「遅いよ」
差し込む西日で照らされる微笑。思わず息を飲んでしまう。
俺を手紙で呼び出した張本人はあの朝倉涼子だった。
あまりに意外な人物なので俺は戸惑ったが、誘うように手を振る朝倉に従い彼女の立つ教卓へと近づいた。
「お前か・・」
「・・意外みたいね」
いやにしっとりとしたトーンの声に気圧される。
「なっ何のようだ?」
「女の子から放課後に呼び出しって言えば分かりそうなものだけどな?」
「・・・もしかして」
「付き合ってほしいの、私と。」
「・・・」
「現状維持してるだけじゃジリ貧なら何か変化起こしてみたいと思わない?」
「涼宮のことを言ってるのか?」
「だってまさかあんなに仲良くなっちゃうとは思わなかったもの」
「涼宮とはそういうんじゃ全然ないんだ!」
言ってる自分で動揺してるのが分かる。馬鹿な!何動揺することがあるんだ?あの朝倉に告白されてるんだぞ!OKしかないだろ。
「分かってるわよ、あなたの気持ちは」
朝倉が少しずつ近くなる。
「踏ん切りがつかないなら、既成事実をつくっちゃえばいい」
朝倉が手を伸ばす。緊張のあまりピシッと張ったおれの腕を優しく撫で下ろす。
近い。荒くなった鼻息が朝倉の頭にかかっているようで恥ずかしい。
下ろされた手を俺の手と重ねてくる。柔らかな朝倉の指が俺の手を包み込んでる。
俺の両手を握ると朝倉は下に落としていた視線をキッと俺の方に向ける。自信あり気な挑発的な瞳だ。俺はたまらなくなった。征服欲が掻き立てるまま、朝倉に口づけをしてしまった。
唇をゆっくり離す、朝倉はうつむいてはにかんでいる。俺の手を握る力が少し強くなる
「初キスだったから、責任とってよね」