「ごっそーさん!アンタ結構料理上手いわね」  
 
「まぁな。休みの日には妹に作ってやったりしてるし、それなりに自信はあるぞ」  
 
 
その後、SOS団の今後について一方的に喋られたりTV眺めたりしてると  
いつの間にか深夜と呼べる時間帯になっていた。  
明日も学校なんだ。そろそろ寝んと辛い。  
 
「あ、寝る前にお風呂ちゃんと入ってよ。私の身体汚したままにしたら許さないからね」  
 
風呂。あぁそうか。うん風呂には入らなきゃな。  
…ちょっと待て。何度でも言おう。俺の体は今涼宮ハルヒだ。  
そして風呂に入る。当然、風呂は服を着たままでは入れない。  
…どういう事か、わかるな?  
 
と俺が色々アブナイ妄想をしてると頭にタオルが投げられる。  
 
「私の顔で変な表情しないでよね。このエロキョン」  
 
…どうやらお見通しだったようだ。  
 
「ホラ、それで目隠しして。私が洗ったげるから」  
 
「いや、ちょっとそれは…」  
 
「何よ」  
 
「…恥ずかしい」  
 
プッと噴き出すとハルヒは大声で笑った。  
 
「アハハハ!何女の子みたいな事言ってんの?私は当然服着たままだし  
 自分の裸なんか毎日見てるわ。いいから、ホラ!」  
 
なんか…なんとも言えない気分だ。生殺しってやつか?  
 
タオルで目隠しされ、ハルヒに剥かれていく俺。  
…とてつもなく、恥ずかしい。  
 
素っ裸にされた後、手を引かれて風呂場に入る。  
 
「絶対目隠し取っちゃダメよ。取ったら裸で登校してやるから」  
 
…それはマズい。俺の人生目標「なるべく目立たない」が完全に崩れる。  
というか俺の人生が終わる。  
 
 
「ハイ、次は身体を洗いましゅよ〜」  
 
なぜか赤ちゃん言葉になってるハルヒが勢いよく、俺の身体をゴシゴシし始める。  
これは…。  
 
「…何身体くねらせてんのよ。気持ち悪い。」  
 
「く、くすぐったい。身体は自分でやるからスポンジ貸してくれ」  
 
「だーめ。見えないんだから洗い残しが出来ちゃう。そんなの許せないわ。」  
 
と、さらに勢いよくゴシゴシする。  
 
「ちょ、ちょっと待てハルヒ!待ってくれ!」  
 
「待ーたーなーいー。ほーらキレイになりまちゅよ〜。…ん?」  
 
ふとハルヒの手が止まる。  
 
「…ナニコレ。ちょっとやだ、何よこれ」  
 
なんだどうした。  
 
「アハハハ!何よこれ!こんなんなるの?」  
 
そこで俺の脳裏にふと嫌な想像がよぎった。  
あいつは今俺を洗ってる。  
普通に見れば男が素っ裸の女を洗ってるんだ。  
そして俺の身体は健全な16歳のそれだ。  
普通に考えて…どうなるかわかるよな?  
 
「ちょっハルヒ…!」  
 
慌てて目隠しを取ろうとするが、その手を押さえられて耳元でそっと囁かれる。  
 
「裸で登校」  
 
「…!」  
 
脱力しきった俺はハルヒにたっぷり一時間  
「アハハハ!何これスゴーイ!アハハハ!」  
とかいう訳のわからん嬌声を聞きながらいいように洗われた。  
…もう、どうにでもしてくれ。  
 
 
「はい、OK!もう取っていいわよ」  
 
クタクタになりながらベッドに倒れこむ。風呂ってこんなに疲れるもんだったか?  
…もういい。寝ちまおう。寝たらきっと元に戻ってるさ。うんきっとそうさ。  
 
現実逃避気味に睡魔に襲われるまでベッドでゴロゴロした。  
風呂場から響くハルヒの笑い声を聞きながら。  
 
 
翌朝  
 
 
「ぅわっ!」  
 
「…何よ。うるさい。」  
 
「なんでお前がここで寝てんだ!」  
 
「仕方ないでしょ?ベッドこれ1つしか無いんだから。」  
 
「そういう問題じゃなくてだな…」  
 
「いいじゃない。それよりもさっさと学校行くわよ。」  
 
「まだ早いだろ…。お前いつもこんなに早いのか?」  
 
「折角キョンの身体になったんだから色々と楽しまなきゃ!」  
 
と、ベッドから飛び降りる俺を見る限り、元に戻ってなさそうだ。  
…どうしたもんかね。  
 
 
見慣れない通学路を通り学校へ。  
とうとうこの姿で学校行くことになっちまったか。  
 
「ほら、キョン早く!」  
 
と坂を駆け足で上るハルヒ。ちょっと待ってくれ。  
ただでさえしんどい坂なのにこの身体、歩幅狭いし余計疲れる。  
 
 
そしてやっとの思いで教室に。  
 
「うぃーすキョン」  
 
「あ、おはよー」  
 
谷口と国木田が喋りかけてくる。もう、俺は返事しない。  
同じミスは繰り返さない。人間は学習するもんだぜ。  
 
横でボケーっと突っ立ってるこいつは…多分学習する気無いんだろうな。  
肘で小突いてやる。  
 
「あ、あぁ。おはよう、谷口と…」  
 
「国木田」  
 
小さい声で助け舟を出す。クラスメートの名前ぐらい覚えとけ。  
 
「そう、国木田!」  
 
訝しげな顔をしてる二人だがここは余計な事言われる前にさっさとスルーしたほうがいい。  
 
「ほら、行くわよキョン!」  
 
と、言いながらハルヒの背中を押す。  
しかし、女言葉って慣れないな。  
 
 
その後はやけに難しい問題をあっさりと俺(ハルヒ)が解いて谷口が驚愕したり  
逆に俺は授業中当てられたけど全然とけなくて前から殺人視光線浴びたりと  
いろいろあった。そして次は4限目。体育だ。  
 
着替えに隣のクラスへ行こうとする俺に後ろから声がかかる。  
 
「涼宮さん、どこ行くの?次体育だから早く着替えないと間に合わないのね」  
 
あ、そうか。女子はここで着替えるんだっけ。サンキュー阪中。  
 
しっかりしなさいよ、と目で訴えてハルヒは隣の教室へ向かっていく。  
 
…と。これは。…いいね。実にいい。  
 
クラスの女子達が惜しげもなく下着を晒していく。  
ふむ。初めてこの身体になって幸せだと感じたね。  
 
「涼宮さん。どーしたの?ボーっとして」  
 
…っと。見とれすぎたか。  
阪中に無難な返答をしといて自分も脱ぎにかかる。  
…そういや一度だけ見たことあるが。やっぱりグラマーだな。ハルヒ。  
 
 
と、天国を十分満喫した後体育館へ。女子はバレー。男子はバスケらしい。  
 
 
「涼宮さん、期待してるわよ!」  
「がんばりましょ。隣のクラスなんかやっつけよう!」  
 
…やけに期待されてるな。そういや球技大会であいつアタッカーとして滅茶苦茶活躍してたっけ。  
うし、いっちょがんばるか。  
 
 
しかし、現実はそう甘くないわけで。  
 
空振るわ見当違いの方向に撃つわでもう散々。これ以上居ると何となく怪しまれそうだったから  
調子が悪いと言って見学にさせて貰った。  
嘘じゃないしな。朝から若干だが腹が痛いんだ。  
 
すると男子のコートから雄たけびが聞こえてきた。  
 
「うおりゃぁぁぁぁぁぁ!」  
 
奇声を発しながら物凄い勢いでドリブルしてるのは見間違いじゃなけりゃ、…ありゃ俺だ。  
 
いつもの俺が見せないような無駄な気迫を恐れてかあまり近づかないクラスメート。  
唯一ボールを取りにきた谷口もあっさりかわす。  
…俺のイメージをあんま崩さないでくれ。目立たない普通の人でいたかったのに。  
 
そして勢いそのままゴール下まで走ってきたそいつはカエルみたいに高く飛び跳ね  
そのままゴールに叩き込んだ。リアルで初めてみた。ダンク。  
 
「気持っちいぃー!一回やってみたかったんだ、ダンク!私の身長じゃ無理だったけど…。  
 この身体、最高ー!」  
 
喜んでもらえてなによりですよお嬢様。でも、あんま無茶はしないでくれ。  
 
ざわざわと騒ぎ出す女子。そりゃそうだ。俺だって驚いたさ。  
 
「すごーい。かっこいいのね」  
と阪中を筆頭に  
キャアキャアいい始める女子。  
 
「顔だったら古泉君のがいいけどキョン君も悪くないよねー」  
「純粋そうだからキョン君のがいいかも」  
「えー。やっぱ古泉君だよー」  
 
とか言ってる。うん、悪い気はしないな。  
つーかいつの間にか俺の呼び名はキョンで定着してるのな。  
 
と、つかの間の幸せに浸ってると…。  
 
「も、いっぱぁぁぁぁつ!」  
 
栄養ドリンクのCMみたいな掛け声と共にまた飛び跳ねてる俺。  
あんまり調子に乗るなよ。そのうち怪我するぞ。  
 
 
ズダァァァァン!  
 
物凄い轟音と共に倒れる俺。…嫌な予感ばっかり当たるんだ。  
慌てて自分の身体に駆け寄る。  
 
「おい、大丈夫か!?」  
 
「つっー…。着地失敗しちゃった。だいじょぶだいじょぶ。なんでもな…いっ!」  
 
「どうした」  
 
「…ちょっと捻ったみたい。」  
 
ったく。俺の身体で好き勝手しやがって。  
 
「先生。ちょっとコイツ保健室まで連れていきます。ほら、立てるか」  
 
「無理…かも」  
 
「…ったく。ほら、肩貸すから。」  
 
 
やたら重いコイツを保健室まで連れて行く。  
…保険の先生いねぇし。  
 
 
「ま、いいか。ベッド借りよう。」  
 
ベッドの上に降ろしてやる。  
 
「あーあ。ツイてないなー。折角おもしろかったのに」  
 
「人の身体で無茶すんな。…んじゃ俺は行くぞ」  
 
「なんでよ」  
 
「いや、授業中だし。」  
 
「いいじゃん。どーせ見学してたでしょ?」  
 
目ざといヤツめ。  
 
「それに次は昼休憩だしさ。」  
 
「わぁーったよ。いたらいいんだろ」  
 
ハルヒにダンクがどれだけ気持ちいいか散々聞かされた。  
…あんまり保健室に長居したくないんだ。なんか調子が悪くなるような気がしてさ。  
ホラ、腹の痛みが増してきた。  
 
 
「それでね、ダンクした後あのリングを掴んで他のヤツらを見下ろすのが最高に…ん、どしたの?」  
 
「いや…。ちょっと腹いてぇんだ。トイレ行ってくる」  
 
「ちゃんと帰ってきなさいよ。そのまま逃げたら死刑よ」  
 
死刑て。  
 
 
ハルヒの悪態をつきつつトイレへ。  
腹痛い時は便座の上で座ってるだけで少しはマシになるんだ。  
とりあえずパンツを下ろして便座の上に座る。  
あー…やばい。どんどん痛みが増してきた。なんだこれ。  
 
そして、何気なく下を見下ろした俺が見たものは…。  
 
「血…?ハハ…嘘だろ…?」  
 
血が流れてた。それも結構な量。一瞬で頭がパニックに陥る。  
血ってなんだよ?下血ってやつか?あいつ…なんかの病気だったのか?  
血って…。かなり重症なんじゃないのか?もしかしたら余命幾許も無いのかも…。  
 
「そんな…。ハルヒ…!」  
 
気づくと保健室に猛ダッシュしてた。  
 
「なんでだよ…死ぬなよ、ハルヒ!」  
 
 
乱暴にドアを開けてあいつが寝てるベッドに向かう。  
 
「うわ、ちょ…何?」  
 
「ハルヒ…。なんで黙ってたんだよ…」  
 
「何がよ?つーかなんで泣いてんの?」  
 
「誤魔化すなよ!お前…病気なんだろ!?それもかなりの重症で…」  
 
「…はぁ?」  
 
「なんで教えてくれなかったんだよ!なんで…!」  
 
もう、声にならなかった。俺はハルヒにすがって泣いた。  
 
「…ちょっと待って。1から説明して。何がなんだか分からないわ。」  
 
俺は説明した。  
トイレに行ったらかなりの量の血が出てた事。  
きっとお前はなんかの病気でヤバい状態なんだろうという事。  
死ぬな。お前がいない人生なんて考えられないという事。  
 
「プッ…。アハハハハハ!」  
 
「…んだよ。なんで笑うんだ」  
 
「だって…!だって…!アハハハハハ!」  
 
「…」  
 
爆笑するハルヒをじっと睨む俺。こいつは何がおかしくて笑ってんだ。  
 
「あー苦しいわ。バカじゃないの?それはね、生理よ。」  
 
「セ…セーリ?」  
 
「あんたは今女の子なんだから、当然でしょ?  
 予定日よりちょっと早かったけど…。制服の内ポケットに入ってるハズよ。」  
 
唖然としてポケットをまさぐる。…ん。なんだこれ。  
 
「生理用品。ほら、トイレで付けといで。なんならあたしが付けたげよっか?」  
 
ニヤニヤとイタズラっぽく笑うハルヒ。  
 
「…それじゃ病気は?」  
 
「何言ってんの。あたしは健康そのものよ。」  
 
「…じゃあ余命は?」  
 
「はぁ?なにそれ。知らないわよそんなの。人に自分の寿命なんか教えられたくないわ」  
 
…。えっと…?  
 
「ホラ、さっさと行く!」  
 
保健室から追い出される。  
 
 
「…大変なんだな。女の子って」  
 
ぶり返してきた腹痛と戦いながらトボトボとトイレへ向かった。  
 
 
結局かなりの腹痛で授業もまともに聞けないまま放課後に。  
 
「あー…。死ぬ…。」  
 
「死なないわよ。んな事で。毎月あるんだから」  
 
「ま、毎月…?マジかよ…」  
 
眩暈がした。女の子ってのはこんなのを毎月耐えてるのか?  
 
「大丈夫よ。そんなもん根性でなんとかすればいいわ。」  
 
「お前…ほんと精神論ばっかだな」  
 
「病は気からって言うでしょ。あ、私岡部に呼ばれてるから行って来るわ。本当はアンタが行かなきゃ  
 いけないんだからね。ありがたく思いなさい」  
 
後から行くから先に部室行っといて。  
そういい残してハルヒは教室から出てった。  
 
…欠席って訳にはいかないのか。この腹痛…ありえねぇよ。  
 
結局ハルヒに逆らうこともできずヨロヨロと部室へ向かう。  
部室で少し横になろう…。朝比奈さんに暖かいお茶でも貰って。  
 
コンコン  
 
「どうぞ」  
 
…。帰ろう。うん、帰ろう。  
 
ガチャッ  
 
「おや?どうしたんですか?」  
 
どうしたじゃねぇよ。なんでお前しかいないんだ。  
 
「そんな事言われても。掃除か何かじゃないんですか?ほら、遠慮しないでどうぞ」  
 
こら、腕を引っ張るな。おい。やめろ。  
 
カチッ  
 
おい、何の真似だ。何で鍵閉めるんだ。  
 
「いえ、少しあなたと2人きりでお話がしたくて」  
 
「俺には無いね」  
 
ただでさえ腹が痛いんだ。お前の訳分からん話に付き合って頭まで痛くしたくないぞ。  
 
「まぁまぁ。そう言わずに。…涼宮さんが力を失っているのは知っていますね?」  
 
勝手に語り始めやがった。知るか。  
 
「機関に取ってそれは好都合なんです。神人狩りに行く必要も  
 次の瞬間に世界が消滅するかもしれない、と怯える必要も無くなりますからね」  
 
ほう。それはめでたい。  
 
「今の状態を保持して欲しい。それが機関の総意なんですよ」  
 
「いやだね。俺は元に戻る。いつまでもこんな格好で過ごせるか」  
 
「…だと思いましたよ。僕も、同じ立場ならそう思いますね」  
 
機関と意見が違うじゃないか。  
 
「あくまで僕があなただった場合、です。ですが涼宮さんと入れ替わったのはあなたで  
 僕は、古泉一樹という人間なんですよ」  
 
…よくわからん。  
 
「そして、その古泉一樹という人間はこのままである事を願っている」  
 
「…なんでだよ」  
 
「今のあなたに好意を持っているからです」  
 
…は?なんだって?  
 
「好きだ…と言った方がわかりやすいですか?」  
 
ちょちょ、ちょっと待ってくれ。なんだ。どういうことだ。  
 
「元々、あなたには友情以上の何かを感じていたんですがね。しかし残念な事に僕とあなたは  
 同性です。僕には同性愛属性は無いですからね、恐らくあなたも。」  
 
当たり前だ。俺にソッチ系の趣味の持ち合わせはねぇよ。  
 
「しかし今はどうです?あなたは女性、僕は男性。何も問題はありませんよ」  
 
大問題だ。確かに俺は今ハルヒの身体を借りていて仮にも女性なのかもしれない。  
でも俺は俺だ。男なんだよ。  
 
「些細な問題ですよ。あなたは今、どこからどう見ても女性です。そして僕はあなたに惹かれてる」  
 
おいおいおい。待てよちょっと。落ち着けよ。なんだよこれ。  
こんな謎イベントが発生するなんて聞いてねぇぞ。  
 
「…僕はあなたに気持ちを伝えました。あなたの気持ちが聞きたいですね」  
 
アホか。言うまでも無いだろ。  
 
「無理に決まって…」  
 
そこから先は言葉が出なかった。なぜかって?口を塞がれたからだ。  
…あのアホ古泉の唇でな。  
 
「ちょっ…!ん…!」  
 
一体何しやがるんだこいつは!頭のネジでも外れたんじゃないのか!?  
 
なぜか一瞬、アッカンベーをしたハルヒがドアップで映った。  
 
…って何でこいつこんなに上手いんだ。  
 
「嫌なら逃げれるハズですよ?涼宮さんの力はよく知っています」  
 
あいにく体調が悪いんだよクソ野郎。  
それでも渾身の力を込めて古泉を突き飛ばす。  
 
「このっ…!何しやがるんだ!」  
 
その勢いで部室を出て行く。無駄にドアノブをガチャガチャした後に、鍵を開けて走る。  
 
「あっ。涼…じゃなかった。キョン君どうしたんですか?」  
 
途中朝比奈さんとすれ違ったが立ち止まる余裕もなかった。  
 
 
 
お父さんお母さんごめんなさい。あなた達の息子は今日、男とキスしてしまいました。  
 
 
 
「ハァ…ハァ…あれ?確かこの辺だったよな…?」  
 
ハルヒの家に走ってきたハズなのにな…。  
昨日は色々混乱してて道を詳しく覚えてなかったか。  
混乱度合いは今日のがぶっちぎりだが。  
 
数十分ぐらいだろうか。そこらをウロウロしながら家を探す。  
あー…マズい。あのアホに訳分からん事された上に腹痛も手伝ってクラクラして来た。  
とうとう立ってるのも辛くなり、電柱に寄りかかるようにへたり込む。  
しばらくそうしてると…。  
 
「ちょっとちょっと!なにやってんの!」  
 
上から声がかかる。  
 
「ハルヒ…」  
 
「もう、そんなに辛いの?私結構軽い方なのに。全く…」  
 
よっ、という軽い掛け声と共に背中におぶられる  
 
「すまん、ハルヒ…」  
 
「いいよ、別に。それ、あたしの身体だしね」  
 
 
おぶられて数分。  
 
 
「ほら、着いた。」  
 
「ありがと…。ごめんな」  
 
「だーかーら。いいって。いちいちお礼言わなくって。ムズ痒いわ」  
 
「ありがと…ありがと…」  
 
無意識に俺はハルヒに抱きついてた。  
 
「わっ。ちょ、ちょっと!」  
 
「ごめん…でも、このまま…」  
 
「全く…。わかったわよ。好きにしなさい。胸ぐらいなら貸したげるわ」  
 
「ん…」  
 
 
しばらくハルヒにしがみついたままそうしてた。  
なんだか、心地よくて落ち着けて…。  
 
 
 
「…あれ」  
 
ふと気がつくとベッドの上で毛布をかけられてた。  
 
「…寝ちまったのか、俺」  
 
枕元に手紙が置いてある。何々。  
 
 
『いやぁ驚いたわ。ま、そっちも色々大変だろうけどさ。お互い様なんだしがんばろっ。  
 何かあったら私に頼ってきたらいいから。大丈夫、根性よ根性!』  
 
 
「はは…俺って情けねー…」  
 
 
あいつだって色々大変だろうに。…あいつに心配かけないように  
がんばらないと。  
でも、アイツのことだ。以外と満喫してたりしてな。  
 
 
〜キョン宅〜  
 
 
「妹ちゃん!シャミそっちに行ったわ!ほら回り込んで!」  
 
「わー!待て待てー!」  
 
「1,2の3で行くわよ!1,2の…」  
 
『3!』  
 
「あーっ!逃げられたわ!追うよ妹ちゃん!」  
 
「なんか今日のキョン君おもしろいよー?」  
 
「ホラ、無駄口叩いてる余裕なんか無いわ!次は後ろから行くよ!」  
 
 
 
 
なーんてな。あいつだって戸惑ってるだろうさ。よく知らない家でさ。  
今度は俺のほうから行ってやるかな。  
 
 
 

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