またまた急な話なんだが、誰か傘持ってないか?  
え?なんでだって?そりゃあれだ。  
忘れたんだよ。酸性雨から毛髪をM字型脱毛症という、怨敵から身を守るという必須アイテムだ。  
 
昨日は麗しきマイエンジェル朝比奈さんのご好意のお陰で、雨に濡れずに帰宅できたのだが、  
今日もSOS団の活動解散後、また急に雨が降り出してきた。  
「糞、今日の朝の天気予報じゃ午前午後共に降水確率0%って言ってたじゃないか・・・」  
俺は某天然パーマ天気予報士に悪態を突きながら、これからの打開策を考える。  
うぅむ、昨日のようにタイミング良く朝比奈さんが来てはくれないし。  
しょうがない。今回こそはこの置き傘を借りて行こうか。  
と思いながら、昨日と同じように、ビニール置き傘を漁りだす。  
 
と、誰かに肩を叩かれた。叩かれたというよりも、ぽんと置かれたという感じだ。  
俺は傘漁りを一旦中断して、叩いた主のほうへ顔を向ける。  
するとそこにはSOS団無口で無表情のヒューマノイドインターフェイスの長門が立っていた。  
 
俺は長門の方へ向き直り、  
「ん?どうした長門。俺に何か用か?」  
と言うと、長門は数ミリ単位で首を縦に動かして、こう言った。  
「話がある」  
そう言った後に長門は首を背後に少し向けて、またこちらを見てこう言った。  
「ここでは話せない。移動しながらで」  
長門は片手に持っていた金属の棒みたいなものを握る。  
すると、形をどんどん変えて、最終的には見慣れた傘に成り代わった。是非その金属棒を俺に譲って欲しいね。  
 
傘を開いた長門は俺のほうを見て、来ないのか?と言いたげな表情をしている。ように俺は見えた。  
しかしな長門。俺にはその長門が手に持っている雨予防アイテムが無い訳で。  
よければその金属棒でもう一本傘を精製してくれないか?  
「それは無理」  
なんでだ?  
 
「精製することは可能。しかし今現在半径10メートル以内の範囲に私の行う行為を目撃されると危険な人物がいる」  
ん?誰だそれは。まぁそれは後に聞くとして、長門曰く、これ以上の傘の生産は無理だということか。  
「じゃあ仕方ない。この置き傘を失敬するか・・・・」  
と置き傘を引き抜こうとしたら、長門が俺の袖をちょいと握った。  
ん?何だ長門。  
「今あなたが行う行動は窃盗罪という犯罪行動」  
いや、これは盗むんじゃなくて、借りるというか何というか。  
「あなたがそう思っていても、窃盗は窃盗」  
と、長門は頑なに俺の行動を抑止してきたので、俺はまた置き傘をあきらめることに。  
ふと思ったが、これまで長門がやってきた事の方が色々と法を欺いているような気がするのは、まぁ言わないでおこう。  
 
しかしな長門。俺には傘が無いんだ。何度も言ってるようだが。  
「なら一緒に帰ればいい。」  
そう言った長門は俺に傘を渡して、俺の隣に歩んできた。  
あれ、何だろうな。昨日と同様のデジャヴを見ているような気がしてならんのだが。  
そんな俺の考えをスルーして、長門が先に進もうとしたので、俺も同様に前へ進む。  
今回は傘が大きいお陰で、昨日の朝比奈さんみたく密着する心配はないのは幸いか。少し安堵感を覚えながら、二人並んで歩いてゆく。  
 
と、校門が近づいて来たあたりに、長門が口を開いた。  
「現在のこの次元に強大な気象情報操作が行われている」  
え?つまりそれはどういうことだ?  
「この突然の降雨は自然に起こったものではない」  
ということは、お前のような宇宙人がまた何かしたのか?  
しかし長門は首を横にほんの少し振り、  
「この降雨の原因は、すべて涼宮ハルヒによるもの」  
は?  
なんだって?この雨はハルヒがやっていることなのか?  
「そう」  
しかしまた、何で雨なんて降らせようとしているんだハルヒは。  
「原因は不明。この降雨の原因が涼宮ハルヒによるものだという事実しか判明していない」  
 
ということは、長門は何故ハルヒが雨を降らせたくなったという心理状況を知らないということか。  
また長門はほんの少し首を縦に振った。  
 
ふむ、となると尚更これは問題だな。今、長門と相相傘状態は問題無いとおも  
「うっん?!」  
また何か背中がゾクッとするような感覚がやってきた。はっとして、また校舎の方向を向くが、またもや人影は見られない。  
何なんだ一体。  
俺の異変に気付いたのか、長門はこちらを見上げている。  
「長門、お前にも何か感じたのか?」  
と聞くが、長門は首を横に振った。  
「何も」  
長門が何も無かったということは、ただの寒気か何かか。  
最近冷えてるしな。気にするものでも無いか・・・。  
 
その後、ほとんど会話も無いまま、また昨日同様コンビニで傘を買った俺はその場で長門と別れた。  
勿論家に帰って、また傘が増えたことに母親に言い訳する俺がいるのは言うまでも無いだろう。  
・・・・・・まったく、一体何が起こっているんだ?  
 
古泉編へ続く  
 
 

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