「あなたは、もうここまで」  
  私は、体番号782番のヒューマノイドインターフェースに話し掛ける。  
 「何を企んでいたのかは知らないけれど…情報集合体はあなたの存在を消去する  
  ように意見が一致した」  
  そう言いつつ、私は淡々とその準備を続ける。  
 「逃げてもダメ。この辺りの空間を外界と遮断、一切の生物および無機物の移動  
  および干渉はもう出来ない。つまり、この場所からもう出る事はできない」  
  最後に、消去の為の準備。  
 「情報連結、解除………さようなら」  
  そして、彼は、光の粒となってこの世から姿を消した……。 (>>810  
 
  今私は、彼との一戦(?)を終え自分の部屋に丁度到着したところ。  
  朝倉涼子が過激派の一端として、彼に手を出そうとしてからおよそ半年の月日が  
  流れていた。あれからだろう。今日の様な過激派、あるいは暴走を始めるインターフェース  
  が増え出したのは。『世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団』のメンバーまで手が  
  届く前に全て解決しているので、見た目には何も起きてないことにすることは思ったより大変。  
  まあ確かに涼宮ハルヒが高校に入学して以来(いや、『世界を〜〜〜団』結成以来といった方がいい?)、  
  あまり変化は無いように見える。  
  過激派が行動を起こしたい事もわかる気がする。でも、私はあくまでも一インターフェース。  
  私自信の感情は持っていないし、行動できるはずも無い。なのに……  
  どうして……? この、胸の中にあるもやもやは何?  
 
 
   ―――長門有希の異変―――  
 
 
  ――次の日――  
  午前、午後ともにいつもと何も変わらない時間を過ごし、放課後。  
  つまりクラブ活動の時間帯となった。  
  …私は本を開き、情報収集に努めるだけだけど。  
 「あ、長門さん。もう来られてたんですね」  
  未来人、朝比奈みくるも少し遅れて部室へ到着。  
 こん、こん。  
 「どーぞ、開いてますよー」  
 がちゃ。  
 「こんにちわ、朝比奈さん。よう、長門」  
  律儀に二人別々に挨拶をし、部室に入ってきた彼。  
 「こんにちわ、キョンくん」  
  それに対しきちんと返事をする朝比奈みくる。  
  私は、数秒の間彼の目を見つめ、それを挨拶のかわりにした。  
  彼もわかっているのだろう、特に何も言わず、いつも座っているパイプ椅子に腰掛けた。  
    
  それから遅れること約3分。  
 「おや、まだ涼宮さんは来られてないようですね」  
  ドアから顔だけ覗き込み、部屋の中を見回したあとに入ってきた古泉一樹。  
 「今日はあいつ、掃除当番だ」  
 「なるほど。それは納得です」  
  そんなやりとりをしつつ、彼の向かいの椅子に座り込んだ。  
   
  さらに遅れること5分。  
 ガチャッバタン!!  
  勢いよくドアが開かれ、勢いよく閉められた。  
 「もっと静かに入って来れないのか? 埃が舞ってしょうがない」  
 「うっさいわね。それぐらい我慢しなさい」  
  あの短い間にどうやって入ったかは解らないが、涼宮ハルヒが団長用と  
  書いてある席に座っていた。  
 「取り合えず、これでも飲んで落ち着いてください……」  
 
  こちらもいつ用意していたのか、暖かい煎茶を出す、朝比奈みくる。  
 「ありがと、みくるちゃん」  
  それを受け取り、ずずずずっ…という音を立てて飲み始めた。  
  涼宮ハルヒは、煎茶を飲みながらずっと朝比奈みくるを見ていた。  
  そして、次にわたしの姿を見て、一言。  
 「ねえ、有希? あなたも着替えてみない?」  
  と、わたしに言ってきた。  
  その言葉に、わたしは涼宮ハルヒの方を向き、少しだけ首を横に捻った。  
 「ん〜…みくるちゃんの着せ替えは楽しいけどもう飽きたって言うか……  
  大体想像つくじゃない? でも、あなたは殆ど制服だし…  
  っていうか制服しか見た事無いしね」  
  と、何故か長々と理由を話し出す彼女。  
 「それは、俺も思う」  
  と、その意見に彼も同意する。  
 「同意はするが、ここにある服をこいつに着せるのか?」  
 「もちろんじゃない、他にどこに服があるって言うのよ?」  
 「ぐ…それはそうなんだが。ここにある服っていったら…」  
 「さあ、有希。こっちおいで。抵抗するといいことないわよ?」  
  何故か満面の笑みでわたしを呼ぶ涼宮ハルヒ。  
 「おい、俺の話を最後まで聞け」  
 「まあまあ、いいじゃないですか。彼女もそんなに嫌がってるようには見えませんしね」  
  そう言って、彼の説得をし始める古泉一樹。……今、どう見える顔になっているのだろう。  
  別に着替えくらい別に何とも無いので、涼宮ハルヒに任せることに。  
  彼女の元へ行き、胸元のリボンを解き始めた。  
 「だから! 俺達がいる前で着替えるなって言ってるだろうが!」  
  そう言いつつ、部室から出て行く彼と古泉一樹。  
  ふと、朝比奈みくるの方を見ると、すまなさそうな顔をしていた。  
  ……そのあとすぐに涼宮ハルヒと一緒に服を物色し始めてしまったが。  
 
 「うん、最終的にはこの服になっちゃうのね。結局」  
 「ふわぁ〜。 な、長門さん……ですよね? 本当に」  
  二人は、わたしの格好を見てとても驚いているようだ。  
 「ナース、バニー、ゴスロリ……色々な衣装を着せてみたけど。  
  ここまでフィットしちゃうなんてね」  
 「じゃあ、キョンくんたち、呼びますよ?」  
 がちゃ。  
 「「…………」」  
  わたしの格好を見て、言葉が出てこない二人。  
 「えーと……一つだけ確認したいんだが」  
 「なに?」  
 「お前、本当に長門か?」  
  真顔で聞いてくる彼。  
 「それはあたし達が保障するわ。ねえ、みくるちゃん?」  
 「あ、はい!」  
 「にしても……まさか長門がなぁ」  
 「そうよねぇ。意外だったわ」  
 「「こんなにも、メイド服が似合うなんて」」  
  そう、今のわたしは、メイド服を着ていた。  
  頭にはフリルのヘアバンドをつけて、後は朝比奈みくると全て同じ。  
  なぜか、服のサイズもわたしにぴったり。  
 「…………」  
 「無口なメイドか。それもありかもね」  
 「ふむ………」  
  感慨深そうに首を縦に振っている涼宮ハルヒ。  
  その隣であごに手を当て、何か考えている彼。  
 「ねえ、有希? 一度でいいからメイドっぽく話してみてくれない?」  
  涼宮ハルヒがわたしにそう頼んできた。  
  ……データベースに接続。検索名。『メイド』あるいは『御世話係』  
  …検索終了。データベースに数件のHIT有り。  
 
  最有力候補を実行。  
 「ご主人様……どこかお痒いところはございますか?」  
 『…………』  
  その場に沈黙が広がった。まさか、検索に失敗?  
  今までの行動でわたしにおかしなところが無いかを確認しつつ、  
  この場にいる4人の顔を確認。  
  ―――涼宮ハルヒ。口をぱかっとあけ、放心状態。  
  ―――朝比奈みくる。少し顔を赤らめつつも、放心状態。  
  ―――古泉一樹。見た目はいつもと同じような笑顔、でも、よく見ると苦笑している。  
  ―――そして、彼。彼の顔は……  
 どくん。どくん。  
  ? いきなり、わたしの鼓動が早くなった……?  
  一体何故? データベースに検索……HIT数…なし。検索不可能。  
  原因不明の症状? …  
 「長門? どうしたんだ?」  
 びくっ!  
  彼にいきなり話し掛けられ、体が反射反応を起こした。  
  こんな事、今まで無かったのに……なぜ?  
 
  あのあと、いつもの様に椅子に座り、読書をして情報収集。  
  そして―――  
 「あ、もうこんな時間なの? じゃ、今日はもう帰るわ」  
  そう言って、さっと部室を出て行った涼宮ハルヒ。  
 「では、僕もそろそろ失礼します」  
  あとを追うように古泉一樹も退室。  
 「この服、一人だと脱ぎづらいんで、私、手伝います」  
 「あ…じゃあ、お先に帰ります」  
  そして、彼も帰り、部室にはわたしと朝比奈みくるの二人だけになった。  
   
 「あ、えっと、長門さんって、意外と何でも似合うんですね。   
  あ、い、意外って変な意味じゃないですよ?! 誤解しないで下さいね?」  
  今さっきまでのことを振り返りつつ、朝比奈みくるはこの服を脱ぐ手伝いをしてくれている。  
  この服を着て、彼の顔を見ようとしたときの事を彼女に話せ、という意見が聞こえた。  
 「一つ聞いていい?」  
 「ふぇ? な、何ですか?」  
 「…彼を見ると、胸が苦しくなる……この症状ってなに?」  
 「え………? それって…」  
  何かを言おうとし、本当に言っていいのかどうかを考えているよう。  
 「えっと、それは…一般的には『恋』って言うんだけど……」  
 「こい?」  
 「はい…つまり、あなたはキョンくんが………」  
 
 
  よく思い出そう。こんな症状が出始めたのはいつの事か。  
  ……あれは、確か。朝倉涼子を消去した時の事。  
 『眼鏡、してないほうが可愛いとおもうぞ』  
  彼に、そういわれた時の事だったはず。     
  あの時は、朝倉涼子との一戦のあとだったので、きっとその所為だと思っていた。  
  実は、そのときから………?  
 
  自分の部屋に着き、思考をめぐらせる。  
  昨日もここで考えた、最近の涼宮ハルヒに変化はない、ということ。  
  それは、間違いだったようだ。彼女自身に変化が無くとも、  
  彼女のまわりは、その本人が気付かぬうちに変化を遂げている。  
  このまま変化が進めば、いつの間にかインターフェースではなくなっている。  
  ということが起きるかもしれない。そのときが来るのが待ち遠しく思うべきなのか、  
  それとも悲しく思うべきなのか。まだ一インターフェースである自分には全く  
  想像のつかない世界………  
  まだ、このことについての情報を集めなくては。   
 
  最終的にそういう結論にたどりつき、また今日という一日を終える。  
  明日、部室に行った時、あの格好で本を読んでいたら、一体どんな反応をするのだろうか?  
  そんなことを思いながら。  
 
                                   <つづかない>   
 
 

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