ある日の夕食後。  
俺はリビングで頬杖をつきながら、血湧き肉躍るというほど入れ込んでいるわけではないが  
途中で視聴を中断するのは少々躊躇われるといった内容の、  
まぁ普通に面白いテレビ番組を眺めていた。  
   
「ねえキョン君」  
 なんだ妹よ、とは返事しなかった。俺ほどにテレビ番組の内容に関心を持っては  
いないらしい妹は、しばらく視界の中には捉えていないがシャミセンと戯れていたはず。  
 ブラウン管(残念ながらまだ液晶でもプラズマでもない)の中では男達の挑戦を綴った  
ドキュメンタリーがクライマックスを迎えようとしている。番組冒頭で役者ではない  
現実の彼らがスタジオに登場してにこやかに当時を振り返っていたので  
事業が成功するのは9割9分わかっているのだが、それでも応援したくなっている俺がいる。  
 とにかく、話なら後にして欲しい気分だ。それくらい察しろ妹。  
   
「キョン君は誰と付き合ってるの?」  
 母に『今日の夜ご飯なに?』と聞くみたいな調子で、妹はそんなことを聞いてきた。  
「は?」  
 反射的な返答。その疑問符を含めてたった2文字の台詞には、『なぜ急にそんな事を  
聞いてくる?』『俺が今現在誰とも付き合っていないことぐらいわからないのか?』  
『俺が誰かと男女交際をしていると判断した理由は何だ?』等々の多彩な意味が  
含まれている。だが、妹はそんな微妙なニュアンスを受け取ってはくれなかった。  
   
「ハルにゃん?」  
「待て、どこをどう解釈したらそうなるんだ」  
 なぜハルヒが第一候補なんだ。純粋な疑問である。俺とハルヒが付き合うとか、  
まかり間違っても有り得ない上に御免被りたい。そんな自明の理よりもなぜ俺の妹が  
俺とハルヒが付き合っているかもしれない等という思考に至ったかの方が気になる。  
   
「じゃあみくるちゃん?」  
「いや、付き合ってない」  
 俺の質問には答えず、妹は続ける。朝比奈さんか。そうだったら実に望ましい。  
望ましいどころかバラ色の人生だ。だがハルヒじゃあるまいし世の中がそんなに  
自分に都合良く回ってくれると思えるほど楽観主義者ではない。  
   
「なら有希ちゃん?」  
「違う」  
 長門と付き合う……ちょっと想像できない。いや、交際してる様自体は  
想像できなくもないが、現実的にその状況に至るはずがない。ハルヒとよりは  
ずっとあり得る気もするが。  
   
「もしかして古泉くん?」  
「ふざけるな」  
 激しく脱力した。なぜ奴が第四候補なんだ。というか第四候補まで来て  
なぜ急に俺が同性愛者である可能性を考慮するんだ。天地がひっくり返っても  
あり得ん。世界が作り替えられても――想像して背筋が寒くなったので止める。  
   
「じゃあ誰と付き合ってるの?」  
「そもそも前提が間違ってる。俺は誰とも付き合ってない」  
 答えると、妹は少し黙り込んだ。最初からその結論に至って欲しいものだ。  
 何を考えてこんな質問をしてきたんだろう。それが気になってしまい、  
視線はテレビへ向けたまま意識だけは黙っている妹へ向く。  
   
「――じゃあ、」  
 しばしの沈黙の後、妹は珍しくためらいがちに口を開いた。  
「誰が好きなの?」  
   
   
「…………さあな」  
 答えると、妹は「そう」と長門みたいな返事をして、それ以後質問してくる事はなかった。  
 テレビからはコブシの効いたエンディングテーマが流れていた。  
 

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