それは小学生の頃まで遡る。あたしが小学6年生の秋。日本シリーズで阪神の甲子園球場に連れていかれた。
今思えばそれは当時のあたしにとって拷問に近いものであったと思う。
響き渡る歓声。そしてそれを受けている選手たち。ああ、ここにいる人たちは選ばれたひとなんだなと思った。そしてあたしは場違いだと。でもそれだけじゃなかった。その日があたしの見た最後のパパだった・・・
パパは有名な芸術家だったけど絵がここのところ上手くいっていないらしく、たびたびママと相談していた。それを横で聞いていたあたしだけど大人の話に口を挟むのはなんとなく躊躇われた。それからパパはあまりあたしと遊んでくれなくなった。家族全体の会話も。
あるとき、急にパパに呼び出された。だけど手首をギュッと掴まれたときからあまりいいことではないような予感はしていた。
なぜかパパとママの寝室に連れていかれた。片方に白いシーツが一面にひかれている。そして少し離れたところに画材とスタンドが用意されていた。あたしに絵を教えてくれるのかとそのときは思った。
「ハルヒ。服を全部脱ぎなさい。」その瞬間、頭が真っ白になった。それは、裸になるってこと・・・?
もうパパとお風呂には入ってないけど昔はパパに見られたってなんともなかったけどちょっと胸も大きくなりはじめて変な毛もうっすら生えてきていて恥ずかしい。あたしが立ち尽くしていると、「さっさとしなさい。これはこれからの生活に関わる大事なことなんだよ。」
パパはあたしをモチーフにした彫刻をつくるらしかった。仕事で悩んでいたから、だいたい想像はついたけどあたしが作品になるなんて思わなかった。
あたしは服を全部脱いでしまうとパパにベッドの上に乗るように言われた。そして、手を天井に差し伸べて上半身を反るポーズをさせられた。秘密の部分も脚を開かされて露わにされた。10分もしないうちに体の姿勢を保つのが難しくなってきた。
ちょっとでも動くとパパの厳しい怒号。パパはあたしと画板を睨み続けていた。パパが何を考えているのかすごく気になってその日は何度も動いてしまい、そのたびに叱られた。開始から4時間。その日はやっと終わった。気づくと全身が汗だらけになっていた。
「いい作品をつくるにはお前にも頑張ってもらわないと困るんだよ。今日みたいな根性では・・・」
「きゃっ!な、なに・・・」親父は床の間の柱にどこからか用意された臭そうなロープであたしを縛り付けた。小さいあたしは抵抗もできずに裸のまま朝までそうして立っていた。夕飯も食べさせてもらえなかった。ママもいるはずなのに・・・
朝になってようやく縄を解いてくれたけどショックだったのはそのときママがただあたしに一言謝っただけだったことだった・・・
それから学校から帰ると長時間ポーズをさせられ続ける日々が続いた。卒業も近いのに友達と遊ぶことも禁止され、あたしは日に日に肉体的にも精神的にも蝕まれていった。
寝る前はいつも親父のことを考える。いっそのこと死んでしまえばいいのにと思っても昔の思い出がよみがえり、いつも泣いていた。これが終わったら昔みたいな優しい親父に戻ってくれると信じて・・・
親父は酒に溺れ、それ以外のときでも暴力を振るう用になった。中学に上がるころにはあたしはほとんど他人と接触することがなくなり、淋しく小学校を卒業した。
あるとき耐えられなくなったあたしはついに七夕の日に家出することにした。
そこで話にもある不思議な男と出会う。そしてあたしは・・・結局そのまま帰ることにした。家についたら親父はもうこの家には居なかった。
ママはあたしを抱き締めてただただごめんねと繰り返すだけだった。
もう誰からも縛られることはない。と、わずかな希望が沸いたが、あたしの思うようにうまくはいかなかった。中学時代は本当にひとり。集ってきたのはどいつもこいつも体目当ての変態男ばっかし。
そうして高校になれば何かが変わるだろうと思って中学も卒業した・・・
そうしてあたしは高2になった。あたしの思い通りに振る舞える居場所を見つけた。そうしてその中のひとりの彼に恋心を抱いていた・・・
彼は良き相談相手だった。とはいっても、あたしが一方的に話しているだけだったけど・・・なんとなく自分の過去を話しても大丈夫な気がした。