勉強の合間、気分を替えたい時に、ストレス解消の一環として稀にやっていた自慰行為。
中学卒業してからは、その在り方が変わってしまった。
「雨かよ。ったく。」
彼の服が、身体に貼り付く。貼り付く衣服が、彼の身体を見せる。
「キョンは、案外薄い身体だね。」
「中河あたりに比較するとな。……国木田だと、少しお腹が出てそうな……」
「幼児体型かい?それは失礼だよ。」
二人で笑う。筋ばった腕に、貼り付いた衣服が示す腹筋。
何もかもが自分と異質だ。
中学時代の淡い思い出。そればかり思い出しては自分を慰める。
彼の目が、私の透けたブラを見詰めていた事を思い出して。
「ふぅ……ん……」
目を閉じ、私は彼の手を思う。『彼の手』は、私の胸を揉み、先端の蕾を刺激する。
「……あっ……」
彼の身体に劣らず薄い身体。申し訳程度の胸は、彼はどう思うのだろう。
『佐々木。』
少しシニカルな、彼の笑顔。でも、心を許した相手には、とても穏やかな笑顔になる。それは、女の子では私だけが知る笑顔。
「はあぁん……!」
くすぐったいような、痺れるような感覚。『彼の手』は、次第に私の下腹部へと移る。
パンツの上から、私の秘部をまさぐる。ゆっくり触ると、そこは既に濡れそぼっていて。
『感じやすいんだな、佐々木。』
頭の中の彼が囁く。
「キョン…………」
熱い吐息を吐き、私は『彼の手』を動かす。
敏感な肉豆を避け、周りの筋を擦る。下着は既に下着でなく、ただの濡れそぼる布切れになっていた。
「ん……んっ」
濡れた膣口に、ゆっくりと指を入れ……溢れた液を肉豆につけ、ゆっくり擦る。
「…………ッ!…ふっ……!」
電流を流されたように、身体がしなる。
口唇を噛み締め、指を動かす。頭の中の彼が、私に囁く言葉。それは、望んでも恐らくは得られないもの。
『好きだ。』
こんな三文字だけで、私はこうも熱くなる。
「キョン……あっ…ああ…………いくっ!」
胸を搾るかのように強く押し潰し、肉豆を潰すかのように捩る。痛いだけのそれは、私の妄想を嘲笑うように手を離した後を刺激する。
疼痛が止んだ秘部と胸。余韻に浸ろうと目を開けると……そこには虚空しかない。彼がいるはずもない空間。
私は、私に問い掛けた。
「自分にトドメ刺すのは楽しいかい?
僕はなにもしないで、自己完結して諦めたじゃないか。」
彼の温もりも何もなく、ただこうしてまんじりと過ごす時間。それが望みなんだろう?
思考がダークになっていく。が。もう少し頑張ってみよう。私は虚空を受け入れたわけでない。それは、この寂しさが示している。
涼宮さんのような五月晴れのような青空でなくとも、私だって月夜の空程度にはなれるだろう。
さて、さしあたっては何をするか。ひとまずはお腹がすいた。手を洗い、近場のコンビニで何か買うか。
コンビニで甘いものを買い、前向きになれた。安い女だな、と我ながら思うが、そこは仕方無い。チーズケーキに勝るものなし。
携帯にメールが入る。
『from キョン
title 無題
本文
こないだはすまん。恋愛禁止のSOS団の手前、本心を話すわけにはいかなかった。
メールで伝えるのは失礼に当たるので、次の日曜に誘わせて貰えるか?
そこで俺からお前に気持ちを伝えさせて欲しい。』
思わず見上げた空は、どこまでも突き抜けるような青空だった。
END