらば。  
                              
                            end  
 

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