気の合う二人?!
バイトを始めてはや一週間、ようやく動きが出たようです。彼と、彼の中学時代同級生がお仲間を連れてやってきました。
彼が彼女と接触してから、いずれこの喫茶店にやってくるだろうと踏んで張り込んでいた甲斐がありました。私の最大の関
心事は彼と彼の中学時代の同級生である女性にありますが、彼等が連れて来たお仲間のうちのお一人も気になりますね。オ
ーダーをとりながら多少観察しましたが私のよく知るいつも本ばかり読んでいるインターフェースに匹敵する重度の暗さで
す。どうしてこの私のように明るく社交的な美少女になれないのでしょう。上の方は何をやっているのでしょう。それにし
ても私がすぐ横にいるのに私に全く気付かないあのニブチンにも困ったものです。また百合の香りでもさせましょうか。
さて、そろそろ注文のホットコーヒーができそうですね。…あら?新しいお客さまが席に着いているようですね。先にご注
文を聞きましょう。
「いらっしゃいませ。ご注文は…、あっ」
「…これはどういうことかね?」
「あ…いえ…」
「我が生徒会はアルバイト禁止のはずだ。君ともあろう者がそんな基本的な規則を失念していたとは思えんが」
「も、申し訳ありません。でも…これには理由が、その」
「まあ、待て喜緑くん。」「えっ?」
「私としても今すぐ理由を聞きたいが、君は今仕事中だ。どんな職種であれ一度引き受けた仕事は最後までやり遂げねばな
らん。詳しい話は君の仕事が終わってからにしよう」
「は…はい会長。ありがとうございます」
「ふむ」
「…?」
「その会長ってのも今はナシにしよう。私は客としてここに来た。喜緑くん、君はエプロンが似合うウェイトレスとして注
文を聞きに来たのだろう?」
「そ、そうですね、解りました。…エヘン!それでは…、お客さま、ご注文は何になさいますか?」
「欧陽琲琲」
「…は?」
「欧陽琲琲」
「あのう、会長?」
「喜緑くん、君は公私の区別が出来ないのかね。私は今客だ」
「いえそれは存じておりますが…」
「ウェイトレスさん、今二回言ったからといって注文の品を二つ持ってくるようなベタなことはくれぐれもしないでくれよ?」
「…(これは二つ持ってこいという前フリなのでしょうか?)」
「どうした?ウェイトレスさん」
「申し訳ありませんお客さま。もう一度ご注文の品をおっしゃって頂けませんでしょうか?」
「なんだ聞き取れなかったのかね?」
「…申し訳ありません」
「欧陽琲琲」
「…チッ」
「!?ちょっとウェイトレスさん、今舌打ちしなかったか?」
「…まさか。空耳ですよ」
「本当か?」
「本当です」
「…」
「…(早くしろ)」
「欧陽アイス琲琲」
「…(あれ、あっさりハードル下げましたね)」
「欧陽アイスモーヒー」
「もう欧陽いらないでしょ…」
「どうした?ウェイトレスさん」
「あ、はいかしこまりました。しばらくお待ちください」
「くっくっ。喜緑くんのあの困惑の表情、なかなかの見物だったな。くく」
「お待たせしました…」
「おっ早かった…な?」
「ご注文の欧陽琲琲みっつ、欧陽アイス琲琲おひとつ、欧陽アイスモーヒーおひとつでございます」
「!!!」
「ごゆっくり、どうぞ」
「…」
「うふふ。会長のあの困惑の表情、なかなかの見物でしたね。あのくらいの情報改変お手のものですよ、うふふ。さて、い
いかげんホットコーヒーを運びましょうか」
「喜緑くん」
「なんでしょうか?」
「…君のバイトを許可しよう」
「なんでやねん」
…
「遅いねえ、ホットコーヒー」
…
終わり