憂鬱だ。ああ憂鬱だ。憂鬱だ。  
今日はテストの返却日。とりあえず赤点じゃなけりゃそれでいいさ。  
いい成績とかは望まん。進級さえ出来りゃあそれで満足さ。  
 
 
順番に呼ばれてテストを受け取るクラスメート。  
国木田が87点のテストをヒラヒラさせながら笑顔でこっちを見る。  
頭のいいやつにはわからんだろうな。クソッ。  
 
そして俺の名前が呼ばれる。テストを受け取るがまだ点数は見ない。  
テストを裏向けたまま席に戻る。  
 
テストを受け取った谷口が緊張の面持ちでこっちに来る。  
同時にお互いの点を見て一喜一憂するのが俺達の習慣だ。  
 
「行くぞ、キョン…」  
 
「あぁ…。」  
 
 
緊張の一瞬だ。  
 
 
『いっせーのーせっ!』  
 
 
「45点」  
 
「38点」  
 
 
 
「いよっしゃぁぁぁ!」  
「うがぁぁぁぁぁ!」  
「ハッハッハ。悪いな谷口」  
「マジかよ…。赤点よりもキョンに負けたのがショックだ…」  
「俺だって結構努力したんだよ。ったく。地獄だったぜ」  
 
 
チラと後ろの方で不機嫌そうな顔をしてるアイツを見る。  
 
…ったく。なんでそんな点で喜んでるのよ。7割ぐらい取りなさいよ。  
 
そう顔に浮かんでる。  
 
いや、確かにお前の教え方は悪くなかったさ。  
さすが普段から眼鏡君に家庭教師モドキの事をやってるだけはある。  
ただ、俺の基本スペックも考慮してくれないか?  
 
「フン。屈辱だわ。私の教え子が45点だなんて。次は7割がノルマだからね。覚悟しときなさい」  
 
頭を抱えながらテストを眺める。次…?またあの地獄の日々がやってくるのか…?  
ここ一週間の記憶を呼び出してゲッソリする。  
 
…ま、それでも一応感謝しとかないとな。赤点を回避出来たのは8割こいつのお陰だ。  
あとの2割は俺の我慢強さ。  
 
 
「ありがとな、ハルヒ」  
 
とびっきりの笑顔で言ってやる。  
 
驚いてる驚いてる。これほど ぽかーん という擬音が似合う顔もそうは無いぞ。  
 
「あ、当ったり前でしょ!?我がSOS団から赤点とる人間なんか出すわけにはいかないし  
 補習なんて事になったら活動に支障をきたすし、それから…!」  
 
若干、顔を紅潮させながら早口で言うハルヒを眺めながら俺は45点のテストを  
大事にポケットにしまった。  
 

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