ハルヒ「キョン!逃げるんじゃないわよ!!」  
キョン「はいはい、逃げませんよ…と」  
みくる「こ、怖いですぅ〜!!!」  
 
ひょんな事から、ハルヒ達の目の前にはクラーケンがいた。  
10本の触手を持ち、獲物を捕らえて舐め食ってしまうという魔物である。  
 
思えば、1日前の出来事だった…。  
 
---  
 
ハルヒ「ちょっと!見てよ、この新聞記事!これこそ私が求めていたものよ!!」  
部室のドアを開けたハルヒが持っていたものは、一枚の新聞記事の切り抜き。  
記事には『あの巨大生物が出没!?その名はクラーケン』と書かれていた。  
とある島に、出没したという。島の住人は、その怖さで全員避難したらしい。  
 
キョン「はぁ…そんな生物、ゲームの中だけだと思っていたが、またややこしそうなものを…」  
みくる「ま、まさか…今からそれに会いに行こうだなんて、言いませんよね?えへへ…」  
ハルヒ「みくるちゃん! そのまさかよ!!」  
みくる「え、ええぇ〜〜〜〜??」  
キョン「おいハルヒ!モンスターだぞ、クラーケンといえば!わかってんのか!?」  
ハルヒ「モンスターだろうが何だろうが、こんな面白そうな事なんて滅多にないわよ!!  
     いい?付き合ってもらうわよ!明日の朝、この記事に書いてある島に集合!!」  
長門「………ユニーク…」  
キョン「おいおい、マジかよ…」  
 
---  
 
ハルヒ達の目の前にはクラーケンがいる。  
流石のハルヒも勝てないとわかってか、逃げたいと心の中では思っていた。  
ハルヒ「見られただけでも満足よ…で、でも、今帰るわけにはいかないわ…」  
みくる「ほ、本当は帰りたいんですよね?みんな帰りたいと思っているんです…」  
キョン「ああ、俺も思っていますとも。だが、逃げられないんだなこれが。なぜなら!」  
 
クラーケンが、長門を捕獲していたのであった。  
長門「……行動不能……」  
抵抗しない長門をいい事に、クラーケンは触手を長門に存分に絡ませている。  
その制服の布地の締まり具合から見て、かなり強い力で締め付けられているらしい。  
ハルヒ「みんな鎧でも着てくるんだったわ…学校帰りだから、制服だなんて…」  
キョン「こら、こんな時に解説してる場合か?さっさと長門を助ける方法をだな…おぉ!?」  
 
触手が長門の制服の内側に入り込んだ。  
その足にも触手が巻きついており、スカートの中まで伸びているのが見える。  
長門の太股あたりが、何らかの液体で濡れてきたのをハルヒ達も視認していた。  
 
キョン「……」  
ハルヒ「有希…!ど、どうすれば……ってキョン!何顔を赤くして見てんのよ!!」  
キョン「す、すまん…」  
 
どうなる長門!?  
 
 
ハルヒ「くっ!どうすればいいのかしら?これは予想外の展開だわ…!」  
みくる「涼宮さん、だからやめておこうって言ったのにぃ〜!!」  
ハルヒ「……!みくるちゃん、ちょっと黙ってなさい!この!」  
みくる「うわああ〜〜ん!!」  
キョン「何をバカやってんだハルヒ。さっさと長門を助け出す方法を考えろ!」  
ハルヒ「わ、わかってるわよ!それぐらい…それぐらいわかってるんだから…」  
 
やはりハルヒは心の中で思っていた。今回は少しやりすぎてしまったと。  
だがこうなってしまった以上、引き返すわけにもいかない。ただ考えるばかりであった。  
クラーケンの触手は、徐々に長門の身体を丁寧に…といえば語弊があるかもしれないが…  
とにかく以前よりゆったりとした攻め方で、這いずり回る。ハルヒ達も当然ながら視認していた。  
 
長門の制服が濡れる。触手に捕まった上半身も濡れて透け出したのが確認できた。  
それはクラーケンの触手から分泌される液なのであろうが、長門の汗なのかも知れない。  
今は夏。当然ながら夏服の制服のため、長門はじめハルヒ達は全員薄着である。  
クラーケンにとっては、肌の露出面積が多いために夏服は好都合であった。  
 
半袖の袖から入り込んだ触手は長門の脇の下を通り、胸に巻きつく。  
下半身に至っては、足先から両方の生足をしっかりと捕らえ、スカートの内側へ触手は伸びる。  
そして触手に無数に付いているタコの吸盤のようなもので、巻きついた長門の肌に吸い付く。  
そこで分泌される吸盤から分泌される液…そして長門の体液であろうものが濡れている。  
 
見ているのも限界が近づいてきたか。キョンが立ち上がる。  
キョン「ちょっと待て!クラーケンとやら、そのあたりにしておけ!!」  
そういってキョンはクラーケンの方へ走った。そして瞬く間にクラーケンの目の前に立つ!  
キョン(怖ぇ…いや、待てよ。な、なんだこの感じは!なんで奴は俺を襲わないんだ!?)  
 
クラーケンとキョンとの距離はもはや2,3メートルあるかないか。超至近距離である。  
長門なら一瞬で捕獲したその距離だが、キョンには興味すら示さない。触手も数本余っているが。  
キョン「……」  
みくる「キョンくん…」  
恐怖のせいか、キョンは身体が固まってしまっている。身動きが取れない!  
想像以上に大きな魔物が目の前にいては、いくら男といえどこれも当然の現象なのであろう。  
 
ハルヒ「何やってるの、キョン!仕方ないわね…わ、私も加勢してあげるわ!!」  
心の中では怖いと思っていながら、キョンが立ち向かったせいかハルヒも立ち上がり走る。  
みくる「す、涼宮さん!ま、待って置いていかないでくださいぃ〜〜!!」  
…と言いつつも、一番安全な場所にいるみくるだった。  
 
キョン(……で、でかい…なんてモンスターだよマジで…!)  
まだ怖さで金縛りにあっているのか、キョンは固まり立ちすくんでいて動けない。  
しかし、背後からハルヒの声が近づいてきたのをキョンは察知した。  
 
ハルヒ「キョン!わかってるわね?私も協力するから、クラーケンを必ず倒すのよ!!」  
キョン「あ、ああ…ハルヒ…!」  
すぐ隣にハルヒが来た。少しだけ不安が取り除かれたのか、キョンは言葉を発する事ができた。  
ハルヒ「いい?奴はたったの一体だけよ!有希を傷つけないように、まずは…」  
キョン「ああ、いくぞ…!」  
 
長門の身体を弄っていたクラーケンだが、声に気付いたのかハルヒの姿を確認した。  
その瞬間、他の触手でハルヒに襲い掛かったのである。  
ハルヒ「う、うそ!?きゃあああぁぁぁーーー!!」  
キョン「おい!?まさか…!!ハルヒ!!!!」  
 
どうなるハルヒ&長門!?  
 
 
 
ハルヒ「こ、このっ!放しなさいよ!!」  
クラーケンの触手がハルヒの身体に巻きつこうとする。  
キョン「ハルヒ!!くそっ、何故ハルヒが来た途端に襲ったんだ!俺は襲われなかったのに!」  
その通りである。クラーケンにとって、キョンは充分に捕らえる事ができる距離にいた。  
それなのにクラーケンはキョンを襲わず、だがハルヒが来ると一瞬で襲ったのだ。  
 
キョン「わかんねぇ…やっぱり女を襲う習性があるのか!?わかった、奴は♂だ!!」  
ハルヒ「……!なるほど、だから有希や私を襲うのね!!」  
ただの触手物の定義であった。  
ハルヒ「でも、ここで捕まるわけにはいかないのよ!私を舐めんじゃないわ!!」  
ドゴッ!!!  
団長の凄まじい蹴りがクラーケンの触手一本に炸裂する。触手は激しく変形し、へこんだ。  
ハルヒ「やったわ!まだまだ、これからが本番よ!!」  
ドカッ!バシッ!!ゴゴゴゴゴ…!  
 
イカ殴りならぬタコ殴りである。クラーケンの触手は漫画のようにボロボロになった。  
ハルヒ「ふんっ!どう?参ったでしょ?私を舐めてると、こうなるのよ…はぁ…はぁ……」  
激しい攻撃を一度に仕掛けたために息を切らせたハルヒを、クラーケンが見逃すはずがなかった。  
ハルヒ「ちょ…ちょっ…と……!?」  
 
ハルヒにボコボコにされた怒りもあってか、クラーケンは前に増して強い力でハルヒに襲い掛かる。  
だが、そこでキョンがハルヒの前に立ったのだ!  
ハルヒ「……!キョン…!!」  
キョン「ハルヒ…お前は、俺が守ってやる…!」  
やってられないといった少し照れくさい表情で、キョンはハルヒに笑顔を作った。  
ハルヒ「べ、別にキョンに助けてだなんて…私、頼んでないんだからね!!」  
キョン「はいはい、わかったから今はそこでじっとしてろ」  
ハルヒ「……」  
 
クラーケンは怒りをあらわにした。その時、長門の身体から触手が解かれたのである。  
長門「……何…」  
何事もなかったかのように長門は解放され、身体が自由となった。  
だが、意味もなくクラーケンが長門から触手を放すわけがない。  
これは何を意味するか、ハルヒ達も理解していた。  
そう、クラーケンが本気でハルヒ達に標的を絞ったという事である。  
長門という極上の獲物を放してまで狙う程、クラーケンは怒りをあらわにしたのだ!  
 
キョン「……来い、この野郎っ!!」  
ブン!!!  
邪魔だ、と言わんばかりに、クラーケンの触手がキョンの脇腹を殴った。  
キョン「ぐはっ……!!」  
クラーケンの大きさ故に威力も絶大である。殴られた衝撃で、キョンは宙に浮いた。  
そのままキョンは打たれた部位を両手で押さえ、地面に倒れこんだ。非常に効いたようだ。  
ハルヒ「キョン!!!」  
みくる「キョンく〜ん!!」  
手で目を覆うみくる。息を切らせて思い通りに動けないハルヒ。  
どうやらハルヒは持っている力を全て出したのか、想像以上に疲れているらしい。  
だがその時、危険を察知した長門がキョンの方へ歩き出した。キョンに加勢してくれるのである。  
ブンッ!ドフッ!!  
長門「……痛打…」  
それもつかの間だった。触手に強く打たれた長門は、地面に倒れこんだ。  
キョン「な…長門……くっ……」  
 
どうなるハルヒ&長門&キョン!?  
 
 
 
ハルヒ「…キョン…有希……!」  
触手から激しい打撃を受け、倒れているキョンに長門。ハルヒは思った。  
ハルヒ「何よ…何なのよ、私は……キョンも有希も、こいつの触手を喰らって倒れているのに…  
     …なのに、私ときたら…自分で攻撃した疲れで倒れているのよ…バ、バカバカしい!!」  
 
自分に腹が立ったハルヒが立ち上がった。  
そう、隣で倒れている二人の事を思えば、息切れなど問題外であると当然思ったのだ。  
ハルヒ「さあ、キョン達のためにも…私が改めて直々に相手するわ!次は手加減なしよ!!」  
…しかし先程ハルヒが触手を攻撃した際に、本当に手加減していたのはクラーケンの方だった。  
長門を襲った時の感覚が残っていたのか、ハルヒも抵抗しないものとして襲おうとしていたのだ…。  
 
まだ息を少し切らせたままであるが、果敢にも立ち向かうハルヒ。だが、やはり。  
ハルヒの性格や行動パターンを、先程のやり取りでクラーケンは当然の如く学習していた。  
先程のハルヒのラッシュが気持ちよく決まるような展開は、それが恐らく最初で最後であったろう。  
ドフッ!!  
 
ハルヒ「…うぐっ……!!」  
当然の結果か。ハルヒも触手に打たれた。みぞおちを抱えたハルヒは、膝から地面に崩れ落ちる。  
クラーケンの表情が若干満足気に見えるのは気のせいだろうか。遂に獲物を仕留めたのだ。  
そのままクラーケンは、もはや動く事の出来ないハルヒの方へじりじりと近寄っていく。  
キョン「やめ…ろ…!ハ、ハルヒに近付くんじゃ…ね…え……」  
 
そんなキョンの声も虚しく、クラーケンには届かない。  
キョンの横で倒れている長門も、ハルヒに近づくクラーケンをただ無表情で見つめていた。  
いよいよ触手がハルヒの身体へと伸びる。ハルヒもそれが解っていながら、抵抗も出来なかった。  
ハルヒ「そ、そんな…嫌だよ…こ、来ないで……!」  
 
その時。子ども向けアニメのピンチシーンのような展開が起きた。  
 
ドゴゴゴゴーーーーーーーーーーーッ……!!!!!  
 
物凄い爆発音。一部が黒焦げとなったクラーケンの触手。  
何やら光のようなものが一瞬横切ったようだが…レーザーだろうか。何かが一閃した。  
一体何が起こったのか。クラーケンは信じられないといった表情を浮かべ、その方向を振り向く。  
 
そこには、片目に手を当てたみくるが立っていた。  
そう、遠くで怖がっていたみくるの存在を、クラーケンはすっかり忘れていたのである。  
みくる「そ、それ以上涼宮さん達に近づいたら、わ、わたしが許しません!!!」  
 
改めてみくるを凝視するクラーケンだが、視線に変化が生じた。  
みくるから発せられる香り、その柔らかそうな身体、夏服に浮き出た豊満な胸…。  
その究極の雌フェロモンに、クラーケンの脳内ではみくる捕獲作戦が既に始動されていた。  
まずは触手を絡ませ自由を奪い、その魅力的な胸を触手に備わる吸盤でじっくり吸い…云々。  
長門には無かった外見でも解るみくるの魅力。クラーケンはどうにかして捕らえようとするだろう。  
 
クラーケンの視線のやらしさに、キョンが気付く。  
キョン「あ…朝比奈さん…!奴が…狙っています…は、早く逃げ…ぐはっ!!」  
みくる「キョ、キョンくん!!」  
警戒を促すキョンの言葉の意味を理解したかのように、クラーケンは再びキョンを撃った。  
キョン「…ぐ…うぐぐ……」  
 
みくる「キョンくーん!! …も、もう許しません!!!」  
そう言うとみくるは、再び緊張いっぱいの声で必殺技の準備をする。  
みくる「ク、クラーケンさん!か、観念しなさい!み、み、み!みくる、ビーー………!!!!」  
さあ、再びみくるの必殺技が発動するのであろうか。  
 
どうなるクラーケン!?  
 
 
 
みくる「みくるビーーーーーーーーム!!!!!」  
……。  
クラーケンは全く警戒していなかった。  
なぜなら先程の不意打ちの際に、みくるがビームを放つ瞬間を見ていなかったのだ。  
つまりクラーケンは、あの攻撃は完全に全く別の場所からのものと理解しているのであろう。  
それもそうだ。こんな女の子からあんな攻撃が出るとは、クラーケンも予想しているはずがない。  
 
ビビビビビビビビビ!!!!  
みくるビームが発動する。空気を裂くが如き勢いを誇る強烈なビームである。  
クラーケン「!?」  
 
ボンッ!! ドサ……  
 
クラーケンの本体から焼け取れたひとつの触手が、音を立てて地面に落ちる。  
そう、ビームはクラーケンの触手一本の根元に見事命中し、文字通りそれを引き裂いたのだ。  
自分の身体の一部、しかも大切な部分をビームで切り裂かれたクラーケンは、のた打ち回った。  
ハルヒ「みくるちゃん…や、やれば出来るじゃない、見直したわ…」  
キョン「あ、ああ…やったぜ……」  
 
あまりに派手だったみくるのビームと、そのクラーケンの姿に、ハルヒ達は勝利を確信していた。  
長門「……気をつけて…」  
ハルヒ「え?」  
 
倒れたまま無表情でそう言い放つ長門の言葉の意味が、ハルヒにはよくわからなかった。  
ハルヒ「ちょっと有希…?な、なによ突然……。って、キョン!?」  
キョン「……」  
誰が見てもわかるほどに、キョンの顔は青ざめている。真っ青だ。  
ハルヒはキョンの視線の先に目をやると、それは恐ろしい光景が目に映った。  
 
そう、クラーケンの体色が血のように赤く変化してきたのである。  
全身が真紅にも近いそのカラーへの変貌に、ハルヒ達はただ度肝を抜かれていた。  
これは更なる怒りを表すのか、そんな事を考えている間もなく、すぐさま凄まじい音がする。  
ニュッ!!!  
 
ハルヒ「うそ!?」  
みくる「ふ…ふああ……」  
…再生。そう、その音は触手の再生を意味するものであった。  
クラーケンがみくるビームに焼き切られた触手一本の傷口から瞬く間に、  
新たなプリプリの触手が再生してきたのである。これには、ハルヒ達も声が出ない。  
 
キョン「あ…朝比奈さんの攻撃が…全く…効いて…ねえ…」  
もういつ死んでもおかしくないようなキョンの絶望的な声に、ハルヒが喝をいれる。  
ハルヒ「キョン!よ、弱気になってんじゃないわよ!!なんとかなんないの!?」  
叱り口調のわりにしっかり助けを求めるハルヒの声も、キョンの耳には遠くに聞こえた。  
そこで更に、その絶望の空気に追い討ちといわんばかりの奇襲が一閃する。  
ドカッ!!!バシッ!!!!!  
 
みくる「……ッ…!!!?」  
キョン「あ…朝比奈…さん…!!!!!」  
後頭部を強く撃たれたみくるは、悲鳴を発する間もなく一瞬で意識を失い崩れ落ちる。  
みくるが触手による不意打ちを背後からまともにくらい、いよいよ地へと倒れ込んだ…。  
遠くで見ていたクラーケンは、極上の獲物が倒れるのを見て満足気な表情を浮かべた。  
これで、もうハルヒ達に無傷なメンバーは残っていない。全員が思うように動けないのだ。  
 
だが、クラーケンが目の前にいたに関わらず、どこから触手による不意打ちがきたのか。  
それは明瞭である。レーザーで焼き落とした一本の触手が、完全に死んでいなかったのだ。  
単体で動き始めた一本の触手は、本体から離れているため余計に厄介な敵と化してしまった。  
さらに焼き切った本体の触手も一本再生したため、結果的に触手数は一本増えた事になる……。  
 
ハルヒ「みくるちゃん!みくるちゃん…!!」  
完全に気を失っているみくるに声をかけるが、当然ながら聞こえない。  
走って駆け寄ろうにも、体力的に今のハルヒには不安が募っていた。  
 
クラーケンは自分の触手が無事に再生したのを確かめ、しばし動かないでいる。  
周囲を見回し、まるでハルヒ達を監視しているかのように…ただ、じっとしているだけだ。  
ハルヒ達も、ただクラーケンの様子を伺い続ける。  
ざわざわ……  
 
キョン「ハルヒ…!う…後ろ……!!」  
ハルヒ「えっ…!? …な、何なのこいつは!!」」  
みくるを襲った単体の触手が、ハルヒの背後から近づいていたのである。  
そう、もうクラーケンだけを見ていては危ない。強敵は、他にもいるのだから。  
 
ハルヒと単体の触手は、ただ見つめあったままお互いに止まっている。  
状況を伺いあっているかのような展開に、キョンも手に汗を握り続けていた…。  
そこで触手がハルヒの方へ踏み出した。ハルヒは一瞬で危機を察知する。  
ハルヒ「さ、させないわよ、この触手がぁっ!!!」  
キョン「ハルヒ…!無理するな…!!」  
 
ハルヒは立ち上がり、余力を振り絞って触手にラッシュを仕掛けた。  
同じような状況のキョンには、ありえないほどの回復の早さ…いや、気力の多さであろう。  
多少の疲労や痛みはあったが、ハルヒは今を逃すと負けると判断したのか、ひたすら攻めた。  
ドカドカドカ……ビシバシビシバシ……!!!!  
 
長門「…効いている…攻撃が…効いている…」  
キョン「なに…!? ハ…ハルヒ…が、頑張れ…!!」  
長門が言うから説得力があったのであろう、キョンはハルヒが勝っていると確信した。  
キョンも余力を振り絞り、必死にハルヒに声援を送る。身体こそ、もう動けない状態に近いが。  
 
ハルヒ「あははっ…!どうっ…!?これが…私の力なのよ……!!」  
あの疲労を抱えながらも、信じられないほどに強烈なラッシュ。  
触手も激しく変形を繰り返しながら、攻撃に耐えているというのは目に見えて解る。  
反撃しようにも、ハルヒのラッシュがあまりに激しく、中々思うように切り返せないのだろう。  
 
ハルヒが優勢と見てか、キョンもよりいっそう大きな声援を送る。  
長門「…徐々に元気を取り戻してきた…」  
そう長門に言われたキョンは、照れくさそうに頷いた。  
このままハルヒが押せば、キョンのメンタル面も段々よくなっていくだろう。  
 
しかし、このような展開の裏でハルヒ達は忘れていた。クラーケンの存在を…。  
キョン「待てよ…何か忘れているような……しまった!!ハルヒ達に気を取られて……!」  
 
---  
 
みくる「…う…う〜ん……」  
気絶していたみくるを、いつの間にかクラーケンはハルヒ達から離れた木陰に運んでいた。  
ハルヒ達に気付かれぬよう物音一つ立てず、そして成功させたのは見事としか言えない。  
みくるが徐々に意識を取り戻すのを確認したクラーケンは、じっとみくるを見ていた。  
 
みくる「ん…んん〜……はっ!? こ、ここは…?」  
先程とは少し違った大きな樹の木陰。直射日光も遮られるような影場で、みくるは目を覚ました。  
だが目の前にはクラーケンが身体中から怪しげな液を分泌し、嬉しそうな表情で立ちはだかっていた。  
完全に意識が戻ったみくるを見て、素早くクラーケンはみくるの身体に、舐めるように触手を巻きつけた。  
みくる「ひっ!?…い、いやああぁぁ〜〜〜!!?キョンく〜ん、助けてくださいぃぃ〜〜!!!!」  
柔らかい身体を捕らえた、いやらしく液を垂れ流した触手達がゆっくりとまとわり動き出す…。  
 
どうなるみくる!?  
 

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