「ん……ちゅ、ん……」  
「……っく……」  
 
――”くちゅ……、ぴちゃ……”  
 
 湿った水音と微かな二人の息遣いが、人気のなくなった部室から漏れ聞こえている。窓から差し込む日の光はとうに茜色へと変わり、学内へと残っている部活組の生徒の喧騒も納まりつつある頃だった。  
 男――キョンは普段団長であるハルヒが腰掛けている椅子へと腰をおろしており、逆には女――ハルヒはかしずくようにキョンの股座へと体を割り込ませ、小刻みに頭を上下させている。  
 左手は根元周辺に固定させて、右手は太ももを愛撫するように、熱を移すようにゆっくりと擦る。  
 
「ん、んん……ぷぁっ……どう? 気持ち、いい?」  
「ああ……」  
 
 規則的に上下していた頭がゆっくりとあがり、ちゅば、という粘っこい音を立て亀頭から離れていく。口と亀頭には銀色の橋が架かり、暫くの間繋がっていたが、地面へとひかれるように落ちて行く。  
 その間にハルヒは、太ももを愛撫していた右手を袋へと移動させ、一なでした後、親指でくすぐるように裏スジを揉み込む。  
 
「ハルヒ……」  
 
 キョンはそういって右手をハルヒの後頭部へ回し、催促するように軽く引き寄せる。  
 その力加減は拒否しようと思えば容易に解けそうな微々たるものだったが、ハルヒはそのキョンの行為を受け入れるようにまた顔を亀頭へ近づけて、  
 
――”れろっ……”  
 
「ぅあ……っ」  
 
 キョンはたまらずに声を上げる。  
 一度大きく舐め上げて反応をうかがうと、今度は焦らすようにチロチロと蛇のように小刻みにカリの周辺を突付いていく。  
   
「ふふ……」  
 
 楽しそうに笑うハルヒ。  
 その顔はこういうのもいいでしょ? という悪戯めいたものが伺える。  
 口技というのは女性上位の行為であるため、ハルヒの性格からすれば男を責める、攻撃的な立ち位置は得意分野なのかもしれない。  
   
「……うまくなったな」  
 
 その一連の手管を受けたキョンは感慨深くそう漏らす。  
 
「……アンタが仕込んだんでしょ?」  
 
 眉を顰め上目遣いに顔を覗き込むハルヒ。まあ、確かにそうだが……と、キョンはバツの悪そうに苦笑いした。  
 ハルヒはもともと性の知識が豊富だったとはいえない女であった。だが、何でも器用にこなすハルヒは行為を重ねるごとに確実に男のツボというものを理解し、回数をこなすばこなすほど与える快楽を底上げしていった。  
 最初はおっかなびっくりだったのにな、とキョンは思いをはせる。  
 
「……ね、そろそろイキたいんじゃない?」  
 
――”しゅ、しゅ……”  
 
 会話の最中にも左手を小刻みに扱き、右手は睾丸を撫で回していたため、キョンのペニスは痙攣するようにひくひくと脈打っていた。  
 
「何処に出したい? 顔? 口? それとも胸?」  
 
 動きを休ませすにそう口を開く。  
 暗に何も要求しなければ、このまま手で射精をさせてしまうわよ、なんて含ませているのだろう。徐々にペニスを擦る速度を上げている。  
   
「…………」  
「……ねぇ、どこに…出したいの?」  
 
 あくまでキョンの口から要求を聞きだすつもりなのか、速度を上げていた手の動きは段々と緩慢になっていく。  
 
「………………口で」  
「……ふふ、なぁに?」  
 
 聞こえなかったはずはない。現にボソリと要求を口にした後、ハルヒは口を半開きにあけ、舌をこれ見よがしにいやらしく動かし挑発している。  
 
「……口に出したい」  
「ん〜?」  
「……ハルヒ……っ」  
 
 遂に我慢が出来なくなったキョンは、切なげに声を上げる。  
 自分の名前をそんな風に呼ばれたハルヒは、体をふるふると震わせ、  
   
「―――全部飲んであげる」  
   
――”ちゅうぅ………っ!”  
   
「くぁっ!」  
 
 突然の吸い上げ。  
 暖かいぬめりと共に、強烈なバキューム。  
   
「ハルヒ……ハルヒ……っ!」  
「ん、ん……! ちゅ、ちゅぶ……、うん、ん……あむっ」  
   
―――”ぐちゅ…、ぐちゅ…”  
 
 口の中で舌を思い切り掻き回す。頬はくぼんだり膨らんだりし、校内に溜まった唾液が撹拌されるいやらしい水音が部屋内へと大きく響き渡っていく。  
 
「〜〜〜〜っ!」  
 
 キョンは言葉にならない声を上げながら、あまりの快楽に顔を歪めた。  
   
――”ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ”   
 
 これほど激しい動きをしているのに、全く苦痛が無い。歯を当てる事も無くかといって唇で歯を覆っているわけではない。  
 フェラチオでありがちなのは唇を内側に伸ばして歯が当たらないようにする行為だが、それは男性からすればあまり気持ちのいい行為ではないのだ。唇に歯が当たっていると感触が硬くなり、快楽は半減するからだ。  
 だが今ハルヒが行っているのは唇を突き出し、柔らかい部分をぬめる様に滑らし愛撫しながら口を開き歯を当てないようにしている。  
 自然と空気が混ざり密着間が薄れるのだが、そこはハルヒの工夫が生かされており、粘つく唾液で口内を埋め尽くし、舌でその唾液を撹拌しながら愛撫しているのだ。暖かくぬめった唾液の奔流がペニスをぐるぐると回るように泳いでいる。  
 気持ちよくない、はずがない。  
 
「ハ、ルヒ……っ!」  
「ん……れろ、あ……む」  
 
 限界が近い。  
 両方ともそれを悟っている。  
   
「ん……うん、んん」  
 
 ハルヒはしごいていた左手と右手を解放してキョンの腰へと回す。  
 そのまま此方へ引き寄せるように、その勢いで更に速度を上げた。  
   
「ハルヒ……! もう……っ!」  
 
――”ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ”  
 
「出る……っ!」  
「んん……っ!」  
 
 射精の瞬間、ハルヒは喉奥の限界までペニスを飲み込み、思いっきり吸い上げた。  
   
"ドクッ、ドク――ッ!"  
   
「ん―――っ!」  
 
 口内解放される精。喉奥に直接注ぎ込むような激しい奔流。  
   
「ぅん、ん、んん……」  
 
―――”ごくっ……ごくっ……”   
   
 出されるたびにそのまま胃へと喉を鳴らし流し込む。  
 あまりの量に咽そうになるが、  
   
「ん……」  
 
 けして口を離そうとせず、口からも溢さずに全て口で受け止めていく。涙目になりながらも心配は要らないとばかりに腰に回っていた手を背中へと移し、優しく上下に撫でていく。強い愛情が伺える行為だ。  
   
――”ごくり……っ”   
     
 最後の一滴まで飲み干したハルヒは、ゆっくりと口を離して行き、  
   
「ん……はぁ……」    
    
 唇を離し、大きく一息つくと口周りの汚れた残滓を舌で舐め取っていく。  
 本当に全部、飲み干したのだ。  
   
「…………口の中が苦いわ」  
 
 開口一番にそうハルヒは苦笑いを浮かべた。  
 

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