――─────────  
(軽快な音楽に合わせて、六人がポジションにつく。)  
 
ハルヒ「SOS団メンバ−紹介ぃっ、みんな用意はいいっ?」  
 
 
キョン「回りの意見も聞きもせず、プラス志向で進んでく。  
    イタいの上等、不思議好きだぜ。こいつがリーダー、ハルヒ!!」  
 
 
ハルヒ「読書が好きで繊細で、無口な上に背が低ぅい!  
    けれどそれがとってもキュートな、彼女が一番努力家、有希!!」  
 
 
長門 「SOS団の暴れん坊……性格は常にGo my way……  
    名誉顧問で大富豪……テンションはピカ一、鶴屋……」  
 
 
鶴屋 「頭の中身は天然だっ。今日もエロでキャラを立てるんだっ。  
    参考だっ、めがっさ衣装は。ポンコツ娘、みくるっ!!」  
 
 
朝比奈「団で怪しさダントツナンバー1。そして欠席の数もナンバー1。  
    セカンド・レイドは最高だぁ。機関の奴隷、一樹ぃ!!」  
 
 
古泉 「魅惑な言動の数々で。長門が本命、ハルヒバカ。  
    気ままな忍耐、財布軽い。彼が下っ端、キョン君!!」  
 
 
全員 「谷川の世界の住人。決めてくぜ、この六人で。  
    刮目しろ、驚愕しろ。H・A・R・U・H・I、ハルヒ!!」  
 
 
──―――――――  
歌い終わった皆は、改めて歌詞を確認してみる。  
口火を切ったのはハルヒ。  
 
 
「ねえキョン。『朝比奈ミクルの冒険』のメンバー紹介用に、歌を入れるって企画よね……  
でもどうして歌詞が偏ってるのよ!? あたしは回りの意見も聞いてるし、  
イタい娘なんかじゃないわよ!!」  
 
「ハルヒ、その意見は傾聴すべきだと思うのだが……」  
「キョンもそう思うでしょ?」  
「無視かよ!!」  
 
 
他の皆も不満の声が上がる。  
「ふぇぇ、わたしは後藤邑子ボイスですけど  
ポンコツ娘なんかじゃないですようぅ。それにエロでキャラ立てなんて酷いですぅ」  
 
「あたしは暴れん坊かいっ、何かテンションの高さだけで  
皆に印象付けているイメージになってるよっ」  
 
「やれやれ、僕は怪しい奴隷さんですか。一面ではそういう事実も拭えきれませんが  
面と対って言うのはどうかと」  
 
「俺だって、いつの間にか別キャラになってるぞ。何だ魅惑の言動って?   
それに何だ長門本命とかハルヒバカとか。そもそも谷川って何処のどいつだ、作者か?」  
「あたしはバカじゃないわよバカキョン!」  
「だからツッコむ所はそこじゃねぇーーー!!」  
 
 
みくるは歌詞表を見ながら皆に聞く。  
「そもそも、この歌詞を書いたのは誰なんですかぁ?」  
ハルヒも言葉を続ける。「そうよ、これはいくら何でも映画には載せられないわ」  
 
 
歌詞は手書きだった。  
活字と言い切ってもいいような、明朝体の美しい書き文字。  
 
 
「……これ、有希が書いたの?」  
長門は静かに本を読んでいる。そしていつもの声で答える。  
「そう」  
「ちょ、ちょっと有希」  
「涼宮ハルヒは昨日の深夜に、わたしに歌詞を書くよう依頼した。  
それを遂行しただけ」  
 
長門はアシモフの『ファウンデーションと地球』を読みながら  
ぺロラットふうに答えた。  
「期待外れ?」  
 
なんと『機関の奴隷』とか『エロでキャラ立て』であるとか、  
普段の物腰では考えられないような歌詞を書いたのは、寡黙な少女だったのだ!  
 
 
 
ざわ……  
     ざわ……  
 
場の空気が福本伸行ふうになる。  
 
 
「でも有希、少し歌詞に無理があるんじゃないかしら。  
他の人間の所は妥当かもしれないけれど、あたしとキョンの所がおかしいわ。  
あたしはイタい子じゃないし、キョンの本命は別の娘だと思うの」  
 
 
全員の「妥当とか言うな。しかも聞く所はそこかよっ?」  
という声に、ハルヒさんは美しくスルー。  
 
 
長門は皆を見渡し、コツンと可愛く頭を叩いて言った。  
「問題無し。ちょっとした本音。  
そしておそらく彼はわたしが本命。根拠は無いけれど、わたしの中で確定」  
「ええぇぇぇーーーーーーー!!」  
全員のツッコミが部室に響いた。  
 
 
 
いやあ有希ちゃんは、ホント可愛いですよね。  
この寡黙少女めっ(無理矢理ムツゴロウ風)  
 
――了――  
 

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