今日も今日とて自然にSOS団の部室に足が向いてしまうのは悲しい性である。
なんだ長門だけか、窓際で読書にはげむカーディガン姿をみながら俺は席につく。
今日はどういうわけかハルヒも朝比奈さんもこない、一人で詰め将棋をするのも飽きた。
ここはヒューマノイドインターフェイスをからかって見るのも悪くない。
長門、結婚してくれないか?
SF好きの宇宙人はゆっくり顔をあげた。
「そう」
まばたきもせずこちらを見つめる瞳に俺のほうが気おされそうになる。
結婚してくれるのか?
「了解した」
了解しただって?結婚式はいつにしようか?やっぱり大安吉日がいいか?
俺が次のセリフを考えている間に宇宙人は例の早口言葉をつぶやいた。
「戸籍情報を改竄した、私とあなたは婚姻関係にある」
待て、待ってくれ。俺はやるべきことをやってからでも遅くないと思ってる。
健康な高校生としては持て余している性欲を存分に発散させてからでもいいくらいだ
むしろ出来ちゃった結婚でもいいくらいだ。
「了解した」
俺が止める間もなく宇宙人製アンドロイドは因果律の操作を続ける。
「受精卵にあなたの遺伝情報をコピーした、出産の許可を」
どうやら俺は何もしていないうちに父親になったらしい。
いとおしげに腹部をなでる長門を置き去りにして俺は部室を飛び出した。
これは夢だ、明日になれば何もかも元通りになっているはずさ・・・
翌朝、教室につくなり待ち構えていたハルヒに引きずられ部室に連行された。
おいおい、UMA捕獲作戦のミーティングなら放課後でも遅くないだろ。
俺の抗議にも耳を貸さず、めずらしくハルヒは黙ったまま窓際に座る長門を指差す。
長門はいつものSF小説でもなく、小さな赤ん坊をやさしい声であやしていた。
「キョン、あんたが産ませた子供なんでしょ!責任とりなさい!!」
狭い部室の中にハルヒの非常サイレンのような声が響いた。