空を見上げる。  
何時に無くからりと晴れた空は、この日を待ち望んだ私の心の中そのもの。  
長かった本当に長かった。  
空回りした中学三年間、命令のままに素っ頓狂な事をやらされるなんてこんな気持ちを誰がわかってくれるっていうの!  
それは例えば、日本人が日本語で日本製の石灰を使って日本のグランドにこう書くのだ。  
 
『私はここにいる』  
 
……次の日マジ休もうかと思った。  
ああ、憂鬱。  
中学の私のクラスは六階建ての四階、校門から玄関までグランドに集まった先生たちを見てハテナマークを浮かべて歩き  
窓からそれを見なおしたクラスメイトが引きつった納得顔を浮かべる。  
わかる、その気持ちよーっく分かるわ。  
だってここには夢もロマンもサスペンスもついでにミステリーだってないもの。  
これは仕組まれたただのお遊戯よ。  
それはどこかの権力者が目の眩んだ哀れな亡者どもに金貨を投げつけて、悦に浸ってるようなもんだわ。  
そして、その黒幕こそ私。  
あーもう。これが一番腹立たしい。  
時間を戻せるならせめてもうちょいアレンジは加えたい。進めていいなら一気に進めてしまいたい。  
ベストを尽くさなかったのがあの時の私にとっては唯一の汚点よね。  
顔を真っ赤にして線を消し始めた教頭と生徒会の面々をちょっとだけ見直しちゃったくらいに。  
 
だいたいなんでこんなまどろっこしい真似をしなくちゃいけなかったのか。  
それがまったくもって一番の謎で問題なのよね、あーわくわくする。  
今から十年とちょい前、銀河系で活発に活動していたはずの情報フレアにごく小さな淀みが発見されたことからそれは始まった。  
始めはなんてこと無いなんて思われていたんでしょうけど、  
それが次第に広がり始めた事で自体はだんだんと予測を超えていった。  
あいつらだってそれは真剣になったんじゃない?  
だって自らの存在が消滅するかもしれない重大な事件だもの。  
そして、ほどなくその原因がある一人の人物に思い当たったのよね、それがこの地球にいるまたとんでもなく普通な奴なのよ。  
誰だと思う?それはね。  
 
「それじゃ一年間よろしくお願いします」  
 
あーあ、また何とも面白くない挨拶だこと。  
前のクラスメイトが当たり障りのない自己紹介を終えて腰を下ろす、と同時にシーソーのように私が立ち上がった。  
ふふーん、よろしくキョン。  
私は目の中に太陽を集めてその背中に思いっきり注いでやった。  
与えれたラストミッション。それはコイツから可能な限りの無気力さを奪う事。  
そして同時に私の解放も意味するわ。  
もう誰の命令もうけないんだから!  
小さく息を整える。  
キョンの興味を引きつつなおかつ自分自身の宣言も同時に込めて、私の意志で話す最初の言葉をこの教室のつまんない空気にのせる。  
感じるまま自由にやってやるんだから!!  
 
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