「キョン。今年もすんごい文芸誌作って、生徒会のやつらをメッタメタにしてやるのよ!」  
ハルヒの目は夏の星空の様に爛々と輝いている。  
白鳥座見っけ。そっちのはカシオペア座か? その隣は…・・・  
「キョン。ぼさっとしてないでさっさと作業に入りなさい。今年はちゃんとした恋愛小説書きなさいよ」  
「へいへい」  
俺は視線をモニターに移した。しかしまた恋愛小説とはね。古泉論を支持すれば、ハルヒはいまだに俺の恋愛感に興味があるということになる。  
まったくいい迷惑だ。俺の拒否権はどこにいったのだろうね。どっかに落としちまったのかな。落としたとしたら去年の五月頃だろう。  
名前と連絡先を書いておけばよかったな。そうすれば、拾ってくれたのが親切な人だったら、届けてくれるなんてことも無きにしもあらずだったろう。  
とりあえず告知でもしておくか。  
――もし俺の物らしき「拒否権」を拾ったら、ぜひお知らせ下さい。お礼は弾みます――  
閑話休題。  
こんな無駄なことを考えてもしょうがない。ハルヒにネクタイを引っ張られる前に小説を書き上げなくちゃな。やれやれだ。  
それにしても恋愛小説ねぇ……。それと、生徒会をメッタメタだっけか?  
しょうがない、今回はこんな形でお茶を濁すとしよう。  
 
 
『遊園地デート』  
「キョン。なんでいきなりあたし達デートしているわけ?」  
「そうしないとこの小説が進まないからだよハルヒ。前にも言ったと思うが俺には恋愛経験なんてまったく無くてな。  
まあ元作品はまだ完結してないから、ひょっとしたら俺が過去に恋愛なんぞをしていたことになるかもしれん。が、今のところは皆無だな。」  
「佐々木さんは?」  
「あれはそういうものじゃないって『分裂』にしっかり書いてあるだろう。ちゃんと読んどけよ…・・・って見えてきたぞハルヒ」  
「あ、ほんとだ。……ふーん、なかなか良さげな遊園地ね」  
「そうだな。まあ退屈はしないだろう」  
 
俺とハルヒはさまざまなアトラクションに乗った。中でも気に入ったのは『コーヒーカップ』と『お化け屋敷』と『ジェットコースター』だ。  
が、詳しい描写は書かない。というか書けない。  
なぜなら俺は、ハルヒとのデートを詳細に思い描けるような、想像力豊かな頭は持ってないんでね。まったく、名無しのSS作者が羨ましいぜ。  
保管庫漁って適当にコピーアンドペーストしちまうかな……ってそれは流石にまずいか。  
 
「キョン。結構面白かったわね!」  
「そうだな。あのコーヒーカップって書いてあるプレート、字が丸くてどことなく朝比奈さんに似てたしな。」  
「そうそう。それにあのお化け屋敷。あの有希っぽかった丁寧な明朝体、字は綺麗なんだけど無機質でちょっと怖かったわね。って有希には悪いけど」  
「あー、あれはなんとなく不気味だったな。俺も背中が少しぞくっとしちまったぜ。」  
「あと極めつけはコーヒーカップね。何か乱暴な字なんだけど、ところどころ震えてるのよね。そうとうのビビリよね」  
「あー、あれは古泉の字だな。まぁよっぽど苦手なんだろうよ」  
「キョン。また今度二人で来ましょう!」  
「そうだな、またその内来ような」  
「約束よ! 破ったら死刑なんだから」  
「はいはい」  
 
俺とハルヒは指切りをし、手をつないで歩いた。眼前に見える『遊園地』の看板は、なかなかのデザインセンスだった。  
 
―おわり―  
 
「ハルヒー。こんなのでどうd「ふざけんな!」」  
 
 
―完―  
 

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