頭が凄まじく濛昧としていて、無闇に身体が熱かった。
今解ることと言えば、俺たちは孤島にやって来たってことと、夕食が済んだことくらいだ。心臓が縛鎖を解き放って体内でのた打ち回ってるんじゃないかってくらいに、狂乱とした衝動がデタラメに迸っていた。
「あ…………うん、うぁあん、あん、あっ、あっ、キョン!」
快感の潮流が、上下する周期と相まって一点から全体に行き渡る。脳髄が解けたバターみたいに論理的な思考力を融解し、俺はただ目の前にいる女を抱きしめていた。
別荘の中の一部屋に俺たちはいるはずだったが、あんまり真っ暗で何も視認できない。どうやって俺たちはここに入ってきたんだったか……。けどそんなこともどうでもいい。ひたすらに気持ちいい。
一生続いて欲しいとすら思う時間だった。
「うぁっ、ふぅん、あっ、……あぁあっ!」
接合している相手――ハルヒも殊更に上気して、嬌声を上げ続けていた。間違いなくアルコールの仕業だった。初心者とはいえ、俺もハルヒも酒に弱すぎた。
「キョン…………んちゅ、ちゅっ。ちゅる……」
「……ぅあ」
あまりに官能的な接吻だった。肉感をたっぷりと残しつつも、まんべんなく潤っている団長の唇は、一瞬触れただけでネオジム磁石のように強力に吸い付き、吸い付かれて離れない。固体を保っているのが
不思議なほどにぷるっとしていて、俺は何度も何度も咥えては嘗め、嘗めては咥えて、性の象徴のような感触を弄び愉しんだ。
「キョン…………。好き……、大好き…………」
俺もだ、という代わりに、両手で体位の変移を促した。擦った肌はどこまでも瑞々しく、それだけで指先が悦びに呼応して痙攣しそうになる。何て気持ちがいいのだろう。
俺はハルヒの臀部を軽く持ち上げるようにして引っ張り、既にくじゅぐじゅになっている愚息をゆっくり挿入しようとする。
「んふぁあっ! 痛いっ! きょ……はや……んんっ……!!」
「……すま……ん」
温かく柔らかく、膨張し続ける宇宙のように神秘的な感触があった。
「ひもち……んはぁあ…………はん」
日頃の振る舞いからはあるまじき音色がそこにあった。淫靡で、猥褻で、それでいてどこか優しく、懐かしいような。
「きょん………………すきっ、すき……すき…………」
ハルヒの声に応えるように、少しずつ、少しずつ腰を動かす。
ぴゅくっ、ぴゅるるっ。
この後どうするのか……などという思考が頭をよぎって通りすぎ、そのまま帰って来なかった。どうでもいいじゃないか。そんなの。俺はハルヒが好きだ。こんな状態でしか心情吐露できないってのも情けないが、
この幸福感は何物にも代え難い。間違いなく、今まで生きてきて最も喜べる時間だった。閉鎖空間で握った手と、最後の口づけを思い出す。……帰って来てよかった。もしあのままだったら、悦楽に耽溺するような
この時間は存在していないのだろう。そこがたとえ二人きりの世界だったとしても。
「ひも……きもちいぃ……んぁ……はぁん」
後背位でベットにしなだれ、シーツとハルヒの上体の間に両手を入れて乳房をまさぐった。一体になったまま、どこへ行くとも知らぬ船旅をするように。
「だめ…………ひぃよぉ……んあぁん、だっ……はぁああん」
「好きだ…………。ハルヒ……っ」
押しては返すその様は波濤そのものだった。全身の血流がすべてハルヒを経由して循環し、このまま天頂まで登りつめてしまいそうになる。互いに体液を惜しみなく交え、すぐに猥雑な効果音が室内を跳ねる。
ぴちゅっ、くちゅっ、じゅっ、じゅじゅっ。
「んぁっ、んっ、あぁああっ! んああああああっ!」
感受性が豊かなのか、先にハルヒが最初の絶頂を向かえる。避けようもないほど大量の愛液が溢れて、とろとろとシーツを汚染する。それは確かに今俺たちがこの時を共有している証だった。
力が抜け始め、俺は偃臥するハルヒに体重の一部を預ける格好となる。
「んひゃぁああん! だめ…………だめぇえええっ……あはあああああん!!」
びゅくるっ、ごぷっ、ぶぼぼっ、びゅるるるっ!
ハルヒと身体を密着させた瞬間に、俺も快楽の極みに到達する。
「はぁ……あぁ…………っく。はぁ……はぁ……」
抑止しきれなかった唾液がハルヒのうなじにだらしなく落ちた。そのまま俺たちは親子ガメの真似みたいにして重なり潰れる。
「「あぁっ」」
それで飽き足らず、なおも互いの身体の部位を五指や舌。そのほか触覚を有するあらゆる箇所で探り当てては愛撫し、下を這わせ、時に甘噛みし、キスして、
まるで両生類になったかのように体表面を愛液まみれにする。その合間、感情を体現するように精子がぴゅるっ、ぴゅくっとオマケを放つ。うちひとつはハルヒが
一物をフェラしている間に出てきた。
「ひゃ……きょんがいっぱい…………」
陶然と呟くハルヒがどこまでも愛おしかった。耳元にかかった髪を撫でると、無垢な少女そのままの表情で破願する。
「すき…………」
俺はハルヒをぬいぐるみのように愛玩した。バニースーツを着たときなんかに垣間見てしまった丘陵は、視覚に違わず豊富な量感を伴っていて、揉むほどに手
応えを増すように、それはそれはいやらしかった。こらえ性のない俺のペニスは、ハルヒが感応の声を発するたびにひゅるひゅると残弾を流出した。
それから何時間戯れていたのか解らない。
気がつけば朝になっていて、俺は一切の記憶を喪失していたようだ。
(了)