今日も今日とて部室に顔を出す。日課みたいなもんだしな。部室の扉を開く。  
中には部室専属座敷わらしの長門が椅子に座り、恋愛小説に視線を落としている。  
こちらに視線を向けると小説を閉じ、ゆっくり立ち上がる。  
なんだ?またなにか起きたか?  
「起きる前に準備をする」  
長門は無言で俺の前に立ち、爪先立ちになって……。  
顔が近づく。  
長門、表情が読めないぞ。  
顔が近づく。  
おい、どういうつもりだ。  
顔が近づく。  
俺の頭を長門が押さえる。  
顔が近づく。  
ちょ、待て。何をするつもりだ長門。  
顔が近づく。  
こんなところハルヒに見られたら。  
顔が近づく。  
「ハルヒが望むと望まざるとに関わらず、あなたを書き換えられるわけにはいかない」  
 
おでことおでこが。  
その瞬間、接触した。  
 
「もちろんバグの蓄積で私が改変する可能性も否定できない」  
だからなんで熱を計るみたいにおでこくっつけてるんだ、長門?  
「リアルタイムでは身体の修復くらいしかできない」  
くっつくなちょっと緊張するじゃないか。  
両手が所在無い。長門の背中にまわすわけにもいくまい。  
 
「身体なら分子レベルで多少異なっていても影響が無視できるレベルに抑えられる」  
で、頭はどう関係するんだ?  
「脳や記憶に関してはそうはいかない」  
なんかごうんごうん音が聞こえるぞ?  
「毎日バックアップをとる必要がある」  
ほほう。毎日でこをくっつけて人間MRIか。…いや長門MRIと呼ぼう。  
 
「身体のバックアップも週に一度は必要」  
これもいろんなとこにおでこをくっつけるのか?  
俺の肩におでこくっつける長門、……非常に魅力的な提案だ。  
提案だが尻にでこくっつけてる時に誰かに見られたらどういいわけするつもりだ?  
「これはDNA情報だけでいい」  
ああ、その心配は無いわけね。ちょっと残念だが安心したぞ。ってDNA?  
なぜひざまずいてチャックを下ろす?  
「出して」  
ちょ、待て、長門!  
 

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