「帰るよ。やっぱ邪魔だろうしな」
じゃな、と服を着かけた俺の息子に、羽毛のようにやんわりとした力が加わった。
「…………」
長門が、息子の皮をそっと指でつまんでいる。まるで生まれたばかりの赤ん坊ハムスターをつ
まみ上げようとしているような、小さな力だった。
今にもイキそうな表情だ。長門はうつむいて、ただ指だけを俺の皮に触れさせている。俺に
帰って欲しくないのか、朝倉と二人でいるのに危機を覚えているのか、だがこの消え入りそう
な長門の姿を見ているとどっちでもよくなってきた。
「──と思ったが、する。うん、溜りすぎて死にそうだ。今すぐ誰かの中に入れないと、家ま
で理性が保ちそうにないな」
やっと指が離れた。なんとなく名残惜しい。長門の明確な意思表示なんて普通だったらまず
見れない。希少価値がある。
布団に舞い戻った俺を見て、朝倉は解っていたとでも言いたげに目を細めた。