さて、本日は国民の休日、日曜日。  
今まで生きてきた俺の人生の中で一際はっちゃけていたあの頃ならこの時間は、  
今や別の姿へ変貌を遂げた例の駅前で召集最下位の俺が閣下から罰金の怒号を食らい、  
他の団員から苦笑や無表情を貰い、泣く泣く喫茶店で全員分の飲料を払わされていた。  
しかしそれも昔の思い出である。  
その頃の非日常から良くも悪くも解放された今の俺は、  
窓から入る午前の日の光を横に、ゆったりとしたソファでこれまたゆったりと雑誌を読み耽っていた。  
日曜だからとはいえ何かしたりすることもなく、暇でしかないのだ。  
 
ところで、俺は別に目立ちたい性質ではないが、それなりにファッションに興味はある。  
色だって地味なものだけでなく並みに明るい服も併せ持つし、そのなかに柄入りが混ざっているものもマチマチだ。  
装飾品なんかだって1つや2つくらい持っていたりする。  
そして今日のようにやることがない日は、ナマケモノの如く本当にボーッとしているのはいささかどうかと思う。  
俺はまだおっさんでもおっちゃんでもましてやじいちゃんでもない。  
それにナマケモノになりきってしまうよりは幾分か時間を有意義に過ごせると踏んだ。  
ということで、今日はほどほどにファッション記事の混じった雑誌にでも目を通すことにしているわけである。  
 
ここに載せられている記事を、大して関心はないが、  
なんとなく早起きして時間がある平日の朝に新聞を眺めるのと同じような感覚で、  
見ては頁をめくり、以下ループ。無限ではないが。  
そしてたまに、おう、これいいな、これは理解できない、などと  
自分の中で評価したくなる程度に気になる、あるいは目ぼしそうなものだってある。だが買うつもりはない。  
週一の頻度で4人分を奢らされたあの頃の俺の財布のように金に困っているわけではないが、  
服は十分間に合っているのだ。流行に遅れも取ってはいない。  
それに――  
 
 
「ん?」  
 
 
俺はこの人の選んでくれる、この人が似合っている、と評する服が着たいのだ。  
いつの間にかこの人は俺の隣に座り、腕に抱きついていた。  
 
 
「なんだ、突然……」  
 
「ちょっと恋しくなっちゃって」  
 
全然仕方なくなどないが、仕方なくテーブルに雑誌を放った。  
身を寄せ合って抱きしめつつ、右手はそれなりに高くなった頭に置いた。  
 
 
「今日、あなたが夢に出てきたの」  
 
「ほう」  
 
 
相槌を打ちながら手を置いた頭をさら、さら、さら、撫でる。  
 
 
「……優しいわね」  
 
「……どんな夢だったんだ?」  
 
「うん……ぎゅってされたりとか、その、キス……されたり、かな?」  
 
 
だんだん頬を染め、そう言ったきり無言になって彼女は俺の肩に顔を埋めた。  
あの頃にこの人に対して抱いた印象と言えば、大人びているな、というものであった。  
あの頃の(小)の方と比べれば幾分かそういったことにも耐性がついてきているようであるが、  
そう変化させたのは紛れもなく俺である。  
とはいっても、こんなふうに頬を赤らめる程度の可愛らしさが残っているのもいい塩梅だ。  
俺は彼女に少しばかりスキンシップを図ることにした。  
この人が見ていたらしい夢の中の俺と同じように――  
 
 
「それじゃ……んっ」  
 
「……!? ん、ふ……んむ……ちゅ……」  
 
「ん……はあっ……」  
 
「ぷあっ……」  
 
「……」  
 
「……」  
 
「……夢と現実の俺と、どっちがよかった?」  
 
「……言わせないで。ん……」  
 
 
今日は彼女も積極的のようだ。  
分かりきっている俺の問いかけに答えるよりも恥ずかしいはずなのだが……。  
兎に角、こうして目をつぶって顎を上に向けてくれているんだ。実に健気である。  
甘えてくる分、応えてやることにする。  
 

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