冷たい。というか痛い。なんだこの嵐は。  
 
「何してるのよキョン!早く歩きなさい!」  
「少し弱まってからにしないか?これじゃさすがに厳しい」  
「駄目よ。今はじっとなんかしてられないわ」  
 
それはいいんだが。なんで俺を巻き込むかね。  
 
俺の手首を掴んだままずんずん前進していくハルヒ。  
 
「…やっぱり。クルーザーが無いわ!」  
「裕さんが乗っていったのか。ってことは犯人は…おわっ!」  
 
強風に煽られる。おいおい、ここから落ちたら痛いじゃ済まんぞ。  
第二の死者になるのはご免だ。  
 
ハルヒの手を強く握る。落ちたとしてもコイツが一緒なら  
なんとなく助かりそうな気がする。  
…にしても。まさか本当に殺人事件が起こるとはな。これもコイツが望んだからか?  
いや、コイツが本心からそんなこと…  
 
「見て、キョン!」  
 
なんだどうした。  
 
「あそこに誰かいる!」  
「…誰もいないぞ」  
「確かに居たわ!」  
「いや、でも」  
「きっと真犯人よ!とっ捕まえるわよ!」  
 
そう言って俺の手を引いて走り出すハルヒ。それに引っ張られる俺。  
つくづく俺って巻き込まれ型人間。  
 
「おいおい。ここを通るのは無理だろ?」  
 
一歩踏み外したら下までまっさかさまだ。  
 
「でも、あそこに行くにはこの道しかないわ」  
「だからって…」  
「いいから!行くのよ!」  
 
…落ちなきゃいいんだがな。  
 
「ハルヒ、絶対手を離すなよ!」  
「アンタも!足踏み外さないでよね!」  
「…にしても、本当に見たのか?その真犯人ってやつ」  
「そうよ。アレはきっと…キャッ!」  
「お、おいハルヒ!」  
 
 
悪い予感ばっかり当たるんだ。俺にはなんか憑いてるんじゃないのか?貧乏神的なものが。  
 
足を踏み外すハルヒ。当然手を握ってるから俺も落ちるわけで。  
無意識のうちにハルヒを引き寄せ、俺が下敷きになる形に。  
自分の身を呈して女の子を守るって結構憧れてたんだよな。  
まさか実際にそんなことになるとは。ってこんな事言ってる場合じゃ…無い…かも…  
 
 
「…キョン?」  
「…」  
「キョン!」  
「…」  
「ねぇ、キョン!」  
「ぁ…ぐ…」  
「生きてる!?」  
「…多分な…」  
 
しかしこのまま雨に濡れ続けるのもヤバいな。どうしたもんか。  
 
「あ、あれ!洞窟があるわ。あそこに避難しましょ!」  
「そうするか……いっ!?」  
「どうしたの!?」  
 
右足に力が入らない…ってなんか曲がっちゃいけない方向に曲がってるんですけど。  
 
「ちょ、ちょっと。これ…!」  
「…折れたみたいだ。肩貸してくれ」  
 
自分でも驚く程冷静だったな。痛みもあんまり感じなかったし。  
これなら中学の時、指折った時の方が万倍痛かった。  
 
 
とりあえず洞窟に入り、びしょびしょになったTシャツを絞る。  
 
「なぁ。お前本当に見たのか?人影」  
「…わかんない。いて欲しいって願ったから幻覚見ちゃったのかも」  
「居て欲しい?真犯人に?」  
「…うん」  
 
なんでまたそんな物騒なもんが居て欲しいんだ。  
 
「ねぇ、今から言う事は全部私の想像なんだけど…。聞いてくれる?」  
「…言ってみろ」  
「圭一さんはね。裕さんに刺された時は、たまたま手帳によって助かってたの。気絶しただけ」  
「じゃあ、俺達が見た圭一さんの死体は?新川さんだって確認したぞ」  
「…最後まで聞いて」  
 
怒ってるんだか、悲しんでるんだかよくわからない表情で俺を戒める。  
 
「ドアを破ったとき、私真っ先に圭一さんに触ったわよね?…まだ暖かかった」  
「…」  
「つまり、死んでからほとんど時間が経って無いってこと。うぅん。死んだのは、あの時だったの」  
「…どういう事だ」  
「気絶してた圭一さんは、私達がドアの向こうで大声で呼んだ時に気がついた。  
 でも、意識が朦朧としてた圭一さんは鍵を掛けた。…そして次の瞬間、」  
「おいおいおいおいおい!ちょっと待ってくれ。ってことは何か?圭一さんはドアの下敷きになって  
 ナイフが刺さって死んだと?つまり犯人は…」  
「…ドアを破った新川さん、古泉君…それと…」  
 
俺、か。…なんてこった。偶然とはいえ、人一人殺しちまうとは。  
 
「でも!これは私の想像。うぅん。多分間違って…」  
「…ねぇよ。そう考えると全ての辻褄があう」  
「…」  
 
だから真犯人の存在を望んだのか。俺達じゃなくて、他の。  
 
「ねぇ、キョン。今私が言ったことは忘れて欲しい。誰にも言わないで」  
「…」  
「嫌なの。アンタが……いなくなるなんて」  
 
言葉を選んだような微妙な間があった。  
 
「嫌。絶対嫌よそんなの!」  
「おい、ハルヒ…」  
「嫌…嫌…」  
 
大きな目から涙が溢れる。俺の胸に顔を埋めながら震えるハルヒ。  
 
「許さないわよそんなの…。アンタはずっと、私の傍にいてよ…」  
「…いるよ。俺は」  
 
顔を上げるハルヒ。そっと近づいて、唇を重ねる。  
…これで2回目か。あの時はまさかそんな時がくるとは微塵も思わなかったな。  
 
「キョン…」  
 
紅潮した目で俺を見上げるハルヒ。  
いつぞやの空間なら次の瞬間俺の部屋に飛ばされたがここは現実世界。飛ばされない。  
…つまり。続きが出来るって訳で。  
 
ハルヒのシャツと半ズボンを脱がして下着姿にする。  
 
「…なんか、恥ずかしいわね」  
 
と、顔を真っ赤にして言う。…なんていうか、かわいい。正直、たまりません。  
 
「あ」  
「…どうしたの?」  
「足折れてるからズボン脱げねぇ。…脱がしてくれ」  
「……バカ」  
 
カチャカチャをベルトを外すハルヒ。中々上手くいかないようだ。  
その間にブラを外す。  
 
「…あんまり見ないでよ」  
 
洞窟内が薄暗いのが残念だ。光ゴケでも生えてりゃいいのに。  
 
 
パンツもハルヒに脱がしてもらい、俺もハルヒのパンツを脱がす。  
お互い素っ裸だ。…これは、恥ずかしい。  
 
 
「ねぇ…キョン」  
「本当に…いいのか?」  
「………うん」  
 
 
そして俺は、ハルヒの―――――――――  
 
 
「おーい!お二人方!大丈夫ですかー!?」  
 
「あ、古泉君!」  
「こっちだ!古泉!」  
 
よかった。これでやっと脱出できる。なんせ事が終わった後ハルヒと気まずいのなんの。  
 
「心配しましたよ。大丈夫でしたか?」  
「大丈夫…じゃねぇな。足、やっちまった」  
「これは…。すぐに屋敷へ行きましょう。おぶって行きますよ」  
 
いつもならなんとしても拒否する所だが、場合が場合だ。  
 
屋敷に戻って妹や朝比奈さんに散々心配された。長門でさえ心配そうな表情を浮かべてたぐらいだからな。  
ハルヒの絶対安静!の指示通り俺は部屋で寝ることに。…今頃麻雀でもやってるんだろうなぁ。  
 
軽く、部屋がノックされる。  
 
「開いてるぞ」  
「失礼します」  
「…なんだお前か」  
「えぇ。少しお話したい事がありまして」  
 
何か、いつものスマイルに消費税分だけ意地悪さが入ってるように思える。  
 
「…犯人は俺達だってことか?」  
「おや?気づいてらしたんですか」  
 
大して驚いた表情もしない。  
 
「まぁな」  
「では…どうします?僕達、殺人犯になっちゃいましたね」  
「でもな。俺は本当の真犯人はお前だと思ってる」  
「…ほぉ。是非理由を聞きたいですね」  
「なぜなら…」  
 
 
 
こうして、みんなを集合させた後ハルヒが名探偵っぷりを見せ付けて(全部俺が気づいた事だ)  
古泉が仕組んだ殺人事件は終わりを迎えた。  
 
…あれ?じゃあアイツが見た人影って…?  
 

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