≪―K―≫  
 
ノックをしてから部室に入るといつものメンバーがそこにいた。  
最近は平和だ。  
ウチの団長様が変な行動を起こしさえしなければ、この空間もとても居心地がいい。  
朝比奈さんの淹れるお茶はお世辞じゃなく美味いしな。  
 
そういえば、今日はヤツの姿が見えない。  
聞くと風邪で休みだとのことらしい。昨日のオセロの決着を着けたかったんだがな。またの機会にするか。  
 
指定席に座り、ふと俺は考える。ヤツは一体俺のことをどう思ってるんだろう、と。  
やつの態度を見ていると……きっといい印象は持っていないだろうな。  
俺には分かる。ヤツも深層心理では意外に気づいているんじゃないだろうか。  
 
同属嫌悪。  
 
きっとそんな言葉が似合う俺達の関係。流されるままの人生。事なかれ主義。  
立場も老い立ちも全てが正反対のハズなのに、根元では同じ――――  
 
いや、自分をごまかすのはやめよう。  
 
正直劣等感を感じるのさ。ヤツが羨ましい、そう考えるときがある。  
 
理由? それは……  
 
「皆! これから予定とかある?」  
「え?いえ、特にありませんが……」  
「…………ない」  
俺の答えも、一応ない、ということにしておこう。機嫌を損ねられても困るしな。いつものことだ。  
「今日は我がSOS団の一人が風邪によって休みをとっている……まぁいつもなら風邪ごときに倒れるなんて  
 それでもSOS団の団員か! と、言いたいところではあるけれど……最近は、まぁ、ちょっぴりは頑張っていたと思うし、  
 ……つまるところ、その、お見舞いに行ってあげようかなー、とか思ってるんだけど……」  
「いいですね。それじゃあ差し入れに暖かい紅茶でも用意しますね」  
「……異存は、ない」  
 
我らが団長様が俺の方に目を向ける。まぁ答えは決まっているが。  
 
 
「良い提案ですね。僕は賛成ですよ」  
 
 
そう『俺』は答える。まぁヤツも男に見舞いに来られても嬉しくはないだろうが。  
それでもこういうシチュエーションのイベント時には注意をしておかないとな。  
ヤツはまったく女心をわかっていない。同じ男として情けない行動をとるときがあるからな……。  
 
さて、心の中でもそろそろいつもの『僕』に戻るとしましょうか。  
このままだと、いつ間違って素の自分をさらけ出してしまうかわかりませんからね。  
 
「ほら、古泉君! 副団長が遅れてちゃあ示しがつかないわよ!」  
「ええすみません。今すぐに」  
 
少し後ろから彼女達を眺める。とても良い顔をしています。  
 
彼女達に愛されている彼を少しくらい羨み、妬んだとしてもバチは当たらないでしょう?  
 
……なぁ?神様……  
 
目の前を歩く『神』に聞こえないよう、俺はそう呟いた…………  
                                 ≪―K―≫-END-     
 
 

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