しかし・・・妹も含めて全員が俺を騙していたわけだ。
目の前ではバタバタと楽しそうにやっているが、俺の心のなかには
全員に対する怒りがこみ上げてきた。
「信用していた仲間も愛していた人も失っちまったんだな、俺・・・」
ボソッとしゃべってしまった。
「へ?」
それを聞いたハルヒ含め全員が動きを止めた。
「俺は本気で朝比奈さんが好きだった。だがハルヒに知られれば
面倒なことになるから長門の要求にも従ったし、色々嘘をついた。
だが結局最終的に得られたものは・・・身内までも含めた裏切り
行為だったとはな。」
「キョン、これはあくまで罰ゲームであって・・・」
「うるさい!!」
俺はハルヒに怒鳴りつけた。
「俺の性格を知ってればこれだけの行為が俺にとってどれほど苦痛か
わかるだろ!」
俺はその場にいた全員を睨みつけた。特に朝比奈さんを。
「俺はもうお前達を信用できん。よってこの時をもって退団する。」
俺は出口に向かって歩いて行った。
「ちょっとまってよ、キョン!」
ハルヒが後ろで止めようとしているがそんな声も聞こえないくらい
怒りに我を忘れていた。
出口の寸前で古泉が、
「待ってください、今回は我々も悪乗りし過ぎました。あやまります。
ですからどうか怒りを静めてくださいませんか。」
「どけ、古泉」
俺は古泉の制止を振り切って外に出た。
外に出る寸前俺は古泉に、
「お前はこのハルヒのやることに反対しなかったんだよな?」
「ええ・・・しませんでした・・・」
「じゃあこの後のことは自業自得だな。」
そういって俺は家に帰った。
その日から俺は妹と口をきかなくなった。
妹も雰囲気を察したのか次の日は起こしに来なくなった。
学校ではハルヒやら古泉から色々と言われたが完全に無視した。
昼休み朝比奈さんが屋上に呼び出したので行った。
「キョン君、本当にごめんなさい。」
会って第一声、深々と腰を下げながら朝比奈さんは話した。
「確かに涼宮さんに命令されてやったことですけど、私も
本当にキョン君が好きです。その気持ちには変わりありません。
結果がこんなことになってしまったけど・・・今まで通り
付き合って下さい。お願いします。」
朝比奈さんは涙目で俺に訴えていた。
以前の俺だったらそのままよりを戻してしまっただろう・・・
しかし、今回はあまりにもショックでそうすることは出来なかった。
「すいません、朝比奈さん。それは出来ません。本当に俺のことが
好きだったら最初のときに教えてくれてもよかったはずです。
そうすれば長門ともこじれずハルヒに乗せられてる振りもできた。
でもあなたはそうしなかった。はっきり言って一番憎いのはあなたです。」
そう言って棒立ちする朝比奈さんを残して屋上を後にした。
自宅に帰り夜ボーとテレビを見ていると携帯が鳴った。
ハルヒからだ。
『何無断で団活休んでるのよ!私は退団なんて認めて無いんだからね!
それに・・・今回のことはやりすぎたって思ってるわ・・・みんな
謝るから戻ってきてよね、キョン』
「もうSOS団に戻る気は無い。それだけだ。じゃあな」
さらりと言うと通話を切った。
その後何回かハルヒからかかってきたが無視。着信拒否に設定した。
そうこうしているうちに夜も更けて寝ようとしている時、また携帯が
鳴った。古泉からだ。
『過去に無いほどの閉鎖空間が発生しています。広がる速度も速く
このままでは世界がどうなってしまうか分かりません。お願いです、
今回は水に流して涼宮さんと関係を戻してもらえませんか。』
「言ったはずだ古泉、この件を止めなかった自業自得だとな。俺の
性格を知っていたなら真っ先に止めるべきじゃなかったのか?
それをしなかったってことはつまりこうなるべきことも予測できたはずだ。
あとはお前と「機関」とやらでなんとかしろ。俺は知らん。」
そう告げると古泉が何かしゃべったようだったがそのまま切った。
どうせまたかけてくるだろうし、他のメンバーもかけてこないとも
限らないので全員着信拒否にした。
そうこう会話をした後俺は眠りに付いた。
多分目が覚める前に世界は終わってるだろう。
こんなことくらいで終わるんならそれだけの世界だったってことさ。
結局、俺が最後に手に入れたものは「人間不信」それだけだった・・・
終わり。