「まぁ、物事って言うのは、何にしてもずばっと自分で決めることが大事よね。その点あたしはいつでも何でもずばっと一人で全部決めて  
いるんだから自分で言うのもなんだけど大したもんだわ。流石はSOS団の超団長よね! それに比べたらキョンなんて優柔不断の神祖みたいな  
もんなんだから、ほんっとあたしが色々決めてあげないとダメなのよね」  
「お前は色々失礼なことを言いすぎだ」  
「何よー本当のことじゃない」  
 放課後、私達はいつもの様にキョン君、涼宮さん、長門さん、古泉君のメンバーでいろんなお話をしています。  
 で、今日はさっきみたいなお話になったんですけど…。  
「そうよね? みくるちゃん、有希、古泉君も」  
「ひゃい?」  
 私達を見て同意を求める涼宮さん。  
 でも…。  
 私達は、お互いの顔を見て、しばらくの間沈黙しちゃいました。  
「な、何よ? そこは深く頷くところでしょ?」  
 そうすればいいんですけど…。  
 でも…。  
 
 
 
 ある晴れた日の市街探索の日の事でした。  
 自由時間が出来たので、私はデパートの紅茶売り場で新しい紅茶を探して悩んでいました。  
「う〜ん、どの紅茶がいいんでしょう…?」  
 たまにこういうお店に来ると、どうしてもみんな美味しそうに見えて悩んじゃいます。  
「みくるちゃん! そんなんじゃダメよ! こういう事はずばっと決めなくちゃ!」  
 突然、涼宮さんが人差し指をずばっと突き立てて言いました。  
 いつ見ても心臓に悪いです。  
「ふひゃい! そ、そうですね…ええと…ええと…」  
 はわわ! ええと、どこを見ていたんでしょう? あれ? あれれ?  
「ああもう、見ていられないわ。これと、これと、これと!」  
「すす、涼宮さん、そんな三つもいっぺんには…」  
 涼宮さんは目に入った紅茶を片っ端から三つ手に取りました。  
 しゅごいけつだんりょくでしゅけど、そんなにかえましぇーん。  
「キョン! あんたこの中から一つ選びなさい!」  
 …はえ?  
「おいおい、いきなりなんだ?」  
 キョン君がまた困った顔で言っています。  
 いつも大変ですね。…私もですけど。  
「いいから選びなさい!」  
 対して涼宮さんは我関せずとキョン君の眼前に紅茶を突き出します。  
「紅茶か? んー…それじゃ、これだな」  
 キョン君が一つ決めました。すると。  
「はい! これよ!」  
 涼宮さんは残り2つをキョン君に押しつけ、キョン君が決めた紅茶を私に渡しました。  
「あ、ありがとうございましゅ」  
「何か迷ったらあたしに言うのよ!」  
 涼宮さんは得意げに言ってしまいました。  
「……」  
「……」  
 私とキョン君はお互いを見て、なんと言うか…やれやれ、と力なく笑いました。  
「キョーン! なにみくるちゃんにちょっかい出してんのよ! あんたはこっち来なさい!」  
「…やれやれ」  
 キョン君は私に向かって本家『やれやれ』を出してから、行っちゃいましたとさ。  
 お疲れ様です。  
 
 
 …二週間前の市街探索、その日は午後二時十三分から、私と彼、他三名で珍しく図書館に行くことになった。  
 有機生命体には物質から直接受ける影響による感情の変化以外に、目に見えない、実際には存在しない『雰囲気』から影響を受ける  
精神状態の変化が確認されている。  
 私にとって図書館は視覚から得られる情報を無尽蔵に受け取れる場所という意味以外を持たなかったが、彼が隣にいる事によって  
それとは別の…一種のエラーとも思えるが、精神的なくすぐったさと落ち着かない気持ち、そして多分…嬉しさと言う感情を感じる。  
 以前ならエラーとして消去していた。  
 でも、この『感情』は彼と出会い、こうして二人っきりで図書館に来た時に顕著に私の精神に現れ、『心』に影響を与える。  
 だがそれは決して不快でも邪魔でもない。  
 私は、この『感情』を…大切にしたい、と思う。  
 だからだろうか。  
 図書館に来ているのに、なかなか読む本が決まらない。  
 どうしても視線が時折彼を追ってしまう。  
 そんな時。  
「あら、まだ読む本を決めていないの?」  
 涼宮ハルヒが近づいてきた。  
 そういえば彼以外のSOS団も一緒なのだった。  
 残念。  
「ふーん、相変わらず難しそうな本の棚ね。でも、早く決めないと時間が来ちゃうわよ」  
「……」  
 私は視線を本棚に戻し、本を探した。  
「ふーん、珍しいわね。それなら、あたしが本をえらんであげるわ」  
 涼宮ハルヒが胸を叩いて言う。  
 …別にいいんだけど。  
「キョン! ちょっと!」  
 …図書館では静かに。  
「大声を出すなハルヒ。何だよ?」  
「これとこれとこれとこれなら、どの本が有希に合う?」  
「…どれも同じに見えるが…これはどうだ?」  
 そう言って彼が取ってくれた本は、幸いまだ見たことのない本。  
「ありがとう…」  
「ふふん、あたしにかかればこんなもんよ」  
 …私は彼に言った。  
「キョン、ちょっとこっち来なさい! 上の本が届かないから取って!」  
「踏み台使えよ…」  
 二人は行ってしまった。  
 …今度は確実に二人きりで来よう。  
 
 
 
「さて、どこにしましょうか…」  
「何? 古泉君、今度はどんな不思議を提供してくれるのかしら?」  
 とある日のSOS団部室。  
 僕がパンフレットをいくつか広げていると、涼宮さんが嬉々とした表情で問いかけてきました。  
「ええ、僕の親戚の叔父や知り合いが、偶然にも同時期にいくつかの施設を作りましてね。記念に僕らを招待してくれるらしいんです。  
贅沢な悩みですが、どこが楽しそうかと思いましてね」  
「ふーん、全部順番ってわけには…あ、ダメ? それじゃ仕方ないわね。でも古泉君、副団長たるものこういう楽しみは悩んじゃダメだわ」  
「すいません。どうにも難しくて」  
「まぁ、色々魅力があると悩むのは当然よね。でも、こういうのは直感が大切なのよ! よーし! あたしがさいっこうの選択で悩みに  
終止符を打ってあげるわ!」  
「それはそれは。助かります」  
「キョン! ちょっと!」  
 …あれ?  
「何だよ。いまサイトの更新中だぞ」  
「そんなのいつでもいいのよ。団長命令よ! ちょっと来なさい!」  
 彼がため息をついて団長席からこちらに来ます。  
「で、何だ?」  
「どこに行きたい?」  
「あ? 何だこれ? て言うかこういうのは…」  
「あんたがどこに行きたいかって聞いているのよ! 別に聞くだけなんだからさっさと答えなさい! そのあとどうせあたしが  
あんたの決めたハズレじゃなくって、本命をきっちり決めてあげるから!」  
「どこまで不躾かお前は」  
「いいから!」  
「分かったよ。それじゃ…ふむ、ここはなかなか面白そうだな。よし、俺はこれだ」  
 と、涼宮さんは彼の手にしたパンフレットをぱっと奪い取り、じっくりと眺めます。  
「…平凡ね」  
「悪かったな。どうせお前がばしっと本命を決めるんだろ。俺はサイト更新の続きをするぞ」  
「ま、いいわ。さっさとやりなさい」  
「やれやれ」  
 彼はお得意のポーズをとってから団長席に戻りました。  
 その後涼宮さんと言えば…。  
 先ほど彼が選んだパンフレットを手から離さず、他のパンフレットを見ている様な気はしますが視線は遠くです。  
 どうやら、もう彼の選んだパンフレットの場所で何をするか頭の中であれこれ考えているようですね。  
 
 
 
「……」  
「……」  
「……」  
「な、何よ。なんでみんな、えー? みたいな顔する訳?」  
 涼宮さんが珍しく戸惑っています。  
「みんなには、思い当たる節があるんじゃないのか?」  
 キョン君が言います。ええ、その通りなんです。  
 きっと気付かないし気付いても認めないんでしょうけど。  
「失礼ねー! 生まれてこの方人の意見なんか頼りにしたこと無いのよ! 自分の意志だけで生きて来ているんだから! ねぇ! キョン!」  
「……」  
「ちょっと! うんって言いなさいよ! あんたがうんっていえばいいのよ! あんたが!」  
「分かった分かった。そうだな。お前は自分の意志で全部決めているな」  
「ふふん、そうよ! キョンの言うとおりなのよ! あたしは自分の意志で全部きめているんだから! 分かっているじゃない。キョンが言うとおりね!」  
 とっても満足そうにキョン君に微笑む涼宮さん。  
 えーと…。  
 とりあえず…。  
「ご、ごちしょうしゃまです」  
「…ごちそうさま」  
「ごちそうさまです」  
「へ?」  
 涼宮さんは何? と言う顔で私達を見ていましたとさ。  
 
 
おわり  
 

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