ぼんやりとしたまま意識が覚醒する。  
俺は気を失っていたのか?  
ここは何所だ、場所が解らない、今は何時だ、時間の感覚がおかしい。  
後頭部に鈍痛がまだ残っていやがる。  
起き上がろうとするのだが身体が動かない。この感覚、どこかで一度味わった事がある。  
 
「あら、ようやくお目覚めなのかしら」  
 
軽やかなソプラノ。  
ぼやけた視界の中に現れたのは、2度に渡って俺を刺殺しようとしたあのTFEI。  
 
朝倉涼子!  
 
この女の顔を見た瞬間、俺の頭の中で今までの出来事がフラッシュバックされ始めた。  
 
 
−−− 盲目白痴たる神 −−−  
 
 
夕方の部室に突如現れた朝倉涼子。  
操られているらしい何人もの男がハルヒに向かって部屋に雪崩れ込んでくる。  
そいつらを殺してでも止めようとした長門を俺が制したばっかりに、逆に男たちを盾に利用されて苦戦する長門。  
未来に強制ジャンプしようとした朝比奈さんに朝倉のナイフが伸び、古泉が彼女を庇って刺され、血溜まりが床に広がる。  
朝比奈さんは結局自分だけでしか飛ぶ事が出来なかった。  
ハルヒも俺も抵抗むなしく多勢に無勢で拘束され、人質に取られてしまう。  
戦えなくなった長門に容赦なく朝倉の伸ばした光の腕が突き刺さり、必死になってもがいた俺の後頭部に凄まじい鈍痛。  
そこで気を失った。  
 
「言ったでしょ?私の様な急進派が、また来るかもしれないって。その通りになったわね」  
あの時の様なにこやかな笑顔で朝倉がそう言った。  
相変わらず身体が全く動かない。クソ、朝比奈さんは無事に逃げ切れたのだろうか。  
「あの未来人に救出を期待しても無駄よ?ここは彼らからの干渉を受けないように作られている空間だから」  
ならば長門は。お前に対抗できるのは、あいつしかいないだろう。  
「長門さんなら、あなたの直ぐ隣にいるわよ、ほら」  
 
長門!  
 
四肢を鎖のような物で拘束された長門が、ぐったりとして吊るされていた。  
引き裂かれた北高の征服が、申し訳程度に長門の素肌を隠している。  
「長門さんの奇跡の大逆転劇なんて事を考えているのなら、全くの無意味だから、期待しないでね」  
朝倉、貴様…。  
「憤慨してはだめ。それが彼女の狙い」  
長門…!?  
拘束されたままの長門が、黒曜石の様な眼で俺を見つめていた。  
「ふうん。まだそんな力が残っていたのね」  
朝倉はどうでもいいという表情で長門を見ていたが、やおら片手を挙げてパチンと指をスナップさせ、音を響かせた。  
 
長門の脚を拘束していた鎖が、ジャラジャラと音を立てて左右に広がって行き、長門の両足が広げられていく、  
限界近くまで広げられた後に、ぬうっと浅黒い何かが床から生えてくる。  
擬似男根。  
それも女性を愛撫する為の様なものじゃなく、拷問にかけるときに使用するような、ゴツイ奴。  
 
「有機生命体のオスって、こういうのが大好きなんでしょ?操ってみて解ったけど、どいつもこいつも一皮向けば、サカルことばっか考えてる」  
心の底から来る嫌悪が、言葉に滲み出ている。  
巨大な擬似男根の表面に、無数の突起物がぼこぼこと出現し始めた。  
「さあ、始めるわよ」  
止めろ!バカ野郎!止めてくれ!  
「いいわよその声、ゾクゾクする」  
擬似男根がゆっくりとした動きで伸びていき、長門の股間へ到着すると、一旦そこで動きを止め、  
 
力強い動きで一気に長門の秘所へと突き込まれた。  
 
「…!…!?…!!!」  
絶叫を上げながら、身体を弓なりにそらせて悶絶する、長門。  
長門、クソっ!、長門!  
「そんなに心配しないでも大丈夫よ、長門さんはあなたが寝ている間に20人ぐらい有機生命体の男性と性交してもらっておいたから」  
朝倉は微笑を浮かべ、  
「膣の具合も、いい感じにこなれているはずよ」  
貴様…。  
朝倉は「しょうがないなあ」とでも言いたげな表情で俺を見ると、  
「有機生命体のチンポぐらいで、あたしたちインターフェイスが満足できるわけないでしょう?うぬぼれないでよね」  
擬似男根の出し入れが始まった。  
突き込まれる度に、長門は白目を剥きながら絶叫を上げて激しく喘いだ。  
「あの突起物にはね。痛覚因子と快楽因子が断続的に身体に打ち込まれるようにプログラムされているの」  
朝倉は手をひらひらとさせながら、  
「あれぐらいじゃないと、あたしたちは満足できないのよね。長門さんも嬉しそうでしょう?あんなに声を上げて、よがっちゃって」  
苦しがってるようにしか見えねえ、畜生、止めろ!もう止めてくれ!  
「大丈夫って言ったでしょ?長門さんも直ぐにあの快楽に慣れてきて、自分から欲しがるようになるわ。それまでのガマン」  
怒りで頭に血が登るっていうのは、こういうことを指すんだろうな、今まで俺が感じてきた怒りなど、今のこの怒りに比べれば、児戯にも等しい。  
「あら、そんなに怒っちゃったの?そんなんじゃこれからが大変よ?まだもう1人、メインディッシュが残ってるんだから…」  
何だと?  
 
お前、まさか…ハルヒ、に…。  
 
「はい、良く出来ました。じゃあ涼宮さんと涙の御対面ね」  
それまで薄暗かった、俺の前方の方にある空間が、唐突に明るくなった。  
ハルヒは確かにそこにいた。  
 
ハル…ヒ…。  
 
何人もの男達が、ハルヒの身体に群がっていた。  
北高の生徒らしき人や教師らしき人、サラリーマン風のおっさんや汚らしい浮浪者など、様々な男達がハルヒに群がっている。  
ハルヒは全裸だった。  
ハルヒの秘所にサラリーマン風のおっさんが顔を埋め、舌をうごめかしながら、尻の穴に入れた指をにちゃにちゃとくねらせている。  
ハルヒの右の胸と左の胸は、それぞれ別の男が掴み、揉みしだき、ときおり乳首をつまみ上げていた。  
ハルヒが口に咥えているのは、メタボ全開なデブ野郎のチンポだった。  
ハルヒは自分から肉棒に吸い付き、トロンとした眼で熱心にしゃぶっている。  
ハルヒの左手と右手にもまた別の男の肉棒が掴まれていて、ハルヒはリズミカルな動きで上下にしごいていた。  
全身、精液と汗と唾液まみれ。  
ハルヒにしゃぶられていた男が限界を迎えたらしく、真性包茎のチンポから汚らしい精液をハルヒに浴びせかけた。  
ハルヒは自ら進んでその白濁液を顔に浴び、嬉しそうに口をあけて、歓喜の喘ぎ声を上げた。  
射精が終わるとデブ男は直ぐに引っ込んで、次の男が荒々しく自分の肉棒をハルヒに咥えさせる。  
順番待ちをしている男達は何人もいて、全部で20人はいるかと思われた。  
 
「ふふふ、気持ちよさそうでしょう?涼宮さん」  
朝倉が笑みを浮かべながら、俺の横へ移動する。  
「最初のうちは凄かったのよ?さんざん喚いて怒鳴り散らして抵抗して、これ以上触ったら殺すわよとかなんとか」  
朝倉はやや小首をかしげて、  
「でもね、膣孔と尻孔を同時に舌で嬲りあげてやったら、すぐに泣き出したわ。助けて、キョン、助けてって、ね。あはははは」  
ハルヒ…。  
「あまんまりうるさいもんだから、快楽因子を撃ち込んでやったの。そうしたら、ごめん、ちょっと多すぎたみたい。  
それからは、あんな感じでよがりっぱなし。まるで盛りの付いたメス犬ね」  
 
パニックを通り越して、思考が停止した。頭の中が真っ白になった。  
俺は…ハルヒを…俺は…守れなかった。  
 
「どうしたの?全てに絶望しちゃった?それって、どういう気分かしら。教えてもらえるかな」  
 
朝倉、俺には何をやってもいい。だからハルヒをもう解放してやってくれ、これ以上ハルヒを…汚さないでくれ…。  
 
「あら、もうお願いするの?…しかたないわね。じゃあ、涼宮さんを解放してあげる」  
朝倉が指をパチンと鳴らすと、男達がハルヒから離れ、ハルヒは床の上に投げ出された。  
何人もの男の精液が入り混じって濁った床の上で、ハルヒはしばしぴくぴくと痙攣していたが、やがて床を這いずって一人の男の足へすがりついた。  
その男は、ホームレスの様な姿をしていた。  
ハルヒの口が動いているのが見える。  
「ちょうだい…もっと、ちょうだい…欲しいの…」  
ああ、ハルヒ、お前は…お前は…。  
 
「涼宮さんがお願いするんじゃしょうがないわね、では宴は再開ね」  
朝倉の指が無慈悲にも再びパチンとなり、ホームレスの男はまるで3日ぶりに食事にありついたかのようにハルヒにむしゃぶりついた。  
他の男どもも、争う様にハルヒに群がっていく。  
 
「悪いニュースだけじゃないの。良いニュースもあるわ」  
朝倉は楽しげな表情で、  
「涼宮さんは、まだ処女です。前も後ろもね。孔には指の第2関節までしか入れないように暗示をかけてあるから」  
朝倉は俺を横目でニヤニヤと見て、  
「涼宮さんがレイプされて処女を奪われるシーンは、最高のメインイベントよ。ちゃんと相手も用意してあるの。涼宮さんが、一生忘れられなくなってしまう相手。  
きっと、あなたにも気に入ってもらえると思うわ」  
朝倉、貴様は、貴様だけは…。  
 
「憤慨…しては…だめ。それが…彼女の…」  
長門?  
「もう、邪魔しないで」  
長門の秘所に突きこまれている巨大な擬似男根と同じ物がもう1つ現れた。  
「長門さんはそこで見てるだけでいいんだから」  
2本目の擬似男根が長門の尻の孔に突き込まれた。  
長門の絶叫が空間に木霊する。  
長…門…。  
 
「さあ、そろそろメインイベントよ」  
朝倉が俺の股間に手を伸ばし、ズボンの上から指でなぞりあげてくる。  
「あなたは、涼宮さんが犯されるシーンを見て、興奮のあまり射精するの。あたしも手伝ってあげるからね」  
ジーっと音を立てて朝倉は俺のズボンのファスナーを開け、中から半立ちになっている俺の肉棒を取り出す。  
「ふふ、ほうらやっぱり。有機生命体のオスなんてこんなもんよ」  
朝倉は白魚のような細くて白い指で俺の肉棒をしごきあげ、ある程度の硬度になってくるのを確認すると、  
舌をまとわり付かせながら、俺の肉棒を口へと含んでいく。  
こんな奴なんかに…とは思うのだが、フェラチオなんか今まで誰にもされた事が無い上に、朝倉の手つきや舌使いが実に手練の技に秀でていて、  
たちまちのうちに俺の肉棒はギンギンになっていく。  
眼の前ではホームレスがハルヒに臭い精液を浴びせかけるシーンが展開されていた。  
 
意識が朦朧としてきた、わけが解らん、どうなってやがる。それに、射精感の我慢がもう限界だ。  
ぷっくりと膨らんだ俺の亀頭から、精液が飛び出すその瞬間に、朝倉が俺の肉棒に歯を立てる。  
 
途端に激しい衝撃が、俺を襲った。  
心臓がバクバクと唸っているのが解る。視界が半分ぐらいになり、残った見える部分も赤い霧がかかっているかのよう。  
いつの間にか身体が動くようになっていた俺は、床に転がって苦しみにのた打ち回った。  
朝倉の笑い声が、まるで水中で聞いているかのように、くぐもって聞こえてくる。  
俺の肉棒だけが激しく自己主張していて、激しく屹立したまま一向に衰えない。  
何でもいい、早く俺に射精させてくれ。  
感情が異常に高ぶっているのが解る。自分でも制御出来そうに無いその感情は、…餓えだった。  
 
ぼやけた視界の向こうに、肌色の物体がうごめいているのが見えた。  
アレは、女か?  
俺は四つん這いでのたうちながらそこまで進んで行き、野獣のようにその女に襲い掛かった。  
 
「ふふふ、見てよあの浅ましい姿。まるで豚の交尾ね」  
「…。」  
長門は何も答えない。  
「あなたにもわかったでしょ?有機生命体なんて、所詮はあんな程度の物なの。自律進化の可能性なんか無い」  
 
俺はただひたすらに眼の前の女を犯し続けた。  
ぶっ壊れるんじゃないかというぐらい激しく腰を打ち付け続け、凄まじい快楽に負けて何度も射精し続けているのだが、全く肉棒が衰えない。餓えも満たされない。  
突き込まれる度に、女が悲鳴とも喘ぎ声とも取れる声を上げ、くぐもった音で俺の耳の鼓膜を振るわせる。  
 
「あなたには理解できない」  
「何が?あなたの6年あまりの存在意義が?」  
「私はもう少しで理解できると思う。恐らく…もう少しで」  
「何の話?」  
 
どれぐらいの時間が経過したのかさっぱり解らない。  
俺は知る限りの様々な方法で眼の前の女を犯し続け、何度も胎内に射精し続けた。  
俺の腰の動きに合せて女の頭が揺れ、薄汚れて変色した黄色いカチューシャが、上下に揺れている。  
 
…黄色いカチューシャ。  
 
俺はこれに見覚えがある。これは、これは…。  
徐々に視界と聴覚がクリアになっていくのが解った。  
ハルヒ、俺は…。  
 
「…キョン、…正気に…戻った?」  
息も絶え絶えな様子で、枯れ果てた声を出す、ハルヒ。  
ハルヒ…。  
「いいの。…あんたになら、…あたしはかまわない。…それよりも」  
ハルヒは悲しそうな眼で俺を見つめ、  
「…ごめんね。あたし、…汚されちゃった」  
馬鹿野郎。汚れてなんかいるものか。汚れたのは俺で、汚したのも俺じゃないか。  
「キョン…」  
俺とハルヒは繋がったまま、酷くうぶな口付けを交わした。  
 
「はいはい、茶番はオシマイ!舞台は第2部に移行するわ!」  
めずらしく声を荒げて、朝倉が手を打ち鳴らす。  
「涼宮さんには、彼に続いて他の20人の相手もして貰うわ。20人全員が三往復するぐらい中出しさせてあげる。  
彼のほうは、…そうね、長門さんの相手をさせてあげるわ。あなたは涼宮さんが輪姦されるのを見ながら長門さんをレイプするの、どう?これ」  
俺とハルヒは、汚らしいゴミ虫でも見るような眼で、朝倉を見つめていた。  
「何、その眼。なんなら今すぐこの場で…」  
 
突如、ゴゴゴゴゴという激しい振動が空間を襲った。  
「な、何?」  
動揺した表情を見せる朝倉。  
「始まった…」  
あくまで冷静に。無表情なまま、長門がつぶやく。  
 
空間が割れる音、世界が割れる音、時空が割れる音。  
さまざまな落下物が飛び交う中、俺とハルヒを中心にして、大きな青い影が伸び上がる。  
「神人?」  
朝倉の声が耳に聞こえてくる。  
「ふふ、神人ぐらい、どうってことは」  
超絶な動きで空に舞い上がる朝倉。だが、神人の動きはまさに神技だった。  
朝倉は巨大な右腕でがっしりと掴まれてしまう。  
「そんな…」  
 
「もう遅い。世界が割れる」  
「なら、その前に思念体の全力を結集して…」  
「太刀打ち出来ない。全ての派閥の統合思念体の力を結集させても、彼らの足元にも及ばない」  
「なんですって?」  
「それが無から有を生じる力、情報爆発、時空の歪み、彼は涼宮ハルヒの鍵にして門、全にして一、一にして全なる者、時空連続体の外側に幽閉されし、…よぐそとーす」  
「…うむるあとたうぃる。なんであなたには、そんな事が解るの?」  
「わたしがこれを観測するのは…これが15497回目の事だから」  
 
神人の右腕が力を込めると、朝倉の身体はいとも簡単に握りつぶされ…  
 
宇宙の中心にて玉座に座し、従者たる異形の神々が踊る中、太鼓のくぐもった狂おしき連打とかぼそく単調なフルートの音色に合わせて身悶えを繰り返し、冒涜的な言葉を喚き散らしながら、沸き立つ、魔王。  
あえてその名を口にした者は居らず、此の神は(禁則事項)という名前に依って慈悲深くも隠されている。  
宇宙の邪悪な面の中心。  
宇宙の創世は(禁則事項)に因って引き起こされた単なる現象に過ぎない。  
即ち、此の世界は(禁則事項)の見る夢に過ぎない。  
(禁則事項)の存在する空間に於いては、思考が直ちに現実になる。  
 
…顔が赤い風船のように膨らんで破裂した。  
 
 
 
エピローグ  
 
 
サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことは、世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、  
(中略)  
そんな事を頭の片隅でぼんやりと考えながら、俺はたいした感慨も無く高校生になり…。  
涼宮ハルヒと出会った。  
 
うん?  
また、あの妙な感じが俺の心を上滑りして消えた。  
既視感。デジャブ。  
次に何が起こるのか、俺はどこかで体験した。  
そうだ、ハルヒがこんな事を言い出すのだ。  
 
「あたし、あんたと会ったことがある?どこかでずーっと前に」  
「ねえよ」  
 
ハルヒのこのセリフを聞くのは、初めてのはずなのに、どこかで前にも聞いた事がある気がする。  
しかしちぎれて空を舞う蜘蛛の糸を掴もうとしたかのように、そんな感覚もするりと消えた。  
気のせいだろ。  
使い古された古典的な誘い文句に似ているし、どこか古い記憶と結びついただけかもしれん。  
 
そこへ岡部担任教師が軽快に入って来て、今回の会話は終了となった。  
 
 

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