もう彼奴らには会えない。
そう確信した。
SOS団部室に久々に来た俺はその何もない部屋をじっと眺めていた。
入ってくるとき気付いたのだが、ドアノブが壊れかけていた。
まぁ、あれだけ無茶苦茶な扱いしてたんだもんな。
だからってこの壊れ方はねぇだろ、取れちまいそうだぞ・・・
こんな静かな状態が良かったと初めは思っていたが、今は違う。
やっぱし淋しいとおもう。
だってよ、確かに不自由も不愉快もなさそうだが、その逆も初めから無いだろうから。
いま誰かに笑って欲しいと思った。
今ならひたすら笑えるはずだとわかったから。
この部室が俺の高校時代を輝かしい物にしてくれた。
俺は最初は滅茶苦茶だと思っていた、
他の奴らが俺に向かって「残念だったな」とも言った。
それが、今思えばとても幸せだったんだってわかった。
二度と元には戻れない。
そう確信した。
何もない部屋に心臓が一つ。
目を閉じるとあの頃を思い出せるような気がしたが、そんなことは無かった。
ただ、静かな部屋の中にいるだけだった。
今、彼奴らの中の誰かが目の前で泣いていたなら、こっちはわらっちまうんだろう。
彼奴らに会えることだけで幸せなんだから。
彼奴らが俺の人生を変えてくれた。温かい思い出もできたし、寒い思いもした。
変えてくれた彼奴らにお礼が言いたいが、今の俺には彼奴らの姿は見れない。
卒業してから彼奴らには一回も会ってない。
そう、今の俺には彼奴らの影も形も見えないのだ。
彼奴らを怖がってたと思う。
危険なときは頼っていたくせに。
そんな自己中心的なことをしているうちに卒業して、みんな元の場所に帰っていった。
頼っていたし、怖がっていた・・・
今、彼奴らに信じて欲しい。
そんな上手いこといかないってのをわかってる。
今、彼奴らを信じられるんだろうか?
いや、また怖がると思う。
それでも彼奴らと会いたい。
この静かな部屋を照らしてくれた彼奴らに・・・
彼奴らに迷惑かけちまったといつも反省してる。
けれどこの静かな場所に来て欲しい。
そんなわがままが叶うわけがない。
「俺に会いに来てくれれば」だなんて思ったことさえある。
卒業してから彼奴らの姿が永遠に見えなくなっちまった。
そう、それが俺の願っていたことだ。
静かに人生を過ごしたい。
だが、今は違う。
もう一度彼奴らと出会えるのなら・・・
そう思いながら涙目で部屋をみた。
何もない部屋にあいつらがいた、
目をこすってみて確認すると、
やっぱり誰もいない
俺、何考えてんだろ、
彼奴らがいるわけないのに・・・
ドアノブを壊してこの部屋ごと記憶を消したらどうなるだろうと思った。
ドアを閉め、リコーダーを分解するときくらいの軽い力で引っ張ると、
簡単に壊れてしまった。
本気で消し去りたいと思っていたんだって気付いた。