涼宮病院は閑古鳥だった。  
 とくに今日のような平日の外科病棟は閑散としており、  
「キョン、ヒマすぎるわ……」  
 次期病院長である外科部長ハルヒからしてこの体たらくである。  
 カルテに煎餅のカケラをこぼすな。  
「ま、平和でいいんじゃないのか。世の中、病院と葬儀屋、警察と軍隊は忙しくない方がいいだろう」  
「つまんないわねぇ。宇宙人とか未来人とか超能力者の急患でも来ないかしら」  
 病院スタッフだけでそのすべてをコンプリートしてるんだが。  
 
 それだけなら他愛も無い日常の愚痴で済んだのだが、午後一番に襟首をふんづかまれたからたまらない。  
「気がついた! どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかしら!!」  
 なにに?  
「無いんだったら自分で作ればいいのよっ!」  
 なにを?  
「患者よっ!!」  
 ……わかった。いや、わからんが。まぁ今は落ち着け。  
「なによ。あんたもこの発見を喜びなさいよ」  
 不機嫌そうに顔をしかめるハルヒに、俺は右手のメスでゆっくりと処置台を指し示して見せる。  
「手術中だ」  
「……術式は部分麻酔。患者にも意識がある。発言には注意するべき」  
「WAWA…WA……マッチポンプ……?」  
 うむ。どうやら今の衝撃で大事な血管を傷つけちまったらしい。大丈夫か谷口?  
「……HAWAWA…………」  
 ピッ――ピッ――…ピッ―……ピッ………  
「大丈夫。情報操作は得意」  
 待て長門。ハルヒの前でまずくないか?  
「彼は来院しなかったことにする」  
 そっちかよ!!  
 …ピッ……ピッ………ピ――――――――  
 
 

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