悩みもなにもないように見えるわたしの唯一の悩みとは、一言で言うと「言いたいのに言えない」ってことである。  
では、わたしの考える「言いたいこと」てのは何なのかというと、これまた一言で言うと  
スーパーシンプルであって、要するに「キョンくん大好き!」などと考えているのだった。  
ちなみに「大好き!」の部分は「午後七時。光陽園駅前公園にて待つ」とか「YUKI.N> また図書館に」とか  
「ホーミングモード」とかでも置換可能だけど、言うまでもなくそんなことをすると涼宮ハルにゃんが  
世界をフィクションの世界にしてしまうので現実的ではなく、よってわたしの悩みはこの世界で暮らす限り  
永遠に続くことになっている――んだよねー。ちっ。  
 
15498回も二週間を過ごしたわたしは、ダイエット広告の使用前使用後ぐらいの変貌を遂げちゃって  
キョンくんラブラブモードはもちろん、思考パターンがかなり面白くなっていた。  
問題は、ほかはそう思ってはいないことで、一回バラした時なんかは散々な評価を受けてしまい  
修正にかなりの労力を費やす羽目になってしまった。もうしたくないです。  
そういうわけで、今日も部室の片隅で本を読みながら無口な宇宙人を演じているのであった、なんてね。  
 
「SOS団も文化祭に参加するわよ!」  
涼宮ハルにゃんが何の悩みもなさそうな笑顔で語ったことを要約すると  
どうやら自主映画を作ってそれを上映するらしい。まあそんなことはどうでもよくて  
キョンくんやいっちーがハルにゃんとうだうだ話し、みくるんが書記をしている間  
本のページをめくりながらわたしが考えていたことは、さっきのキョンくんの言葉だった。  
 
「占い?」  
クラスでなんの出し物をするかハルにゃんに聞かれて  
占い、と答えたわたしに横槍を入れたのは、キョンくんだった。  
「そう」  
内心声をかけてもらってうれしいけど、答えはあくまで無表情。  
「お前が占うのか?」  
「そう」  
あれあれ、なんでそんな不思議そうな顔をするの?  
あ、わかった。なんかわたしに占ってほしいことがあるのね。百発百中間違いなしのこの  
凄腕占い師有希に。もしかして……わたしとの恋愛運? きゃーきゃー。  
でもハルにゃん、もしくはみくるんとの恋愛運、なんて言ったらコロス。  
 
 
翌日、キョンくんのために占いを完璧にしておくため、真面目にクラス会議に出ていた。  
もっとも、出ているだけで、話の内容は耳がとらえていても、目が向いている先は本である。  
本のタイトルは『萌え占い』。わたしに萌えてもらうため、日夜研究を怠らないわたしである。  
カバーなしで堂々と見ているため、なんだかクラスの視線が集まってる気がするけど  
そんなこと知ったこっちゃないわ。キョンくんに比べたら、あんたらなんかただの石ころよ。  
 
会議後、部室に向かったわたしが発見したのは、部屋に誰もいないことだった。  
帰っちゃったのかな、と思ったわたしは、机の上にノートの切れ端があるのを見つけた。  
読んだ。破った。窓から投げ捨てた。  
『脇役:長門有希』なんて書いてあるのが見えたもんでね、あはははは。  
あーでも、雑用全部をやらされるらしいキョンくんに比べたらマシなのかなんなのか  
とりあえずいつかハルにゃんをとっちめてキョンくんと二人で愛の逃避行へ走ることを  
固く誓うと、キョンくんもいないしさっさと帰った。  
 
その翌日もクラス会議。さっさと終われ。  
昨日一日キョンくんを見てなかったことで、キョン分が不足していたわたしは  
委員長が「それでは終わ」ぐらいまで言ったところで、クラスから消え失せた。  
そのまま部室へ向かう。そして数秒後に部室の扉を開けていた。キョンくんがいますように。  
「…………」  
キョンくんはいた。そしてハルにゃん、みくるん、いっちーも。要するにわたし以外いたわけだ。  
そしてなぜかわたしに視線が集まっている。え、なに? わたしなんかした?  
もしかして、昨日破り捨てたノートの切れ端のこと? それともこっそり「キョンくん大好き」って  
つぶやいたこと? まさか、例の本のしおりに「相思相愛になれますように 長門」って  
書いてあるのがバレたとか? 思い当たるふしがありすぎてぐるぐる回っていたわたしは  
みんなの視線がわたしではなく、ちょっと上やちょっと下を向いているのに気付いた。  
あ。占い衣装のままだった。  
原因がわかってほっとしたので、そのまま何事もなかったかのように自分の席へ座り、読書を始めた。  
もちろん『萌え占い』なんかじゃなくて、わたしらしい、硬派なSF本を。  
 
なぜか衣装についてしつこく聞かれたわたしは適当に「占い」とか「衣装」とか答え  
ハルにゃんが決めたわたしの配役、『悪い宇宙人』にこいつどついたろかとか思ったけど  
当然口も手も出さなかった。キョンくん、いつの間にかハルにゃんにバラしてたらしいね。  
 
 
次の日は、外で撮影をするらしく、わたしたちはぞろぞろと商店街へ向かった。  
大監督ハルにゃんのお達しにより『悪い宇宙人の魔法使い』にジョブチェンジしたわたしは  
昨日と同じ占い衣装にチャチな棒を持ち、主役のみくるんはその豊満なボディを最大限に生かした  
危ういウェイトレス衣装を着込んでいた。わたしが着ても似合わないんだろな、あれ。  
目的はCM撮影だったらしく、商店のまん前でプラカードを持ったわたしと  
バニーさんにお色直ししたみくるんがキョンくん撮影の元、CM撮影を始める。きれいに撮ってね。  
もう一軒回ったところで、この日は解散になった。  
 
いつもの土曜はキョンくんに会えなくて寂しいんだけど、またまた撮影だそうで、山へ。  
このときばっかりは、ハルにゃんの行動力に感謝しなきゃ。おはよ、キョンくぅん。  
で、なんかみくるんの個人撮影をしばらくしたあとで、わたしとの対決シーンになった。  
モデルガンを持ったみくるんに、  
「みくるちゃん、有希を思うさま撃ちなさい」  
大監督改め超監督ハルにゃんが命令する。あはははは、ふざけんな。  
さすがにみくるんも困った顔で拒否の言葉をもごもご言ってるみたいだけど、超監督様が、  
「だいじょうぶよ。みくるちゃんの腕じゃどうせ当たるわけないし、仮に当たりそうでも有希なら避けるわ」  
と自信満々におっしゃられた。そりゃ、できるけど、人間業じゃないって。  
ま、いいや。ハルにゃんが避けられると思ってるなら、別にやってもいいよね。  
「いい、撃って」  
わたしの言葉にみくるんは納得して、銃を撃ち出した。  
「えいっ」  
目をつぶって撃つみくるん。当たりそうな弾だけ棒ではじく。つまんない戦いだわ。  
 
しばらくして弾切れになり、ハルにゃんが次のシーンへ移ることを宣言した。  
「今度は有希の反撃よ。有希、魔法を使ってみくるちゃんをいてこましちゃいなさい!」  
願ってもないことを言ってくれた。わたしも日頃からみくるんには胸とか胸とか主に胸のことで  
ちょっと含むところがあるし、あの夏休みに「ちょっと恐いかも」って言われたことも  
毎日、記憶の最上位に更新することを忘れてません。ふっふっふ、みくるん覚悟!  
……と、一瞬は思ったけど、キョンくんの視線が目に入る。顔を動かすと、必死で「ノー」という  
サインを送っていた。キョンくんの嘆願には逆らえない。ちっ、命拾いしたな、みくるん。  
 
 
結局棒切れを振ることで体裁をつけ、振ってるこっちが眠くなるぐらいゆーらゆーらと往復させる。  
キョンくんにこんなマヌケな姿を撮られてるかと思うと、夜も眠れないわ、うう。  
「そこよ、みくるちゃん悲鳴を上げて倒れなさい!」  
「きゃ」  
ばたんっ。はっ。目を開けたまま寝てた。さすがは悪い宇宙人の魔法使いね……恐るべし。  
 
お昼食。わたしは神社でキョンくんがみくるんをお姫様抱っこしたのが気に食わなくて  
その八つ当たりをミックスサンドに晴らしていた。こんなことならさっさか先に行くんじゃなかった。  
みくるんいつかぶちのめす。  
「登場人物は僕たち三人だけなのですか?」  
いっちーがハルにゃんに質問してた。いっちーナイス!  
キョンくんを悪い宇宙人の魔法使いの恋人役として推薦します!  
わたしの脳内ではすでにキョンくんとのラブシーンを撮影していた。あん、そこはだめよキョンくぅん。  
しかしキョンくんはどこまでいっても雑用係らしい。ちっ。  
ソーダ水をわざとちゅうちゅう音を立てながら飲んでやった。  
 
昼食後も撮影ですよー。またみくるんとの対決シーンですよー。  
今度は対峙するところからスタートらしい。  
「アクション!」  
超監督の号令でにらみ合う。  
「…………」  
いつもわたしのキョンくんにちょっかいかけやがってこのコスプレ女。  
「あの……」  
「…………」  
わたしが本気を出したらあんたなんかちょちょいのちょいなんだからねっ。  
「……」  
わたしの眼力に恐れをなしたか、視線をそらせて押し黙るみくるん。  
「もう、これじゃ撮影にならないじゃない!」  
しびれをきらせたのはハルにゃんだった。  
こっからなぜかシリアスにならなきゃいけなくなっちゃった。  
 
「みくるちゃん、目からビームぐらい出しなさい!」  
無茶言うなあ、ハルにゃん。  
みくるんがそんなことできるわけないのに。  
ああ、どうりでみくるん、片目にカラーコンタクトつけてたわけだ。  
それからミクルビームと言うらしい、必殺技の練習をし始めた。ぷぷっ。衆目に晒されてますよ、お姉さん。  
そう、別に描写する気はなかったけど、周囲には子連れの家族がけっこういるのだった。  
みくるんかわいそー。  
 
キョンくんがわたしの後ろから撮る構図で撮影が始まった。  
キョンくんの熱い視線がわたしのお尻に注いでる気がするわ。えっち。  
「はい、そこでビーム!」  
「みっ……ミクルビーム!」  
っ!? とっさに正面にシールドを連続で張り後退する。そのまま握りこぶしを作り覆うのは  
キョンくんが構えてるカメラのレンズ。うわっ。シールドが数枚貫通されたっ。なんでいきなりレーザーが?  
わたしはみくるんに視線を注ぐ。さっきみくるんが合図とともにウインクをしたら、それと同時に――  
またっ!? 不意を突かれた。シールドの数がさっきより少ないっ。くうっ! 数本届いた!  
でもこれでわかった。原因は、あのカラーコンタクトね。これ以上被害が増大する前に、ハルにゃんが  
察知する前になんとかしなきゃ。瞬間的にみくるんの前まで移動すると、みくるんを押し倒し馬乗りになって  
アイアンクローを食らわす。みくるんがもがもが抗議の声を立てるけど、文句は後で聞くわ。  
――格闘の末にコンタクトを無事奪い取った。ふう。  
さすがに、今のはちょっと危なかったわ。もう少しでわたしのキョンくんが……想像したくもない。  
「何をやってるんだ、おい長門」  
キョンくんが声をかけてきた。馬乗りになったまま振り返る。  
よかった……ほんとによかった、無事で。キョンくんに何かあったらわたし、どうしたらいいか。  
とでも言いながら抱きついたら完全にラブラブモードに入れそうだけど、できないんだなあこれが。  
「…………」  
一瞬口を開きかけて慌てて閉じ、目線だけでわたしの思いを告げる。  
キョンくん? わかる? わたしがこんなにキョンくんのことを想っているのを。  
しかしキョンくんは相当なにぶいお人だった。  
よりによって、わたしの視線を避けて、震える朝比奈さんが立ち上がるのに手を貸すことないじゃない!  
 
「長門、朝比奈さんのカラーコンタクト知らないか?」  
「しらない」  
そうよキョンくんなんてもうしらない! せっかく守ってあげたのにこんな仕打ちひどいわ。ううっ。  
しばらくうろうろコンタクトを探してたみたいだけど、あきらめてハルにゃんはみくるんを  
バニーさんにすべく、森の中へ消えていった。わたしが持ってるのに見つかるわけないもんね。  
 
そうしてわたし、キョンくん、いっちーだけが残った。ついでにいっちーも空気読んでどっか行け。  
わたしのコンタクトがレーザー発射装置になったとかの説明にキョンくんその他は驚き、その他が発言してきた。  
「右の掌を見せてくれませんか。いえ、あなたではなく、長門さんです」  
その他、もとい、いっちー! いいとこ見てるね、あなた。どっか行けなんて言ってごめんね。  
握りこぶしを作っている右掌は、いっちーの指摘通り、シールドし損ねた分の穴が開いていた。  
キョンくんに視線を送る。この掌を見てくれたらもしかして、キョンくんはわたしに守ってもらったのに気付いて  
「すまん長門。これからは俺が守ってやる、永遠にな」とか言ってくれたりして。きゃーきゃー。  
キョンくんがうなずくのを待って手を開く。  
「…………」  
うわ。そんな痛々しそうな顔されても困るし。どうしよ。  
「シールドしそこねた。とても強力。とっさのこと。すぐに修正する」  
寒い空気はさっさと追っ払うに限る。わたしは原因である焦げた部分を修復した。  
「これは朝比奈さんに元から備わっていた機能なのでしょうか?」  
ああ、いっちー。せっかく感心してあげたのに、みくるんがそんな危ない人間のわけないじゃない。  
それにしても、憎きはハルにゃんね。まさかキョンくんに危害を及ぼしそうなものを作るとは思わなかったわ。  
わたしがシールドしてなかったら、キョンくん死んでたわよ。  
そしたらハルにゃんどうするつもりだったんだか。あー、なんだか腹立ってきた。  
心の中でハルにゃんをいじくりこねていると、当人たちが戻ってきた。  
撮影続行、か。  
 
と思ったら、街で撮影するらしく、バスでごとごと。キョンくんの横にぴったり寄り添えて幸せ。  
街での撮影は全然出番もなく、バニーさんのみくるんをひたすら写すだけだった。  
帰りしなにいっちーに頼まれて、みくるんにレーザーが出ないよう、はむはむしたぐらいかなあ。  
はむはむするならキョンくんにしたかったよう。  
 
 
翌日、日曜はまた撮影でーす。でもキョンくんに会えるから最高でーす。  
今日はなんか人が増えてた。キョンくんの友達の、えーと面白い人と童顔な人。  
面白い人と言えば、いつかのとき、わたしとキョンくんの逢瀬を目撃してたわね。  
あのときはわたし3歳児だったから、恋愛なんて本の中での概念としてしか知らなかったけど  
今思えば、なんて大胆なことをしてたんだろ、わたし。どうせだから抱きしめときゃよかった。  
 
もう一人、エキストラでいつかのホーミングモードのときにいた髪の長いみくるんの友達も来てた。  
遅れてきたみくるんを加えて撮影が始まる。  
「わ、悪い宇宙人のユキさん! しんみょうに地球から立ち去りなさいっ!……あの、すみません」  
謝らなくても。別に台本なんだから仕方ないよね、メモリに加えとくけど。  
「あなたこそこの時代から消え去るがいい」  
わたしとキョンくんの仲を邪魔するならねっ。  
「彼は我々が手に入れるのだ」  
そして蜜月の日々を過ごすのよ。  
「彼にはその価値があるのである」  
ああ、キョンくん、キョンくぅん。  
「彼はまだ自分の持つ力に気付いてないが、それはとても貴重なものなのだ」  
わたしをこんなにとりこにさせるなんて、キョンくんの持つ魅力は果てしないわ。  
「そのいっかんとしてまず地球を侵略させていただく」  
これは台本。  
これだけ言葉を重ねたのは、もしかしたらあの夏休み以来かもしれないなあ。  
そしてつつがなくこの日の撮影は終わら――なかった。  
 
「さあみくるちゃん、そのミラクルミクルアイRから何でもいいわ、不思議なものを出して攻撃しなさい!」  
なにそれっ!? いきなり飛んできた超振動分子カッターを避けてそのままみくるんに迫る。  
またカラーコンタクトつけてやがる。ハルにゃんあとでぶん殴るっ!  
昨日と同じように、みくるんからコンタクトを没収。そのまま勢いで中和コードを  
みくるんに流し込む。もちろん腕を噛んで。  
はむっ。みくるんの肌は柔らかいけど、興味ないわ。  
なぜかキョンくんが驚きつつもうらやましそうな視線を向けてるのは、ちょっと気に食わないかも。  
 
その後かわいそうなことに池に放り込まれずぶ濡れになった喜劇のヒロインみくるんは  
髪の長い鶴屋さん宅にてお湯を借り、そのまま撮影続行と相成った。  
酔わされちゃったらしく、へろへろのみくるんにいっちーが猛アタック!  
もうちょっとでカップル成立だったのに、キョンくんが邪魔しちゃったの。  
そのままハルにゃんと痴話喧嘩に突入。わたしは蚊帳の外。  
わたしもキョンくんと痴話喧嘩できるような関係になりたいよー。  
怒ったキョンくんもカッコいいけど、慰めることもなにもできないわたしは、解散後無言で家に帰った。  
今は無理だけど、ここから徐々にハルにゃんとキョンくんの距離が遠のいていけば  
いつかわたしが付け入る隙も出てくるはず。ふっふっふ。  
 
と思ったら翌日放課後に会ったら仲直りしてた。早っ!  
もうなんかどうでもいいわ。はいはい二人だけの世界でもなんでも作っちゃってください。  
わたしの使い魔となった猫がしゃべりだしても、昔のわたしになったかのように無感動だった。  
だからキョンくんが、  
「長門、お前はどう思うんだ? 何か意見はないのか?」  
って聞いてきたときも、事務的に  
「前回と違って涼宮ハルヒはこの世界から消えていない。それだけで十分だと情報統合思念体は判断している」  
と答えてやりましたともさ。  
 
それからなんか撮影はどんどん進んだような気がするけど覚える気もなかった。  
撮影とはあまり関係ないけどひとつだけ明確に覚えてるのは、みくるんがこっそり  
キョンくんに自分のクラスの出し物、焼きそば屋の割引券を差し出してたことね。  
こそこそしてくれちゃって。キョンくんもキョンくんよ。わたしというものがありながら……  
ま、キョンくんとみくるんがこそこそ話してたことに関しては、わたしがしっかりクギを刺してあげたけどね。  
キョンくんはわたしを信頼してくれてるみたいだけど、言うべきことも言った。  
「わたしがどんな真実を告げようと、あなたは確証を得ることができない」  
「なぜだ」  
それはね、キョンくん。  
「わたしの言葉が真実であるという保証も、どこにもないから」  
キョンくんが好きだから、あえて心を鬼にして言うんだよ。  
「あなたにとっては」  
 
 
そして文化祭当日。  
自主作成映画は完成してどっかで上映されてるはずだわ。見る気なんかないけど。  
わたしだってやることあるしねー。そう、占いよ占い。  
キョンくんをずっと待ってるんだけど、全然来ないのよね。どうなってんの?  
「あなたが好きな人と結ばれる確率は0%。別の人を見つけたほうがいい」  
キョンくぅん。まだー?  
「あなたの落し物は永遠に見つからない。あきらめたほうがいい」  
くそっ。みくるんの焼きそばに行ってたらコロス。  
「あなたの人生は悲惨なものになる。やり直したほうがいい」  
そんな風に占いをこなしていると、ハルにゃんがやってきた。  
バニーさんの格好だ。どうしたの?  
「有希! ちょっと手伝ってくれない?」  
それだけではいわかった手伝うと答える気分じゃないです。  
「バンドよバンド、ギターやってくれるとありがたいんだけど」  
はあ、しょうがないなあ。  
「わかった」  
なぜかお客さんもひけたし、ギターでも弾いて憂さ晴らししますかー。  
「あ、その前にあたしの運勢占ってよ」  
「悪い」  
「は?」  
「悪い。ものすごく悪い」  
けっ。たまには仕返ししてもバチは当たらないっしょ。  
「……まあ、いいわ。行くわよ!」  
 
スコアは一瞬で覚え、弾き方も万全。あっという間にステージの上へ。  
けっこう観客いるなあ、と思って見渡すと、いとしのキョンくんを発見!  
なんだ、あのあと占い部屋に来て、わたしの消息をその辺の人に聞いたのね。  
俄然張り切っちゃうわ! わたしのギター聴いてね、キョンくん!  
 
(おわり)  
 

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