あいつはこの俺を狙っているという話は・・・聞いている。二階だが
中の様子を見るためにどこかずれた機関を使い消防車(*4)で覗いてくるかもしれない。
奥にあった少し開いたクローゼットから薄い闇が見え・・・たっ。そこかっ!!と注目する・・・、
それに気づいたのかさっそうと古泉は奇怪な格好で現れた。表情はいつものスマイル。上半身は制服ブレザーつき、下半身はすっぽんぽんだ。
俺が唖然としてその光景を見ていると古泉はどこにあったのか、ノートパソコンを取り出した。
そして、ぬっと・・・画面を見せてくる。
(*4 ttp://image.www.rakuten.co.jp/galiton/img1037868080.jpeg)
ああ、これは消防車又はAmbulanceと言うんだよなっ古泉。さ、説明を頼む。
ノートパソコンを下げ、古泉は語りだす。
「これは滅多にないチャンスでしたから。そう・・・あなたの痴態を拝む事が出来ると確信していました。
これを逃すのは有り得ない。’今’の僕のイズム・・・そうコイズムに反しますから。
涼宮さんと玄関で問答をしている隙にお邪魔させて頂いてたんですよ」
大体予想出来てしまうからそんなことはどうでも・・・、いや、待て。おまえは何故俺がここでハルヒとその・・・ああなると思って来たんだ?
そして気になる言い方をしたなその、’今’と含んでいた部分だ。おまえはいつ事態に気づいたんだ。
「実はですね、聞いていたんですよ。あなたが長門さんと公園で落ち合っていた頃からです。長門さんは気づいていたようですけどね。
僕が登場すると余計混乱するとでも思ったのでしょう。・・・この僕もどうやらおかしいようなのですが。自分では全く解らないのです。
まさかこんな事態に陥っているとは露とも知りませんでした」
そういうことか。
急に真面目な顔になり、俺を値踏みするように見、語りだした。
「本題に入りましょう。あなたは’この世界’から元の世界に戻る気はありますか?涼宮さんと激しく愛し合っている様を見ていた
僕は思うのです、・・・あなたの事は信じたいのですがこれはとても危うい、と」
俺は思う、’この世界のハルヒ’は好きだ。
そしてハルヒにも異常に好かれているんだと思う。。
だが’この世界の長門’の事、’元世界のハルヒ’の事を考えろ。
「確かに俺は’このハルヒ’にぞっこんかもしれない。ああ、好きさ。だがな分別は弁えている、俺を侮るな」
俺は胸の中に燻る想いを抑えつけながらも言う。古泉は真っ直ぐ俺の目を見て計っているのか、満足したのか、
「では、宜しくお願いします」
と部屋を出て行った。俺は、ベッドでまどろむハルヒを見つめ、歩み寄る。
寝ているハルヒを揺さぶる。起きてくれ。
「ん・・・ん・・・・・・きょ・・・ん・・・・・・・・・・愛してる・・・」
俺は揺さぶる手を止め、自分の目頭が熱くなるのを感じた。
今から伝える事を思うほどに。伝えて結末がどうなるかは俺は予想も出来るからだ。
だが・・・起こさなくてはならない。手を震わせながら。再び揺さぶる。
「話したい事があるんだっ。・・・頼む、起きてくれ」
ハルヒはもぞ・・・もぞりとシーツの形を変え眠そうな目を擦りながら、
「ん・・・キョン・・・どうしたの」
起きてくれた。俺が側にいる事に気づき嬉しそうに、こちらを見た。言う。
「今から・・・・・・」
「・・・キョン、・・・・・・泣いてるの?」
「いや、泣いて・・・ないぞ。俺がなっ今から話す事をハルヒに聞いて貰いたいんだ。突然で訳が解らないかもしれないっ」
ハルヒにはよほど俺が真剣な様に見えたのだろう、驚愕している、やがて
「・・・わかった。しっかり・・・聞く」
と俺の目をまだ驚きを禁じ得ないのか、ぱちくりとした瞳で覗く。
「・・・・・・一人の女の子と、もう一人の女の子、そして一人の男の子は友達同士だった。
その二人の女の子は、その男の子が好きだった。よくある三角関係だ。そして・・・片方の女の子は負け、
男の子とはもう片方の女の子が付き合う事になったんだ。選ばれなかった女の子は当然それに気づいた」
一息。ハルヒは俺の見たことのない顔で、話を続けて、と促す。
「・・・女の子は嫉妬した。そんな現実は女の子にとって有り得ないものだったらしい。
その男の子とは私が付き合うのだとずっと思っていたんだろう。そして普通では考えられない事が起こってしまった。
・・・ここからが重要なんだ、言葉のまま純粋に考えて欲しい。馬鹿げた事だと思わないで欲しい」
神妙に頷くハルヒ。
「思い続ける女の子の力がそれを引き起こしたのかは解らない。突然その二人の女の子の立場を逆にしてしまった。
まんまそのままではないぞ。二人の前とは違った状況はこうだ。想いの実らなかった筈の女の子はそのまま好きだった
男の子と’何も知らず’に交際をする。だが、一方の元々付き合っていた女の子は突然男の子を取られてしまった事を知っているんだ。
俺はこの出来事は間違っている・・・理不尽だと思う。自惚れた事言うぞ。ハルヒが今三角関係の状態でいるとしよう。
おまえが突然奪われる側だ。突然に俺を奪われたらどう思う・・・?答えはいらない。お前の心にでも・・・閉まってくれ」
ハルヒは固まったまま動かない。時計の秒針がやけに耳に残る。しばらくしてハルヒは視線を俺に向け、
「・・・キスして・・・欲しくなっちゃった」
と催促するように俺の手を掴み、俺にそのままキスをした。
ハルヒの家を出て俺は公園に向かう。この先に、あいつはきっといる。
きっとすべてを’見て’いた筈だ。公園に着き、園内を見渡す、電光塔のほの暗い光の中見つけた。
その場に立っていた長門は、急いだ様子で俺の側に近寄り、
「世界改変が始まっている」
と言った。俺には解っていた事なので、特に驚く事はない。
視界に入る世界が、色を失うようにちらつきだす。
「なあ、長門。俺は酷い奴だと思うか?あいつが俺を好きだという気持ちを利用したんだぜ。
俺は・・・好きな奴だからこそ無意識でも間違った事はして欲しくなかった」
「辛い体験をさせたと思う。もうあなたの愛した’涼宮ハルヒ’とは会えないのかもしれないのだから。
私は’あなた’を取り戻したい思いであなたを頼った。
これは世界を元に戻すためにも仕方のない事。だから気を落とさないで」
あちこちの電光塔がフラッシュを炊くように消えだした。ノイズが激しくなり、目を瞑る。
長門が俺の袖を掴む感覚が伝わってくる。今思えば古泉の奴、あいつは変な奴だったが
俺がハルヒに何を言おうとしていたのか気づいていたのかもしれない。本当は
決心を揺るがせないために俺に発破をかける様出てきたのかもしれん。・・・あばよ。
そしてハルヒ、俺はおまえの事を信じ・・・・・--------------------------
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-----------------------------む
何かふかふかした物に包まれている。これは・・・布団だな。目を開ける。
これが禁断の夢落ちっていう・・・・やつだなうむ。こ、これはいかん!俺は漫画で言うならば
東○大○物語は決して許さない派の人間だ。これにはいくつか派閥があり、一時期大変な事になっていた。
・・・余計な事を垂れ流すなとでも言いたいのだろうか、シャミセンが寝たままの俺の肩にナァーーゴと擦り寄ってきた。
珍しいじゃないか、と思いそちらを向くとあいつがポカーーーンと口を四角にし俺の事を見つめていた。
「・・・・・・・・・・・・今突然、現れたわ!!ぜ・・・絶対!!ね・・・ねえどういうことなングッッ」
口を手で被し塞ぐ、モゴモゴとうるさいハルヒ、塞いだ手には涙を流していたと思われる跡を感じた。
「そんなことよりハルヒよ、俺はお前に言いたい事がある。俺は今からツンデレではなくなる。覚悟しろ」
終わり