タタ。
まだ長門しかいない静かな部室に小さな音が響く。
何するでも無くぼうっとしていた俺はその音に興味を示した。
タタンタタ。
見れば長門が本を開いたまま膝に置き、指でページを軽く叩いていた。
タンタンタン、タタタタン、タ。
仮想パソコンキーボードでも叩いているのだろうか。そのリズムは不定な一定感で奏でられる。
タンタタンタン、タンタンタン、タタタン。
適度に叩き終え満足したのか、長門は本を手に取るといつも通り黙読を始め出した。
「その本は面白いか、長門。今は何読んでんだ?」
「わりと」
本を持ち上げタイトルを見せてくる。
さっきの行動からパソコンの本でも読んでいるのかと思っていたがどうも少し違ったようだ。
それにしても『二進数による情報伝達』とは何の冗談なんだか。
俺はヘッドホンを付け高速で信号を打ち続ける長門を想像して苦笑した。