ようやく一仕事を終えて俺は背筋を伸ばす。こんな時ぐらいだろう、自分で自分を褒め称えるのは。
それにしても……ハルヒだけでなくキョンまで勝手に動き出すとは計算外だった。まさか長門がそのせいで
「ダメ」
想いに耽っていた俺に背後から声が掛かる。起伏の少ない淡々とした声は、しかし身に覚えのないものだった。
というよりもこの仕事場にいるのは俺一人のはずであり、俺以外の声が聞こえるという事自体ありえない事だった。
「あなたの記した展開は認められない。改編を申請する」
耳に心地良く響く静かでいて透き通った声。俺は唐突にその声の主に思い当たった。
だがそれは同時にありえない事でもある。まさか……そんなバカな。
覚悟を決めてゆっくりと後ろを振り向くと、そこには今さっき書き上げた原稿の登場人物が立っていた。
様々なメディアで何度も見た青襟の制服を纏い、ショートヘアをなびかせた属性・宇宙人の少女。
「改編を」
長門はもう一度だけ呟くと作者たる俺へとゆっくり近付いてきた……。
もちろん続かない。