「よっ、キョン!」  
 
「…谷口か」  
 
「んだよ元気ねぇなぁ。」  
 
「ちょっと風邪引いたみたいでな。」  
 
「バカは風邪引かないってのはやっぱ迷信だったか」  
 
「人の事言えんのか」  
 
「ハハッちげーねぇ」  
 
 
風邪で節々が痛い身体を引きずり嫌がらせのような坂を登って登校する。  
…辛過ぎる。キリストの気持ちがわかりかけてきたぞ。マジで。  
 
 
「…どうしたのよアンタ。死に掛けのカエルみたいな顔してるわよ」  
 
「風邪引いたんだ。ウチの親も谷口んとこに劣らず厳しくてな。40°近くまで出ないと休めん。」  
 
「…移さないでよ?」  
 
移す以前にウィルスの方から逃げ出すだろう。コイツに取り付く度胸のある病原体があれば知りたいね。  
 
あー…。授業も何も見に入らん。そこ、普段もだろとか言うな。  
 
「早退したら?見てるだけでこっちもしんどくなってきそうよ」  
 
「折角来たんだ。最後までいてやるさ」  
 
「へんなとこで真面目ね、アンタ」  
 
「俺はいつだってほどほどに真面目のつもりだぞ」  
 
ハルヒと軽く世間話をした後ずっと机に突っ伏して今日の授業が終わった。  
飯もロクに食えんかったのに腹だけは空いてる。こういう時ぐらい休んでくれ、俺の胃よ。  
 
「…その様子じゃ部活も無理みたいね。」  
 
「あぁ…悪い。今日は4人でやっててくれ。」  
 
「さっさと治しなさいよ。風邪なんかに負けるようじゃSOS団員として失格よ」  
 
 
朝よりさらに酷くなったような気がする体を無理やり動かして家路へと着いた。  
 
 
「…ただいま」  
 
「うわーキョンくんすんごい顔色してるよー?」  
 
「あー…。かなり辛いんだ。移されたくなかったら俺の部屋入るなよ?シャミセンは出しとくから」  
 
制服のまま部屋へ入りベッドへダイブ。このまま寝ちまおう。寝たら少しはマシになるだろ。  
 
 
 
「ん…」  
 
時計を見る。深夜2時。中途半端な時間に目が覚めちまったな。  
 
「…腹減った」  
 
そういや朝からロクに飯食ってないな。俺の分取り置きしてるとは考えにくいし  
わざわざお袋を起こすのも忍びない。さすがに自分で作れる程回復もしてない。  
 
「ん、何か作ったげようか?」  
 
「あぁ、頼m」  
 
ごく自然に返事を返そうとして振り向いた先には女がいた。俺の枕元に立っている。  
全身の毛穴が開いた。見てはいけない物を見てしまった。  
おいおい怪談話にはちょっと時期が早いぜ。  
とりあえずお経だお経。いや、塩のがいいか?  
 
「…何へんな顔してんの?バカみたいよ」  
 
幽霊にんな事言われる筋合いねぇよ、と思ってよく見てやっと気付く。  
いや、ここに居るはずの無い人間 って事なら幽霊でもコイツでもあんまり大差ないが。  
 
「…何やってんだ?ハルヒ」  
 
「見てわかんない?」  
 
分かるわけ無いだろ。なんでこんな時間におまえが俺の枕元に立ってんだ。  
 
「看病よ看病。団長として団員を心配するのは当然の義務よね。4人だと活動に支障をきたすし。  
 さっさと治して部室に来なさいよ」  
 
やたら早口で言うハルヒ。  
 
「まだ看病らしいこと何もして貰ってないけどな。」  
 
「だってアンタ寝てたじゃないの。あ、アンタのお母さんから  
 起きたらお粥でも作ってやってくれって言われてるのよね。ちょっと待ってて。」  
 
お袋のニヤニヤした顔が浮かぶようだ。朝、どうやって弁論しようか。  
 
「…ん」  
 
そういえばいつの間にかジャージのズボンとTシャツを着てる。  
俺、制服だったよな?  
 
 
「お待ったせー!特製ハルヒ粥よ!これ食べてパパっと治しちゃいなさい」  
 
ずいぶん早いな。  
 
「大体下準備してたからね。アンタ起きるまで暇だったし。  
 このまま朝まで寝てたらどうしようかと思ってたところよ。」  
 
「んじゃありがたく頂きます…っと。ハルヒ、俺制服で寝てたと記憶してるんだが…」  
 
「あぁ、私が着替えさせたわ。皺になっちゃうしね。」  
 
人が寝てる間になんちゅう事をしやがる。剥くのは朝比奈さんだけにしてくれ。  
 
「何赤くなってんのよ。私別になんとも思ってないわ」  
 
俺が思うんだよアホ。他になんか変な事してないだろうな。  
 
「ん、して欲しかった?」  
 
うるせー。そのニヤけた顔で俺を見るな。  
 
 
適当に世間話をしつつ量が大目のお粥を平らげる。うん、味は悪くなかった。  
いや、むしろ旨かったな。空腹も手伝ってかなり旨かった。  
 
 
「ふー…。ごちそうさん」  
 
「んじゃ、一仕事終えたことだしそろそろ私寝るわ」  
 
とか言いながらいつか見た寝袋を広げ始める。  
 
「おい、何やってんだおまえ」  
 
「寝る、ってさっき言わなかった?」  
 
いや、そういうことじゃなくてだな。  
 
「アンタ起きるまでずっと起きてたのよ?眠たいったら無いわ。  
 今から寝ても4時間ぐらいしか寝れないじゃない。」  
 
んな事俺に言われても困る。  
 
「親には今日泊まってくるって言ったしアンタのお母さんの許可も貰ってるわ。」  
 
弁論の仕様が無いじゃないか母上よ。アナタは何を考えてるんだ。  
 
「おやすみー。あ、私多分起きれないからアンタ起こしてね」  
 
…。既に寝息立ててやがる。よっぽど眠たかったのか。  
 
 
「…。」  
 
寝れねぇ。ただでさえ帰ってきてから十分寝たし  
それ以上に寝袋でミノムシみたいになってるコイツがいる。  
よくこんな状況であっさり寝れるなこいつは。  
 
 
2時間ほどゴロゴロしてやっと睡魔が攻撃を開始。さっさと寝よう。  
これ以上起きてても疲れるだけだ。色々と。  
 
 
「…キョンのバカ」  
 
なんか聞こえたような気がするが多分夢だろ。うん、そうだよなフロイト先生。  
 
 
 
 
その後、ずっとニヤニヤしたお袋とやたらハルヒに懐いてる妹、若干目の赤いハルヒに  
大分楽になった俺の4人で朝食をとりいつもの坂を上る。  
誰かここにエスカレーター付けてくれんかね。割とマジで。  
 
「何やってんのキョン!早く行くわよー!」  
 
坂の上の方からする元気な声の主に小走りで駆け寄る。  
…当面の問題はハルヒと2人で家を出た瞬間谷口に目撃された言い訳を考えることだな。  
やれやれ。  
 

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