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気分はそうブレイバーレイディー
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気分はそうブレイバーレイディー、
―――熱い魂燃やすのよ。
起きてすぐ斜め30度に曲がる側転を行いつつ窓を開けたあたしは、ベランダに立てていたトーテムポールとベランダに立っていた喜緑さんの間から日の光が差し込んでくるのを幻視した。
側転を37度にしておくか逆回転にしていたら喜緑さんは助かったのに………。
太陽の、光で彼女が溶けたから、今日の前日はナイフ記念日。
うん、これで喜緑さんも報われるわね。
そう思い、登校しようとしたあたしだが、トーテムポールの角度が気に入らないのでやっぱり今日は休む事にする。
そこであたしは気付いた!
実は今はまだ深夜のミッドナイトで、太陽の光と思っていたのはトーテムポールの目が光っていただけだったのだ!
しかもよく見ると、これはトーテムポールではなくチュパカブラではないか!
おのれチュッパー、喜緑さんの敵!
とりあえず江戸の敵はスリランカあたりの明日にでもとることにして、今日はデネブを目指して寝るわ、夜ってそういうものだしね。
気分はああブレイバーレイディー、
―――眠れぬ夜に決めた事。
どうにも眠れないので風船ガムで東京タワーを作る方法を模索していたら、炊飯ジャーに笑われたような気がしたので、シュレディンガーの条件反射で月に向かって真上にナイフを投げてみる。
落ちてきたナイフはあたしの右手を2倍にしてくれた。これでチョコレートで富士山を作る野望が1歩バク転したわね。
―――計算どおりよ、当然ね!
希望あふれる明日に向けて、さあ寝ましょうと思ったら布団が赤い液体でビチョビチョだった。これだと仰向けに寝る事が出来ないじゃない! ………うつ伏せなら寝れるけど。
―――計算違いよ、残念ね!
仕方ないので長門さんと将棋をしながら2番枠の桂馬に全財産をつぎ込んだ時、ノストラダムスの大予言が的中した事に気付いたので、試合をオセロに変更する事にした。
わたしが四隅を取ることが出来れば、予言ははずれ、3丁目の山田さんの円形脱毛症も治るのよ。
それは、世界と天秤にかけても、遜色ないほどブレイバー。
でも長門さんは強い。試合相手をキョンくんに代えてもいいのだけれど、それで治るのはアフリカの神楽さん宅のガスコンロだけだ。
それは、宇宙と天秤にかけても、お釣りがくるほどブレイバー。
『あら、だったら涼宮さんを刺激したらいいじゃない』と、気付いた今日がナイフ記念日。………喜緑さんも浮かばれないわね。
そんなこんなで決めて決定した決心を、即決して今発表します。
愛しのあなたの下駄箱へ、届けあたしのブレイバー。
気分はついにブレイバーレイディー、
―――振り向く事はできないの。
教室の扉を開けて、キョンくんっぽいキョンくんが入ってきたわ。
ようこそ、ここは通天閣、腐って終わって始まった、そんなあたしのマイセルフ。
―――あれ?
『腐って』という事はこの道はいつか来た道?
『終わって』という事はやっぱりわたしは正しかった?
『始まった』という事はそれでもわたしは間違った?
でもまあ夕日が差し込んできてる事だし、どうでもいい事よね。あたしはこう見えて過去を5分5分の確立でしか振り返らない女なの。これが朝日だったら絶望的だったけどね。
とりあえずキョンくんとの勝負はチェスにするわ。だって、それがあたしの生きる道なんだもの。
だから先攻後攻を決めるために、あたしはキョンくんを殺すわね。
あなたが死ねばわたしが先行、わたしが殺せばあなたが先行、我ながらブリリアントなローカルルールね。
あたしがナイフでキョンくんの腕を三枚におろし、キャンディーで人工衛星を作れるようにしようとした時、長門さんがあたしのナイフを素手で掴み取ったの。
凄く情熱的な求愛行動ね、涼子もう困っちゃう!
気分はいつもブレイバーレイディー、
―――犬に咬まれても心は錦。
長門さんの気持ちはとても嬉しい。
―――嬉しいから悲しいわ。
思わず北京原人を進化させてしまいそうよ。
―――進化したから退化するわ。
だけどあたしはブレイバー。
―――ブレイバーだから殺すわ。
その気持ちには応えられない!
―――応えられないから殺されるわ。
以上の三段論法による帰結法からあたしは長門さんの胸を貫き、長門さんはあたしを分解するのね。
仕方ないか、これが火星のゴミ捨て場に書かれてある法則だものね。
あーあ、結局あたしにはアヴァロンの八百屋さんをリストラから救い、トラリスにする事は出来なかったみたいね。これがバックアップの限界かしら。
世界各国へ左遷され、宇宙各銀河へと右遷されるあたしのカケラ達、全部集めると一つだけ願いが木彫りの熊に変化するわよ、人生と天然物の何かをかけて集めなさいね。
それでは世界中でシャボン玉を突付いて割っている同志達へ、最後に長文と見せかけた一言を。
「じゃあね」
気分は結局ブレイバーレイディー、
―――それでは皆さんマタアイマショウ。