今から2ヶ月前に届いた[同窓会案内]、  
なんてもんは全て終わったあの日から5年という歳月を知らせてくれるのには  
十分な破壊力を持つもんで、少々ノスタルジーな感傷を思い出させるには十分な物があった。  
届いてから数日間、行くか行かないか悩んでる俺に古泉から着たメールの一文は俺を決心させるには十分な判断材料だった。  
  『長門さんが来られるようですよ?「機関」から降りてきた情報なので間違いないそうです。  
涼宮さんはどうされるか伺っておりませんが…』  と。  
久しぶりに古泉からアイツの名前が出たなと、今まで気を使ってくれていたのだろうと思いながらも長門情報に意識を切り替える。  
以前から長門には高校3年間の観察終了後、無期限の待機モードに入ると聞いていたため  
高校卒業後全くと言っていいほど逢っていない。その為長門が来ると言うだけでもマイナス要素を  
半減以上させた。やれやれ、現金なものだと自分自身に呆れながらも行く事を決心した事を  
報告するメールを古泉に送ったのが一ヶ月前。  
 
そして今日、実家から2駅と少し離れた所にある大学に通うためと口実をつけ始めた一人暮らしも  
本当はあいつがいるあの町から離れるための口実であった事を思い出しながら  
遅れてはならないと思いつつ少し速いながら出かける仕度をはじめた。  
電車に乗り、慣れ親しんだあの町に向かう。  
駅を降り5年ぶりにこの町に立った最初の感想はたいした変化も無かったってことだ  
毎週集まった噴水前もよく奢らされた喫茶店も変わらずに存在した。  
俺は少し時間が有る事を思い出し、当時不思議探索で行かされた桜並木を目指す。  
 
並木には青葉が生い茂り、桜本来の役割を担ってない事で季節をあらわしていた。  
そういえばこんな季節だったなと思い出したのが、  
始めての不思議探索で朝比奈さんから語られたトンデモ話だった。  
先に長門からの話を聞いていなかったら、確実に人付き合いを改めたであろう電波話  
この時は長門を電波扱いしてたためか、朝比奈さんの話が不思議レベルで言えば  
長門より下に感じたんだろう。  
歩くたびに永遠と続くような錯覚をさせる並木道を通り抜け、腕時計を確認する。  
「…よし。まだ…いける」  
そう思い、次に向かったのは図書館だった。  
 
休日だと言うのに閑古鳥が鳴いたかの様に閑散としてる館内に足を踏み入れる  
多少居る客のなかでも、本を読む客の中に混じり寝ている客もチラホラ居た  
まぁカウンターの中に座ってる職員でさえ眠たい目を擦り作業をしているのだから、どっちもどっちだろう  
俺はいつかの様に適当に館内をうろつきに目に付いた本を抜いてパラパラとめくっては元に戻すことを繰り返す。  
そして以前手に取った事のあるノベル本の続きを適当なソファに座り読み始める。  
以前よりこの本の面白さを理解しつつもやはり本は睡魔助長薬であることを思い知った。  
圧倒的な睡魔とソファの座り心地良さによる二段攻撃に意識諸共持っていかれそうになった時  
胸ポケットの携帯が震える。  
「あわっ?!」  
鳴ったと同時に体がビクッとはね、おかしな声を発してしまう。  
いつの間にか隣で寝ていたオッサンが何事かとこっちを擬視してくるが、構わず携帯のディスプレイを確認する  
ディスプレイには『古泉一樹』と表示されていた  
俺は館外に飛び出し携帯に出る。  
 
『お久し振りです。古泉です』  
「あぁ、電話で話すのは随分と久しぶりだな。で、どうしたんだ?同窓会にはまだ時間はあるだろ」  
『えっと、すいません。そちらに時計はありますか?出来ればスグにご覧頂きたいのですが…』  
「あぁ、わかっ……たぁ!!??」  
近くにある時計を確認すると既に同窓会開始時間から10分経っていた…  
『目は覚めましたか?では、まだご在宅でしたらスグに迎えを…』  
「…すまん、駅前の図書館だ。タクシーでも捕まえてスグに向かうっ」  
『なぜそんな所に…とりあえずわかりました。  
お気をつけて、…それと「5秒以内に来ないと罰金」だそうですよ』  
「…それを先に言ってくれ…」  
『ふふっ、ではお待ちしていますよ』  
電話の向こうでニヤついてる古泉を想像してすこしイラつきながら、  
駅前でタクシーを拾って行き先を伝える  
 
会場に向かうタクシーの中、話しかけてくる運転手の話を流しながら、  
アイツに逢える。そんな事を考えていると初恋をした中学生のように、  
気がつけばドキドキと跳ねる心臓を押さえつけていた。  
しかしそれと同時に、俺の当時のヘタレ具合もくっきりと思い出す  
 
 
なぜ、あの時俺はなぜ断ったのだろう  
気づけばいつも繰り返していた自問自答…  
 好きじゃなかったんだろうか。 もしかしたら嫌いだったんじゃ?   
いやホントは怖かったんだ。 そう、好きだったから怖かったんだ……  
 じゃあこっちからもう一度? アイツは俺を許してくれるだろうか……  
考えれば考えるほど抜けられない思考…  
 
 
そんな思考から呼び戻してくれたのはタクシーの運転手で  
どうやら着いたらしく会場前、北高正門前だった。  
俺は料金を支払い、会場へと向かう  
会場に向かう足は近くにつれて、重りを科せられるかのように重くなっていく  
けど、その重りを振り払うように少し歩測を早める。  
この先でアイツは待っているのだろうか…俺に話しかけてくれるのだろうか…  
どんな顔でアイツに話しかけたら良いのだろうか…  
そして、もう一度不機嫌そうな顔のあとに見せる  
満面の笑みを俺に迎えてくれるのだろうか、  
…気がつけば体育館入り口の前だった。  
やれやれ、ここまで来ると覚悟を決めなければ、な  
俺は少し重めのドアを開け、アイツ達を探す  
 古泉が俺を見つけニヤついた顔をしながら手を振ってくる  
 その横で長門が顔を上げ俺を見つめてくる  
あぁ、未来に帰ってしまった朝比奈さん以外のSOS団が揃ってる  
俺が駆け寄ると卒業後、また伸ばし始めたんであろう長い髪を一つに括り、  
アイツ、ハルヒが不機嫌そうな顔で一言  
 
               「遅い!!罰金!!」  
 
と、いつもの調子ので言った後  
何年経っても変わらない、満面の笑みで俺を迎え入れてくれた―  
 

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