ある日俺は、自分の後の席に座る、最も親しくしている女の子に呼び出された。
勘違いするな、彼女とは別に恋人どうしではないぞ。
――え?嘘をつくなって?
御存じのように、その女の子は校内でも5指に入る美人で、
――え?ノロケは止めろって?
幸運?なことに、彼女だけでなく、もう一人、ショートカットの女の子も一緒だ。
その女の子も顔は整っている方で、その子とも俺は友達として親しくしている。
――何、何?二股野郎って?そうじゃないぞ。
俺を呼び出した二人は顔は笑っているが、目が怒りに包まれていた。
そして
「さあ、今まで黙っていたけど、今日こそ年貢の納め時よ。
今から、あたしと有希のどっちを唯一永劫の恋人として選ぶかを決めなさい」
有希というのは、ショートカットの名前だ。
何故か俺が『眼鏡してない方がかわいいぞ』と言って以来眼鏡をしていない。
――惚れられて幸せだなだって?黙って聞いてくれないか
ところで、お前が二股かけている相手も有希だったな。偶然とは恐ろしい。
――え?二股じゃないって?お前の二股知らない奴はモグリなんだよ
「私を選ぶことを希望する」
「さあ、早く決めなさい」
俺はどっちとも友達としか見ていなくて、どう返事したら良いか判らなかった。
―――そんなことないだろ、遠くから見ている俺達にもバレバレだぞ、って?岡目八目という言葉を知らないのか
「もしかして、中学時代の彼女にまだ未練があるの?自分で振っといて。この女たらし」
「あいつはただの友達で、」
―――お前らの中学時代のバカップルぶりは有名だったぞ、毎日やりまくってたろ、って?違う、そんなんじゃない
「嘘はいけない」
「この嘘つき。彼女いまだに恋人いないのはあんたに未練があるからじゃないの!」
しかし、喜緑さんが怒ると、口調があのDQN女と同じになるのは何かの仕様だろうか?
すったもんだの末、中学時代の彼女も入れて、後日4人で話し合うことになった。
生徒会書記の喜緑さんも、会計の有希さんも、昔の彼女も全員怖くて、正直ずっと付き合う自信が無い。
それに、ふられた奴等がナイフで刺しそうな雰囲気だし。
喜緑さんのフワフワした髪は高得点だが、一番怖いからなー。
とうしようか
・・・・・・
「というわけで、キョン。
校内でも超有名な二股野郎のお前に知恵を借りたくてな」
俺は悩みを装ったノロケと自慢を聞かされて、怒り心頭だ
「おい、不良生徒会会長。モテ自慢なら余所でやれ。
二股どころか、女の子とお付き合いすらしたことの無い俺への、新手の嫌がらせか?」
会長はまるまる数分間、蝉の抜けガラを見たシャミセンの顔をした。
「もしかして、お前は天然か?どおりで、、、」
ノックして生徒会書記と会計が入って来る。
「会長、今日こそ答を聞かせてもらいますよ」
「えーと、明日では駄目かな?」
「中学時代の彼女も来ている。今日しかない」
「今日は喜緑さん。お久しぶりです」
「キョン君。できれば長門さんか朝倉さんを選んで下さいね。それじゃ、失礼しますね」
「お前も、うまく切り抜けろよな。幸運を祈る」
意味不明の言葉を残して喜緑さんと会長達は去って行った。
しばらく会長室でダベッていると古泉がやって来た。
しばらく見てなかったような気がするが、何かひどくやつれている。
「大丈夫か?古泉。もしかして閉鎖空間?」
「それは今おとなしいです。
ただこの前、森さん達に会って、、、、、」
森さん達、機関の数人に告白され、誰かを選ぶ必要が出たらしい。
「モテモテ自慢は余所でやれ、俺に嫌がらせするのが最近の流行りか?おい」
「あなたに比べれば、僕なんかかわいいものですよ」
その時、ハルヒ達の声がした。朝比奈さんと長門もいる。
「キョ―ン。やっと見つけたわ。今すぐ来なさい」
相変わらず不必要に声がでかいな。
「佐々木さん達も待っているので急いで下さい」
言われなくても急いで行きますよ。マイエンジェル朝比奈さん。
「朝倉涼子も復活した・・」
「・・・おい古泉、行くぞ」
「古泉君は良いわ。キョンだけ来なさい」
えーと、えーと
なあ古泉、生命の危機をひしひしと感じるのは気のせいか?
団長様は、フリーザを目にしたスーパーサイヤ人カカロットのような笑みを浮かべて言った。
「今日こそ決着つけるわよ」
(おしまい)