佐々木とくっくっ Part68 『甘いのは』のβ  
 
「くつくつ。」  
真っ赤な顔をした佐々木が、俺にもたれかかる。さ、佐々木…………?  
「キョン……………」  
上気した頬に………そ、その、胸元が………ぶ、ぶ、ブラがだな!ゆっくりと桜色の口唇が開く。  
「…………アルコールには、催淫効果もあるみたいだね。」  
…………俺の理性を焼き切るに十二分過ぎるぞ、その一言…………。  
「こんないやらしい女に、誰がしたのか………言ってみたまえよ。」  
佐々木は、ねめつけるような目で俺を見る。いや、待て!冗談に聞こえないし、第一笑えない!それにだ、公衆の面前で…………  
「あれ?」  
橘達がいない…………  
「は、離しやがれなのですぅ!」  
「―――――観―――測―――」  
「お前らにはまだ早い。」  
藤原が橘を猫掴みにし、周防の手を引いている。こちらをチラリと見ると……奴に似合わない、爽やかな笑顔でサムアップしてきやがった。……………やはりこいつは俺の敵だ。  
俺が藤原をにらんでいる事が、佐々木としては実に不快だったらしい。  
「キョン。恋人との情事の時位、行為に集中してくれ。興が殺がれる。」  
いや、佐々木!待て!シャワー浴びさせてくれ!頼む!  
「くつくつ。…………アルコールを飲んでいて、口が甘くなってしまっていてね。丁度塩味が欲しかったところさ。」  
佐々木が俺の首筋に吸い付いた。や、やめっ!俺が気にするんだよ!そのな、汗くさい身体でお前を抱くのなんて………  
「…………なんとつれない言い種だ。抱かれる僕がいいというんだ。気にしないでいい。  
それに、僕は好きだよ。君の匂いは。」  
………嬉しいが、後で泣いても知らんぞ。お前、今感情垂れ流しだからな。  
「くつくつ。自己抑制のきつい性質でね。一度タガが外れると止まれなくなるのさ。………止められるのは君だけだよ………キョン。」  
「…………どうなっても知らんぞ。」  
藤原達がいない事を確認し、佐々木にキスをする。  
…………これで何度目だ?考えるのも面倒だ。ただし、こんな酒臭いキスは初めてだがね。  
「んっ………………」  
舌を絡めてくる。普段、時間がないだけに俺達の行為は、激しいが割と淡白だ。  
………………なんだか少し興が乗った。  
 
普段が忙しく、短い時間しか出来ないわけだ。今日みたいにお互い時間がある時位、恋人同士の時間を大切にしながらやっていくか。  
普段なら、すぐに佐々木を押し倒しているんだがな。俺はゆっくりと佐々木の頬を撫で、髪を撫でた。  
うっとりと目を閉じる佐々木。その桜色の口唇と頬に、啄むようにキスをする。  
「…………キョン。焦らさないでくれ…………」  
「性急だな。」  
俺は佐々木を抱き寄せ、耳許で言った。  
「興が殺がれるぜ、佐々木。」  
「………生殺しをした、仕返しかい?……存外子どもっぽい………んんっ!」  
佐々木の背中をなぞる。だから、黙れと。お互いに手の内知りつくしてんだ。その気になればすぐに終わっちまうだろうが。それじゃ勿体無いと思わんかね?  
「………今日は、随分と意地が悪い…。いつものように、お互い情欲に任せていくわけには……いかないの?」  
「恋人同士の時間だぜ?佐々木…………。たまにはこうしている時間も良くはないか?」  
意地悪く耳を舐めながら言う。  
「………成る程。」  
俺の意図を理解したらしい。佐々木はゆっくりと俺の首筋を舐め、服を脱がす。俺も佐々木の上着を脱がせた。  
「くつくつ。」  
頬が赤く染まり、佐々木の胸が露になる。………巨乳派だったんだが………今ではすっかり美乳派だ。  
普段、周防が眠るはずの布団。和室に敷かれた布団に、佐々木を連れて行く。…………上半身裸、そして明るい中だと凄まじくエロいな…………。  
「まじまじと見るのはやめたまえ。巨乳好きが。」  
佐々木のチョップが飛ぶ。  
「確かに………ボリュームは足りんが。」  
「このっ!人が気にしている所を!」  
佐々木が俺にしがみつく。………ああ、やばい。幸せだ。こんな時間って、今まで無かったからなぁ…………。  
やれハルヒだ、朝比奈さんだ、長門だ、古泉だ、と…………珍妙な出来事に巻き込まれまくって、時間をあまり取れない中の逢瀬だったわけだし、必然的に短時間になっていたわけだからなぁ…………。  
初体験の時なんか、あんまり邪魔が入るから、俺の部屋で泡くってやっただけで、お互いに何も覚えちゃいねぇ。回数重ねて、お互い気持ち良くなるまでも似た感じだった。  
つまりこれまで、佐々木と俺が抱き合う時、ロマンチックでもなんでもなかったわけだ。  
 
…………自分の不甲斐なさに泣けてくるぜ………。  
服を脱いで布団に入り、お互いの顔を見ながらキスをする。  
抱き合い、頬を寄せ合い………  
「……………グスッ…………」  
「……………どうした?」  
佐々木の瞳が揺れている…………。  
「………気にしないで………」  
俺は佐々木を抱き締めた。  
「………幸せだな。」  
「……………うん……………」  
世間一般、普遍的なカップルの時間。そんなん望むべくもなかったんだ。望んでも得られなかった時間。その時間が今…………。幸せだな。俺も幸せだ。  
佐々木の背中をなぞり、髪を撫でて優しくキスをする。…………佐々木は幸せそうに涙を流し………喘ぐ。  
布団に隠れて見えない、佐々木の身体。………まぁ勝手知ったる身体だがな。俺は当然のように胸に手を伸ばし………じっくりとなぞり、時折中心の桜色の蕾を指で挟んだ。  
「………………あっ!」  
美乳派に鞍替えした理由は、佐々木の感度が抜群だからだ。朝比奈さんの胸については知らん。仕方ないだろ?触った事がない以上、何について語れってんだ?妄想でか?なら谷口にでも聞いてくれ。  
じっくりと雰囲気を盛り上げる、スローセックス。佐々木は実にお気に召したらしい。  
「……………幸せ過ぎて、おかしくなりそう………………。」  
佐々木はそう言うと深くキスしてきた。  
…………まぁ俺も暴発寸前のわけだが。幸せ過ぎて、頭がどうにかなっちまったらしい。  
フェラだって手コキだってしなくていい。ただ、佐々木の中に入りたかった。  
 
勢いってやつは怖いな。頭がグシャグシャになる。  
コンドームをつけた後、深く深くキスをして、俺は佐々木の中に入った。  
既に佐々木のそこは濡れそぼり、佐々木は歓喜の声を漏らした。  
「………………な、なんかいつもと…………違っ…………」  
佐々木の中が、溶けたガムのように熱く、絡み付く。  
「あっ!ああっ!キョンッ…………!」  
佐々木が身を捩る。扇情的な眺めに、俺は思わず見入った。佐々木も待っていたのだろう。既に軽く達していた。は、早いな………随分と………  
「…………すごっ………い………入ってる感じ……………ッ!」  
そんな事言われちまったら…………暴発しちまうよな?  
「んっ?!あっ!キョン…………」  
「……………す、すまん…………出ちまった……………」  
と、まぁ…………情けないが、終わっちまったわけだ。  
暫く腕枕の中で幸せそうにしていた佐々木だが、余裕を取り戻したらしい。俺を見てくつくつと笑う。  
「笑うな。」  
佐々木を軽くこづく。  
「くつくつ。嬉しいんだよ。いつも澄ました顔の君が、あんなに取り乱していたんだ。新たなる発見だね。」  
佐々木は布団でガードしながら、また笑う。そんな余裕を持ってやってるわけじゃねぇんだがな。  
「僕だけを見てやると、君はこんなに感じてくれる。いつもは涼宮さんや長門さんを警戒しながらだからね。  
僕も同じだったよ。実に興味深い一時だった。」  
うるせぇ。………まぁ、確かにそうなんだがな。情けねぇが、幸せで感じ過ぎちまった。  
「全てが終わった時に、またこうして抱き合うかい?次は、このような不粋なものは無しでね。」  
使い終わったゴムをティッシュにくるみながら、佐々木はまたくつくつと笑った。  
「孕んでも知らねぇぞ。」  
「出来て困らない時にしかさせないさ。我が恋人。」  
佐々木はそう言うと、啄むようなキスをした。  
 
その頃……………………SOS団に、佐々木団は拉致されていた………。  
「キョンを探し出すために………『根堀り葉掘り聞き回る』の…『根掘り葉掘り』…って…………。『根を掘る』ってのはわかる…。スゲーよくわかる。根っこは土の中に埋まってるから…。  
だが『葉堀り』って部分はどういう事だああ〜〜っ!?葉っぱが掘れるかっつーのよーーーッ!ナメやがってこの言葉ァ超イラつくわぁ〜〜ッ!!葉っぱ掘ったら裏側へ破れちまうじゃあねーか!  
掘れるもんなら掘ってみやがれってんだ!チクショーッどういう事だ!どういう事だよッ!クソッ!葉掘りってどういう事だッ!ナメやがって、クソッ!クソッ!」  
黄色のカチューシャをつけた女の子が、壁を乱打する。  
「すっ、涼宮さん!落ち着いて下さいッ!」  
………後に古泉は、嫌味たっぷりにキョンに語った。…………この時のハルヒの表情は、ギアッチョのそれだったと。  
「だーかーらー。恋愛対象として見られたのが佐々木さんで、守るべき対象として見られたのが涼宮さんでしょ?」  
ツインテールの少女がため息をつく。  
「いい事だろう?全く。あの男の優先順位としては、何かあった場合は君が一番高いんだ。良かったじゃないか。…………結ばれる結ばれないは別として。」  
藤原の言葉にハルヒは、悪鬼のような目を向けた。  
「蹴り殺してやるッ! こ の ド 畜 生 が ァ ー ー ー ー ー ッ!」  
 
プッツン  
 
『まっがーれ♪ まっがーれ♪ まっがーれ♪』  
 
シャワーを一緒に浴びたあとに服を着て、佐々木と睦みあっていると、古泉から連絡があった。  
過去最大の閉鎖空間が発生し、何とかハルヒを説得するように言われ………佐々木も一緒に行ったら、マジで世界が崩壊しかけた。  
ハルヒを一番に優先しているつもりなんだがな、全く。まぁ男女のそれでは、断じてないが。  
…………また騒がしい一年になりそうだ…………。やれやれ。  
 
END  
 

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