放課後文芸部室に行くと、今日は長門しか居なかった。
前は長門と二人きりだと気まずい感じがしたが、
いまでは結構気軽に話しかけることができるし、こいつの沈黙はそれはそれで悪くないと感じていた。
彼女の読んでいる本に目をやると、相変わらず厚物のハードカバーだった。
それで今日はなんとなく話しかけることにした。
「なあ、長門。期末試験も終わって暇なんで、俺もたまにはお前の読んでいるような
分厚いハードカバー物を読んでみようと思うんだが、何かいいのないか?」
もちろん口実である。そしてあわよくば長門の気を引こうと思っていた。
「………………」
長門はしばらく考え込むようにした後、すっと書棚の前に立つと、
質素なブックカバーのかかった二冊のハードカバーを手渡した。
「二冊組み」
うっ、いきなり二冊組みとは、軽々しいことを言うんじゃなかったか。
少し後悔しつつも、気を取り直して表紙をめくると
『ハ○ー・ポッ○ーと 不死鳥の騎士団』
と書いてあった。
俺は戸惑って顔上げると、
ニヤニヤと黒い笑みをたたえた長門の顔があった。
えっ?ひょっとして長門さん俺をバカにしてるんですか?
そんな俺に長門は冷たく言い放った
「あなたのレベルでは、その程度が限界」
−おわり