さて翌日。今日から十日間、なんと240時間もの間俺はハルヒの下僕というこの世で一番就きたくない役職に  
任じられる事になった。身から出た錆びってことか。それにしたって気がめいるぜ。  
 大体だ、どうやってハルヒは俺のお袋に泊りがけなんてむちゃくちゃな条件を飲ませる気なんだ?  
そのあたりを考察するだけでも朝飯の消化が悪くなる事請け合いだ。  
 ストレス過多の牛のように気もそぞろに朝飯を腹に収めて、俺はとにかくハルヒに会って確かめてみることにした。  
 長門との一件で一人で悩む愚かさってやつを学んだもんでね。  
 そう言えば長門の奴、俺がハルヒの家に……アイツの事だからまずしくじる事は無いだろうから泊り込みは確定として、  
ハルヒの下僕になるなんて知ったらどう思うだろう。無表情を貫くんだろうか。それとも……  
「おっすキョン」  
 毎度お前は計ったようなタイミングで声をかけてくるな。  
「今日も今日とてさえない顔だな、ん?」  
 谷口の品の無いにやけ顔を見ても、今はなんとも感じない。俺の精神もどうやら安定を取り戻したようだ。  
「まあな。当分は憂鬱な日が続きそうだよ」  
「ふん。その割にはだいぶ余裕があるな。なんか隠してるんじゃないか?」  
 ああ、いやだ。長門といいコイツといい、最近はハルヒ菌でも拡散してるんじゃないか?ちょっとしたバイオハザードだ。  
 谷口を適当にあしらいつつ、のこのこ教室にやってきた俺を待ち受けていたのは、独裁者を思わせる邪悪な笑みを浮かべる  
ハルヒだった。  
「来たわね」  
 そりゃあ来るだろうよ。学校だし。  
「へえ? ご主人様相手にその態度?」  
 おいおい。クラスメイトの前でもやり続けるのか?  
「当たり前でしょ。ま、あんたが従順であればそれ相応の対応をしてあげるけど?」  
 いきなりノリノリだな。そんなに楽しみにしてくれてたのか。  
「ああそう、そういう態度で来るなら……」  
 申し訳ございませんハルヒ様。  
 頭を下げつつ言ってみると、ハルヒの動きが止まった。上目遣いに様子を見ると、怒った様な、どういう表情をしていいか  
分からないときの顔で眉が震えている。どういう反応なんだ?  
「そうそう、それでいいの」  
 口元をひくつかせて、笑いをこらえているようだった。そんなに面白かったかね。  
 それから、早速ハルヒは俺をこき使い始めた。  
「キョン、お茶」  
 当然俺のおごりだ。  
「その玉子焼きおいしそうね。ちょうだい」  
 わざわざ弁当を用意してきやがった。  
 クラスメイトの前ではやらないんじゃなかったのか? と思っていると、国木田が見かねたのか声をかけてきた。  
「ねえキョン、どうしちゃったの?」  
 ああ、まあ、借りを返している最中でな。  
「ふーん。ボクはてっきり……」  
 てっきり?  
「何よ?」  
 ハルヒだ。  
「ああ涼宮さん、キョンの様子がおかしかったからさ、そのことを聞いてたんだよ」  
「ああ、それね。キョンは今、身も心も私の奴隷だから」  
 俺は品性まで売った覚えはない。それに奴隷じゃなくて下僕って話だったが?  
「変わらないでしょ」  
 言葉の響きってやつをもっと重視してくれませんかね。ほれ、国木田たちも目がまん丸だ。  
「知ったこっちゃ無いわよ」  
 ごもっとも。  
 
 そんなこんなで割合穏やかに奴隷一日目は過ぎて行った。ようやく部室で落ち着けるな。  
 ノックしてみると、  
「入って」  
 長門か。やっぱり早めに言っておくべきだよな。うん。そうしよう。俺は扉を開けて、  
 
 
 ナース服で仁王立ちする長門を目撃した。  
 ……何をなさってらっしゃるんでしょうか。  
「似合う?」  
 そんな事聞かれても。俺はナース服ってあまり趣味じゃないんだよな。長門ならむしろ女医って感じか。  
しかしなあ、それは朝比奈さんのものだぞ?お前が着るとある特定の部位がぶかぶかになっちまう。  
 なんて事は口に出さずにピンクがかった服と白い太ももとのコントラストを楽しんで、  
「ああ。似合ってる。しかしなぜいきなりそんなものを着込んだんだ?」  
 長門が静止する。あれ、俺何かまずい事を言ったか?  
 しかし何事も無かったかのように、  
「なんでもない」  
 と答えた。なんでもないだって?そんなわけ無いだろ。お前がコスプレに挑戦するなんて事は統計学的確率論で言えば  
ハルヒが関与しない限り有り得んことだぞ。  
「着替える」  
 言うなり長門は背を向けて背中のファスナーに手をかけ、ゆっくりとその下の白い素肌が、  
 ちょっと待て。素肌? 下に何も着てないのか? っつーか俺はまだ出て行ってないんですよ長門さん?  
しかし長門の手は止まらないし、俺だって視線がはずせない。  
 こちらをちらりと伺うように横目で……信じられんが長門の流し目だ……見つめながら、あくまでもゆっくりとファスナーをおろす長門は  
信じられないほど扇情的だ。  
 ああ、好い。いいですナース服。実にこう、イケナイ感じがする。  
 ぱさり、という音で我に返った。これ以上はやばい、と本能からの警告だ。  
 後ろを向くと、なんと壁しかなかった。嫌な記憶がよみがえる。あれは去年の初夏だったか、俺は  
教室に呼び出されて今と同じような光景を目にした。初めて死を意識した思い出だ。  
「昨日の続きがしたい」  
 ばっちり最後までやった記憶があるんだが。  
「エラーコードが増大している」  
 なんだと!? またなのか! 原因は?  
「一週間前にシャミセン二号の記憶情報を取り込んだ時点から、あるエラーが起こり始めた。  
 シャミセン二号とあなたの、」  
 言葉を切る。俺は思い出して赤くなった。あれか。  
「行為、を回想するという欲求を抑えられない。結果、普段とは比較にならない速度でエラーコードが蓄積し始めた」  
 エラーコード。嫌な響きだ。聞くたびに去年の十二月を思い出すぜ。……あっちの長門もな。  
「その後あなたとの接触が耐え、エラーコードの蓄積も危険域に達していた。だから敢えて  
涼宮ハルヒにあなたとの折衝の場を設ける事を依頼した。  
 実を言えば、昨日抑えがたい性的衝動を覚えていたのはあなただけではなかった。私も」  
 長門も俺と同じように、あの日のことを思い出していた?  
「私はあなたと交わる事でエラーコードを完全に抑えることが出来る。あなたは私と交わる事で  
 あらゆる性的願望を満たす事が出来る」  
 あらゆる。性的願望。俺にどんな性的願望があると思ってるんだ?  
「それは解らない。ただ、性的願望は個体差が非常に強く反映され、人そのものだけでなく  
 特定の状況、行動、あるいは動植物、有機無機物問わず性的欲望の対象となりうる」  
 ずいぶんとマニアックな意見じゃないか。それは統合情報思念体に教えてもらったのか?  
「あなたは『性知識に関する全ての情報を廃棄せよ』と言った。だから本で調べた」  
 今地面が揺れなかったか? 気のせいか? 俺が長門の台詞に酔っただけだろうか。  
 俺は長門が書店でありとあらゆる性的願望について記された、ビニールに包まれているような本を  
買っているところを想像して、どうしようもなく俺の息子がはりきりだすのを押さえられなかった。  
 だが俺よ。今は我慢だ。今長門を襲うのは無しだ。ハルヒがもう背後に来ているはずなんだからな。  
 
「お前の意見は非常にありがたいんだがな、長門。やはりその、そういうことはもっと  
 人に見つからないところと言うか、人に見られない状況下でやるべきであってだな、  
 ハルヒや朝比奈さん、古泉がここに向かっているのにそんな破廉恥な行為をするというのはいかがなものかと……」  
 情けない事だが、すでに長門とそういう行為に及ぶ事には反対できていない。  
 長門は背を見せたまま答えず、ぱさりとスカートを落とした。その下にも何も無かった。今長門は全裸になっている。  
「お、おいおい! 聞いてるのか長門!?」  
「問題ない。SOS団メンバーは全員ここにいる」  
 バカな。さすがに俺も気づくはずだ。  
「長机の下と団長机のむこう」  
 ゲエーッ! っと漫画的なリアクションを赦してくれ。長門のコスプレストリップショーに気を取られて  
本気で気づかんかった。  
 確かに(腹立たしい事に)古泉と朝比奈さんは横にならんで目を閉じているし、ハルヒは壁にもたれかかって  
すやすや寝こけている。  
「私にはあなたの持つ性的願望はわからない。だから、」  
 一糸まとわぬ姿の長門が、こちらを向く。  
「ありとあらゆる状況で性交し、あなたの好みを理解する」  
 どうやらコイツは、俺の理性の存在を尊重してくれはしないようだった。  
 俺は滑るようにこちらに近寄ってきた長門に反応する前にジッパーを下ろされ、元気満点の息子を外出させた。  
 両方ともたったまま、長門は左でさおを、右で先端を刺激してくる。さっきから外に出たくてうずうずしていたところに  
こんな事をされて、いきなり抵抗する気がうせてゆく。  
 だめだ。さすがにこの状況でやるのはやば過ぎる!  
 しかしそんな事を言ったところで息子の元気のよさが消えるわけでなし、説得力も無かった。袋が張ってくるのを意識しだしたところで、  
長門が袖を引っ張って、窓際に俺を導く。そこには当然、寝ている  
「ハルヒ……」  
 が居る。長門は団長机の上にあるモニタとキーボードをどけて、ぺたんと胸をつけた。ほんのり赤みがかった  
つややかな桃尻を持ち上げて、すでに果汁滴る秘裂を自ら広げてみせる。  
「早くしたほうがいい。あまり時間をかけると情報操作でもごまかしが難しくなる」  
 肩越しに潤んだ視線を投げかけながらナチュラルに脅迫されているような気がするが、いきり立ったものを  
まさに入れようとしている奴が、まさかこれで「脅された」なんて言える筈も無い。  
 一気に全部いれた。  
「ぁあうっ!」  
 昨日体験したばかり立ってのに、まだこれだけで達しそうになる。長門が凄いんだって事にしといてくれ。  
 実際、バックから長門をついてみると、これまでとは違った趣があった。まず顔が見えないから、俺の想像の内で  
長門に表情をつけてしまう。このつやのある声に似合う表情を。二つ目、伸ばした手に長門の乳房がすっぽりと収まって、  
心ゆくまでその感触を味わう事が出来る。三つ、長門の尻を思う様鑑賞できる。  
 胸を愉しんでいた両手を、尻に持ってくる。左で薄いながらも引き締まった美尻を撫で回し、右で菊門をそっとくすぐってやると、  
それにあわせてひときわ大きな声を上げ、膣を収縮させる。  
 この光景は実に刺激的だった。だってそうだろ? 長門のケツの穴だぞ? 俺がケツの穴を撫で回して長門が興奮してるんだぞ?  
夢中にならない奴は男じゃないだろうが。  
 どうやらそこは右太もも以上の長門の弱点らしい。ここをもっと攻めてみたいと思った俺は、迷わず棒を引き抜いた。  
 なぜやめるのか問いたげな目で見つめてくる長門を見返しつつ、しゃがみこんで直接菊門に舌をいれた。  
「ひゃうっ!?」  
 良い反応してくれるぜ。舌先のぴりぴりした感触を愉しんで、さらに乱暴に掻き回す。同時にクリトリスを  
きつめにつまんでやる事も忘れない。  
 
「ん゛ううぅぅううぅうう」  
 長門は声を押し殺して震えている。摘んだまま膣内に指を入れ、眼前にかざしてみると、予想通り粘液は白くにごっていた。  
 長門がしりの穴を掻き回されて感じている。どす黒い欲望がわきあがってくるのを感じる。  
 立ち上がって、ぷっくりと膨らんだしりの穴を見下ろす。充血してしわ一つ無い、綺麗なピンク色だ。  
「有希。挿れるぞ」  
 膣にいきなり入れて白いものの混じった愛液を満遍なく付けてから、いきなり引き抜く。  
長門が疑問に思うよりも早く、俺は尻の穴に突っ込んだ。  
 声ならぬ声。千切れるほどの締め付け。ざらざらした、長門の直腸。瞬間、俺は果てた。奥に流し込む。  
長門はこれを消化吸収するんだろうか。思うだけで、さらに欲望は大きくなる。  
 長門がのけぞった。ほとんど立つような姿勢で、後ろに居る俺の首に腕をかける。すると必然、俺は始点が水平に近くなって、  
 ハルヒの寝姿を目の当たりにした。  
 自分の中で何かが千切れた。  
 真上を見る有希と、真下を見る俺。舌を絡めあい、唇を貪り合った。両手を使って、クリトリスをしごき  
膣に指を三本入れてむちゃくちゃに掻き回した。  
 有希はイく時に一瞬目の焦点が合わなくなる。その変化をつぶさに見届けてから、俺はまた精液を注ぎ込んだ。   
 
 少しだけ余韻に浸った後、  
「情報を再構成する」  
 
 言った瞬間に俺は服を着ている自分に気がついた。有希はすでに自分の席で読書の体勢に入っている。  
 と思いきや、閉じた。終了の合図だ。  
「ばっかキョン!何ボーっとしてんのよ!」  
 ハルヒが机越しにがなる。  
「キョン君、早く帰る用事でもあるんですか?」  
「先ほどから棒立ちになってましたが……どうされました?」  
 長門がやったらしい。どうやら俺たちは、やっぱりと言うべきか長い間まぐわっていたようだ。  
 ハルヒは怒鳴ったものの自分の行動になんぞ疑念を抱いたようで、首をかしげた。  
「……あれ? あたし……ま、いいわ。帰るわよ。付いて来なさい」  
 有希の気配が変わる。  
「え? なんでキョン君が涼宮さんについて帰るんですか?」  
 朝比奈さんの声だ。頼むからそれ以上は訊かないでください。俺の命にかかわりかねない。  
「んー? おっかしいわね。言ってなかったっけ? キョンは今日から十日間私の奴隷になるのよ」  
 古泉がかすかに震えるのを、俺は見逃さなかった。見間違いで無い証拠に、今も口の端がプルプル震えている。  
笑いをこらえてやがるな、ちくしょう。  
 朝比奈さんは顔を真っ赤にして手をばたつかせ、そんな、とかまだその年齢じゃ早いです、とか過激すぎます、とか  
良く分かるようなわからないような事を言っている。誤解なんです。判って下さい……って、  
この台詞はいま朝比奈さんよりあいつに向けた方がいいな。  
「奴隷、とは穏やかではありませんね。どういう事情なのですか?」  
 良くぞ訊いてくれた、とばかりハルヒは胸をそらした。  
「皆も知ってる通り、最近キョンのバカが有希とギスギスしてたでしょ? それを憂えた私が寛大にもキョンに弁明のチャンスを与えて、  
 見事有希と仲直りさせたの。で、キョンはそのことに恩義を感じて偉大なる団長に十日間身も心もささげると……」  
 またんかい。俺が志願したみたいに言うな。  
「なんですって?」  
 やおらハルヒは立ち上がって、俺の目の前まで来た。至近距離からエネルギーたっぷりの視線で射抜かれて、折れた。  
「すみませんでした」  
 朝比奈さんは赤い顔をさらに赤く、古泉は眉を持ち上げた。有希は俺を見つめて……いや、睨みつけている。  
ある意味宇宙レベルのメンチ切りだ。  
「ま! そんなわけだから、また明日ね!」  
 一方的に勝利宣言を下したハルヒが、俺のネクタイを引っ張って颯爽と歩き出す。  
俺は有希の視線を背後に感じながらハルヒの後を歩いた。  
 下駄箱でも、  
 通学路の帰り道でも、  
 まず立ち寄った俺の自宅でも、  
 こんなときになって初めて眼にするハルヒの自宅に着いても。  
 

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