公園で昼飯を食べ終えると、何をしていいのかよくわからなくなった。  
 俺たち恋人同士なんだよなぁ、と有希のほうをちらりと伺ってみるが、あまり実感は沸かない。  
 弁当を用意していたのに、飲み物が無かったため、俺は自販機で缶コーヒーを2本買い、1本を有希に渡した。  
 コーヒーが冷め切ってしまうまでの間、ずっと有希に話しかけてみたものの、反応はあまり芳しくはない。こんな外でキスしてくれるくらいに俺のことが好きだっていうのなら、もうちょと反応してくれたっていだろうに。  
 
 放課後の部室で有希とエッチしてから、どんどん有希のことを好きになって、何度かエッチもして、そしてようやくの初デートだ。  
 だというのに、あまりデートっぽくない。普通のデートというのがどんなものなのかというのにもよるだろうが、少なくとも俺が描いていたプランとは大きく外れていた。  
 まぁ有希の作った弁当が食べられたのはラッキーだったし、これからどうするかだ。  
   
「どうする? どっか行きたいところとかあるか?」  
「……わたしの家」  
「なんだ、帰るのか?」  
「そう」  
 なんだか、デートという感覚がまったくないな。つい溜め息をこぼしてしまう。  
 結局、普通の恋人のように付き合っていくことはできないのだろうか。いや、今はそうかもしれないけど、これからはきっと違うだろう。  
 いや、有希も普通の人間と同じように、興味を持つものだってある。それが何なのか、今はあまりわからないが、いずれ俺にも分かるかもしれない。  
 その時、隣にいてやればいい。  
 
「よし、行くか」  
 そう言って、中身が空になった缶を、そばにあったゴミ箱に放り込んだ。  
 
「でも、まずは買い物に行って、夕飯の材料を買う」  
「晩飯も作ってくれるのか?」  
 こくりと有希が頷く。自信ありげに見えたのは、錯覚じゃないだろう。  
「そうか、楽しみだな。荷物持ちくらいなら手伝うぞ」  
 本をどうやって持つかが問題だが、買い物先で大きめの袋の一枚や二枚多めに貰えばなんとかなるだろう。  
 
 二人で近所のスーパーを訪れ、あれやこれやとカゴの中に放り込んでいく。  
 有希は早々とカゴから溢れるほどの品物を片手で軽々と持ちながら、レジで清算を済ませていた。  
 あれを俺が持つことができるのかどうかが問題だ。  
 
 
 もう何度も訪れた有希の家で、俺は壁にもたれて大きな欠伸を繰り返した。  
 テレビも無いものだから、暇潰しになるものが何もない。有希が借りてきた本でも読もうと思ったが、数ページ読んだだけで投げ出した。  
 物語の序盤からいきなり設定の説明みたいな描写が続くのはどうなんだ? もっとキャッチーな始まりかたにしてくれよ。  
 おそらくSF好きな人間にとっては、この設定如何によって内容がどの程度SF的現実味を帯びているのかを探ることもできるんだろうが、生憎俺はSF好きじゃない。  
 とりあえず、有希が面白いと思った本だけ今度読んでみよう。  
 
 さて、有希はというと、キッチンで料理をしていた。どうやら和食らしく、醤油と味醂の甘ったるい匂いが届いてきた。  
 器用に包丁を使って、大根を桂むきしている。一体どんな料理が出てくるのか、楽しみではある。が、退屈だった。猫はいいね、退屈に強くて。  
 有希は制服の上から薄い青のエプロンを羽織っている。エプロン姿を眺めるというのも、なかなかオツなものだ。  
 
 退屈が度を過ぎたせいもあって、俺は立ち上がって有希の後ろまで歩いていった。有希の髪の匂いがほのかに鼻腔をくすぐる。  
 匂い立つ有希の体温が、肺を満たした。  
 
「なぁ、有希。何作ってんだ?」  
 包丁を持ってるから、このまま抱きつくのは危険だろうな。残念だ。  
「鯛の刺身にカブト煮。それとお味噌汁にほうれん草のおひたしと冷奴」  
「和食全開だな……。いや、好きだけど」  
 コンロの上にある圧力鍋らしきものの中には、鯛が潜んでいるのか。何気に高級食材を使うところが憎らしい。  
 大根は、鯛と一緒に煮込むためのものだったらしい。面取りをして、軽く切り目を入れていた。  
 
「待ってて」  
「ああ」  
 つっても、まだ夕飯には早い時間だ。太陽さえ沈んじゃいない。  
 こうやって料理をしている有希は、俺の目が確かなら楽しそうに見えた。俺の質問にも答えてくれたし、俺を気遣う言葉も聞けた。  
 あとは待つだけか。その待つという行為が大変なんだが……。  
 
 軽い眠気が頭を鈍くする。何もすることはなかったが、料理をしている有希を見ているだけで幸せな気分になれた。  
 無愛想も度を過ぎているが、それも有希らしくて良い。いやぁ、本当にかわいいなぁもう。  
 いっそ世界中に向かって俺は有希を愛してるぞー、と叫びたい気分だが、ハルヒに聞きつけられると俺が困るからな。どっか小さな穴にでも暴露してみるか。  
 具体的には有希の小さな穴に。  
 
「有希、好きだぞ。愛してる」  
「わたしも、あなたのことを愛してる」  
 なんて嬉しいことを言ってくれるのだろう。有希がこうやって、気持ちを言ってくれるのがどれだけ凄いことなのか、きっと俺にしかわからないだろう。  
 我慢できずに、そっと有希の腹部に両手を回した。顎を有希の肩の上に乗せる。  
 何度も有希、と名前を呼んでみる。そのたびに、有希はくすぐったそうに身をよじらせた。  
 
「味が染みるまで、もう少し時間がかかるから」  
 そう言った有希は、俺の手元をするりと抜けて、炊飯ジャーの炊飯スイッチを押した。わざわざ米を浸漬させておくあたりが細かい。  
 コンロの火を落とし、まな板をシンクの中に置く。布巾で周りを拭き終えた有希は、最後に手を洗った。  
 
「お前なら、いい嫁さんになれるな」  
「……」  
「有希が毎日俺のために料理作ってくれたら嬉しいのにな」  
「いい」  
「それは、どっちの意味でだ?」  
「わたしは、あなたのために料理を毎日作ってもいい」  
「……マジか?」  
 半分冗談のプロポーズじみた言葉に、有希は本気で返事をしてきた。  
 嘘ではないのだろう。有希は俺の目を見つめていた。  
 
「だったら、ずっと一緒だな」  
「ずっと一緒にいてくれる?」  
「ああ、もちろんだ」  
「……うれしい」  
   
 有希が、うっすらと、笑った。  
 そう結論づけるのに、愚劣なる脳みそがどれだけの時間をかけたことか。それは、朝顔が一日で伸びる高さほどのわずかな変化だったかもしれない。  
 笑ったというには、あまりにも変化は少なかった。ほんの少しだけ、唇を横に引いて、目を細めただけの、笑顔。  
 
「え? マジで言ってんのか?」  
 
 こくんと力強く頷く有希。まったく迷いは無さそうだ。  
 
 酸素が足りない。溺れた者が水面を求めるように、俺は有希の体を抱き締めていた。  
 頭の中で火花がパチパチ音を立てている。有希は、なんて言った? 俺と一緒にいられることが嬉しい?  
 笑ったんだぞ、有希が。  
 
「有希」  
 唇が触れ合う。荒々しい口付けに、有希が応えてくれる。  
 もう、何もかもが足りない。どれだけ有希を強く抱き締めたら、今俺が抱えている渇きが癒せるんだろう。  
 胸が痛い。心臓がスピードメタルのドラムじみたリズムを刻んでいる。有希の唇、舌も何もかもがいとおしい。  
 このまま有希を食べてしまいたいくらいだ。  
 
 
 気がついた時には、俺が有希を床に押し倒していた。服を脱がせている俺が、桃にかじりつくように有希の唇を覆っている。  
 何をやってるんだ? もう段々わからなくなってきた。セーラーのリボンを解いて投げ捨て、有希は俺の行為を受け入れるように服を脱ぎはじめている。  
 唇だけで繋がっている俺と有希。誰かを好きになるのは、こんなに苦しいことだったのか?  
 
 俺は有希の舌を吸い、有希の股間に手を伸ばしてショーツの上から秘部を揉んでいた。硬い恥丘の向こう側は、有希が分泌した液体でぬめっていた。  
 瞬く間にショーツは水気で一杯になる。スカートが邪魔だ。ホックの外し方がわからず戸惑う俺を見かねてか、有希が自分で脱いでくれる。  
 軽く腰をあげて、足から引き抜く。上も全部脱がせた。俺も自分の服を破ろうとするような勢いで脱いだ。  
 
 上半身裸になった有希の胸に口付け舌で淡く色づいた乳首を転がす。自分の股間が猛烈に勃ちあがっていることに今ごろ気づいた。  
 靴下以外脱ぎ捨てて裸になると有希の体温が直に伝わってくる。狂おしいほどの熱さが俺の神経を焦がした。  
 有希のショーツをだらしなく脱がせるとすぐさま俺のモノを有希の中へと押し込む。有希のことを気遣う余裕が脳みそから蒸発していった。  
 
 
「有希っ、愛してるぞ」  
 鈍い快感が腰を溶かす。暖かい。このまま有希の体へ溶けてしまえたらどれだけ気持ちいいだろう。俺は猛然と腰を打ち付けながら有希の名前を呼び続けた。  
 有希は俺の行為を積極的に受け入れようと両手を俺の腰へ回している。苦しげに吐き出される吐息を吸い込みさらに口付ける。  
 キスと呼ぶにはあまりに荒々しい。お互いの唾液がどちらのものともわからないまま有希の喉を流れていく。  
 後悔したばかりなのにまた俺は有希の体を夢中で貪っていた。  
 
 何度も有希の中を行き来して鈍い水音と肉のぶつかる音の数を増やしていく。  
 ずっと一緒にいてると訊いた有希の言葉が俺の頭の中で繰り返された。ああずっと一緒にいよう。  
 
「有希、俺はお前とずっと一緒にいたい。お前がそう望むのなら、俺がくたばるまで一緒にいてくれ」  
 顔を覗き込んで俺はまた驚愕。赤く染まった頬と潤んだ瞳。そして有希の喘ぎ声じみた吐息の数々。  
 有希は喜んでくれているのだ。俺の言葉と何度も重ねたキスで。  
 
 もう限界だ。下半身から突き上げてくる快感もそろそろ登りつめている。  
 このまま出してやれ。有希の一番奥に。  
 信じられないほどの痙攣を起こしたかのように体が跳ねる。何も言わないまま俺は有希の体の中に精液を放っていた。  
 足が痺れてるのに無理やり立とうとしてる時のように呻き声が喉から溢れる。  
 
 その体を抱き締めると、有希も両手を俺の首筋に回してくれた。一時的に癒される渇き。  
 片息を吐いてみても体が収まる気配はなかった。  
 
 
 ずっとこうしていたいと思った。  
 有希はぎゅっと俺の首に手をまわして抱き締めてくれている。一人分の席に二人で座ろうとするような窮屈さが心地よかった。  
 まだ硬度を保っている俺のモノは、有希の中で何度かぴくりと跳ねていた。息をする度に心が満たされていった。  
 触れ合っているだけで気持ちよかった。多分、俺は世界で一番幸せなんじゃないだろうか。  
 
「有希……」  
 たまらなくなって名前を呼ぶ。何故か涙が溢れそうだった。  
 有希が傍にいてくれる。ずっと一緒にいてくれると言った。  
 
 そっと頭を撫でてくれた。夏の青空を見たかのような懐かしさが体に染みて、くすぐったくなる。  
 目を閉じて、俺は有希の体の上に崩れ落ちた。  
 
 
 ナイフのように尖った視界の中に、有希の顔が滲んで見えた。  
「……寝てたのか」  
 視界をこじ開けるように、うっすらと目を見開くと、ぼんやりしていた焦点が合う。  
 どうやら仰向けに寝ていたらしい。そして、すぐ眼前には有希の無表情があった。どうやら、有希とエッチに励んだ後、眠ってしまったらしい。  
 
 有希は裸のままだった。下から覗き込むような格好なので、柔らかく膨らんだ下乳がよく見える。絶景だ、思わず開け始めていた目を細めてしまう。  
 って、膝枕かよ?! ようやく感覚が戻ってきて最初に思うのがそれだった。さらに俺も裸だ。チンコ丸出しで何やってんだ俺?!  
 
「わ、悪いっ。寝てた」  
 慌てて起き上がる。有希も俺も、靴下だけの素っ裸。冷たい床は、なんの液体だかわかんないものが染みを作っていた。  
 すでに太陽も店じまいしたらしい。窓の外は黒く染まっていた。  
 
 有希は少しだけ残念そうに瞳を伏せてから、のそのそと俺が脱がせた服を着込み始めた。  
 さすがに濡れたショーツだけはそのまま履く気になれなかったのか、ショーツを摘み上げるとじろじろと眺めていた。  
 そのまま洗面所に向かう。  
 俺も服を着るとしよう。  
 
 
 
 しばらく待っていると、制服姿の有希が出てきた。  
 無言でキッチンに向かっている。俺は何も言うことが出来ずに、有希の後姿を眺めることしかできなかった。  
 なんとなく気まずい。  
 
 時計の秒針の音がいくつも積まれて、崩壊しようとしていた。  
 こういう時は俺が何か言ったほうがいいのか? 有希に何か発言を期待するのは無理があるかもしれない。  
 ヤるだけヤって、寝てしまうとか最低じゃないか。しかもまた無理やりっぽかったし。  
 
「そ、その有希。なんか、あれだ……。悪かった」  
 ガスコンロの火を点け、味噌汁と鯛の入った鍋を暖め始めている。  
「謝らなくていい。わたしは、うれしかったから」  
「そ、そうか……」  
 有希は食器棚から、来客用の茶碗などを取り出してお盆に置くと、コタツ机の上に持ってきた。  
 さらに電子ジャーのコンセントを引き抜き、机の近くに寄せる。  
「なんか手伝おうか?」  
「いい、待っていて」  
「ああ……」  
 
 
 有希の手料理は美味かったんだが、気持ちがなかなか上向きにならず、何をどう食べていたのかもよくわからなかった。  
 のそのそと食べる俺の様子を、有希がじっと見詰めてくるものだから落ち着けもしない。それとなく料理を褒めてはいたが、それもきちんと届いているのかはわからなかった。  
 満腹中枢だけがいたずらに刺激された食事。せっかく有希が作ってくれたのに、俺は何沈んでるっていうんだ。  
 
 同じことを繰り返して、また後悔している自分がたまらなく嫌だった。  
 俺はこんなヤツだったか? もっと醒めてて冷静なところもあったじゃないか。  
 
 食べ終えると、有希は食器を洗い始めていた。母さんなんかは、シンクに漬けてしばらく放っておくというのに、几帳面なヤツだ。  
 二人分だからさほど時間がかかるわけでもなく、すすぎ終えた食器をカゴに寝かせている。  
 
 
 有希は洗い物を終えると、音もなく歩いて座布団の上に座る。  
 なんとなく気まずい。有希が無言でいるからというだけの理由ではなかっただろう。俺にも問題はあったから。  
 ふと有希の顔を見れば、俺のことをじっと見詰めている。その無表情が俺を責めているような気がした。  
 目を逸らすことも出来ずに、俺もまた有希の黒い瞳を見つめる。もう一度くらい笑ってくれたっていいのにな。  
 
 どうしたもんかと思っていると、有希がすすすと俺の元へ寄ってくる。思わず後ずさりしてしまう。  
「な、なんだ?」  
「……」  
 ちょっとだけ開いた距離を、また有希が埋めに来る。  
「どうした?」  
「……」  
 何か言いたげに寄って来ておいて、無言でいるのはどうなのか。漆塗りされた碗のように黒く光る瞳に、俺の狼狽した顔が映っていた。  
「だから、一体どうしたっていうんだ?」  
「……もう一度」  
「何を?」  
「……」  
「だから、黙るなよ」  
「性行為」  
 今度は俺が黙る番だった。  
 無表情でいきなり何を言い出すのかなこの娘は。  
 今の無言は、有希流の恥じらいというものだったのだろうか。だとしたら、見も蓋もない言い方をさせてしまった俺が悪いのか。  
 
 こんなところではなんだからと、奥の寝室へと移動した。  
 いつ来ても敷いてある布団の上に、二人して座ってみるが、こう向かい合った状態からエッチに突入しようというのはなかなかに難しいものだった。  
 部屋の明かりも落としてあるので、有希の薄ぼんやりした輪郭くらいしか見て取れない。  
 
 互いに無言になる。  
 
 しかしどうしたものか。もう少しムードみたいなものがあってもいいと思うんだが、この段階で期待するのは難しいだろう。  
 そもそも、有希から望んでくるというのが意外だった。こいつにも、ちゃんと性欲みたいなものがあるんだろうか。  
「脱いで」  
 ……考え事をしているところに、淡白な有希の声が飛ぶ。しかも脱いでってあなた。  
 溜め息が今にも足を滑らせて落ちそうになった頃、有希は俺の服に手をかけてきた。有希の手をわずらわせるわけにもいかず、俺は着ていたシャツを脱ぎ捨てる。  
「全部」  
 つまり裸になれと……。もうすでに体を重ねまくってるんだから、今更とはいえ、気恥ずかしいものがある。  
 俺が逡巡しているところに、また有希が手を伸ばしてくる。  
 
「わかったわかった……」  
 ズボンを脱いで、部屋の端に放っておく。長く履いていた靴下も脱ぎさった。  
 
 次は有希が脱ぐ番だろう。  
 そう思っていると、有希は突然俺の股間に手を伸ばしてきた。  
「うおっ」  
 半勃ち状態だった俺のモノを手で掴むと、柔らかく揉んでくるではないか。  
 むくむくと血が注ぎ込まれる海綿体が、限界まで空気を入れられた風船のように膨らんだ。  
 
 膝立ちになった有希は、そのまま俺の体を後ろへと押し倒す。  
「お、おいっ?!」  
 首だけで有希のほうを見ると、まさに有希はその唇を俺のモノに近づけようとしていた。  
「有希?」  
「……大丈夫」  
 まさか、あれか? エロ本の中でよく見るようなアレをしようとしてるのか?  
 一体何故だ? 有希はどうしてそんなことをしようとしてるんだ?  
 
 疑問符だけが夏の蚊のように俺の周りと飛び回る。ええい、うざったい。  
 
 有希は俺のモノを手で掴むと、片手で短い髪を軽くおさえていた。  
 冷たい手の感触が、熱く滾った股間を一層燃え上がらせる。有希がそっと亀頭に口をつけた。  
 わざわざ、ちゅっと音を立てて先端を何度か唇で啄ばむ。俺の脚の間で、威嚇行為をする猫のように高く尻を掲げて、俺の股間に顔を埋める有希。  
 舌を唇からだらりとさげると、舌先に滴らせた唾液を俺のモノに垂らした。  
「うっ」  
 唇で俺のモノを咥える有希。目を閉じながら、深く喉の奥へと促していく。  
 口腔の熱が腰を溶かす。有希の口の中で蠢く舌が、さらに俺のモノを刺激していた。  
 そのまま顔を上下させ、唇を使いだす。  
 
 暖かい。  
 それは有希の膣に挿入している時とはまた違った感覚だった。いつも無口で、無表情な有希が、その小さな口で俺のものを咥えている。  
 手を使って扱き、溢れる唾液を垂らして、舌を使って舐めあげていた。  
 
 ふと目を開けて、俺の表情を覗き込む有希。舌で先っちょをぺろぺろと舐めている。  
 唾液でぬるぬるになったところで、有希は一度顔を上げた。右手で俺のモノを何度か扱いて、動きを止める。  
 
「どうした?」  
「命令して」  
「はぁ?」  
 命令って、なんだよ一体。  
「……あなたがわたしにしてほしいことを」  
「ちょっと待て。命令とか言われてもだな、有希は俺のものじゃないし、そんな命令できる立場でもないだろ」  
「嫌なら、嫌と言う」  
 本気なのか。有希はじっと俺を見詰めている。  
 仄かに暗い部屋の中で、有希の瞳が月のように輝いていた。俺に話しかけながらも、有希は手で柔らかく俺のモノを刺激している。  
 
「命令、ね……」  
「あなたが好きなように」  
「なんでだよ」  
「あなたが好きだから」  
 俺のことが好きだという有希の表情は真剣で、少なくとも冗談の類でないのは見てとれた。  
 さぁ、どうする俺。俺のことを好きだと言ってくれる美少女に命令できるんだってさ。羨ましい話じゃないか。  
 けれどまぁ、俺にはとんでもない要求をするような度胸もないし、何より有希が嫌がるのは見たくない。  
 でも、有希がしてくれてるこの行為を、もうちょっと味わったっていいと思う。こうやってすぐ性欲に負けるからダメなんじゃないのか、などと冷静な俺が苦言を申してくれたが、生憎俺はそいつに耳を貸すほどの君子ではなかった。  
 俺が王様に生まれてたら、あっさり国は滅びてただろうな。  
 
「じゃあ、さっきの続きをしてくれ……」  
「わかった」  
 言うやいなや、有希は再び俺のモノを咥え込んだ。激しい上下運動に加えて、手で扱いている。  
 こいつ、何処でこんなこと覚えたんだ。しかも、俺の弱いところを知っているかのようだった。裏筋を舌でなぞられ、カリをくるりと舌で回される。  
 鳥肌がぷつぷつと立ち上がるのが、自分でもよくわかった。  
 口の中がどうなっているのかはわからないが、舌が複雑に絡んでくる。有希が先端を吸い上げると、思わず呻き声が漏れた。  
 
 次第に高まっていく自分を感じていた。自分でコントロールできるわけでもない、強制された刺激が絶え間無く襲い掛かってくる。  
 小さな唇で俺を咥え、まるで愛しいものかのように舌を這わせる。そんなに美味いものでもないだろうに。  
 そうするのが自然なように、有希はもじもじと体をくねらせている。  
 
 
 俺は激しく動いている有希の頭に手を置いた。さらりとした髪に、指を通す。  
 部室で大人しく本を読んでいる有希と、俺のモノを美味そうにしゃぶっている有希の姿が重ならない。  
 どっちが本当の有希というわけでもないのだろう。  
 
「有希、そろそろ出るっぽい」  
 俺の言葉を聞いているのかいないのか、有希はさらに動きを早くした。根元に手を添えて扱き、まるで早く出せと言わんばかりに激しく動く。  
 あまりにも激しいものだから、皮が伸びてしまいそうだ。これ以上伸びたらかなり困る。ただでさえ、ちょっと被り気味なんだからさ。  
 根元に何度も痛みが走ったが、それすらも脊椎を通るうちに快感へと変えられた。  
「お、おいっ」  
 このまま口の中で出していいのか? そんなもん、エロ本の中でやることだろ。恋人同士が、しかも高校生同士がやることなのか?  
 
 もう出る、そう思った時には、止めようのないところまで来ていた。  
 腰を後ろからハンマーで殴られたかのような衝撃と共に、精液が放たれた。数回跳ねたかと思うと、強烈な放出感に襲われる。  
 こりゃ、口の中じゃなかったらかなり飛んでたに違いない。ゆっくりと時間をかけて一人でやってる時と同じような感覚だった。  
 
 思わずぼけっとしてしまう。  
 重たい息が肺から溢れた。有希は、名残惜しそうに俺のモノをゆっくりとしゃぶりながら、最後に強く吸い上げた。  
 
 顔をあげ、口元を手で軽く拭うと、ごくりと喉を鳴らす。  
「飲んだのかよ……」  
 口内発射にごっくん。そんなもん、俺のベッド下で眠ってる本だけで十分だ。  
 有希はこっそり官能小説でも読んでるんじゃないのか。そうじゃなきゃ、いきなりこんなことしないだろう。  
 いや、読んでたとしても、いきなりここまでやられるとは。  
 
「美味いか?」  
 呆れながら尋ねてみる。  
「まずい」  
「だろうな」  
 有希の頭を撫でてみる。有希らしからぬ行為に驚きはしたが、気持ちよかったことは確かだし、有希が俺のことを大切に思ってくれてるからこそしたことなんだろう。  
 しかし、気になるのは……。  
 
「なぁ有希。こんなの、何処で覚えたんだ?」  
「……内緒」  
 
 それとなく、何度か聞いてみたが、結局答えてはくれなかった。  
 しまいには怒っているようだったので、追求もできず、謎だけが深まってしまった。  
 
 

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