雪山症候群の裏顔<Aパート>  
 
 俺達SOS団は、涼宮ハルヒ提案、古泉一樹考案の年越し合宿を行った。  
 まあ、そのときのことは今更話すことでもないとは思うので、色々と割合させていただこう。  
 
 色々あって、俺達は吹雪の吹き荒れる中大きな洋館に辿り着いた。  
「このタイミングで現われるものは罠って決まってるんだが…」  
 という、俺の杞憂もどこふく風と言った感じでノックし始めやがったよ、我らが団長は。  
 もっと慎重に行動すると言う事が出来ないのか。お前はいいかもしれんが、  
 俺達、特に朝比奈さんが危険な目にあったらどうしてくれるんだ。  
「何よ、今更。遭難してる時に、そんなこと言ってらんないわよ。  
 それに、ちょっと吹雪がやむまで一休みさせてもらうだけじゃない」  
 それはそうかもしれんが。  
「あ、鍵開いてるみたい。すみませーん。誰かいませんかー。  
 ちょっとあがらせてもらいますよー」   
 おい、だから勝手に入って行くなって言ってるだろう。  
 って、そんな事言ってる間に古泉や朝比奈さんまで入っていっているじゃないか。  
 …長門。この中は安全なんだろうな?  
 あまり長門に頼りたくは無いんだが、この際仕方あるまい。  
「…たぶん」  
 長門さん。多分って何でしょうか。  
「キョン! 何してんのよ。早く中に入らなくちゃ有希が入れないじゃない!」  
 …取り合えず中に入って考える事にしよう。  
 長門も一応は安全と言っている事だしさ。  
 
 
 それから、俺達は館内に住民を探し回り、ありがたくご飯を頂戴した(ここの住民の人、すまん)  
 あとに、男女交互に風呂に入った。この辺も都合により割合させていただく。  
 
 そして、各自部屋に分かれて少し睡眠をとることに。  
 部屋割りは、俺と古泉が隣同士。その通路の向かいに長門、ハルヒ、朝比奈さんとなっている。  
 俺は、自分の部屋の中で、偽朝比奈さんと一騒動あるのだが、それも割合させていただこう。  
 今回の話は、ここから始まる。  
 そうだな。取り合えず、その時のハルヒの部屋の中に視点を移してもらう事にしようか―――  
 
 
<Bパート>  
 
 各自の部屋に入って数分が経ったくらいかしら。  
 あたしは窓の外をじっと見つめていたと思う。  
「はぁ。せっかく雪山まで来たのになぁ。スキーもまだあんまり  
 滑ってないし。吹雪が止めばすぐに戻れるかしら……」  
 でも、よく考えればこれってすごく珍しい体験よね!  
 スキー場で遭難なんて滅多に起きないわよ、普通。  
 ああ、このまま何か変な事でも起きないもんかしら…  
「ハルヒ…」  
「へ!?」  
 いきなり名前を呼ばれて、後ろを振り返るとそこには…  
「何でキョンがここにいるの!?」  
 キョンがあたしの部屋のベッドの前に立っていた。  
 って、どうやって入ってきたのよ!?ドアの開く音なんて全然してないわよ!  
「あのさ、ちょっとの間でいいから…一緒にいさせてくれないか?」  
 あんたねぇ…まさか吹雪が怖いから、とか言わないでしょうね?  
「…………」  
 ちょ、どうしてそこで黙るのよ! もしかして、図星じゃないわよね?  
「理由なんてどうでもいいじゃないか。俺は、お前と一緒に居たいんだ」  
「あんた正気? ……ま、まあキョンがどうしてもって言うなら別にいいけど」  
「なら、いいよな」  
「え…?」  
 てっきり、『何でそこまで言わなきゃいけないんだ』とか何とか言って  
 部屋を出て行くと思ってたのに…  
 何か本当に言えない理由でもあるのかしら…  
「ねえ、キョン…? ほんとにどうしたの?」  
 何からしくないって言うか…まるで偽者のような。  
 でも、そんなはずないわよね。さっきキョンと屋敷中探し回ったんだし。  
 もしかして酔ってる? 一人だけ飲酒してたなんて言ったら死刑よ!?  
 
「ここ。座ってもいいか?」  
「あ、う、うん…別にいいけどさ」  
 そう言って、あたしの隣に腰を降ろさせたけど…  
 なぁ〜んか、調子狂うわね。本当に何もなかったの?  
「用もなく俺がお前の部屋に来ちゃいけなかったか?」  
 別にそんなこと言ってるわけじゃ…って!?  
 ちょ、どうして肩に手を回すの!?  
「ハルヒ…」  
「キョ、まっ…」  
 ………って、肩に手を回されただけでどうしてあたしが  
 こんなに動揺しなきゃいけないのよ。そう、別にまだ何もあったわけじゃないし…  
 うん、そうよ。キョンにそんな根性なんてないんだし。  
 それに……きっとキョンは、有希のこと………  
「ハルヒ?」  
「い、今のなし!!」  
 と、取り合えずキョンの腕の中から逃げなくちゃ…  
 目の前でそんなこと考えてるだけで、ちょっと有希が羨ましく……  
 って何考えてるの?! キョンの目の前で…もとい、こんな時にそんなこと思わなくっても  
 いいじゃない、あたし!  
 取り合えず、キョンから2、3歩くらいは離れたけど……  
 変に意識しちゃったから、もうまともにあいつの顔…見れないよ。  
「…………」  
 こういうときに限って、こっちに来るのよね…キョンって。  
「ハルヒ……」  
「っ!?」  
 って、それありなの!? いきなり後ろから抱きつくなんて…  
 しかも、思いっきりじゃなくてそんな包み込むように優しく……  
 そんな抱き方されたら…抵抗できないじゃない……  
 どきどきどき……  
 
 ああ、自分の心音がすごく響いて聞こえる。  
 こんなに大きかったらキョンにまで聞こえるんじゃないかってくらいに。  
 きっと、キョンもかなりドキドキしているに違いないわ。  
 いつもならこんなこと、絶対に出来ないもの。  
 耳、当てたら聞こえるかしら?  
 そう思って、気付かれないように気をつけながらもキョンの胸に耳をつけることに成功。  
 暖かい胸板の向う。どくんどくんという激しくも落ち着く音が聞こえた。  
 やっぱり、キョンも緊張してるのね。  
 それが解ったら、ちょっと安心かな。緊張してるのあたしだけじゃないんだし。  
 
 どれくらいそのまま居たのかしら。  
 キョンの手が、少しずつ、動き始めた。  
「キョン?」  
 最初、ネックレスのように首の周りに巻いているだけだった腕が少しずつ、本当に少しずつ  
 下に下がり始めていた。  
「や、ちょ、キョン! やめなさい!」  
 今では、キョンの手はあたしの胸の上。もちろん、胸に沿わせて手を重ねている。  
「いいかげんにしないと本気で怒るわよ!」  
 うう…まったく身動きしない…ずっと胸に手を置かれているのも思ったより恥ずかしいわ…  
 こうなったら、もう手加減しないわよ!  
 あんたが手を離す前に無理矢理引っぺがして成敗してあげるんだから。  
 そう意気込んだ時に、キョンは、あたしの胸をもみ始めたのだ。  
「あ、ちょ、やめ……!」  
 い、いきなり動かすのはダメ……  
 ひゃ…ん…くす、ぐったぁい……  
 って、あれ…? ビックリしたのとの相乗効果でいつもより敏感になってる……?  
 ……!! いけない! このまま流されるところだったわ!  
「こら、キョン! 早く離れなさい!」  
 
 これが最後の忠告よ、と一言付け加えておくわ。  
「…ひゃ、ちょ、やめな…さいって、ば…!」  
 あたしの忠告を無視して、ずっと、その、あ、あたしの胸を  
 もみ続けるなんて…その手を離した時があんたの最後よ!  
 始めのほうはそう思っていたけれど、ずっと同じ動きや刺激を受け続ける。  
 それはそれで…胸の奥がこう、キュンって言うの?そんな変な感じになっちゃったわけで…  
 そう、一言で言えば、その刺激だと物足りなくなってきちゃった……  
「ねぇ、キョン……いつまで、胸揉んでるのよ…」  
 そして、あたし自信も気付かないうちに、キョンに  
「他のトコも…触りなさいよ……」  
 なんていう事を言っちゃったみたい。  
「あ…ちょ、今のな……!!」  
 と、気付いた時にはもう手遅れ、キョンは、待ってましたと言わんばかりに手を下げて…  
「!!!」  
 足の付け根辺りを触り始めた。  
 このときのあたし達の格好、今更言わなくてもわかってると思うんだけど、  
 お風呂に入ったから、上にTシャツしか着てなかったりして……  
 それで、足の付け根を触るという事は……キョンは、直にあたしのフトモモや  
 色んなところを触ってるという事で…余計にくすぐったかったり気持ちよかったりして、  
 その、いけない気持ちになりそうに……  
 ……はっ! いけない! このまま流されちゃ、キョンの思う壺だわ!!  
 ここで、しっかりと我慢、そして逆襲もしないと!!  
 でも…どうするか考えてる間にもキョンのくすぐったい手の動きは止まずに段々と  
 あたしの性感を高めていってる…!  
「ん! そ、そこだめ!」  
 そして、彼の手はいつの間にかあたしの一番感じるところを触れていた…  
 あ、や、だ、だめ…何も、考えられない!!  
「だ、ダメ! キョン、やめ……!!」  
 
 また、ずっと同じところを触り続けるキョン。  
 別のところを触るという事を全くしない、一点集中の愛撫。  
 でも、その行為にあたしは、完璧にスイッチが入っちゃったみたい。  
「はあ、ああ、キョン、も、もっと…他のとこも……」  
 もう頭の中は真っ白で、何も考えられなかった。  
 隣の部屋に有希がいることも忘れ、声も押さえる事もしなかったもの。  
 もし、隣の部屋が静かだったら、あたしの声、丸聞こえなのかな。  
「んん! は、キョ、キョン! そこ……そこぉ!」  
 恥ずかしいという感情も薄れ、もう目の前にある快楽の頂点に上り詰めるだけ、  
 そう、ほんのあと少しだったのに……  
「はぁ…はぁ…あ、あれ……? キョン…? 何処行くのよ?」  
 いきなりキョンがあたしを解放してしまった。  
 あと数回もあそこを触ってくれるだけでいいのに…  
 それに、まだあたしはキョンに、その、何もしてあげれてないんだし……  
「キョン? ちょっと、聞いてる!?」  
 あたしは、キョンの顔を覗き込んだ。  
 その顔は、後悔して……いるようには見えず、どこか悲しげに見えた。  
「キョン…? どうしたの?」  
 何かあたしに隠し事でもあるの? それとも、何かやましい事でも思い出したとか?  
 キョンはあたしの質問に答える事は無かった。  
 なぜなら、返事の代わりに、この部屋の唯一の出入り口に走って向かって行ったのだから。  
「こら、キョン! 逃げるな!!」  
 せめて、ここまでした責任をとってから出てけ!!  
 あたしは、そう叫びながら、キョンが出て行った扉を開いて廊下を覗き込んだ。  
 そこには―――  
 
 
Cパート  
 
「それでは、またあとで」  
 そう言って、彼らと別れたのが約5分前。  
 隣の部屋には、彼が。向かいの3部屋には、女性陣三人が泊まる予定になってます。  
 流石にこの位の距離だと、流れる時間の速さは同じだと思われるんですが…  
「古泉。ちょっといいか」  
 そんなに考え込んでいたのでしょうか。扉を開ける音に全く気付きませんでしたよ。  
 あれ? そのYシャツ。いつ着たんです? さっき別れるまでは僕と同じこのTシャツでしたよね?  
「まあ、そんなことはどうでもいいんだ」  
 そうですね。今の問題は、長門さんにも感知できていない力。あと、時の流れに違いですね。  
 さっきもお話したとおり、この館には場所によって時間が流れる速さに違いがあります。  
 本当は一つの部屋に固まりたかったのですが……まあしかたないでしょう。  
「それもどうでもいい。そんなことは問題じゃあないんだ」  
 おや、あなたがそういうのは珍しいですね。  
 何か思い当たる節でもおありなのですか?  
 僕でいいのなら、相談に乗りますよ。  
「なら、聞いてくれ。この、俺の中に燃えたぎる、熱いエナジーが漲った歌を!」  
 ……何のことでしょうか。すみませんが僕にはよくわからないです。  
「その名も、マ○ケンサンバV!!〜盆踊りば〜じょん〜!!!」  
 非常にパクリなうえにサンバの盆踊りバージョンですか……  
 それで、僕はどうすればいいんです? 普通に聞いていればいいのですか?  
「……なあ、お前にツッコミというスキルは搭載されていないのか?」  
「残念ながら。そのようです」  
 いやあ、あなたみたいに様々なことにつっこめると楽しいかもしれませんけどね。  
 あいにく、僕は現状で十分満足しているのですよ。  
「そうか……残念だ」  
「そうですね、非常に残念です」  
 
 あなたが期待している反応はきっと涼宮さんあたりが返してくれるのではありませんか?  
「おまえじゃなきゃダメなんだ」  
 ? どういうことです?  
「単刀直入に言おう。お前みたいにあまり歯に衣かぶせて物を言う事は好きじゃないんでね」  
 それはすみませんでした。以後、気をつけさせていただきますよ。  
「古泉……ヤ ラ ナ イ カ ??」  
「いいですよ?」  
 なんだ、そんな事ですか。てっきり、ツッコミの練習でもするのかと思ってましたよ。  
 その一言と同時にシャツのボタンを一つずつ外すというのもどうかと思いますが。  
「で、何にします? 残念ながら、スキー道具とウェアだけだったので、トランプくらいしか  
 持ってませんけど」  
 あなたから誘ってくるのも珍しいですね。こんな事ならもっと色々と用意しておくべきでした。  
「……………」  
 あれ? どうしました? もしかしてトランプ、嫌ですか?  
「いや、そこまで徹底的にネタを無視されるのも悲しいなぁ、と感慨に浸っていたんだが」  
 もしかして、ゲームをやらないか。という意味ではなかったのでしょうか?   
 それなら非常に残念です。  
「普通なら、ボタンを外しながらヤラナイカ?と聞かれれば返す言葉は  
『うほっ、いいキョン!!』  
 辺りが理想だろう。この前振りを完璧スルーするとは、一味違うぜ、古泉よ!」  
 それは、一応褒め言葉として受け取っておいても構わないのでしょうか?  
 で、ゲームをしに来たのではないのでは、一体何をしに来たのです?  
「それは、俺が何回も言っている様な気がするんだが」  
「マツ○ンサンバですか……あの歌、あまり好ましくないんですが」  
「しょうがない、もう一度言おう。古泉、俺とハッスルハッスルしないか?」  
 そんな某レスラーの真似をされても……  
 
 それに二人だけでそういう事するのですか…きっと空しいだけですよ?  
「…俺は別に構わない。お前がいいのなら」  
「しかたありませんね。一度だけですよ?」  
 本当は一度もしたくは無いんですけどね、今日は特別ですよ?  
「それじゃあ、行きます…『1、2、3!! ハッスルハッスル♪』」  
 ……………。  
 あれ? どうしてそんな冷たい目でこっちを見るんです?  
 て言うか、しようと言って来たのはそっちじゃないですか。  
 僕ひとりでさせるなんて酷いですよ。もしかして、それが狙いだったりします?  
「古泉……」  
 そんな、哀れな少年を見るような目は止めてください。  
 あと、気のせいと思うのですが、微妙に顔が赤く染まっているように見えるのですが。  
「ヤラナイカ?」  
 2回目ですか。今度はちゃんと返せば良いんですよね?  
「ウホッ! いい男っ♪」  
 これでいいのでしょう?  
「いいんだな。古泉……」  
 これで終わりじゃないのですか……次は一体何をするつもりです?  
 うわっ、いきなりそんな思いっきり肩を掴まなくてもいいでしょう? 驚きましたよ。  
「古泉」  
 んむぅ!!? ……ぷはぁっ!! ちょ、い、いきなり何するんですか??!  
 そんな、僕たちは男同士ですよ!? やっていい冗談と悪い冗談っていうものが……  
「俺は、本気だ」  
 いきなりそんなことおっしゃられてもですね……こちらにも心の準備と言うものが。  
 って僕の話聞いてませんね。そんなに優しく抱きしめないで下さい……  
「もう一度言う。ヤラナイカ?」  
 それはもういいです。同じネタは使えて2度までだと思いますよ、僕としては。  
 ってだから、人の話を聞いてください。ちょっと、陰部を触るのも止めてください。  
 うわ、耳に息を吹きかけないで……くすぐったいですってば。  
「なあ、いいだろ?」  
 
 ……すみません。残念ですが僕ではお役に立てそうにありません。  
「大丈夫だ。俺に任せろ。お前は何もしなくてもいいんだ」  
 いえ、その役は僕には大きすぎます。この続きは、涼宮さんあたりにお願いします。  
 おっと、長門さんでしたっけ? まあ、どちらでもあまり大差は無いでしょうが。  
 僕個人としては涼宮さんをお勧めしますが。  
「まあ、こんなことをこのあなたに伝えても仕方がないでしょうがね」  
「…古泉」  
 まったく。誰がこんなことを考えたのかはわかりませんが。  
 趣味の悪い事をしてくれますよ。  
「さて、ではそろそろご退場願いましょうかね。偽者さん」  
「何を言ってるんだ? 俺は…」  
 ふむ、やはりここでは力は使えない、と…  
 では、少し骨ですが彼にはこの部屋出て行ってもらいましょうか―――  
 
 
――― 一方その頃 ―――  
「キョンくんたち、なにやってるの? あれ」  
「さあ…流石にあたしにもわっかんないや」  
 いやあ、参ったね。キョンくんの妹くんと雪だるまつくってりゃ急に吹雪くし、  
 すぐ止んだかと思えば、その後にみんな歩いて帰ってきてるし。  
 何かあったのかなっ?   
「ま、ハルにゃんや長門ちゃんもいるし、だいじょーぶでしょっ」  
「うん、そーだね! キョンくんだけだと心配だったけど…みくるちゃんたちが居れば安心かな」  
 みくるがいると余計に心配になるけど…まっ、妹くんにそんなこと言って心配かけちゃだめだねっ。  
「さっ、じゃあもっとおっきな雪だるまつくってみんな驚かせちゃおー!」  
「おおーー!!」  
 ま、何をしてたのかは後でキョンくんに聞けばいいし、ほっといても問題ないかなっ?  
 あの調子だとまだまだこっち来るのに時間掛かりそうだし、もうちょっと妹くんと遊んでても大丈夫だねっ。   
 っと、妹くん。やるねぇ。もうそんなおっきな雪球つくっちゃったのかい?  
 こりゃー負けてられないねっ!!  
「あはっ、もうコツ解っちゃったから、おねえちゃんには負けないよ〜」  
「おっ? じゃあいっちょ勝負でもしてみるかい?」  
「まっけないよ〜!」  
 さて、この勝負が終わったら一応あったかいお風呂でも沸かしといて貰っておくかなっ。  
 ほんとにみくるたちと居ると退屈しないなぁ。いい意味でだけどねっ。  
 
 
――― 再度古泉視点 ―――  
 流石に、力が使えないのは厳しいですね…  
 彼の偽者とはいえ、僕に力での分はあまりないみたいですし。  
 取り合えず、彼の様々な悪手からは身を守ってはいるんですが……  
 このままだと、僕の体力が尽きる方が早そうです。  
 たまにですけど、攻撃ならぬ口撃が被弾してますし……  
「古泉…俺だとダメなのか…?」  
 いや、それは時と場合によりますが……今のこの状況では歓迎致しかねますね。おっと。  
 彼はばふっとベッドに倒れこんでしまいました。まあ、抱きつきに来たのを避けたので仕方ないんですけどね。  
 彼の方を警戒しながら窓の外を見てみると、まだ闇の中に音もなく吹雪いている情景が目に入りました。  
 ふう、こんなこと、してる場合じゃないんですけどね……  
「…………」  
 はて、そういえば急に彼、静かになりましたけど……  
 そろそろあきらめてくれたのでしょうか?  
 と、彼の顔を覗き込もうとしたとき、急に彼が起き上がってきました。  
 でも、こちらを襲いに来るというわけでもなかったみたいなので、顔をじっくりと観察させてもらいましょうか。  
 ふむ。確かに彼にそっくりですね。言葉使いも彼と殆ど同じでしたし。  
 ただ、彼が絶対に起こしそうにない行動ばかりでしたからね。そこが欠点でしょうか。  
 ふと、彼の顔が少し曇りました。 ? 一体どうしたのでしょう。  
「く………」  
 なぜか苦しそうに、この部屋から走り去っていきました。  
 一体どうしたのでしょう? 急に何処へ行くのかも気になったので、すぐにあとを追いました。  
 そして、扉を開き、廊下を覗くと―――  
 
 
Dパート  
 
 ふう。何故か一人きりになったら溜息が出ちゃいました。  
 そんなに疲れてたのかなぁ?   
 今、わたしたちは各部屋に別れての休憩中。  
 休息も必要だ、というキョンくんの言葉で決行されちゃいました。  
 実際にベッドに入ってみると……ついうとうとと……しちゃって………  
 
「みくるちゃん!」  
「ひっ!?」  
 眠ってるところを起こすのは誰ですか?!  
 わたし、変な顔して眠ってなかったですよね…?  
「さあ…どうだったかしら」  
 …涼宮さんが誤魔化すって言う事は……よっぽど変な顔を!?  
 でもよかったです。涼宮さんで……これがキョンくんや古泉くんならもう  
 赤っ恥掻くところでした。  
「で、みくるちゃん」  
「あ、はい。何ですか?」  
 わたしの部屋に来たんですからやっぱり用件はありますよね。  
 でも、わたし何かしましたっけ?  
「いや、その……ちょっとばかし、一緒にいてもいいわよね?」  
「いいですよ?」  
 ? どうしたんだろ。何かいつもとちょっと雰囲気が違うような……  
「実はさ、ちょっと不安なのよ。ほら、何て言うか…こんなとこにいるのって  
 あたしの所為のところもあるじゃない?万が一これで帰れなかったりしたら……  
 なんて思っちゃったらさ」  
「涼宮さん……」  
 うぅ…そんなところまできちんと考えてくれてたんですね…  
 そんなこと全然知らなかったです……  
 わたしなんか、こんな感じのお屋敷に入るの初めてだったんで楽しんじゃってました。  
 
「でさ、もひとつ頼んでもいい?」  
「あ、はい! もちろんです!」  
 わたしに出来る事があるなら喜んでします! で、一体なんですか?  
「みくるちゃん。その…さ、一緒に寝てくれない?」  
「ふぇ!?」  
 え? い、一緒に…ですか?  
 それくらいで良いなら…わたしは別にいいですよ。  
「ん、あんがと」  
 そ、そんな! それくらいでお礼なんていいですよー。  
「じゃ、ちょっとお邪魔するわね」  
「ど、どうぞ」  
 うぅ。いざとなったらちょっと恥ずかしいかも…  
 でも、珍しい涼宮さんの心からのお願いなんだし…多分だけど。  
 ちょっとくらい我慢しなきゃ。  
 それにしても…涼宮さんって弱い部分もあったんですね……意外です。  
「んん…みくるちゃん………」  
 ふふ。寝言なんか言っちゃってます。こうしてみると、やっぱりかわいいなぁ。  
「ひゃ!?」  
「むにゃむにゃ……やーらかい……ちょっと頂戴…」  
 ちょ、ほ、本当に眠ってるんですか…?  
 両手が、しっかりとわたしの胸、掴んじゃってるんですけど……  
「んん…はぁ……」  
 定期的に不定期な感じって言えばいいのかな…取り合えず、起きてるみたいに  
 きちんと休まず胸を揉みにきてます…  
 何だか、切なく、なってきちゃった…  
「ふふ、みくるちゃん。どう? きもちいいでしょ?」  
「え!? す、涼宮さん!!? お、起きてたんですか!?」  
「モチのロンよ。初めっからずっと、ね」  
 全然気付かなかったです…  
「起きてるって知ってたら、みくるちゃん、どっか行っちゃうかもしれないじゃない?  
 だ・か・ら・よ」  
 ひぅ……や、やめてください〜……  
「だーめ。あたしが満足するまで我慢なさい」  
 ふぇ〜ん…誰か助けて……  
 って、わたしの太腿に何か硬いものが当たってるんですけど、これなんですか?  
「あ、気付いちゃった? じゃあ仕方ないか。まあ、最終的には使う予定だったんだけど」  
「な、何の話ですか?」  
 そこはかとなく嫌な予感がするんですけど……  
「教えてあげる前に……みくるちゃん?」  
「な、なんです…か?」  
 あんまり答えたくないですけど……   
「……脱げ!!」  
「うぅ……」  
 大体解ってましたけど……実際に言われるとつらいです…  
「別に、あたしが脱がせて上げてもいいけど…どっちがいい?」  
 もう、半分ヤケです! 自分から脱いじゃえ!  
「さて、じゃああたしも脱ごっかな…」  
「……!!!」  
 えっと、涼宮さん。その…あなたの股間の変なふくらみはなんですか……  
「直に見たいでしょ? そんなにあせらなくても、すぐに脱いであげるわよ」  
 そういって、ショーツに手を伸ばす彼女……  
 涼宮さんの華奢な腕が下に降りていくと共に、明らかになっていく、異様なふくらみの正体……  
 す、す、す、涼宮さん!!? そそ、そのいきり立ってる棒はなんなんですか?!  
「あら? 見て解らないかしら……。ん〜、一言で言うなら……ペニス?」  
「それ、もちろん偽物……ですよね?」  
 最後の希望を込めて…涼宮さんに聞いてみましたけど……  
「何言ってるの? みくるちゃん…これ、偽物に見える?」  
「み、みえません……」  
 や、やっぱり…ホンモノなんですか……?  
 
「ほら、触ってみなさい…んっ…暖かいでしょ?」  
「ひっ!」        ・ ・  
 わたしが触ったそのモノは、熱いくらいで、触った瞬間に、ビクビクと波打っていました……  
「あぁ…みくるちゃんに触ってもらって、このコが喜んでる……」  
 それって…感情あるんですか……?  
「そんなの、無いに決まってるじゃない。それとも、みくるちゃんの手足には感情ついてるの?」  
 な、ないですけど……  
「なら、変なこと言わない! さぁ…みくるちゃん。観念なさい!」  
「や、やめて〜!!」  
 涼宮さんはわたしの抵抗をまるで感じないかの様に押さえつけてきます……  
 彼女の力に抵抗できるはずもなく…わたしはすぐに押さえつけられてしまいました………  
「うぅ……」  
 今のわたし達の状況は、Tシャツだけを羽織ったわたしが仰向けになっていて、  
 わたしの両腕を押さえた涼宮さんが…よく言う『まうんとぽじしょん』っていう状態だと  
 思うんだけど……そんな感じに覆い被さってます。  
「ああ…みくるちゃん。その顔、とっても綺麗よ…」  
 全然嬉しくないです…  
「それじゃあ……行くわよ?」  
「ああ! や、やめて…!?」  
 涼宮さんのモノがわたしの入り口に当たったかと思った瞬間に、一気に中に…!!  
「ああぁあ…!!」  
「くぅぅ〜…みくるちゃんの、ナカ、とってもいいわ!」  
 お、思ってたより、涼宮さんのモノは大きくて……  
 入ってきただけで……一気に性感が高められて…!!!  
「お、おっきすぎ……です…!!」  
「あたしは、みくるちゃんのナカ…丁度いいわ」  
 
くちゅ、くちゃ…ぐちゅ…  
 最初の方は、まだ慣れない動きで…ゆっくり動いていた涼宮さんも、  
 段々とコツが解ってきたのかスムーズに動くようになっていました。  
 それにあわせてかどうかはわからないけど、わたしと涼宮さんとがつながっている場所  
 から、聞こえてくる音が…だんだんと水気を増していっているような気が……  
「あ、んぅ…や、ひゃぁ」  
 もう、わたし、何も、考え、られません…!!  
「みくるちゃん! いいわよ! その調子!!!」  
 涼宮さんの方も、調子がいいみたいで……一段とピストン運動が激しくなってます……  
「あ、や…あん! す、涼宮、さん!! わ、わたし…、もう……、もう!!」  
「みくるちゃん…もうイっちゃうの?」  
 聞きながらも、腰の動きは止めない涼宮さん。  
「あ…んんんんぅぅぅ〜〜〜」  
ビクビクビクッッ!   
 はぁ、はぁ、はぁ…一瞬、目の前が、真っ白に、なっちゃいました………  
「もぅ…みくるちゃん。あなた、イクの早すぎ。あたし、まだ全然なんだけど」  
「そ、そんなこと…」  
 言われても……どうすればいいんですかぁ…  
「あたしが、満足するまで、頑張ってね?」  
「ふぇ!? あ、や、やめ…!!」  
 そ、そんな!? さ、さっきイったばっかりなのに!!?  
 すぐにそんな刺激、だめ、ダメです!!  
「あぁ、みくるちゃん…さっきより、いいわよ」  
「あ、や、やめ……て!」  
 もう、わたしは連続した言葉を発する事も出来なくなっちゃってました。  
「だーめ。ほら、もうちょっと頑張りなさい! あたしは、まだまだ満足しないわよ!!」  
「ひゃ! や…だ、ああ、んぅ!!」  
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。  
 リズムよく聞こえる水の音。でも、今のわたしには、それが何の音なのか、はっきりとは解りませんでした。  
 
「やぁ、ま、また……! 来ちゃう!!」  
「え? またなの? もっと我慢しなさい!」  
「そ、んな…こと、いわ! れてもぉ……あ!!んんぅぅ〜!!!!」  
びくびくびく。  
 二度目の絶頂。それでも、涼宮さんは満足していないようで、  
「もう、またイっちゃったの? このままだと、あたしが満足するのに朝まで掛かっちゃうわよ?」  
「はぁ、はぁ、はぁ…そ、そんなこと…言われても……」  
「じゃ、第三ラウンド。頑張ってね?」  
「ひ…!?」  
 そう言って、彼女は腰を動かして……ない?  
 あれ? ど、どうかしたんですか?  
 もしかして、もう満足……しちゃいました?  
「あ……くぅ……!!」  
「す、涼宮さん?! だ、大丈夫ですか!!?」  
 いきなり、彼女はとても苦しそうに唸り始めました。  
「みくるちゃん………」  
 そして、涼宮さんは……泣きそうな顔でわたしの前に座り込んでしまいました。  
「え!? だ、大丈夫ですか!!」  
「……………」  
 わたしの声に、彼女は何も返さなくなっていました。  
「涼宮さん…?」  
 あまりにも、反応がないので、一応、ショーツだけ穿いてから涼宮さんに近づくと……  
「……!!!」  
 がばっ。という擬音語が聞こえそうな勢いで顔をあげ、いきなり立ち上がったかと思うと…  
 この部屋の唯一の出口に走って向かっていきます。  
「ど、どうしたんですか?」  
 わたし、何か一体おかしなこと、しちゃいましたか?   
 …確かに、一人だけ二回もイっちゃいましたけど……  
 
 涼宮さんは振り返る事もせずに、扉を開いて外に駆け出していきました。  
「え? え?」   
 わたしは、一瞬何が起こったのかよくわからず、取り合えず、あとを追おうと扉を開きました。   
 そして、扉から廊下を覗き込みました。そこには―――  
 
 
Eパート  
 
 SOS団の人たちと別れて、私はベッドに腰掛けてぼーっとしていた。  
 この状況では私は特にすることもなかったから。  
 現状を整理だけでもしておこう。  
 この館に入った時から…情報統合思念体に接続不可能。  
 いや、不可能というよりも……壁をたくさん乗り越えなければならない、といった感じ。  
 きっと、一度しか接続できない。それ以上は…身体が持たないだろう。  
 そして、その一度。行うのは…やはり、今しかない。  
 万が一何かあっても、誰にも気付かれにくいし。集中しやすい。  
 さあ、ここが、私の正念場―――  
 
「ふぅ……」  
 何とか、情報統合思念体に接続、完了。  
 あとは…入り口を開けられるように…するだけ。  
 少し、休憩、できるかな……  
「っ!!」  
 これは、何? 各部屋に、何か現われようとしている……  
 ……今の私には……完全に消去することが…できない。  
 せめて、安全なモノに書き換えないと……でも、それをすると…入り口が開けられない…  
 彼なら、きっと、不完全でも、扉を開ける事が、出来るはず―――  
 初めてではないだろうか。他人を信じる、何て言うことをしたのは。  
 することは、きまった。あとは、あなたに任せる………  
 覚悟を決め、情報の書き換えに……  
 各部屋に現われようとしている、思念体を、安全なものに、変更。  
 入り口の、扉の情報を見えるように……等式を……成立させれば、この扉は…開く?  
 でも、今の私にはその時間がない…。各部屋に現われる物体を、調整。この情報を元に、  
 扉を開いて……  
 はぁ、はぁ、あとは…時間制限を………かけて―――  
 
 ―――全工程…完了……。  
 あとは、彼がこの、仕組みに気付いてくれれば……  
「大丈夫か? 長門…」  
「っ!?」  
 え? どうして、あなたがここに……  
「…お前が、心配になったんだ」  
 その気持ちは、とても、うれしい……  
 けど、今は部屋に戻ってないとだめ。  
「そんな事言うなよ。俺は……」  
 だめ。 近づかないで……  
 今近づかれると…熱があることがわかってしまう。  
 せっかく、誰にも気付かれないように、したのに……  
「長門…」  
 しっかりと、私の両肩を掴んで、私の目をずっと見つめてくる……  
 そんな顔されたら、追い返せなくなる……  
「あ……」  
 彼の手が、背中に伸びたかと思ったときには、私は思い切り抱きしめられていた。  
 暖かい彼の身体……たまに涼宮ハルヒにも抱きしめられる時があるけれど…  
 その時の感触とはまた違う、気持ちよさがあった。  
 そして、それは、疲労していた身体にとてもよく染み渡っていった。  
「………」  
 私も、ゆっくりと、でも確実に彼の背に手をまわす。  
「長門」  
「……なに?」  
「……いや、何でもない」  
「…そう」   
 何を言おうとしたのか、よくわからない。  
 でも、何故かあまり嫌な感じはしなかった。  
 ああ……このまま抱きしめられていると、何故か眠気が…  
 
 このまま眠ってしまいたい。でも……  
 ちらっと彼の顔を見る。まるで、古泉一樹のような微笑を顔に浮かべていた。  
 その表情に少し戸惑う。別に変ではない、だが、どこかがおかしい。  
 そんな印象を感じてしまった。  
 このまま、眠ってしまってはいけない。  
 なぜか、そう思う。  
 今は、情報統合体と接触出来ていないので詳しい事は何一つ解らない。  
 けれど、この身体が本能でそう判断したのだ。  
 自分ひとりで行動を起こす事も、よく考えれば初めてではないだろうか―――  
「どうした?」  
 彼が少し不安そうに聞いてきた。  
「………べつに」  
 本当に大した事ではないし、彼に言うまでもないだろう。  
「そうか」   
 彼もそれがわかったのか、もうそれ以上聞こうとはしなかった。  
 それが、何故かとても嬉しかった。  
「もう少し…もう少しだけこのままでも……いい?」  
「ああ、もちろんだ」  
 きゅっ。彼の背中に廻している腕に力を少し込める……  
 ああ…この時間が、ずっと続けばいいのに……  
 私がそう思ったとき、その事に気付いてしまった。  
 私は、さっき、どういう風に情報の処理をしたのか―――  
 その事を、はっきりと思い出した。  
 
『各部屋に、何かが現われようと―――。  
 ―――時間制限を……かけて。』  
 
 確かに、そういう処理をした。なら、この部屋にも謎の物体が現われていてもおかしくないのではないか―――  
 そして、その結論は、おそらく正しいのだろう。  
 
 先ほどに感じた、微妙な違和感。あるいは、彼が、私の部屋に訪れるという行為自体が……  
 本当の彼にとっては、しないであろう行動なのだから。  
「…………」  
「長門?」  
 ああ、どうして気付いてしまったのだろう。もし、気付く事がなければ、もっと……  
 もっ…と……? もっと、何をしたい?  
 もし、気付いていなかったら、私はどうしたかった?  
 この、胸を締め付けるような痛みや、苦しみはどうして?  
「ど、どうしたんだ?!」  
「………わからない」  
 どうして、私は、涙を流しているの……?  
   
 それから少しの間、この彼の胸を借り涙が収まるのを待った。  
 その間、この彼は、特に何もせずに、じっと待っていてくれていた。  
 もし、ホンモノの彼だったら、どうしていただろう…  
「だいじょうぶか?」  
「…うん」  
 きっと、ホンモノの彼でも、この彼と全く同じ行動を取ってくれるだろう。  
 確証はないけれど。  
 さっき、涙が収まるのを待っている間に、一つ気付いた事がある。  
 この彼は、偽者であって、ホンモノではない。  
 ならば、何をしても、誰にもわからないという事ではないのだろうか。  
 その逆を言えば、他の人のことは、自分にはわからない。ということだ。  
 つまり、この彼には何をしても、誰にもわからない。つまり、夢と同じ扱いに出来る、ということ……?  
「…………」  
 でも……それはしてはいけない。することは、簡単。望めばいいだけ。  
 もし、望んでしまえば、ホンモノの彼を裏切る事になってしまう?  
 ……私には、よく分からないけれど、きっとそうなのだろう。  
 
「長門?」  
 それでも、この温もりだけは……  
 きっと彼と変わらないから。これだけは、ずっとさせて欲しい。  
 私が、制限した時間まで、あと少し―――  
 その間だけでも、彼の温もりを共有していたい。これは、私の我侭なのだろうか?  
「もう少しだけ、このままで……」  
「ああ、そうだな」  
 温かい…それに、とても気持ちいい。  
 疲れきっているこの身体には、今はもうそれだけしかわからなくなっていた。  
 この彼は、私に抱きつく以外には何もしてこなかった。  
 他の部屋に現われている誰かも、きっとそうなのだろう。  
 身体の触れ合いを求めるだけの、ただの影。  
 そういう風に置き換えれているはずなのだから。  
「…悪い、長門」  
「……?」  
 いきなり、彼が謝った。  
 何のことだろう、と少し考えたが、その答えはすぐに出た。  
 ―――時間が来てしまったのだ。  
「あ………」  
 彼の温もりが消えようとしている。  
 短くも、長い間。何もせずにじっと私を抱きしめていてくれた、この彼に。  
 せめてもの、お礼を。  
 ちゅっ。  
「………///」  
「な、長門!?」  
 あと、残る時間はおよそ10秒。その間に、気持ちを切り替えて……  
 ホンモノの彼に会った時に、ヘマをしてはいけない。  
「…………」  
 あと、5秒。  
 
「なが……と…」  
 そして、彼が、勢いよくこの部屋を飛び出して行った。  
 1、0。  
 その後を追い、私も扉を開いて、他の部屋の方を見た。  
 そこには―――  
 
「あれっ? あんた……」  
「あの……」  
「これはこれは」  
「………何なんだ」  
 SOS団全員が、各部屋から顔を覗かしていた。  
 良かった……うまく、いっていたようだ。  
 そう思うと、身体が重くなって………  
「長門!? どうしたんだ!?」  
 ああ、彼が心配している……  
 でも、私には、もう、立つだけの体力も、残っては…いなかった。  
 そこで、私の意識は途絶えていった―――  
 
 
エピローグ  
 
「む…こりゃあ引き分け、かなっ?」  
「え〜、そうかなぁ…こっちの方がちょっとだけ大きくない?」  
「そっかな? ん〜、じゃ、ハルにゃんたちが戻ってきたら判定してもらうかい?」  
「うん! ぜったいにあたしの方がおっきいよ!」  
 雪だるま創作合戦は、引き分け、勝者は判定に持ち越しだね。  
 さて、その判定員のみくるたちはっと……  
 おや? あそこを歩いてるのって、そうだよねっ?  
 さっき見た時からあんまり進んでないんじゃないかなっ?  
「キョンくんたち、遅いね」  
「でもま、一応さっきから見える場所にいるから大丈夫っ」  
「そうだけど…」  
 妹くんをなだめつつ、もっかいみくるたちの方を見てみると、  
「あっ」  
 長門ちゃんが、倒れ込んじゃった!?  
「ねえ、誰か倒れちゃったよ!?」  
「あれは…長門ちゃん、だね。妹くん。心配要らないよ。躓いて転んじゃっただけさっ」  
 あの娘だったら、そんな事も無いと思うんだけど……  
 おや? 急に、キョンくんがキョロキョロし始めたかな?  
「あ、ハルにゃんが長門ちゃんを起こしてるみたいだねっ。  
 あっ、こっちに気付いたよっ! おーいっ」  
 ぶんぶんって手を振って答えてあげなくちゃねっ。  
 何か、長門ちゃんがこけてから歩く速さが早くなったような気がするなぁ。  
 ま、気のせいだろうけどねっ。  
 
 で、ハルにゃんたちがあたし達に気付いてからすぐに  
 長門ちゃんを背負ってもの凄い勢いでこっちまで走ってきたんだっ!  
 いやぁ、すっごいビックリしちゃったよっ。  
「有希が熱を出して倒れちゃったの!」  
 
「へ? 長門ちゃんが!?」  
 そいつはやばいねっ! 早いトコ別荘に戻んなきゃ!  
「…わたしは大丈夫」  
「有希っ! こんな時くらい、大人しくしてなさい!  
 ……って言ってもいっつもあなた大人しいけど…取り合えず、言う事聞いて」  
 ハルにゃんって…思ってたより友達思いなんだなぁ。  
「じゃ、執事さん呼んでくるねっ」  
 歩いてもいける距離なんだけど、病人が居るなら車の方がいいからさっ。  
「そうね、じゃ、お願いするわ」  
「おっけーおっけー。じゃ、ちょーっと待っててねっ」  
 呼ぶのは、執事さんだけでいいよねっ。  
 メイドさんにはお風呂とかの準備をしておいて貰っておかないとっ。  
 
「じゃ、お願いしますね。そいじゃっ」  
 さて、執事さんも呼んだし、メイドさんにも頼んだ。  
 色々と、キョンくんたちに聞きたい事もあるんだけどさっ……  
「ま、後でいっか。今は、長門ちゃんのことが重要だよねっ」  
 まあ、そういうこと。おっと、早くみんなのとこに戻んなきゃ。  
 あの執事さん。只者じゃないからさっ。あたしが着く前に執事さんが来ちゃうかもっ。  
 ………なんて考えてたわけなんだけどさ……本当にあたしより先にいるんだよっ?  
 すっごいなぁ。誰かに聞いたら解るかなっ?  
「じゃあ、車には有希を乗せるとして、看病にあたしが一緒に乗るわ。  
 あと……そうね、みくるちゃん? 一緒に来て」  
「は、はい!」  
 これで、4人。長門ちゃんを横にさせるならこれ以上は乗らない方がいいよね?  
「じゃ、あたし達は歩いて戻るよっ。ハルにゃん、取り合えず、任せるよっ?」  
「もちろんよ! 有希? あなたもたまには甘えなきゃダメよ?」  
「………」  
 ふむふむ。あの表情だときっと、『甘えるって誰に?』って感じかな?  
 あたしなら、キョンくんをお勧めしちゃうねっ!  
 
 あ。でも、みくるも捨てがたいけどなぁ…  
 う〜ん、このメンバーだと迷っちゃうやっ!  
「さて、では我々も行きましょうか」  
 古泉くんのその一言であたしたちは別荘に向かって歩きだした。  
 
 先頭は古泉くん、その後ろにあたしとキョンくんが並んで歩いてる。  
 うん、今なら丁度いいやっ。キョンくんに聞きたいこと、聞いておかなくっちゃねっ!  
「ねえ、キョンくん」  
「何です?」  
「ちょっち、いっかな?」  
「どうぞ、何でも聞いてください。俺は一応広い心と一般的な精神を持っているので、  
 解る範囲のことなら、何でも答えますよ。……まあ、例外もあるでしょうが」  
「みんなで板担いでざくざく歩いて降りてきてたけど何やってたのっ?」  
「……その時、吹雪いてました?」  
「ん〜、そういや十分くらいものすごく振ってた時があったかな?  
 でも、あれくらいならそんな言うほどのものじゃないよっ。ただのニワカ雪さっ」  
 そうあたしが答えると、キョンくん、考え込んじゃった。  
「五人でそろーりそろーり降りてきてるの見てさ、妹くんと何故に!?  
 って言い合ってたんだよっ」  
 ちょっとしたら長門ちゃんが倒れちゃって、あたし、結構焦っちゃったねっ。  
 って、キョンくん。無言で歩くのやめよーよっ。古泉くんも笑ってるだけじゃなくってさっ。  
「ねえ、話はかわるけどさっ」  
 そう言って、キョンくんの耳に口を近づける。  
 おや? キョンくん、顔が赤いよっ? そんな緊張しなくても大丈夫さっ。  
「な、何すか? 先輩」  
 なぁんか、他人行儀っぽかったけど、まあいいやっ。  
「みくると長門ちゃんは普通とはちょっと違うなぁってことくらい、あたしにも見てりゃ解るよ。  
 もちろんハルにゃんも普通の人じゃないよねっ」  
 
 って、いきなりあたしの顔、覗き込まないでよっ。ちょっと、びっくりしちまったじゃないかっ。  
「…気付いてたんですか?」  
「とっくとっく。何やってる人かまでは知んないけどね。あ、でもみくるにはナイショだよっ?  
 あの娘、自分では一般人のつもりだからっ!」   
 あ、キョンくん。すっごい驚いてる。そんな顔するキョンくん…初めて見るよっ。  
「あっ。でも、キョンくんは普通だねっ。うん、あたしと同じ匂いがするっさ」  
 別に、みくるが何だってあたしには関係ないしねっ。友達だし!  
 何か、遠くを見てるような顔をしてるキョンくんに、最後に、一言。  
「みくるをよろしくっぽ。あの娘があたしに言えない様なことで悩んでるんだったら助けてやってよっ」  
「それは……もちろんですが」  
 うん。きっと、キョンくんならそう言ってくれると思ってたよっ!  
 古泉くんは、聞こえてたのか、そうでないのかはわかんないけど、始終ずっとニコニコ顔のままだったねっ。  
 そういや、あたし。古泉くんのニコニコ顔以外の顔ってあんまり見てないなぁ。  
 心から驚いてる顔とか、一度見てみたいなっ。  
「それは、またの機会に、ということでよろしいですよね?」  
 長門ちゃんのこともあるし、そうしておいてあげるよっ!  
「どうもありがとうございます」  
 結局、最後までニコニコ顔だったかぁ。  
 
―――それ以外は特に何もなく別荘に着いちゃった。  
「長門ちゃん、大丈夫かなっ?」  
「俺、あいつに結構負担かけてると思うんで結構心配です」  
 おっ、キョンくん。長門ちゃんのことが心配で心配でしょうがないようだねっ。  
「そ、そこまで心配ってわけじゃ…」  
 隠さなくたってもいいっぷ。キョンくんを見てるだけで解るよっ!  
「…そんなに俺、長門の事見てます?」  
 
 んー、割と、かなっ? 長門ちゃんと何かあったのかい?  
「本当に何にもなかったっすよ」  
 それだけ言い残して早足で行っちゃった。  
「彼、涼宮さんにも同じ事言われたらしいですよ」  
 っと、古泉くん。そういや、君も居たんだったねっ。  
「…これはこれは。手厳しいですね」  
 冗談だよっ! そっか、ハルにゃんにも言われたのかい? そりゃあ焦るね、キョンくんも。  
「彼なら大丈夫だと思いますけどね」  
「古泉くん、キョンくんのこと、信じてるんだねっ?」  
「まあ、どちらかと言えばそうでしょうが…」  
 最後を濁して古泉くんも行っちゃった。  
「さって、あたしは……」  
 先にメイドさんの所にでも行こっかなっ?  
 
 それで、メイドさんの所に行ったんだけど……  
 頼もうと思ってたこと全部の仕度がもう終わっちゃってたんだよ。  
 ……古泉くんの知り合いって言ってたけど…一体何者!?  
「まぁ、そんな事より長門ちゃんの様子も心配だなっと」  
 早く長門ちゃんのとこに行かなくちゃっ!  
 
 部屋の中を覗いてみたんだけどさっ―――ハルにゃんが長門ちゃんを押し倒してるよっ!?  
「こらっ! 有希、大人しくしてなさい! 熱がぶり返したらどうするの!?」  
「…熱なんて出てない」  
「そりゃあ、今はそうかもしれないけどさ……でも、今日はダメ!」  
「…………」  
 そんなやりとりの最中、キョンくんと古泉くんがやれやれって言う表情で見合ってた。  
 何か、ぱっと見だけだとさっ。女の子同士と男の子同士が仲良くやってるのかと勘違いしちゃいそうだよっ!  
 
「そう言えば、吹雪の中で見たあのお屋敷って何だったのかしら」  
「それはだn―――  
「みくるちゃんも同じの見たって言ってたからあたし一人だけ見たわけじゃないみたいだし」  
「「………」」  
 一体、何の話なのかなっ? あたしも混ぜて欲しいっぷ。  
「それは、僕からお話しましょう―――」  
 
「―――というわけで、僕たちは集団催眠に陥っていた、という事になるのです」  
 古泉くんが、その場にいる全員にわかりやすい説明をしてくれたよっ。  
 …それでも、あたしにはよくわかんないやっ。  
「まあ、そうよね。スキー場の真っ只中にあんな洋館があるわけなんかないんだし」  
 それでハルにゃんは納得したみたい。あたしにはさっぱりだよっ!  
 ? キョンくんがこっち見てるよっ? きっと、『今の話、わかりましたか?』ってとこかなっ?  
「うへっ」  
 ぜーんぜん、さっぱりだなぁ。そういう意味をこめて、キョンくんには苦笑を返しておくよっ!  
 さて、一応はこれでさっきの『ゲレンデ徒歩下降事件(?)』は解決だねっ。  
「あっ! そうそう! メイドさんがさっ、お風呂入れてくれたんだよっ!  
 みんな、ガクブルっしょ? あっつーいお風呂にさっ、ざばーっと入ってぽかぽかになろうよっ!」  
「お風呂、ですか?」  
 古泉くんが聞き返して来たよっ。  
「うんっ! あっ、でもでも、混浴じゃないよっ? 残念だねっ、キョンくん!」  
「…そこで、何故俺の名前が出るんです?」  
「そんなの、誰に聞いてもあんたの名前が出るに決まってるじゃないの。  
 ここに居る男は、あんたと古泉くんの二人しかいないんだから」  
「古泉も期待していたかもしれないだろう?」  
「はぁ〜…あんたねぇ。谷口のバカじゃないんだから細かい事は気にしないの!」  
 
 谷口…? えっと、ああっ! あの、文化祭の映画を撮ってた時の少年Aかっ!  
「お風呂の事なんだけどさっ。いっこだけ、言いづらい事があるんだよっ」  
 その場全員(長門ちゃんは除く)の目がこっちをむいてるよっ…ちょっと、怖いやっ。  
「実は、お風呂、露天風呂いっこしかないんだよっ」  
「「えぇ!?」」  
 うわっ! 全員(長門ちry)の声が綺麗にそろったっ!  
「それって…混浴、じゃないの?」  
 みくるが恐る恐る聞いてるっ。  
「その事なんだけどさっ! 人数の都合上、男子くんたちにはちょっと我慢してもらうことがあるのさっ!」  
「女子が出るまでなら待ちますけど?」  
 キョンくんが簡単にそう提案してきたけどさっ……  
「ダメよっ!! キョン! あんた、あたし達のお風呂の後でナニしようと企んでるの!?」  
「ナニって、何も考えてないが… それとも何か?   
 お前は俺がお前の風呂の後でナニかしているとでも言いたいのか?」  
「してないの?」  
「……朝比奈さんまで………うぅ」  
 ちょっち、キョンくんがかわいそうかなっ?  
「でねでねっ! あたし達はさっ、露天風呂。まあ、人数も多いしさっ、  
 そこはちょっと我慢してよね? キョンくん」  
「なら、俺達はどうするんです? まさか、そのまま寝ろって言うんじゃ?」  
「まさかっ! ちゃーんとっ、お風呂は用意してるよっ!」  
 してるんだけどさっ、納得してくれるかなっ?  
「なら、問題はないです。取り合えず、今日のところは、それで行きますよ」  
「あなたがいいと言うなら、僕には否定できませんね」  
 ちゃんと、説明が終わってないんだけどさっ…まっ、いっか! 二人共納得してくれたみたいだしさっ!  
「じゃ、お風呂にしゅっぱーつ!!」  
「おお〜〜!!」  
 
「男の方はこちらへどうぞ」  
「あ、はい」  
 こうして、あたし達は、お風呂へ向かったんだっ!  
 
「ああ〜、きもちいい〜! 雪景色の露天風呂なんて、もう完璧じゃない!」  
 ハルにゃん、機嫌いいねぇ。見てるこっちも気持ちいいやっ!  
「へぇ…これが、露天風呂、かぁ〜」  
 みくるが小声で感嘆の声をあげてるよっ。もしかして、露天風呂って見るのも初めてなのかなっ!?  
「…………」  
 無言で、周囲を見回す長門ちゃん。色々興味深いみたいだねっ!  
 ん〜、三人三色、全く違う反応をしてくれるとさっ、誘ったこっちとしても嬉しいやっ!!  
 見てても全く飽きないしねっ! …それにしてもさっ  
「みくる〜っ!」  
「なんですかぁ?」  
「このぉっ! どうやったらこんなにおっきくなるんだよっ!!」  
「ひゃあぁ!?」  
 あたしは、がばぁっとみくるに抱きついておっぱいを掴んだのさっ。  
「これは反則だよっ!」  
「そ、そんなこと言われても…」  
「みくるちゃん」  
「は、はい!?」  
 お? ハルにゃんもゆっくりと近づいてきてるよっ?  
ふにっ  
「ひぃ!?」  
「ほんっっとうにおっきいわね、あなた」  
 つーことで、今みくるは二人から胸を揉まれてるんだっ。  
 後ろからあたし、前からハルにゃん。どーだい? うらやましいだろっ?  
「や、だ、ダメ〜〜!」  
 そういや、キョンくんたち、どうしてるのかなっ?  
 
   
「ああ、俺達は一体何をしているんだろうな?」  
「お風呂に入ってるんでしょう? それ以外のことなら僕には解りかねますが」  
 そんな事は解っているんだ。ただな………  
「どうして、俺達だけ『ゴエモン風呂』なんだ、ということだ」  
 そう、俺と古泉は何故かゴエモン風呂だった。  
 しかも、露天風呂の囲いの隣で。  
「お湯加減は如何で御座いますか?」  
 湯加減はもう最高なんですが。  
「ありがとう御座います」  
 荒川さんが、丹誠こめて火をおこしてくれてお湯はかなり気持ちいい。  
 今日一日の疲れを取るには最高だろう。だがな……  
「このせまいドラム缶でどうしてお前と一緒に入らなきゃならないんだ?」  
「それはですね……ここにドラム缶がこれ一つしかなかったから、としか言いようがありませんね」  
 そんなことも見ればわかる。  
 まあ確かにさ。雪景色の中、ゴエモン風呂っていうのも風流かもしれないが…  
 男同士が肌と肌がくっつくくらいの距離で一緒に風呂に入るっていうのもどうかと思うんだが。  
「仕方ありませんよ。我慢していただきたいのですけどね」  
『きゃ!? す、涼宮さん!?』  
『これ、気持ちいいわね!』  
『あははっ! やっぱり、そう思うかいっ?』  
 それにだ。この薄壁一枚隔てた向こう側で何か如何わしいことが行われている声が聞こえるのも  
 どうかと思うんだがな。  
「それは、あちらの方々におっしゃってください。  
 きっと、涼宮さんなら『それなら耳栓でもつけてお風呂に入りなさい!』  
 とかおっしゃってくれると思いますが」  
 ああ、あいつならそう言いかねんな。  
 
ごー。パチパチッ。  
 足元で燃える木の音を聞きながら、ああ、明日も楽しい日になればいいんだが。  
 と考えていた。だがな、今日みたいな厄介事はもう勘弁だ。  
 俺もたまにはゆっくりと楽しみたいんだ。長門にも休息があってもいいだろう。  
 こんな平凡な夢くらい、かなえてくれたってバチは当たらないだろう?  
 なあ、この星の海のどこかにいるかもしれない誰か。この願いは、贅沢なのか?  
 そうして空を見上げた。  
 そこには、決して街中では見ることのできない、すばらしい星空が広がっていた。  
 
                                     <完>  
 

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