「徹夜ですれば間に合うんじゃないの?」  
 
 はて?こんな台詞を言ったのは誰だっただろうか?  
 俺の記憶が正しければ今俺の隣りで眠りかけているコイツが言っていたような気がするのだが…気のせいだろうか?  
 コイツは続けてこうも言った。  
 
「ここに泊まり込んでやればいいじゃない、あたしも手伝うから」  
 
 しかし、そんなことを言った張本人は一時間もしないうちに俺の隣でスヤスヤと机に突っ伏して寝息を立て始めている……って!?寝てるのかよ!!  
 おい、ハルヒ寝るな!!おまえに寝られるとこっちは困るんだよ!絵コンテも脚本もないこの映画を編集するにはおまえの指示が不可欠なんだ。  
 脚本はおまえの頭の中にしかないんだからな!  
 
「うっさいわね〜編集はキョンに全部任せたわ。絶対素晴らしい作品に仕上げなさい。何たってあたしが監督してるんだからね…あたしは少し眠るから、あたしが起きるまで起こさないでちょうだい。起こしたらグーで殴るわよ」  
 
 
 
 ……という訳で、只今編集作業を行っているのは俺一人しかいない…  
 朝比奈さんや長門は自分のクラスの準備に行っちまったし、古泉も演劇の打ち合わせでいない。  
   
 
 
 果たしてハルヒが撮ったこの朝比奈さんのプロモ動画をどのようにして映画の様に見せかけるのかは、俺のセンスにかかってきたと言うわけだ。  
 しかも明日が学園祭当日、つまり映画の公開日だ…本当に編集作業は間に合うのか?  
 
 確かに俺も「この映画は絶対成功させよう」なんってこと言っちまったが、あれはあくまでその場のノリと言うか勢いというやつで谷口に啖呵をきった手前引き下がるわけにはいかなかった。  
 
 大体にして誰も映画作りのノウハウを持ってないのに、いきなり映画を作ろうと思うのが間違いなのだ。  
 こんなのは普段着でエベレスト登山に挑戦しようと言うくらい無謀な行いに違いない。  
 黒沢やヒッチコックに怒られるぞ?  
 
 考えたらどんどん腹が立ってきた。  
 どうして俺がこんな貧乏くじを引かなくてはならんのか、これも全ては思いつき程度の事で企画を考えたハルヒに責任はある。  
 一人だけ気持ちよさそうに寝やがって…  
 
イタズラでもしてやろうか?  
 
「んっん〜…」  
 
 ハルヒの寝息が聞こえてくる。いつもはホントうるさいが寝顔は天使っーか、って俺は何言ってんだ。  
 
 ………んっ?よく考えるとここは密室で…その中には男女が一組。  
 いつもはうるさすぎて気がつかなかったがハルヒの容姿は平均以上って言うか、かなり可愛い部類に入る。  
 しかも学園祭前日とは言え既に周りの部室の奴らは全員帰っちまって…部室棟に残っているのは俺とハルヒの二人だけだ。  
 
 ヤバイ意識しだすと我慢が出来なくなってきた。  
 
 ここで明言しておくが悪いのは俺ではない。  
 悪いのは男と二人きりだと言うのに無防備に寝ているハルヒと子孫を繁栄させようという人間の本能だ。  
 誰も俺を責められやしない。  
 
 それではさようなら倫理。もう二度とお目めにかかることはないでしょう。 今までありがとう道徳。本当にお世話になりました。 俺は、ハルヒを、犯します。  
 
 

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