一部予期せぬ出来後もあったが、SM三昧のループを無事に抜ける事が出来た。  
あれから、ハルヒが妙な事を考えもしないし、閉鎖空間も生まれていない平和そのものだ、  
この平和が永遠に続いてほしいとの願いは、意外な人物により虚しく霧散した。  
 
 
いつもはサッカーなんぞ、玉蹴って何が面白いと言わんばかりの母親が、4年に  
一度という言葉に特別なものを感じたのか、夜遅くまでTVを観ていたため、  
弁当が入らなかった俺は学食に向い無難に定食を選び空いてる席を探していた。  
 
「キョン君が学食に来るなんて珍しいものみちゃた」  
声のする方に顔を向けると、お弁当箱と魚の煮付け一品をトレイに載せて鶴家さんが  
立っていた。  
「そこ空くから、一緒に食べよ」  
食べ終わった生徒が席を立とうとしているのを見つけテーブルを確保する。  
弁当があるのにわざわざ学食に来る理由を尋ねると  
「ここの煮付けが最高においしいのよ」  
鶴屋家の料理より美味い煮付けがこの学食にあるとは、にわかに信じられず、端っこの  
方を分けて貰い口にしたが、贔屓目なしに母親が作るものの方が美味かった。  
そのことを口に出そうとしたが、料亭の仕出しの様な弁当が目に入り、あっそうかと  
納得する。  
 
食べ終わって、お茶を飲んでいると目の前をポニーテールの女子生徒が通った。  
無意識のうちに視線で追っていたのを鶴屋さん悟られた。  
「へー、あんなのが良いんだ、ハルにゃんにチクッちゃおかな」  
あわてて、ハルヒがポニーテールをしたときに似合っていると言ってやっても、  
すぐ解いてしまう旨弁明した。  
「キョン君は女の子の後でフサフサのが揺れているのがいいのかー」  
おれが返答に困っていると  
「じゃー今度の日曜日家においでよ、いいもの見せてあげる」  
いいものって何ですか? との問いには答えてくれず鶴屋さんは去っていった。  
 
ある事件が発生し、さすがにハルヒも市内を彷徨くのは憚れると考えたのか恒例の  
週末不思議探索は中止されたおかげで、俺の乏しい財布の中身は僅かに延命された。  
 
 
日曜日になり、俺は軽快にママチャリを漕いで鶴屋邸に向った。  
 
「いらっしやい」  
お邪魔しますと、少々萎縮気味に門をくぐる。  
以前訪問したときは、ハルヒのバカ映画や「みちる」のことに手一杯で  
ただの大きな屋敷としか思わなかったが、こうして落ち着いてみると、  
とんでもない規模に圧倒されてしまう。  
 
見せたいものって何ですか?  
「まあまあ、そう焦らない焦らない」  
鶴屋さんは、用意が出来た旨報告に来たお手伝いさんが通用口から屋敷の中に  
入っていくのを見届けると、こっちと俺の手を引き離れの一つに案内した。  
 
外見は、母屋に合わせた日本家屋風であるが、内部は洋風の変わった建物である。  
 
変わっていると言えば、壁際にバーカウンターがあるだけで、調度類は  
中央にソファーとテーブルが一対、正面の壁丸々一面がスクリーンに  
なっていて映画のワンシーンとおぼしき映像が映っている。  
床がタイル貼りで所々に排水口が見える。  
壁も意外に安っぽくビニール系の壁紙が貼ってある。  
 
「座って、飲むでしょ?」  
いつの間にか、バーカウンターで水割りを作っていた鶴屋さんは、  
俺の前にグラスを置いた  
未成年ですからと固辞すると、「薄くしてあるから大丈夫」って  
あなも未成年じゃないですか!  
「飲みたくなったら、飲める様にここに置いておくから」  
鶴屋さんがグラスを片手にリモコンを操作すると、厩舎の内部とおぼしき映像が  
映し出された。  
馬の様な動物が入れられているのが見えるが、半端なカメラアングルのせいで  
よくわからない。  
屋外の場面にかわり、馬がつながれていない馬車が映った。  
カメラがよると細部までハッキリと見えた。  
単なる馬車ではなく古代の戦車、ベンハーやグラディエーターに出てくる  
チャリオットという奴だ。  
馬が連れてこられたが、ここでカメラが下を向いたため、馬にしては太く白い  
足下だけが映っている。  
場面が変わり、馬車の馭者席からと思われる映像になったが、やはり  
カメラアングルが悪く馬の足下とレンズの前をフラフラする尻尾しか  
映っていない。  
そこで、映像はストップした。  
 
何ですかこれは?  
「ねえキョン君、続きを観たい?」  
俺は「いいもの」につながるものであれば観たいですと言った。  
「観せてあげる、でも後悔はなしよ」  
その時、鶴屋さんは俺の知っている鶴屋さんでないことに気付くべきであった。  
 
鶴屋さんのリモコン操作で、再び映像が動き出した。  
さっきまでの下向きで手ぶれしまくりのピンぼけ画像から急にテレビクルー並みの  
安定とフォーカスにより、戦車を牽く馬がハッキリ見えた。  
「はい、おかわり、さっきより一寸だけ濃くしたけど……」  
その言葉に、俺は置いてあった水割りを一気飲みしていたことに気付いた。  
俺も、谷口や国木田が持っているマニアックなAVやインターネットのおかげで知識として  
こういったプレイをする人がいる事ぐらいは知っているが……  
 
焼け付く様なのどの痛みに咳き込む。  
「ごめんなさい、ストレートのままだった」  
俺は、水割りの水を入れる前にグラスの中身を一気飲みしてしまった様だ。  
あわてて、差し出された水を流し込む  
帰るべく立ち上がろうとする俺を押しとどめた鶴屋さんは、  
「あなたが、女の子の後でフサフサのが揺れているのがいいというから、用意したのに  
つれないわね」  
鶴屋さん、確かに俺はポニーテールが好きだとは言いましたが、これはポニーガール  
(Pony girl)で、全然違うものです。  
 
「『後悔はなしよ』といったはず」  
物事には限度があります、これは立派な犯罪です。  
馬となって戦車を牽いていたのは、先週行方不明になった女子高生だった。  
 
チャイムが鳴り、鶴屋さんが戸を開けると、とうてい靴とは呼べない高さのヒールを  
カタカタいわせ、この離れに来訪者が入ってきた。  
予想通り、戦車から外された二人であった。  
今にも泣きそうというより、さっきまで泣いていたのであろう目が真っ赤である。  
裸に剥かれ、身につけているのは、皮で出来た馬具そして鼻や乳首に穿たれたピアス、  
貞操帯の後から、尻尾が揺れている。  
 
まるで犬の散歩をするかの様に涼しげな笑顔で首輪から伸びた鎖を持つのは先ほどの  
お手伝いさん。  
 
「その二人を使える様にして」  
「かしこまりました」  
 
「尻尾は抜いたままでいいわ」  
お手伝いさんは無言で頷き、馬具を外した二人を、部屋の中央に立たせ  
天井から降りてきたバーに二人の手をくくりつけた。  
足はヒールに付いているリングと床に埋め込まれた金具をつないでしまう。  
強制的に足を広げ万歳の形を取らされた女子高生の股間には銀色に輝くSUS304製の  
貞操帯が装着されていた。  
鶴屋さんが鍵を差し出すと恭しく受け取ったお手伝いさんは貞操帯を外しに掛かる  
「いやーやめて! 外さないで!」  
いままで一言も口をきかなかった二人が初めて贖いの言葉を発した。  
それに、そんなもの嵌められたら普通は外してくれと言うと思うのだが?  
「誰が喋ってもいいと言った」  
鶴屋さんはそばにあったワゴンから競馬鞭を持つと激しく打ちだした。  
悲鳴があがり、許しを請う声が響いた。  
鶴屋さん、キャラが違う様なんですが……  
「邪魔をしてはいけません、お嬢様は天才です、しばらくおご覧下さい」  
立ち上がろうとした俺をお手伝いさんが止めた。  
鶴屋さんが鞭を打ち下ろすたびに二人声が艶やかになっていくのが判った、  
まるで安物のAVの様な展開であるが二人が発する声に演技はない。  
 
顎を鞭で押して顔を上げさせると、「キョン君に貞操帯の中がどうなっているのか  
見せるのよ」  
二人は固まって動かない  
「さあ、お願いしなさい、でないと……」  
「…下さい」  
「聞こえない!」  
「キョン様、貞操で隠している私たちの恥ずかしいところをご覧下さい」  
「キョン君、あなた外してみる?」  
この場の異様な雰囲気におかしくなりかけていた俺は、この二人を鶴屋さんが誘拐した  
ことも忘れ、鍵を受け取っていた。  
鶴屋さんは、お手伝いさんに手伝う様目配せをしたのち、当たり前の様にブランデー  
グラスを片手にソファーに座った。  
俺は向かって右側につるされた方に向かう。  
近くで見ると、ネットで見かける女性用とは少し形が違うことに気付いて顔を  
上げるとお手伝いさんはにっこり微笑んで唇に指を当てた。  
今は黙っていろと言うことか。  
リアシールドが外されると、オプションとして装着されている尻尾付アナル栓の  
太さに驚いた。  
前に廻り自慰防止金具を外すが、思った通りその下にはあるべきものがなかった。  
必要以上に膨らみの大きいフロントシールドを持ち上げようとすると、  
「お願い、見ないで」  
見てくれと俺に頼んだのでは君の方では?  
既に理性が麻痺し、この場を楽しむことしか考えられなくなっていた俺は、  
リアシールドから尻尾を外しそのまま貞操帯を元に戻した。  
 
左側の方が身につけているのは普通の女性用であったが、リアシールドに取り付け  
られた尻尾付アナル栓の太さには目が点になった。  
先ほどの奴も充分太いが、こっちは500ミリ入りのペットボトルが丸々入っていたのだ。  
ぽっかり空いた肛門が別の生き物の様に息づき俺を誘っていた。  
この光景に後ろ髪を引かれつつ、自慰防止金具・フロントシールドを外すと、  
飾り毛を失い小さなリングピアスを付けた肉芽が現れた。  
 
再び、右側の生け贄に廻るとフロントシールドの膨らみを指差し、鶴屋さんに向かい  
リモコンを操作する仕草をした。  
鶴屋さんがリモコンに手を伸ばすと、  
「やめてー キョン様に見ていただきます、見ていただきますからそれだけはー」  
「どうする、キョン君」  
見るなと言い次は見ろと言う、いざとなると見るなと言う、お仕置きが必要だと  
思いますが  
鶴屋さんが指先に力を入れると、悲鳴を上げと痙攣をおこした後、失禁した。  
 
気付け薬を嗅がし正気にさせると、心からお願いするんだね?  
「はいキョン様、私の恥ずかしくも浅ましい姿をご覧下さい」  
よく言ったな、偉いぞ、頭をなぜてやりながら、でも最初から素直にしていれば  
苦しまずに済んだのにそれとも苦しみたくてわざとだったのかな?  
その間に、お手伝いさんが、完全に貞操帯を外すと、女性には在ってはならない  
ものが現れた。  
 
「キョン君、よく判ったわね」  
元もと興味があった所に必要に迫られて色々調べましたからね。  
「へぇー、必要に迫られてねー、ハルにゃんにチクッちゃおかな」  
絡まないで下さい、それにその件はハルヒにはチクられても痛くもかゆくもないですよ。  
鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をした鶴屋さんだが、  
「ハルにゃんも……」  
何か重大な、勘違いをしている様だが訂正するものなんなんでそのままにしておこう。  
 
このあと、調教の実務はお手伝いさんに任せ、俺と鶴屋さんはソファーで  
グラスを傾けながら見ていた。  
このお手伝いさん、これ専門に訓練を受けて雇われているらしく、鶴屋さん以上に  
厳しくそれでいて的確な調教テクニックを披露して下さった。  
 
で、この二人はこの後どうするのですか?  
「それを聞いちゃったら、私のビジネスパートナーを承知しないと、生きてこの屋敷からは  
出られなくてよ」  
この期に及んで何言っているんですか? 聞かなくてもこの屋敷を出るには、承知するか、  
空港の埋め立てに使われるかの選択しかないじゃないですか?  
「それもそうね」  
やっぱり、空港の礎にするつもりでしたね。  
 
女の子は行方不明になっている女子高生だが、シーメイルの方はその女子高生と  
付き合っていた隣町の男子生徒であることを知らされた。  
鶴屋さんの話によると、男子生徒の両親はいくつもの会社を経営する大金持ちで、  
大学に医学部キャンパス丸ごと寄付を筆頭に各種慈善事業に助成する善良な  
世間の顔とは裏腹に歪んだ性にとりつかれた鬼畜とのこと。  
自分の子供をシーメイルに改造・調教して飼うそうな。  
鶴屋さんは予め調教しておいた女子高生を男子生徒と付き合わせ、彼女を庇うために  
懸命に耐える姿や彼女が手先であることを知ったときの様子に興奮したという。  
鶴屋さんも劣らず鬼畜ですね  
 
どうりで行方不明になって数日しか経っていないのに、彼女の肛門にペットボトルが  
入るはずだ。  
聞けば、1.0リットルでも楽勝で1.5リットルでも時間を掛ければ挿入可能らしい。  
囮に使った彼女が妊娠して本気になったので、先方が孫が出来たのを喜びつがいで  
飼うことを承知したので、一旦家に帰らせ、鶴屋家の息が掛かった病院に入れて  
ほとぼりが冷めたら結婚という形で出荷するとのとこ。  
それはそれで幸せなのかもと思ってしまう俺は、鶴屋さんの影響か鬼畜に近づいている様だ。  
 
お手伝いさんの華麗なテクニックを見ながら、鶴屋さんの言うビジネスパートナーの  
話を聞いた。  
鶴屋家の表向きの事業は、一族の者で才能があってやりたい人が一杯いるから会社の経営は  
任せてしまい配当を貰っているとのことで、今回の様な裏家業もそれなりの人脈と人材が  
あれば勝手に利益が上がってくるものだそうだ。  
 
鶴屋さんが求めているビジネスパートナーは、ズバリ「ナノマシーンの研究」  
射抜く様な視線とその言葉に心臓が瞬間冷凍になるかと思った。  
この人は、ハルヒ絡みの話をどこまで知っているのだろう、古泉の話では直接では  
ないものの「機関」ともつながりがある様だし……  
 
ナノマシーンと言うとガンの治療するのに抗ガン剤を運んだりする奴ですよね?  
惚けてみたが鶴屋さんに通じるわけ無く  
「みくるの血液サンプルから面白いものが見つかったの」  
口から手を突っ込まれ、そのまま心臓を鷲づかみにされた。  
面白いものってなんですか?  
自分でも声が震え不自然なことこの上ない、  
「細菌でもウィルスでもないもの、明らかに人工物なんだけど一切分離できないの」  
「でもけがしたりするとすーっと集まってくるんだけど、何もしないの」  
「何もしないのに、けがの治りが普通の何倍も速いの」  
「わたしは、これがなんだか知りたいの」  
これを研究するためには、MITに飛び級で入って、筑波の電総研で論文をバリバリ出すだけの  
頭が必要らしい。  
 
「ビジネスパートナーの件、承知してくれるね」  
おそらく鶴屋さんは、俺が具体的な何かでなくても、これに関し知っていることがあると  
確信している様だ。  
まだ命は惜しいですから、勉強はしますけどMITにいって飛び級で帰ってこいとか  
電総研に入れとかは、絶対に無理ですからね。  
「ハルにゃんは、承知してくれたよ」  
どうしてそこで涼宮ハルヒの名が出てくる。  
「うーんね、ハルにゃんがね、キョン君と一緒ならOKだって」  
「君の成績ぐらい知っているからキョン君と一緒は無理だと言ったの、そしたらね  
勉強はハルにゃんがね責任持つっていたから、キョン君の同意を求めてるの」  
今回もハルヒの手の上で踊らされた猿回しのサルだったか……  
 
「そうそう貞操帯、うちんとこの工房で造ってあげるから採寸ね」  
俺のズボンを下ろそうとする鶴屋さんに、貞操帯をほしがっているのは  
ハルヒです。  
「えっ」  
貞操帯のことを調べていたのはハルヒが自分で嵌めると言い出したためです。  
「ハルにゃん、貞操帯嵌めたいなんてマニアックだわね」  
それを言わんで下さい、それでなくても頭が痛いのですから。  
「よし、ここはわたしがハルにゃんに、とどんとプレゼントしましょう」  
長期着用向けのSUS304製  
空港ゲート対策にFRP製  
プレイ用に革製  
試作品の、外から押し潰された性器がよく見える様、透明なアクリルで出来たもの  
 
鶴屋さん、そんなに沢山要りませんよ……  
 
数週間後、  
宅配便で大きめの箱が数個届いた。  
 
 
 
教室で振り向くと、後の席に座るハルヒは心持ち赤らめた顔で腰のあたりを叩いた。  
 
コンコン… 金属の涼やかな音がした。  
 
糸冬  
 

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