――私は観察者  
 
                       最低限の干渉で十分だったのに――  
 
――私の思考にエラーが生じるようになった  
 
                       それでも近づきたかった――  
 
――私が彼の存在を重要視していることが原因だ  
 
                       あの人の傍にいたい――  
 
――私はエラーの蓄積により暴走した  
 
                       気持ちが抑えられなかった――  
 
――それにも関わらず彼は私の存命を許した  
 
                       あの時の手の温もりは、ずっと忘れない――  
 
――何があっても彼を守ると決めた  
 
                       何があっても彼のために尽くすと決めた――  
 
 
 
――――それなのに――――  
 
 
「キョン!あたしは先に部室にいってるから、あんたもさっさと来なさいよ!」  
そんなことを言って突っ走っていくハルヒ。あいつ今日掃除当番じゃなかったか?  
俺は退屈な授業を終え、部室へと足を進めていた。まったくもう少し面白くやってほしい。  
だいだい学んだところで、使わない知識の方が多いんだから時間の無駄ではないだろうか。  
我々はもっと有意義に時間を使うべきであろう。  
そんなことを考えているうちに、部室の前に到着したようだ。  
俺はいつも通りノックをする。あの可愛らしい朝比奈さんヴォイスを待つ。  
「入って」  
しかし帰ってきたのは、長門の声だった。…いや、お前に不満は、もちろんないが。  
とりあえず俺はその言葉に従う。  
ガチャッ  
部屋の中を見ると、そこには長門が本を読んでいた。これもいつも通りだな。  
「お前だけなのか?」  
「………」  
無言で頷く長門。しかしそんなはずはない。ハルヒが先に言っていたはずだ。  
「ハルヒはまだ来てないのか?」  
「………………」  
んっ?長門はさっき以上にだんまりになる。頷きもしない。  
どうかしたのだろうか。俺は再度長門に問いかける。  
「なぁ、長門。ハル「なぜ?」――――えっ?」  
俺は一瞬、何が起こったのか理解できなかった。  
――長門が…俺の発言に…割り込んできた?  
すべての言葉を聞いてから発言する長門にしては、ありえないことだ。  
何について問われたのかもわからない。ただその時の長門は、とても印象深く。  
一見すると無表情にも見えるその顔は、まちがいなく――。  
 
 
「なぜ、…涼宮ハルヒ?」  
 
 
――とても…不機嫌そうだった。  
俺はそんな状況に混乱するばかりだった。  
だってそうだろう。長門がそんな感情を表に出していて、  
しかもその理由がわからないのだ。俺じゃなくても混乱するね。  
「い、いや…あいつが先に言っているって言っていたからなんだが…」  
「…そう」  
一応理解はしたようだが、まだ納得していないようだ。その姿は拗ねているように見える。  
なぜハルヒのことで、お前がそこまで不機嫌になるんだ?ハルヒがお前に何かしたのか。  
 
「なぁ、長門。ハルヒと喧嘩でもしたのか?」  
「何もない」  
「そんなはずないだろう。お前が何もないのにそんな態度をとるはずがない」  
「………」  
黙っている長門。何かを言うのを躊躇しているようだ。  
「…あなたに言わなければならないことがある」  
おう、なんだ。お前の話ならいくらでも聞いてやる。  
「私の中でエラーが生じている。それにより意思が不安定になっている」  
「エラーって…この前と同じやつか!?」  
「正確に言うと少し違う。でも大部分は同様のものと予想される」  
なんてことだ。長門がそんな状態だったなんて。  
今まで長門の苦悩を知らなかった自分が憎たらしい。  
「…それはハルヒが原因なのか?」  
「涼宮ハルヒは一要素ではあるが、大きなものではない」  
「じぁ、その大きなものって何かわかるか?」  
「不明」  
「そう…か」  
俺はつい溜息をついてしまった。まったく理由もわからないのでどうしようもない。  
ハルヒが原因ではない?ならばあの長門の態度はいったいなんだったのだろうか。  
 
 
「私はもうここにいるべきではない」  
 
 
――なんだって?  
 
 
「このままでは私は、以前のような行動をとる恐れがある。だからその前に対処すべき」  
 
 
――何を…言っているんだ?  
 
 
「あなたが認めるならば、私は自分を消去す――」  
「そんなことさせるか!!」  
 
 
――ふざけんな。長門の消去を認めろだと。  
たとえ長門が俺に危害を加えようともな、俺は絶対にそんなことは認めないんだよ。  
「いいか!?俺は何があっても認めないからな!絶対に消えるなよ!?」  
言えば言うほど、俺の心はヒートアップしていく。  
思わずこの前のように、長門の手を掴んでしまったがかまわない。  
「――――」 コクン  
長門は目を丸くしながら、小さく頷いた。  
俺は安心して手を離そうとして――。  
 
「有希に何してんのよぉぉー!!」  
――ハルヒに蹴り飛ばされた。俺はもう死んでいる。  
ドガシャァ!  
「大丈夫!?キョンに変なことされなかった!?」  
「…………」  
吹っ飛んでいく俺を尻目に、長門に尋ねるハルヒ。なんの心配をしてるんだ、お前は。  
長門はそれに答えない。あっ、俺にしかわからないだろうが、不機嫌そうな顔だ。  
「かわいそうに。話せないようなことをされたのね!あたしがきっちりと罰を与えるからね!」  
それをどう誤解したのかハルヒは一人で話を進めていく。…って、ちょっと待て!  
「俺は何もしていないぞ、ハルヒ!」  
「嘘ついてんじゃないわよ!有希がおとなしい性格だから、  
 やらしいことをしてたんでしょ!最低ね!死刑よ、死刑!」  
ハルヒは俺の言い分を全否定する。すこしは話を聞け!  
「…ところでお前。先にいったのに、なぜ俺より後に来るんだ?」  
「知らないやつに告白されてたのよ!話を逸らさない!」  
さすがにダメか。しかしこいつに告白だと?そいつは何を考えているんだ?  
その後俺とハルヒは、朝比奈さん達が来るまでくだらない言い争いをしていた。  
 
 
――長門をほったらかしにして…。  
 
 
 
部活終了後、俺は長門を呼び止めた。頼みたいことがあるからだ。  
「何?」  
「あー…実はな、次の土曜日のパトロールで、俺とお前が組むようにしてくれないか?」  
「……」  
長門は答えない。俺は答えてくれるまで待つ。  
「…今度は誰と会うの?」  
「…?誰と会うって……。あっ!」  
どうやら長門は以前の朝比奈さんのことを言っているようだ。どうやら根に持っているらしい。  
「違う。今回はそんなのじゃない」  
「じぁ、なぜ?」  
ちゃんと説明しなければいけないようだ。恥ずかしいがここは我慢だ。  
「俺が、お前とデートをしようと思ったからだ」  
 
「――――――えっ?」  
長門はよほど俺の発言が意外らしく、完全に動かなくなっている。俺自身そう思うね。  
「お前が今大変な状態だろ?だからお前のために何かできないかと考えてな。」  
そう、俺が長門のためにできることを考えていた。  
俺が直接できることは、何もないだろう。  
だがエラーは、おそらく長門の感情から引き起こされものだろう。  
それなら俺でも長門の気を紛らわせて、少しでも弱めることができると思ったのだ。  
「………」  
長門はいまだ、動き方を忘れたかのように止まっている。  
「まぁ、俺なんかとデートは嫌だよな。嫌だったら俺と組まないようにしてくれ。じぁ、またな」  
俺はそう言ってさっさと帰った答えを聞くのが怖かったんだよ、畜生。  
次の土曜日が楽しみだ。  
 
 
余談だが、長門有希はそれから一時間は動かなくなった。  
 
 
 
ついにその日がやってきた。そう、長門とのデート(予定)の日だ。  
同じ組み合わせになったことは何度もあるが、意識が少し違うだけで感じ方がずいぶん違うようだ。  
俺はこの日まで、遠足が楽しみで夜寝られない小学生のようになっていた。  
落ち着け、俺!これは長門のためなんだぞ!おれがこんなになってどうするんだ!  
こんな状態だったので、集合時間に遅刻してしまい奢らされたのは、言うまでもない。  
 
 
 
「じぁ、皆。いつもみたいにクジ引いて。」  
キター!  
俺の心臓はさっきから喧しいほど鳴り響いている。  
…実を言うと俺は、さっきから長門の顔が怖くて見れない。小心者だな、俺も。  
全員クジが引き終わる。  
長門はどっちを選んだのだろうか。  
 
 
結果は――。  
 
 
「ふむ…あたしに、みくるちゃんと古泉くん。それとキョンと有希ね」  
 
 
――どうやら長門と同じ組になったようだ。  
…えっと、と言うことはOK…なんだよな?まさか間違いじゃないだろうな。  
俺は長門を見る。長門は目を合わせようとしない。これはもしや、照れ隠しだろうか。  
「これから探索してもらうけど…、いいこと、キョン!  
 有希があまりにも可愛いからって襲っちゃダメだからね!」  
俺が幸せな気持ちに浸っていると、ハルヒがそんなことを言い出した。またそれか。  
俺はこいつを無視することにした。だがこいつは、俺の態度に不満があるらしく、  
「無視するんじゃないわよ!!」  
と、ご丁寧にも耳元で叫んでくれた。耳が痛い。  
そんなこんながあり、今いるのは俺と長門の二人だけになった。  
俺はまず第一に、長門に言わなければならないことがある。  
「ありかとな、長門」  
俺の申し出を受けてくれて。俺は長門にお礼を言う。  
「これはあなたが私のためにしてくれたこと。感謝するのは私の方」  
「そうか?そう言ってくれるなら誘った甲斐があるな」  
「そう」  
そう言って話を切る長門。気のせいかその顔はどことなく嬉しそうで――。  
…って、こんなところで立ち話している必要もない。時間ももったいない。  
「いくぞ、長門」  
「………」 コクン  
 
 
――俺と長門は、いつのまにか手を繋いでいた。  
 
 
その後俺と長門の、いつもの行動とは少し外れたデートが始まった。  
どのように外れているかと言うと、なんと長門が図書館には行きたくないと言うのだ。  
もちろん俺としては、行かない方が長門とたくさん話せるので、断然そちらの方が嬉しいが。  
なぜかと聞いても、長門は答えなかった。少し拗ねていたが。  
その後はまぁ想像できるだろうが、ショッピングを楽しんだ。  
物欲のない長門にとっては、つまらないかもしれないと心配していたが、  
どうやら杞憂だったようだ。長門は…楽しそうだった。見間違いなどでは決してない。  
ショッピングの際、長門に似合っていたアクセサリーを買ってやった。もちろん、俺の奢りで。  
長門は、俺の『私服姿が見たい』と言うわがままな要望にも応えてくれた。  
試着室から出てきた長門は――とても可愛かった。思わずその服も買ってしまった。俺の奢りで。  
それで店を出た時…その、事故で長門の胸を触ってしまったが、ここは割愛させてもらう。  
その他もいろいろあったが、半日はとても短かった。  
 
 
 
「さて、もうそろそろ戻らないとな」  
「………」  
俺と長門は集合場所へと足を進める。  
買った荷物は全部長門の家に置いてきた。他のやつらにばれたら面倒だからな。  
なので話し合った結果、この後クジには細工をしないように決めた。さすがに怪しすぎるからな。  
――それを決めた時、長門が寂しそうだったのは、期待からできた幻覚だったのだろうか?  
「長門。少しは気が晴れたか?」  
「蓄積されていたエラーはかなりの量が消去された。しばらくは問題ないと推測される」  
「そうか。俺はお前の力になれたんだな」  
「………」 コクン  
それならよかった。俺も楽しめたし、一石二鳥だな。  
 
 
「――――私は」  
「……えっ?」  
 
 
――それは唐突で、まるで……。  
 
 
「私はこの数時間…あなたといて…本当にたの――」  
 
 
『ピリリリリリリ』  
「うおぉ!!」  
 
 
場の空気を読まず、いきなり鳴り出したのは俺の携帯だ。  
なんてことだ。誰だ、こんなタイミングで電話してきたやつは!?  
「スマン、長門!少しだけ待っててくれ!」  
「………………」  
長門の返答は聞けなかったが、そんな場合ではない。  
相手は――ハルヒ!?  
 ピッ  
「なんなんだ、ハルヒ!?」  
『なんなんだ、じゃないわよ!今何時だと思ってんのよ!さっさと来なさい!』  
電話からハルヒの叫び声が聞こえる。ちょっとまて。集合時間まで十分はあるぞ。  
『うるさいわね!集合時間の十五分前には集まるべきなの!』  
むちゃくちゃだ。だいたい今までそんなこと言わなかっただろうが。  
『それよりね本当に手出してないでしょうね!?あんたには前科があるんだから!』  
「ぐぁっ!」  
前科というのは完全に誤解だが、今回は事故とは言え長門の胸を触ったので強く言い返せない。  
『もういいわ!とにかく急いで来なさい!団長命令!』 ブチッ! ツー ツー  
まずい、団長は怒っているようだ。なぜこんなに。  
「長門!急いで集合場所に行くぞ!」  
俺は長門の方を振り向かずにそう伝え、一人で走っていった。  
 
 
――そう、だから彼は気づかなかった。  
 
 
――長門有希が、彼の携帯を見ていたことに。  
 
 
――その視線に激しい憎しみが込められていたことに。  
 
 
月曜日の放課後、俺は部室へと向かっていた。  
――結局あの後、特に変わったことはなかった。  
午後の組み合わせは、俺と古泉、SOS団三人娘という、なんの面白みもないものだった。  
…ただ印象的だったことがある。ハルヒと長門の間で、朝比奈さんが妙にそわそわしていたのだ。  
あれはなんだったのだろうか。  
そんなことを考えているうちに、部室の前に到着したようだ。コピペって便利だな。  
俺はそんな謎の電波を受信しつつ、ドアをノックしようと――。  
 
 
「で、話ってなんなの?」  
 
 
――して、手が止まった。今の声は…ハルヒか?  
俺は無性に気になり、音を立てないようにドアを開けた。  
部室の中を見ると、そこにはハルヒと…長門がいた。  
二人は向かい合うように、そこに立っている。  
こいつらで…話?しかもハルヒの発言から推測するに、どうやら長門から持ち出したようだ。  
長門がハルヒに言うこと…?そんなもん、長門のエラーのことぐらいだろう。  
だがそれは、この前のデートでましになったはずだ。  
それにそんなことをハルヒに言ってもどうしようもないだろう。長門はそんな無意味なことはしない。  
「早く話したら?皆が来ちゃうわよ?」  
「…………」  
ハルヒはなかなか話を切り出さない長門に、不思議そうにそう言った。  
やがて長門はゆっくりと口を開いた。――その表情には、何かに対する決意が込められていた。  
「…冷静な話し合いを行いたい。まずは落ち着いて聞いてほしい」  
「それはわかったわ。だから早く言ってくれない?」  
ハルヒは急かすように言った。少しは待ってやれ。  
長門はその言葉に答えるように、ハルヒをまっすぐと見据え――。  
 
 
「私は、あなたが嫌い」  
 
 
――そう…はっきりと告げた。  
 
 
「――――――」  
世界から音が消えたと思えるほどの沈黙。当然だろう。  
俺もハルヒも、長門があんなことを言うなんて想像もできなかった。  
「――え、ごめん有希。もう一度言ってくれる?」  
「私はあなたが嫌い。憎んでると言う方が適切かもしれない」  
もう一度断言する長門。  
「あ…あなたいきなりなにを言っているのよ!?」  
「私は話の前に、落ち着いて聞いてほしいと言った」  
「ふざけんじゃないわよ!いきなりそんなこと言われて、落ち着いていられるわけないでしょ!?」  
長門の無表情で言われた言葉に、さらに激怒するハルヒ。  
「話があるからって聞いてみたら、人のことを嫌いだの何だの…、  
 有希はあたしを馬鹿にしてるの!?」  
「そのような事実はない。ただ私は自分の意思を伝えただけ」  
「それが馬鹿にしてるって言うのよ!いいかげんにして!」  
すでに爆発しているハルヒに対し、あくまで淡々と述べる長門。  
――なんなんだこれは…。何がどうなっている。  
「だいたいね!あたしの何が不満だって言うの!?理由を言いなさい!理由を!」  
ハルヒは怒鳴りながら長門に尋ねた。それは俺も知りたい。  
長門はあの時、エラーは減少してしばらくは問題ないと言っていたはずだ。  
くそ!やっぱり俺じゃ力になれなかったのか!?  
「どうしたの!?早く言いなさいよ!それとも言えないようなくだらない理由なの!?」  
長門はハルヒのその言葉に反応し、ハルヒを睨んだ。  
 
      ...  
――そう、睨んだ。長門はその時はっきりと、自分の意思をあらわにしていた。  
 
 
「くだらないことなどではないっ!!!」  
 
 
――長門は初めて、自分の怒りを叫んだ。錯覚だろうか?俺にはその時の長門が――、  
 
 
――あの世界での…ただの人間であった長門と、ダブって見えた。  
 
 
「んなっ――!?」  
長門の怒声に、ハルヒは一瞬あっけにとられ…、  
「私が不満なのは、あなたと彼の関係」  
長門はその隙を突くように言った。…彼?……それはもしや――。  
「彼って…もしかしてキョンのこと!?ちょっと!キョンは関係――」  
「ある。むしろ話の本題はそれ」  
長門の一言に愕然とするハルヒ。――俺とハルヒの関係だと?  
「ふ、ふん!何が不満なのかは知らないけど、あたしがキョンとどう付き合おうが有希には関係ないでしょ!?」  
「確かに普通はあなたが、誰とどう付き合おうがあなたの自由」  
「ほら見なさい!だいたいね――」  
「しかし相手が彼なら話は別」  
「――――っ」  
長門は再びハルヒの言葉を切って、そう言った。  
――だが長門よ。それではまるでお前が俺のことを……。  
「近い将来、彼と結ばれるのはおそらく涼宮ハルヒ、あなた」  
「ふぇえ!?」  
なっ…長門はそんなことを考えていたのか!?奇妙な声を出したハルヒも、顔を真っ赤にしている。  
「なっ…ゆ、有希!?あなたいきなり何言って――」  
 
      . . ...  
「しかし…だからこそあなたの態度が納得できない」  
 
 
――長門の声の質が、再び変化した。  
「態度…ですって?」  
「そう。あなたは将来、彼の愛を受けるだろう。今だって彼に面倒を見てもらっている」  
「そ、それが何だって言うのよ!?」  
 
 
「だけど――あなたは彼のために何かした?」  
 
 
――最初のように冷静に話してはいるが……。  
 
 
「あなたは彼のために何もしていない。それなのに彼があなたと結ばれる――」  
 
 
――それは心に堤防をつくり、先ほどの憤怒を押さえ込んでいるだけで……。  
 
 
「私は…っ!それが、許せない!!!」  
 
 
――それが決壊してしまうのは、自然なことだと言えた。  
 
 
「くっ――!!」  
ハルヒが長門の勢いに押され、何も言えない。長門はそれを見逃さない。  
「あなたは彼を利用して自分の不満を解消しているだけ!」  
ハルヒにしゃべらせる暇さえ与えない。長門、お前は冷静な話を望んでいたんじゃないのか。  
「あなたは彼を自分のためにある道具としか見ていない!  
 あなたはただ自分の思い通りになるものがほしいだけ――!」  
「違うっ!!!」  
長門の言葉を、ハルヒは全力で否定する。  
「ふざけたこと言うのも大概にしときなさいよ!!あたしがキョンを道具として見ているですって!?  
 そんなわけないじゃない!!」  
外の俺を置き去りにして、どんどんとヒートアップしていく二人。  
俺はどうにかして止めようとするが、体がどうしても動かない。  
「あたしはキョンに何もしてあげてない!?何言ってるのよ!!  
 このSOS団は誰がつくったと思っているの!?あたしでしょ!?」  
「っ――!」  
痛い部分を突かれ、今度は長門が口を閉ざす。確かにSOS団で楽しかったこともかなりあった。  
――それに俺と長門が会ったのだって……。  
「それに…あたしとキョンの関係がどうであれ、そこになんで有希が突っかかるの!?  
 なんで有希の許しをもらわなきゃいけないのよ!?」  
「っ!私には言う権利がある!!」  
「何よそれは!?たとえどんなことでも、あなたがあたしを罵倒していいわけ――!」  
さらに険悪な雰囲気になっていく二人。ちょっとしたことで殴り合いになりかねない状態は――。  
 
 
「私は彼と、あなた以上に深い絆を持っているっ!」  
 
 
長門の爆弾発言によって、消失した。  
「………えっ?」  
ハルヒはその言葉に愕然とし、今までの感情はどこにもない虚ろな瞳で長門を見る。  
「私はあなたの知らないところで彼との時間を過ごした!  
 私は彼を助け、彼は私を救ってくれた!お互いが助け合う…そんな関係を続けてきた!」  
長門は今の今まで言えなかったことを、すべて吐き出す。  
「でも彼と結ばれるのは涼宮ハルヒ!どうして!?涼宮ハルヒは彼に害を及ぼしている!  
 それなのに、なぜ彼の愛を受ける!?なぜ他の者ではない!?」  
――俺には、長門がその言葉をハルヒに言っているのではなく…。  
「生まれ方が…立場が違う。ただそれだけで…。私は――」  
――どこかにいる、情報統合思念体に言っているように見えた。  
 
 
「彼に、あれほど尽くしているのにっ!!!」  
 
 
「ぁ…う……え…?」  
ハルヒが見たこともない表情をして――動揺し、怯えていた。  
「……そ…そんなこと…言われても。決めるのはキョン…だから……あたしは悪く…ない」  
震えながら言うハルヒの声は、とても弱々しい。  
――しかし長門は容赦しなかった。  
「あなたは、私の彼との時間を妨害した!」  
「――――!」  
ハルヒは長門の怒声に、びくっと肩をすくめた。  
「私が彼と二人でいる時に、あなたは横から割りこんで邪魔をした!」  
「ち…違う。あたしは……有希のことを…心配して――」  
「私はそんなことを望んでいない!!」  
「っ!うぅ…」  
「あなたは、彼と私が一緒にいることが嫌だっただけ!  
 それを、私が心配だからなどと言い訳しないで!!」  
ハルヒを圧倒する長門。  
「私はそれが一番許せない!自分のためにしているにもかかわらず、自分の気持ちをごまかし、  
 私のためだと言い邪魔をした!私は彼のことが迷惑だとは一言も言っていない!!」  
長門がハルヒに声を荒げ、訴え続ける。――ここまで行くと、さすがの俺も理解する訳で…。  
「自分の気持ちを見ようともしない…そのような状態でありながら彼に愛を与えてもらえる!」  
長門のエラーは、長門がハルヒを憎むのは……。  
 
 
「私はっ、それが絶対に――許せないっ!!!」  
 
 
――つまり、すべて俺が理由と言う訳だ。  
それがわかったのなら俺はなんとかして、この喧嘩を治めるべきだろう。しかし、どうやって…?  
先ほども言った通り、俺の体はまったく動かない。くそっ、チキンか俺は。  
そんな状態だった俺は、とりあえず足を動かそうとして、  
――半開きだった部室のドアに、なぜか勢いよく突っ込んだ。  
ガン!ビッターン!  
「――そんなっ!」  
「……えっ…キョン……?」  
――そして俺は部室の中へ乱入した。  
…いや、まずいだろこれは。  
 
「この場に来るなんて…、予想していなかった!」  
自らの失態を後悔する長門。こいつは始めから、そんなに気持ちが不安定だったのか。  
そんな考えがわかったわけではないだろうが、長門は俺の方を、すまなそうな表情で見つめていた。  
――長門は俺が怒ると思っているのだろうか?長門の強い意志から生まれた、必死の自己主張を…。  
「…………ぃょ」  
「――何?」  
長門から視線を動かし声がした方向を見ると、当然そこにいるのはハルヒなわけで。  
その姿は先ほどまでの空虚なものではなく……おそらく、嵐の前の静けさと言われるものだった。  
「あんたのせいよ!!」  
――刹那、俺の中は真っ白になった。  
「あんたのせいで、こんなことになったのよ!!なんであたしが有希と喧嘩しなきゃいけないのよ!!  
 あんたが有希を誑かしたからこんなことになったんでしょ!!どうしてくれるのよっ、キョン!!」  
ハルヒの行き場のない怒りは俺に向けられた。その大きな瞳からは…涙が零れていた。  
だがこいつの言葉は間違っていない。こんなことになったのは、俺が原因だ。  
「彼は何も悪くない!!」  
――しかし長門はその答えを認めなかった。  
「彼は私のことを誑かしていない!この事態は私の独断によるもの!彼を侮辱しないでほしい!  
 これ以上彼に迷惑をかけないで!!」  
長門は一心に俺を庇い、ハルヒを責める。俺はどうすればいいのかわからず立ち尽くしていた。  
「あっ……あたしは…有希を庇おうと……」  
長門の言葉に衝撃を受けて、ハルヒは俯いてそう呟く。  
「あたしは……悪くない!!そうよ、こうなったのはキョンのせい。あたしは間違ってないの!!」  
ハルヒは気が動転して、自分でも何を言っているかわかっていないのかもしれない。  
 
 
「そう、キョンなんかいなければ…、最初からいなかったら、こんなことには……」 ドドドドドドドドッ  
 
 
その言葉に答えるように――、世界が 揺れる。  
 
 
「っ!?いけないっ、涼宮ハルヒ!!それを望んでは――!!」  
 
 
長門の声と表情には、焦りの色が見られた。――これは、ハルヒの……。  
 
 
「キョンなんか…消えてなくなれぇっ!!」 ドオォォォォン!!  
 
 
――ハルヒの能力が、発動した。  
 
 
世界が作り直される。俺のいない世界へ――。  
「情報…介入…改変!」  
長門の必死な声が聞こえる……。――だが俺はすでに何も見えない。  
俺はどうなってしまうのだろう。  
 
 
…長……門――  
 
 
「…………んっ…、うん?」  
目を覚ますと、そこには知っている天井があった。…って知っている?  
俺は体を起こして辺りを見回した。どうやら俺が寝ていたのは和室のようだ。  
――と言うことは、ここは長門の……。 スーッ  
そこまで考えた時に目の前の襖が開いた。そこにいたのはもちろん、この部屋の主である長門だ。  
長門はトコトコと俺に近づいて、俺の横に遠慮深く座った。正座で。  
今の長門は先ほど部室で見せていたものとは違い、感情を表に出さない無表情な状態だ。  
「……大丈夫?」  
正直自分がどんな状態なのかわからないが、俺が答えるのはひとつだけだろう。  
「あぁ、もう大丈夫だ。お前が俺をここまで運んでくれたのか?」  
「………」 コクン  
それなら俺はまた長門に世話になったようだ。  
「悪いな。また迷惑をかけた」  
「…それは違う。謝るのは私の方」  
「お前が…?まさかさっきのことか。それこそ俺の――」  
「あなたは何もしていない。私が勝手に特別な感情を抱き、私が勝手に暴走しただけ」  
即座に俺に言葉を返す長門。そんなに俺を悪者にしたくないか。  
「暴走…?それは違うぞ、長門。あれはお前が溜め込んできた感情だ。それを出すことが、悪いはずがない」  
「…………」  
長門は答えが見つからないようで何も言わない。――嫌な沈黙が広がる。  
「あ、あー…ところで、あれからどうなったんだ?」  
苦し紛れに言った一言。だがこれは、今最も重要なことだ。  
「……涼宮ハルヒの力は強力だった。介入し打ち消すことを試みたが、完全には消せなかった。  
 私の力ではあなたの命が消されないようにすることしかできなかった」  
長門は俺にしかわからないレベルで、辛そうな表情をしていた。おそらく自分の無力さを嘆いているのだろう。  
 
 
――なぜだろう。俺はその自分の見解が間違っているように思えた。  
 
 
「結局…俺はどうなったんだ?」  
俺はその小さな疑問を押し殺して尋ねた。長門は言いずらそうに――、  
 
 
「他者からもうあなたの存在は消えた」  
 
 
――そう、告げた。  
……それは他のやつにとって、俺はもう死んだと言うことなのだろうか。  
「だがそれなら他の人間に、俺が生きてることをわからせたらいいんじゃないのか?」  
俺は自分なりに考えた解決策を提示する。今まで通りの生活に戻れると思って。  
 
 
「あなたの解釈は根本から間違っている」  
 
 
――だが長門は俺の期待を打ち砕いた。  
 
 
「どういう……ことだ?」  
俺は長門の言葉が理解できず、疑問をそのまま口にした。            ...  
「あなたは他者から見て死んだと解釈したようだが、それは間違い。私はあなたが消えたといった」  
そんなことを言われても俺には違いがわからない。   .........  
「つまり…あなたは他者にとって最初から存在しない、生まれてこなかったことになっている」  
――なっ、と言うことは……。  
「そしてあなたが存在したことで発生した事柄は、すべてなかったものとされリセットされた。  
 故にあなたが存在していたことを証明するもの――所有物や戸籍などは残らず消去された」  
――それではもう、俺ではどうすることもできないわけだ。  
「だったら……なんで長門は俺のことを覚えているんだ?」  
そうだ、俺がいなかったことにされたのなら、長門だって例外ではないはずだ。  
「私は涼宮ハルヒの力に介入した存在だから、影響を受けずにすんだ」  
そう言った後、顔を俯けてこう続けた。  
「ただ……私自身以外の、あの時あなたが買ってくれたものはなくなった」  
長門は悲しそうな顔をしていた。あのデートの時に買った品物のことだろうか。  
「じぁ…ハルヒは、他のやつらは今どうしているんだ?」  
俺は気になったことを尋ねた。ハルヒなら俺のことを知らなくても、面白がって何とかしてくれるかもしれない。  
「あなたがいなくなったことで、涼宮ハルヒが三年前の七夕の日のことは一人だけで行ったことになった。  
 故に涼宮ハルヒは北高に興味を抱かず、別の高校へ入学した」  
――以前長門が作った世界でハルヒが俺の話を聞いたのは、あの七夕のことがあったからだ。  
つまり、この問題でハルヒを頼ることはできないようだ。  
ハルヒはもうあの学校にはいないのか。……それはもしかして。  
「SOS団は……なくなったのか?」  
「…………」 コクン  
――大切だったものを…失った。さまざまな出会いがあったあの場所が……。  
「朝比奈みくると古泉一樹は涼宮ハルヒと同じ学校にいると思われる。  
 涼宮ハルヒの特異な力はこの世界でも存在するから」  
?先ほど押し殺した違和感が再び現れた。ハルヒのことは断言していたのに他の二人はやけに曖昧だ。  
だがその疑問は後回しにしよう。今はそれよりも聞くべきことがある。  
「長門、お前は行かなくていいのか?ハルヒのところに」  
そう、ハルヒを監視するために生み出された長門がこんなところにいることが認められるとは思えない。  
「問題ない。私が涼宮ハルヒを監視する必要はなくなった」  
「そんな馬鹿な。お前は嫌でもハルヒを監視しなければいけないはずだ」  
そうだ、あの情報統合思念体がそんなことを許すはずが――。  
 
 
「情報統合思念体はこの世界から完全に消滅した」  
 
 
長門はとんでもないことを、俺に告げた。  
 
 
「――なんだって?」  
俺はアホみたいに聞き返した。  
「情報統合思念体が消滅した。理由は不明。おそらく涼宮ハルヒが無意識に、  
 自らの望みを妨害する存在を排除しようとしたからだと考えられる。  
 また、それにより私はただの人間になった」  
長門はそんな重大なことを、さらりと言う。しかしそれだと疑問がさらに大きくなる。  
「幸い以前与えられた通常の人で可能な技能はそのまま存在するから、  
 戸籍のないあなたに生活をさせることは可能」  
長門は、それはそれで重大なことを言うが、あまり耳に入ってこなかった。  
――ただの人間になった。それならなぜハルヒの力が存在していると断言できるのだろうか?  
「……ごめんなさい」  
「えっ?」  
一瞬聞き逃しそうになった。俺が考えているところに長門が小さく呟いた。  
 
 
「私が涼宮ハルヒにあんなことを言わなければこんな状況にはならなかった。  
 私はエラーを抑えられなかったせいでこのようなことになった。  
 私は涼宮ハルヒを責めたが、私にそんな資格なんてなかった。私があなたに一番迷惑をかけているっ。  
 あなたのために尽くすと決めたのに!ごめんなさいっ。ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!」  
 
 
長門の声が強くなっていく。  
――長門は泣いていた。さっきまで無表情だった顔はどこにもなく、ひたすら俺に謝り続ける。  
――それは、部室でのことを謝っているように聞こえるが何かが違う。  
今まで感じた違和感がここでも現れた。それはまるで――  
――あぁそうか。そういうことだったんだな、長門。  
「ごめんなさっ――!!」  
 
 
――気づいたら俺は長門を抱きしめていた。  
 
 
長門は細くて、柔らかくて、とても温かかった。  
「……ダメ、私がこんな風にしてもらう資格なんて――」  
「俺はお前のことが好きだ」  
「…………っ!!」  
俺は拒もうとする長門を離さない。当然だ。ここで離れたら長門が壊れてしまう。  
――好きな女をそんなことにしてたまるか!!  
「お前は悪くない。他のやつが許さなくても、俺が許してやる」  
それでも不満だって言うなら、俺もお前の罪とやらを背負ってやる。だから――  
「お前は自分を――有希を許してやれ」  
――俺は有希のそばいるから……。  
俺の独自まで理解したかは、さだかではないが――。  
「……うん」 コクン  
――有希は嬉しそうに頷いた。  
 
 
――なぁ、有希。俺がお前のことを嫌いになることは、絶対にありえない。  
 
 
――だから俺は待っているからな。  
 
 
――有希が、いつか本当のことを言ってくれるのを、な。  
 
 
◇ ◇ ◇  
 
 
「――――ぅ」  
私の横からそんな寝息が聞こえる。彼の寝息は結構静かだ。  
…そう。今、私と彼は同じ布団に入っている。  
あの時より彼の温もりをたくさん感じられて、心地がいい。  
私はとても幸せだ。考える必要も無い。  
 
 
――私は幸せになる資格なんてないのに  
 
 
…そう、私はしてはいけないことをしてしまった。  
そしてそれは、償うことはできない。たとえ一生かかっても。  
「……ごめんなさい」  
それをわかっているのに、私は彼に許しを請う。  
彼に…嫌われたくないから。  
 
 
――私は彼に嘘をついた  
 
 
…そう、それが私のたったひとつの罪。だけど最大の禁忌。  
本当は涼宮ハルヒの力を完全に打ち消すことができた。  
本来なら他者から彼の記憶が消えることはなかった。  
私が嘘をついた。それにより彼からの信頼を裏切ってしまった。とても許されることでは…ない。  
「……ごめんなさい」  
なのに私の意志と反して、この口はその言葉を唱えてしまう。惨めな私。  
私は…拒絶が恐ろしい。  
それでも、彼を裏切ってまでこんなことをしたのは…。  
 
 
――私は彼を自分のものにしたかった  
 
 
…そう、それが真実。それがすべての原因。  
私が涼宮ハルヒに不満を持ったのも、涼宮ハルヒを責めたてたのも、  
…涼宮ハルヒの力で、私の都合のいいように情報を改変させたのも。  
ただそれだけの、醜い感情というエラーのため。  
私は…自分のために、彼を利用した。  
 
 
「……ごめんなさい」  
私はそれしか言葉を知らないみたいに、彼に謝り続ける。  
本当は、観察者として一定の距離を保つべきだった。  
それを守らず、彼の優しさを知ったのが間違いだった。  
私は自分が許せない。  
私など最初からいなければ――。  
 
 
――彼は私を好きだといってくれた  
 
 
…そうだ。彼は言ってくれたではないか。私を好きだと。  
確かに私が選択肢を奪った。彼は本当のことを知らないだろう。  
だが、それでも――。  
 
 
――彼は私を選んでくれた  
 
 
その事実に気づいた時、私の罪悪感は霧のように晴れてしまった。  
あぁ、私はなんて最低なんだろう。それはわかっている。  
でも――、どうしても嬉しいと思ってしまう。  
「……ごめんなさい」  
違う。今私が言いたいのは、そんな言葉ではない。やりなおせ。  
 
                  
「ありがとう」  
 
 
いままでは得られなかった満足感が――、そこにあった。  
あぁ、私はこの言葉を言いたかったのかもしれない。  
「――んあっ」  
私の言葉に反応したのかどうかはわからないが、彼がそんな声を出した。  
私は思わず、くすっと笑ってしまった。私がこんな風に笑えるなんて、想像もできなかった。  
――もしかしたら、真実を言う日が来るかもしれない。今は想像できなくても。  
もしそんな日がきたら彼はどんな反応をするのだろう。  
憎悪する?軽蔑する?拒絶する?それを考えると、私の体は震えてしまう。  
――でもそのことを彼が許してくれるなら、それはどんなに幸せなことだろう。  
もしそうなったら、あの優しい声でまた私のことを呼んでくれるのだろうか。  
――『有希』と……。  
 
 
 
 
そして私は彼の顔に近づいて、  
 
 
 
  「ずっと…あなたのことを…愛してる」  
 
 
 
そっと、キスをした。  
 
 
 
            ――――私は 今 幸せです――――  
 
 
  END  
 

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