「あんたさ、告白ってしたことある?」  
ハルヒの突然の質問。頭が追いつかない。告白だって?  
「そ。どうやってするのかなって思ったの」  
「なんだ、誰かに告白でもするのか」  
「は?何言ってんの?」  
「告白するから告白の仕方を聞いたんじゃないのか?」  
「違うわよ。ちょっと聞かれたの。告白したことってありますかって」  
ハルヒにそんなこと聞く奴…ハカセ君だろうか。ハルヒが家庭教師って言ってたし。  
「それでお前はどう答えたんだ」  
「されたことはあるけどしたことはないって答えたわ」  
そういえば谷口から中学のときはすごかったと言う話を聞いたな。  
「だから告白するとしたらなんて言おうか考えてたの」  
「…疑問なんだが、好きな、というか告白しようと思っている奴はいるのか」  
「そんなのいないわよ」  
「バカじゃないのかお前」  
「なんですって!」  
「そういうのは相手が出来たときに考えればいいんだよ、そもそも相手に合わせるもんだし」  
「違うわよ、告白っていうのは自分の気持ちを伝えるものでしょ。だからさ…」  
ハルヒは俺をまっすぐに見つめ  
「好き」  
と言った。はっきりと、その瞳には俺だけが映っていた。  
「こんな感じでしょ。…ちょっとキョンどうしたの?」  
いまのは、ただのふりだ、告白するならこうするというふり。  
だというのに、動悸が激しい。なにうろたえてるんだ、俺。相手はハルヒで、しかも真似事をしただけじゃないか。  
「あからさまに目を逸らさなくてもいいでしょ。そんなにヘンだったかしら?」  
ハルヒが気付いていないのが救いだ。本当なら今すぐここから逃げ出したい。でも一つ言っておかなきゃならん。  
「ハルヒ、さっきのはあんまりやらないほうがいい」  
「さっきのって?」  
「告白まがいのことだ」  
「別にいいでしょ。ちょっとした練習よ、練習」  
「万が一、そう万が一に勘違いしちまうバカがいるかもしれないからやめとけ」  
「そんなのいるかしら」  
いるかもしれないだろ。どっかに。  
「言葉には力があるって言うからな。例えば…」  
ハルヒの肩に手を置き、まっすぐにハルヒの目を見つめて言う。  
「好きだ、ハルヒ」  
ハルヒは顔を赤くして「あ、わ、うあ」とわたわたしている。  
「バ、バカキョン!エロキョン!」  
意味不明な上に関係のない罵倒。またとりえあず怒ってやがるな。  
「わかったか?なんか少し勘違いしてしまいそうになっただろ?」  
「うう、わかったわよ。もう言わない。もう、キョンはホントバカなんだから、バカみたいバカみたい」  
もはや俺を罵倒しているのか、自己嫌悪にさいなまれているかの区別がつかない  
「………キョンも」  
ハルヒが俺を見上げながら問いかけてきた。  
「キョンも「勘違い」したの?」  
勘違いしたほうがいいのか、悪いのか。勘違いしないほうがいいのか、悪いのか。  
「…さあな」  
そんなの答えられるわけないだろう。なにせ俺にもわからないんだから。  
 
 
 

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