その日、俺は掃除当番のせいで部室へ行くのが少し遅くなった。  
蒸し暑くてイライラする日で、俺を癒してくれる天使の笑顔が早く見たくて  
扉をノックすることすら忘れていた。  
「みくるちゃん、いつもいつもご苦労様。たまにはあたしがお茶をいれてあげるわ」  
「わあ。涼宮さん、ありがとうございます」  
飛び込んできたのは普通なら絶対見られないであろう光景だった。  
ハルヒが朝比奈さんにお茶を?鬼のかく乱か?違う。  
俺の経験と五感が危険だと告げている。  
「朝比奈さん!やめ―――」  
「ごく、ごく、ごく・・・ぷはぁっ。んんーっ、冷たくて美味し・・・い・・・」  
手からグラスが滑り落ち、直後に朝比奈さんの綺麗な体が床に崩れた。  
 
直後、ハルヒは扉に手をかけたまま唖然としている俺に気付いた。  
「キョン、いい所に来たわね。ふふ、どう?みくるちゃんの可愛い寝姿」  
「ハルヒ、お前・・・また朝比奈さんにトラウマを植え付けるのか?」  
「トラウマ?何を言ってるのか分からないわ」  
「ならどうしてこんな・・・薬を使って眠らせるようなマネを」  
一瞬の間を置いてハルヒは言った。  
「それはね、みくるちゃんが可愛いからよ。キョン、あんたはメイド服でパタパタ  
動き回るみくるちゃんを見て何も感じなかった?そんなはずないわよね。  
いっつも鼻の下を伸ばしてたわよね。知ってるんだから。でもそれだけ?  
・・・思春期の男が可愛い女の子を見て、それだけで終わるはずはないわ。  
あんたはみくるちゃんを。あの大きな胸を・・・小さな体を・・・心の中で汚した事が  
あるはずよ。あたしはそう。あたしはみくるちゃんを何度も汚した。  
何度も何度も心の中のみくるちゃんを・・・でももう限界。我慢できない・・・  
多分、この暑さがいけないんだわ」  
 
ハルヒは一気に言い終わると、寝ている朝比奈さんを  
後ろから抱き起こし、胸の膨らみに手を伸ばした。  
はじめは円形に優しく撫でまわし、次にまるで幼児のように執拗に揉みだした。  
次第に眠っているはずの朝比奈さんの頬が薄桃色に染まってきた。  
「ん・・・んぅ・・・ぁ・・・」  
その愛らしい口からは小さく、しかし確実に悩ましい声が漏れ出した。  
俺は完全に目を奪わていた。  
「キョン。みくるちゃんの胸、柔らかくて気持ちいいわ・・・あんたもしてみる?」  
唐突なハルヒの言葉。  
「なっ・・・それは・・・」  
「平気よ。もう始めちゃっているんだし、それに眠っているんだから。  
ね、したいでしょ?・・・ほら、代わってあげるわ」  
ハルヒは胸を弄るのをやめ、朝比奈さんが倒れないよう支えながら横に動いた。  
俺には、この悪魔の甘美な誘惑を撥ね退けられなかった。  
 
「は・・・ぁ・・・」  
俺が手に握ったり、緩めたりするたびに朝比奈さんは違う喘ぎを発するので、  
まるでとても艶かしい楽器を操っているかのように夢中で揉み続けた。  
やがて、服越しの感触では満足できなくなった俺はメイド服をはだけさせ、  
直接触り始めた。しかしそれすらしばらく経つと満足できなくなり、俺は  
ノックを忘れて何度かうっかり覗いてしまった着替えでは見えない部分・・・  
下着の中を見るため、ついにブラジャーに手をかけた。  
見たことはあっても触ったことは無かったため、なかなか外すことが出来なかったが  
見かねたハルヒが手を伸ばし外してくれた。  
「これはこうやるのよ。覚えておきなさい」  
この間、ハルヒはそれ以外何もせず、ただ目の前でじっと見ているだけだった。  
ブラジャーという邪魔者が消え去ったのでようやく分かったが、朝比奈さんの  
乳首はツンと尖っていた。俺はいつか見た本の内容を思い出した。  
同時に嗜虐心のようなものが渦巻いて、俺はその敏感な先を思い切りつねった。  
 
「ひっ・・・いぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ」  
恐らく、普通ならば絶対に出ないであろうほどの大きな叫びをあげた朝比奈さんに  
俺はおののき、咄嗟に腕を離してしまった。  
「はぁ・・・はぁ・・・ん・・・ぁ・・・?」  
今の衝撃のせいだろう、朝比奈さんは目を覚ましてしまった。  
「おはよう、みくるちゃん」  
「え・・・あさひな・・・さん?いったいこれは・・・  
えっ、えっ、ええっ!?」  
状況を把握した朝比奈さんは悲鳴をあげようとしたが、その口はハルヒに塞がれた。  
「んんっ・・・むぅっ!うぅっ・・・ぁ・・・んぅぅ」  
ハルヒは口の中に舌を差し込み、朝比奈さんの舌を引きずり出し、吸い始めた。  
それはまるで口で口を犯しているかのような凄艶さだった。ハルヒに口を犯された  
朝比奈さんは初めは放心、次に口を離そうと必死に抵抗し、最後には無駄と  
悟ったのか抵抗を止め、その優しい目からはたくさんの涙がこぼれ落ちた。  
 
 
およそ五分間はそうしていたと思う。  
ハルヒは名残惜しそうに口を離し、唇の周りについた唾液を舌で舐め取った。  
「ぷはっ・・・ふうっ。ご馳走さま」  
「っく・・・ぐすっ・・・どうし・・・こんな・・・えぐっ・・・えぐっ・・・」  
手で涙を必死に拭おうとする朝比奈さんを見て、俺はいたたまれない気持ちと  
さっきまでの光景が強烈にせめぎあっていた。  
「みくるちゃん、後ろを見てみて」  
「え?・・・あっ」  
完全に思考を奪われていた俺はハルヒの言葉に反応することができず、  
朝比奈さんを更に深い悲しみに追い込んでしまった。  
「キョンくん、何でそこに・・・いやっ。み、見ないでっ!いやぁぁぁぁぁ・・・」  
「あっ、朝比奈さん・・・俺は・・・」  
「みくるちゃん。キョンはね、みくるちゃんのその大きな胸を手で服の上から撫でたり、  
下着の上から揉んだり、直接乳首を抓ったりしたのよ・・・あたしもだけどね・・・」  
 
俺はハルヒを止める事は出来なかった。  
「そんな・・・そんな・・・ぁ・・・ぁ・・・」  
朝比奈さんはショックで打ちひしがれていた。仮に俺が同じ立場だったとしたら  
きっと立ち直れないと思う。つまり、俺はそれだけのことをしてしまったのだ。  
「ねえ、みくるちゃん。あなた、キョンのこと、好きなんでしょう?」  
「・・・ふぇっ!?」  
一瞬、俺は耳を疑った。どう考えてもこんな時に出てくる言葉じゃないからだ。  
ハルヒ、お前は何を考えている?  
「みくるちゃん、いつもキョンの事見てるもんね。お茶も一人だけ直接手渡しだし、  
それにパトロールでキョンとペアになると本当に嬉しそうだし・・・」  
「あ・・・ぅ・・・ぇぁ・・・」  
「好きなんでしょ。好きで好きでたまらなくて、布団をかぶって夜な夜な慰めて」  
「やめてくれ!」  
俺は思わず声を上げた。ハルヒのあまりにも棘のある言い方に我慢がならなかった。  
それに、朝比奈さんはいつか未来に帰るんだ。俺なんかと・・・そんなことあるはずない。  
しかし、さすがにそれは言えなかった。  
 
「もう、やめてくれ・・・」  
「キョン・・・」  
耳を塞ぎたい。目を潰したい。今すぐここから消え去りたい。だがそれは不可能だ。  
全てはもう起こってしまった。後悔などしたところで意味をなさない事は分かってる。  
しばらくの間、部屋に静寂が訪れた。やがて、誰かが口を開いた。  
「・・・です」  
顔を上げた俺が見たものは、初めて見る・・・いや、大人になった朝比奈さんが  
時折見せた、紛れも無く同一人物であると実感させる、年上の顔だった。  
「好き・・・わたしはキョンくんのことが好き!朝も、昼も、夜も。学校にいる時も、  
お家にいる時も、眠っている時も。ずっとずっとキョンくんの事ばかり考えてた。  
慰・・・めたことだって一度や二度じゃない。ずっとキョンくんのそばにいたい。  
休みの日にキョンくんと一緒にどこかへ行きたい。でも・・・」  
「・・・」  
「わたしはキョンくんを好きになっちゃいけないの。誰も好きになっちゃいけないの。  
分かってたはずなのに・・・わたし・・・は・・・」  
 
朝比奈さんの告白を聞いているうちに、俺の目から涙が溢れていた。  
「キョンくん、ごめんね。わたしが・・・わたしなんかが・・・いたから・・・」  
違う、朝比奈さんが謝る必要なんて無い。俺が全部悪い。俺のせいだ。  
必死に言葉を紡ぎだそうとするが、嗚咽で何も出てこない。  
「やっと・・・やっと本当の事を言ったわね」  
「涼宮さん・・・?」  
「どうして最初から無理って決め付けるの?抵抗しようとせずに諦めるの?  
あたしはそんなの絶対嫌。あたしも以前はそうだった。でも・・・  
あの時からあたしの前に立ち塞がるものには全て抵抗するって決めた」  
ハルヒの言うあの時・・・球場でちっぽけな自分に気付いたという話。  
全てのきっかけ。俺たちがSOS団にいる理由。  
「もし、みくるちゃん。あなたが本当の事を言おうとしなければ・・・あたしはあなたを  
本気で壊したでしょうね。でも、あなたは言った。だから、これで終わり」  
「ハルヒ・・・」  
「みくるちゃん。あなたはどうしたい?」  
 
「わたし・・・わたしは・・・」  
少し考える仕草を見せ、朝比奈さんは俺へ向き直った。  
「わたし、キョンくんと」  
「待ってください」  
「えっ・・・」  
俺の待ったに朝比奈さんの表情が一瞬曇る。  
「俺から言わせてください。朝比奈さん、俺は朝比奈さんのことが好きです。  
朝比奈さんとずっと、いつまでも一緒にいたい。俺は・・・」  
軽く深呼吸する。  
「たとえこの先何が起ころうとあなたを守りたい。いや、守ってみせる」  
同じような事を言って見事に失敗した前例があるが、この言葉に嘘は無い。  
二度と同じ轍は踏まない。  
「俺は、朝比奈さんの事が好きだ。愛してる」  
言い終わり、あれだけのことをしてこんなセリフを吐く俺にちょっと嫌な気分がしたが  
これが今俺にできる精一杯の誠意だった。  
 
頭を下げた状態の俺には朝比奈さんの表情が見えない。  
もし。もし、朝比奈さんがさっきの事を思い出して拒絶したらどうしよう。  
不安と緊張、そして恐怖の中で反応を待っていた俺は、  
突如柔らかいものに包まれた。  
・・・俺は、朝比奈さんの胸の中にいた。  
「嬉しいの。嬉しくて嬉しくて、気持ちをどう表現すればいいのかわからないの。  
だから、今はこうさせて・・・」  
胸の中で朝比奈さんの言葉を受けつつ、俺は大きな安らぎを覚えていた。  
 
名残惜しかったがひとしきりこの感触を味わった後、俺たちは顔を合わせた。  
「朝比奈さん」  
「キョンくん」  
「ん・・・っ」  
誰から求めたわけでもない、俺たちは自然に・・・  
初めてのキスを交わした。  
 
長い長いキスの後、俺は部屋を見渡した。  
部屋の主・・・ハルヒはいつのまにかいなくなっていた。  
 
翌日から、またいつもの生活が戻ってきた。  
長門は本を読み、古泉はしきりにゲームを俺に勧め、そしてハルヒは  
いつも通りパソコンの前に座ってネットサーフィンしながら、時々何かを  
思い付いたように俺たちに無理難題を押し付ける。  
そんな中、ただ一つ変わったことがある。  
 
俺と朝比奈さんの関係だ。  
もし、未来が規定事項とやらで決まっていたとしても、俺はそれを認めない。  
未来は過去があったからこそ存在するものだ。未来の結果で過去を操作する  
なんて、そんな世の中はまっぴらゴメンだ。  
傍らで朝比奈さんが微笑む。何でも信じられるような気がする。  
俺は、抵抗する。そう決めたんだ。  
 
おしまい。  

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