『佐々木さんなら』  
『佐々木さんだと』  
何回この言葉を聞いただろうか。  
「(僕は他人にとって、どんな僕だろうね。)」  
キョンと付き合いはじめ、周りは色めき立ちながら関係を聞いてきた。  
特別な関係、つまり付き合う。彼氏彼女の関係。そうあれば、肉体的な関係の有無が気になるらしい。  
「佐々木さんなら、彼氏もすぐ手を出すんじゃない?」  
「佐々木さんだと、断りそう。で、彼氏と別れたりとか?」  
こうした下世話な話題。  
別にそうした関係に興味がないわけではない。ただ、関係を持ったからと彼女らの人生に何の関わりがあるのか?  
 
「ま、興味あるし知りたいんだろ。こっちだって谷口が酷いもんだ。」  
「そんなものかね。」  
深く口付ける。  
今日もキョンと身体を重ねる。ただ、具体的な行為自体はしていない。  
キョンは「すねかじりの分際が、こうした行為は何かあった時にお前に申し訳ない。」と言い、私とセックス自体は拒否している。  
私は大切にされている実感に浸りながら、彼に『抱かれて』いる。  
これは、彼女らに言わせると何になるのかね?  
「んっ……」  
首筋のキスから、キョンの手が胸を這う。私はキョンの身体を撫で、また口付ける。  
唾液の交換。舌を絡める度に頭が軽く痺れ、私はより深く彼を求めた。  
電流が走ったように身体が動く。彼によって作られた、私の『気持ち良い』ところ。  
「キョン……あっ……」  
彼を抱きしめ、啼鳴を洩らす。優しくキスされて、幸せな気分の中、キョンを強く抱く。  
私の秘部にキョンが触れる。  
「……もう濡れてるな。」  
「言うな、馬鹿者。」  
二人で顔を見合わせながら微笑む。……こんなのでもとても幸せなのに、何故彼女らは拘るのか。  
キョンの下腹部を触り、キョンを見る。……上気した頬に、どこか不安そうな表情。  
躊躇いなく私はそれに口づけた。  
 
……口なんて危険な器官で愛撫されるのは、まず私の同意がいる。  
正直、キョン以外の人間に求められたら。咬み千切る自信はある。  
辛そうに喘ぐキョン。  
私に対する信頼が嬉しい。仮に害意があれば。なんて考えもしないのだろう。  
先の部分が感じると聞いた。この辺りだけは彼女達に感謝だろう。  
キョンが身を捩り、反応する度に背筋がゾクゾクする。  
「くっくっ。」  
「佐々っ……木っ……!」  
キミは今、私の行為をどう捉える?服従?隷属?それとも絶対的な信頼?  
 
そのどれもが正解だよ。キミに服従し、隷属的な感情をもって奉仕し、キミを絶対的に信頼している。  
 
淫らな水音が響き、キョンが悶える。  
「……出ちまう!離せ!」  
キョンは私の口中に果てる事を好まない。理由については聞いた事はないが、私への罪悪感や背徳感だろう。  
単純に後でキスしたくないから、というものがあるかも知れないが。  
「佐々木っ……!」  
二、三度身体が跳ね、口中にキョンの遺伝子が放たれる。  
「んっ……むぅっ……!」  
量としては然したる量でないはずだが、何故か飲み下すのは困難だ。  
決して美味でないのに、こうしたものを好んで口にする時点で、私も大概危なく出来ている。  
「はぁ……」  
キョンが溜め息をつく。  
「(くっくっ。まだ終わりじゃないよ?)」  
私は思い切り尿道を吸い上げた。  
「な゛っ?!あ゛っ!」  
キョンの叫びが私の耳を打つ。  
 
「……くっくっ。お気に召して貰えたかな?」  
ようやく飲み下し、私はキョンを見る。  
「お前なぁ……」  
キョンは大きく肩で息をついた。そして私をねめつけるように見て、キッパリと言った。  
 
「少し覚悟しろ。」  
 
さて、キミは私に何をしてくれるのかな?  
好奇心と幾ばくかの不安に、私の胸が揺れた。こんなのもキミとなら悪くない。  
 
「ちょっと跨がれ。」  
私は言われるままキョンを跨ぐ。キョンは、私の秘裂に昂りをあてがった。  
「……入れるの?ならゴムを……」  
「必要ない。入れないから、少し任せろ。」  
「…………?」  
入れるなら入れるで構わないんだけど……。私は言われるままキョンに身を任せた。  
キョンは、私の秘裂を昂りで擦る。  
「んっ?!」  
それまでの指と違い、熱い昂りが秘裂全体を擦る。根本にクリトリスが当たり、膣口を亀頭が擦る。  
「……っ!」  
既に濡れそぼったそこは、キョンの昂りに擦られ、音を立てた。  
「こ、んっ!なの……っどこで……!」  
私の疑問にキョンは、AVだと答えると腰を動かした。  
「はっ……!ああっ……!」  
キョンが腰を動かす度に、敏感になっているクリトリスが擦られ、より濡れそぼる。それによりキョンの昂りは滑り、私に快楽を与える。  
「ふっ……!あっ!」  
キョンに跨がり、私は自分で腰を振った。体幹から力が抜け、私はキョンにしがみつく。キョンの首筋にかじりつくように吸い付いた。  
「……っ!」  
キョンも気持ちがいいのだろうか。腰の動きが早くなる。  
 
私の匂いをキョンに擦り付けているかのような感覚。どんどん頭に白い闇が掛かる。  
「あーっ!ああ、キョンっ!キョン!」  
未知の快感に、私は叫び、そして啼鳴を洩らす。涙と鼻水すら流し、キョンにしがみつき、快楽を求めて腰を振る。  
甘い痺れに下半身を充たされ、キョンが私の口唇を貪る。  
「んっ!んんっ!んっ!」  
貪欲にキョンの舌を貪り、私の意識が遠くへと向かう。  
 
「いっ……くっ!いっちゃう……!」  
 
「俺もっ……いくぞ!」  
 
お互いに身体が跳ね、二人同時に絶頂を迎えた。  
 
お尻に何かかかった感覚がある。キョンもイッたんだ。そう思うと満たされるものがある。  
震える私の身体を、キョンが優しく包む。……心から満たされ、私は意識を手放した。  
 
 
……少し眠っていたようだ。  
隣ではキョンが携帯をいじっている。  
「起きたか?」  
「寝ていたのかい?僕は。」  
「ああ。一時間位だが。」  
のろのろと身体を起こす。眠っている間に、キョンが身体を拭いてくれたのだろう。身体に違和感はなかった。  
こういうのも、彼女らに言わせるとママゴトなのかね。  
「……佐々木。」  
「なんだい?」  
キョンは私を見ると、心配そうに言った。  
「あんまつまらん事ばっかり考えていると、頭腐るぞ。悪夢ってもんは、大体現実の心配事を反映している。」  
「……僕は何か言っていたのかい?」  
キョンを覗きこむと、キョンは、やれやれとゼスチャーをしながら言った。  
「眉間にシワ寄せて寝てちゃ、ろくな夢見てるわけねぇと思ってよ。」  
「……くっくっ。」  
本当に私達がしているのは、カップルのそれかしら。  
「ま、何にせよ人は人だ。俺はお前に責任取りたいからな。」  
キョンは、私の髪を撫でる。  
「お前を無責任に抱いて、変な事になっちゃ一生悔やんじまう。それよりは、今は我慢しとくほうがマシだ。」  
……今は?  
 
「ああ。……もう少しだけ待っとけ。お前の左薬指に指輪がつくまでな。」  
 
END  
 

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